42 / 45
剥奪
しおりを挟む
寒気が止まらない。いますぐここから逃げ出したくてたまらない。
確かに、出会ったあの幼い日に、わたしは恋に落ちた。
夜空のような黒い髪に、吸い込まれるような空色の瞳に、困難を乗り越え、力強く成長していく姿に、心ときめかせた日もあった。けれど。
その想いは、追放と裏切りを告げられたあの日ですべて打ち砕かれ、失われたのだ。
どうして、あれだけのことを言って、あれだけのことをして、わたしの想いがまだ自分にあると思えるのか心の底からわからない。
こんな人だったのか。
いや、こんな人だった。失望したくなくて、見ないようにしてきただけ。
「いいえ、好きではないです……わたしはもう戻りません。あなたはミーシア姫を大切にするべきだと思います」
「そう拗ねないで、素直になれよ。特別に言って神殿に、おまえの部屋を用意してやってもいいからさ」
「拗ねてないです。部屋もいりません。戻るつもりはありませんから」
「? なんで?」
ドーハートさまは、わたしの目の前に座り込んだ。かつて恋におちたその空色の瞳に向かって、わたしははっきりと言った。
「この地で、やりたいことを見つけたからです」
教会に横たわる人々はわたしの祈りを必要としてくれる。キシールやカイドルさん、魔王城で一緒に暮らしたみんなとも、今の関係を続けていきたい。
そして、わたしの膝で横たわるこの人に、まだ名をつけてあげてはいないから。
だからまだ、この地を離れるつもりはない。
「はーん。そういうこと、ね。オレに愛想尽かされたと思って、仕返しに敵の愛人になったってか」
わたしが魔王を見つめるまなざしをどう解釈したのか、ドーハートさまはそう言った。
「おまえにしてはよくやったなあ。なにしろ、オレの側にいたころはキスさえ許さなかったんだから。どうやって誑し込んだんだ? おまえ、顔だけはかわいいからなあ……どこまでヤッた? ん?」
ドーハートさまの中で怒りが膨れ上がっていくのを、魔力が膨張していく気配で察する。
しかし、わたしにはどうすることもできない。
「ふざけんじゃねえぞ」
大声は温室中を震わせ、割れたままのガラスから破片が落ちた。
予期していたとはいえ間近で怒気を爆発させて怒鳴られた衝撃はすさまじく、わたしは身をすくませてしまう。
その隙に顎を強い力で掴まれて、無理やりドーハートさまの方へ顔を引き寄せられて、
彼の怒った顔がどんどん近づいてきて、
口と口がぶつかりそうになって、
怖くなって目を閉じてしまって。
しかし、唇が重なる前にわたしの顔の下半分が冷たいもの包まれた。
それが膝で痛みと戦っている魔王の手で、わたしとドーハートさまのキスを阻んでくれたということに気づくのはもう少しあとのこと。
先に気づいたのは、ドーハートさまに無理やりキスされそうになったということで、一気に怒りが沸点を超えたわたしは、ドーハートさまの頬を思いっきりひっぱたいた。
バシーンと小気味よい音が響き、完璧に油断していたドーハートさまはバランスを崩して横に倒れる。
「破廉恥な! 一体何をするんです!」
どれだけ言葉を尽くしてわたしの想いを伝えたところで、この人は無理やり連れ戻そうとして、無理やりキスしようとした。
わたしの人格を無視して、自分の都合を押し付けようとするのが、この人の行動のすべて。
かつて恋をした瞳も、精悍な顔も、成長を見守ってきた彼の内面に対してさえ、
もはや嫌悪感しか見出せない。
その気持ちを自覚したところで、頭の中から声が聞こえた。
――待っていました。あなたが彼に、見切りをつけるのを。
――条件を満たしました。勇者資格を剥奪します。
女性の声。どこか懐かしい声だった。わたしは周囲を見回すが、そんな人影は見当たらない。
「てめえ、優しくしていればつけあがりやがって……!」
すぐさま態勢を立て直してわたしに殴りかかろうとしたドーハートさまの拳は、しかし見事に空振りする。
わたしの膝の上で横たわったままの魔王の長い足が、カニばさみの要領でドーハートさまの足を挟み込んで引き倒したからだ。
「! 魔王陛下、体は大丈夫なんですか?」
「ああ、まあな。おまえらな、人の頭上で痴話げんかするなよ……けど、おかげでだいぶ回復した」
瞳はまだうつろで顔は青白く、血色が戻らないままだったが、確かに新しい出血はない。傷が塞がりかけているのは本当のようだ。
ほっとして力なく下げられた手をとって、その冷たさを感じたとき、魔王がわたしとドーハートさまの口づけを阻んでくれていたことに気が付いた。
