18 / 210
17急な来訪者
しおりを挟む襲撃事件と、不穏な手紙が届いたから三日。
早朝からレオの様子がおかしかった。
ずっと手紙を見てはため息ばかりだつたし、本を読んでいても同じページばかり。
「レオ、どうしたのですか」
「あっ…リゼ。ごめん」
「私の事は気になさらないで」
浮かない顔をしているレオが心配だった。
何か心配ごとがあるなら行ってほしいと思ったのだけど、私はレオの事を何も知らない。
だから相談に乗ることもできず…
「坊ちゃま!大変でございます!」
「おい…」
「先ほど火急で手紙が届きました。奥様が…こちらにいらっしゃると」
「は?」
こんなに取り乱した顔もするのね。
鬼軍曹のような侍女だと思っていたのに…
「レオのお母様がいらっしゃるならご挨拶をしなくては」
「いや…そんなことはしなくてもいい」
「そっ…そうですわ。姫様がまだ絶対安静ですから」
もう一人で歩けるし、医師からも問題ないと言われているのだから大丈夫だわ。
「これだけお世話になっているのだからちゃんとご挨拶を…」
「大変です!」
「今度は何だ!」
私の言葉を遮るように悲鳴を上げながら部屋に入って来たのは普段私のお世話をしてくれる侍女だった。
「何です。今は忙しい」
「そうだ!母上をどうやって追い返すか考えなくては」
「追い返す?」
せっかくいらっしゃるのになぜ追い返すのかと思った矢先だった。
「あら?影が…」
「お嬢様、前を!」
アンナが珍しく声を荒げた瞬間だった。
窓ガラスが割れた。
「リゼ!」
「何ですの!」
破片が飛び散ることはなかったけど、先日の襲撃事件でも建物に被害がなかったのに、どんな恐ろしい侵入者なのかと思ったのだけど。
「この私を追い返すなど百年早いわ!」
煙が立ち込めて声しか聞こえたなかったが、凛とした声が響く。
煙が消えたと同時に私は絶句した。
「空から侵入者が襲ってこないとは限らん。この私の侵入を止められぬとは」
「母上を止められたら、すべての敵の侵入は止められますよ」
「ハッ。お前もまだまだ詰めが甘い。それよりも…おや」
何故この方が…
隣国のカリスタ王国のミカエラ・リーズベルト公爵夫人。
カリスタ王国の戦女神と呼ばれる存在で未だに男尊女卑が当たり前の世でも彼女に一目置く方は多い。
一時は国王代行を務めたほどの方だ。
「驚かせてしまったかな」
「ごっ…ご無礼を!」
隣国の元国王代行の方に私はなんてことを!
「良い、頭をあげてくれ」
「そんなわけには参りません」
「あげてくれ…あげんか!」
「はっ!はい、上げさせていただきます!」
咄嗟に背筋を伸ばし私は頭を上げさせてもらった。
「母上、ここは我が国ではありません」
「むっ…癖でな」
なんて事なの!
ミカエラ様とレオが親子ということは…
レオはカリスタ王国の国王の甥に当たるわ!
4,120
あなたにおすすめの小説
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
【完結】真実の愛に気付いたと言われてしまったのですが
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済みです!!!】
かつて王国の誇りとされた名家の令嬢レティシア。王太子の婚約者として誰もが認める存在だった彼女は、ある日、突然の“婚約破棄”を言い渡される。
――理由は、「真実の愛に気づいてしまった」。
その一言と共に、王家との長年の絆は踏みにじられ、彼女の名誉は地に落ちる。だが、沈黙の奥底に宿っていたのは、誇り高き家の決意と、彼女自身の冷ややかな覚悟だった。
動揺する貴族たち、混乱する政権。やがて、ノーグレイブ家は“ある宣言”をもって王政と決別し、秩序と理念を掲げて、新たな自治の道を歩み出す。
一方、王宮では裏切りの余波が波紋を広げ、王太子は“責任”という言葉の意味と向き合わざるを得なくなる。崩れゆく信頼と、見限られる権威。
そして、動き出したノーグレイブ家の中心には、再び立ち上がったレティシアの姿があった。
※日常パートとシリアスパートを交互に挟む予定です。
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです
天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。
魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。
薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。
それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる