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76一難去った後
しおりを挟む一週間後、ジャンに呼ばれすべての報告を受けた私はようやくという気持ちになった。
あの後ジャンの働きでミレイは無事に保護され、シンパシー家は牢屋に入れられたそうだ。
財産はすべて差し押さえられたけど、負債を抱えている彼らは慰謝料を支払えるだけの蓄えはない。
慰謝料に関しては全額ライアスさんが支払うとのことだった。
今回の無理難題の件や労働基準法を違反した働きにより勤め先から慰謝料と、多額の退職金が支払われたそうだ。
仕事先は、言うまでもなく他所からも訴えられたとか。
「ライアスさんは公爵家から直々に会計士として招かれたそうです」
「まぁ!」
「これは当然の結果だな?あの馬鹿息子の赤字を黒字にしたのだから。彼は控えめだがかなり優秀だ…宰相閣下が自分の後継者に迎えたいと言っていたよ」
旦那様の言葉に驚きを隠せない。
宰相閣下にも一目置かれるなんてすごいわ。
「辺境地で二年も踏ん張るだけの精神力も評価された…皮肉だけど」
「頑張っている人が正当な評価を受けられて嬉しいです」
ずっと正直者は馬鹿を見ると言われてきた。
どんなに頑張っても報われないと思った時もあるけど最後は報われる。
それがとても嬉しい。
「ミレイさんに関してですが軽い栄養失調が見られますが、一週間入院すれば問題ありません」
「栄養失調…可哀想に」
「本当に嘆かわしいです。無期懲役にしても甘いぐらいです」
ジャンの怒りは相当なもので、あの後三人の罪をできるだけ重くなるように持っていったそうだ。
怒ると怖いなと思った。
それほど人として許されない行為をしたのだから仕方ないかもしれない。
「これで君の悩みは消えたかい?」
「旦那様…」
「これで安心して君に嫁いで貰える」
ジャンがいるのに堂々と甘い言葉を言わないでほしい。
「叔父様、空気を読んでくださいな」
「マリー!」
外出しているはずのお嬢様がまたしても音もなく背後から!
「油断し過ぎですわ」
「お前は諜報員にでもなる気か!」
確かにお嬢様の侵入を防げれば、どんな諜報員も防げる気がする。
「いやですわ。私はか弱い女性ですわ…」
「お前がか弱いなら、他の同年代の令嬢はどうなるか詳しく聞きたいものだな」
本当にお嬢様は大胆不敵だわ。
けれど、これで一つの問題は片付いてよかった。
「先生、何を安心してますの?」
「はい?」
「これから先生はレッスンの日々ですわよ?なんせ叔父様は先帝陛下の甥で右腕ですわ。その奥方になるのですから」
「それは…」
「勿論、挙式はこじんまりしてもパレードは盛大に行われますわ。大伯父様が当日は花火を上げて、お二人の晴れ姿をタペストリーにして売り出すそうですわ」
「ひぃ!」
そんなの聞いてないわ!
「パレードは一週間続きますのでお覚悟なさいませ」
覚悟したくない!
私はこの後待っているであろう地獄を想像した。
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