この人はこんな時にでも、わたしを守ろうとしてくれたのだ。
たったそれだけで、口角が上がるのがわかる。
冷えていた心が温まり、指先までぽかぽかして、特に頬が、熱くなる。
大切にしてもらえることがこんなにうれしいのは、
わたしが、この人に恋をしているからだ。
――各種ステータス上限突破解放無効化完了。レベルダウン開始。99、98、97……
先ほどから聞こえるこの声は、二人の反応を見る限りわたしにしか聞こえていないみたいだ。
意味不明な言葉の羅列に聞こえるが、頭に響く声が次の言葉を告げるたびに、ドーハートさまが纏っている強い魔力の気配が、拡散されていくように感じる。
魔王が立ち上がる。それを見届けてわたしも立ち上がると、ドーハートさまの方はなにやら、茫然として独りごちた。
「なんだ、これ。力が入らない……?」
――経験値無効化完了。恩寵バフ剥奪。魔法ツリー強制封印。スキルランク低下開始、完了。全スキル削除開始、完了。物理無効が解除されました。魔法無効が解除されました。
立ち上がることすらおぼつかない様子のドーハートさまを見下ろし、魔王は何かに気づいたようにつぶやいた。
「……はじまりの聖女の、最後の抵抗だ」
「抵抗?」
「彼女は勇者に殺される直前に、自分が選んで力を与えた勇者から、そのすべてを剥奪する唯一の方法を編み出していた。勇者が聖女を害したとき、勇者はその資格を失うことになる」
「はあ!? なんだよそれ! 第一害してなんかいないだろ!」
「バカだな。……自分のための労働を長いこと強制し、その揚げ句に都合が悪くなれば生まれ育った環境を奪って追い出し、姿をくらましても大して探しもせず、しかし自分の生活が行き詰まったら連れ戻してまた働かせようとするのを、加害と言わないならなんて言うんだよ」
まあ、きっかけは無理やりキスされそうになったことだったみたいだけどな、と言って、魔王はドーハートさまに背を向けようとした。
見せた隙を逃すまいとドーハートさまはいきり立って襲い掛かろうとするが、急に金縛りにあったみたいに体が動かなくなる。
「おまえが今まで自分の力だと信じていたものは、すべて聖女が貸し与えていた力だ。勇者の資格が剥奪されたおまえは、その辺のスライム一匹より弱いよ」
確かに、出会ったあの幼い日に、わたしは恋に落ちた。
夜空のような黒い髪に、吸い込まれるような空色の瞳に、困難を乗り越え、力強く成長していく姿に、心ときめかせた日もあった。けれど。
その想いは、追放と裏切りを告げられたあの日ですべて打ち砕かれ、失われたのだ。
どうして、あれだけのことを言って、あれだけのことをして、わたしの想いがまだ自分にあると思えるのか心の底からわからない。
こんな人だったのか。
いや、こんな人だった。失望したくなくて、見ないようにしてきただけ。
「いいえ、好きではないです……わたしはもう戻りません。あなたはミーシア姫を大切にするべきだと思います」
「そう拗ねないで、素直になれよ。特別に言って神殿に、おまえの部屋を用意してやってもいいからさ」
「拗ねてないです。部屋もいりません。戻るつもりはありませんから」
「? なんで?」
ドーハートさまは、わたしの目の前に座り込んだ。かつて恋におちたその空色の瞳に向かって、わたしははっきりと言った。
「この地で、やりたいことを見つけたからです」
教会に横たわる人々はわたしの祈りを必要としてくれる。キシールやカイドルさん、魔王城で一緒に暮らしたみんなとも、今の関係を続けていきたい。
そして、わたしの膝で横たわるこの人に、まだ名をつけてあげてはいないから。
だからまだ、この地を離れるつもりはない。
「はーん。そういうこと、ね。オレに愛想尽かされたと思って、仕返しに敵の愛人になったってか」
わたしが魔王を見つめるまなざしをどう解釈したのか、ドーハートさまはそう言った。
「おまえにしてはよくやったなあ。なにしろ、オレの側にいたころはキスさえ許さなかったんだから。どうやって誑し込んだんだ? おまえ、顔だけはかわいいからなあ……どこまでヤッた? ん?」
ドーハートさまの中で怒りが膨れ上がっていくのを、魔力が膨張していく気配で察する。
しかし、わたしにはどうすることもできない。
「ふざけんじゃねえぞ」
大声は温室中を震わせ、割れたままのガラスから破片が落ちた。
予期していたとはいえ間近で怒気を爆発させて怒鳴られた衝撃はすさまじく、わたしは身をすくませてしまう。
その隙に顎を強い力で掴まれて、無理やりドーハートさまの方へ顔を引き寄せられて、
