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38.疲労の後
しおりを挟む一日でどっと疲れた。
国を背負う皆様に頭を下げられ、持ち上げられていた俺は平静を保つので精いっぱいだった。
「おいおい、その調子で大丈夫か?」
「オスカー…」
「だからその目を止めろ。お前は王の配偶者になるんだぞ?もっとしっかりしろ」
公の場ではちゃんとした俺を褒めて欲しい。
だって最近までは伯爵令息で入り婿予定で、いないものと同じ待遇を受けていたんだぞ?
なのにある日突然次期女王陛下の婚約者に見初められ、公爵家に養子に迎えられ。
挙句の果てには外堀も内堀もしっかり埋められてしまっている始末だ。
「宰相閣下も人が悪いよ。あんなに持ち上げなくても」
「言っておくが、宰相閣下はそんなに甘い方じゃない」
「え?」
俺の立場を守る為にあんなパフォーマンスをしたのかと思ったが違うの?
「あの方は合理主義で結果重視だ」
「えーっと」
「だから、お前が女王陛下の配偶者という理由であんな真似をするか。お前に見込みがったんだろう?」
いや過大評価なんですけど。
畑を耕しただけで何でここまで評価されるんですかね?
「それよりも初仕事だ」
「ん?」
テーブルに置かれた書類を見せられる。
「何これ?」
「これが最初のひと月のお前の仕事だ」
書類を確認すると同盟国との接待に関するものや、他にも色々ある。
「王配とはいえ、結構地味な仕事が多いらしい。特に書類関係の仕事だ」
「地味な仕事は得意」
「威張るなよ」
自慢じゃないけど、数字には詳しい。
伊達に傾いたストラス家を建て直していたわけじゃないし帳簿を見ればすぐに解る。
「とりあえずサクサクやるよ」
「いや、今すぐにじゃなくても…って、もうするのかよ!」
じっとしているよりも頭を動かしている方が楽だ。
それにこの程度の量は…。
「ねぇ、この数字おかしくない?」
「ん?」
「予算がおかしい」
書類をざっくり見ると三か月前の予算の数字が明らかにおかしいと思った。
特に気になったのが国から援助金として支払っている教会の金額だ。
いくら由緒正しき教会でも多すぎる。
その反対に支援が必要な教会に支払うお金が少しだけであるが下手されている。
「それに、支援が必要ない教会にここまで支払うのはおかしいだろう?どうなっているんだ」
「何?」
初めての仕事でとんでもない物を見つけてしまったが、こんなのは序の口で。
これからが俺の戦いとなるのだった。
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