彼の怒った顔がどんどん近づいてきて、
口と口がぶつかりそうになって、
怖くなって目を閉じてしまって。
しかし、唇が重なる前にわたしの顔の下半分が冷たいもの包まれた。
それが膝で痛みと戦っている魔王の手で、わたしとドーハートさまのキスを阻んでくれたということに気づくのはもう少しあとのこと。
先に気づいたのは、ドーハートさまに無理やりキスされそうになったということで、一気に怒りが沸点を超えたわたしは、ドーハートさまの頬を思いっきりひっぱたいた。
バシーンと小気味よい音が響き、完璧に油断していたドーハートさまはバランスを崩して横に倒れる。
「破廉恥な! 一体何をするんです!」
どれだけ言葉を尽くしてわたしの想いを伝えたところで、この人は無理やり連れ戻そうとして、無理やりキスしようとした。
わたしの人格を無視して、自分の都合を押し付けようとするのが、この人の行動のすべて。
かつて恋をした瞳も、精悍な顔も、成長を見守ってきた彼の内面に対してさえ、
もはや嫌悪感しか見出せない。
その気持ちを自覚したところで、頭の中から声が聞こえた。
――待っていました。あなたが彼に、見切りをつけるのを。
――条件を満たしました。勇者資格を剥奪します。
女性の声。どこか懐かしい声だった。わたしは周囲を見回すが、そんな人影は見当たらない。
「てめえ、優しくしていればつけあがりやがって……!」
すぐさま態勢を立て直してわたしに殴りかかろうとしたドーハートさまの拳は、しかし見事に空振りする。
わたしの膝の上で横たわったままの魔王の長い足が、カニばさみの要領でドーハートさまの足を挟み込んで引き倒したからだ。
「! 魔王陛下、体は大丈夫なんですか?」
「ああ、まあな。おまえらな、人の頭上で痴話げんかするなよ……けど、おかげでだいぶ回復した」
瞳はまだうつろで顔は青白く、血色が戻らないままだったが、確かに新しい出血はない。傷が塞がりかけているのは本当のようだ。
ほっとして力なく下げられた手をとって、その冷たさを感じたとき、魔王がわたしとドーハートさまの口づけを阻んでくれていたことに気が付いた。
この人はこんな時にでも、わたしを守ろうとしてくれたのだ。
たったそれだけで、口角が上がるのがわかる。
冷えていた心が温まり、指先までぽかぽかして、特に頬が、熱くなる。
大切にしてもらえることがこんなにうれしいのは、
わたしが、この人に恋をしているからだ。
――各種ステータス上限突破解放無効化完了。レベルダウン開始。99、98、97……
先ほどから聞こえるこの声は、二人の反応を見る限りわたしにしか聞こえていないみたいだ。
意味不明な言葉の羅列に聞こえるが、頭に響く声が次の言葉を告げるたびに、ドーハートさまが纏っている強い魔力の気配が、拡散されていくように感じる。
魔王が立ち上がる。それを見届けてわたしも立ち上がると、ドーハートさまの方はなにやら、茫然として独りごちた。
「なんだ、これ。力が入らない……?」
――経験値無効化完了。恩寵バフ剥奪。魔法ツリー強制封印。スキルランク低下開始、完了。全スキル削除開始、完了。物理無効が解除されました。魔法無効が解除されました。
立ち上がることすらおぼつかない様子のドーハートさまを見下ろし、魔王は何かに気づいたようにつぶやいた。
「……はじまりの聖女の、最後の抵抗だ」
「抵抗?」
「彼女は勇者に殺される直前に、自分が選んで力を与えた勇者から、そのすべてを剥奪する唯一の方法を編み出していた。勇者が聖女を害したとき、勇者はその資格を失うことになる」
「はあ!? なんだよそれ! 第一害してなんかいないだろ!」
「バカだな。……自分のための労働を長いこと強制し、その揚げ句に都合が悪くなれば生まれ育った環境を奪って追い出し、姿をくらましても大して探しもせず、しかし自分の生活が行き詰まったら連れ戻してまた働かせようとするのを、加害と言わないならなんて言うんだよ」
まあ、きっかけは無理やりキスされそうになったことだったみたいだけどな、と言って、魔王はドーハートさまに背を向けようとした。
見せた隙を逃すまいとドーハートさまはいきり立って襲い掛かろうとするが、急に金縛りにあったみたいに体が動かなくなる。
「おまえが今まで自分の力だと信じていたものは、すべて聖女が貸し与えていた力だ。勇者の資格が剥奪されたおまえは、その辺のスライム一匹より弱いよ」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる