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一章 〜浄化の聖女×消滅の魔女〜
賛否両論×未知への期待
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そうしてアルルとキュリオは今晩、味噌汁と刺身を付け合わせとして出すことにした。
「ひさびさのお姉さまの手作りお料理と聞いて飛んできました!」
多忙なアルルに対して自ら手料理をねだる事はしないフィーレ。
その分楽しみも倍増しているのだろう、目を眩いばかりに輝かせている。
「結局研究ばっかで料理したのかも怪しい感じになっちゃったけどね」
果たして期待に添えられているのかと、伸し掛かるプレッシャーも倍増と言ったところか。
「皆の士気の上がりようも段違いであるが故、ヒトの世の食文化はどんどん取り入れていくべきだな」
質素でこそあるものの、バランスがよく適度な満腹感も得られる。
現在の迷いの森拠点ではそのような食事が求められているのだ。
「丸焼きドーン、みたいなのもたまにはいいと思うけど毎回だと流石にちょっとね……」
(ていうかよく考えると刺し身ってある意味それより……管理とかの手間は比にならないんだけど)
良い素材はありのままの味を活かすべきか、それとも凝った調理過程を経るべきか賛否両論が分かれる所ではある。
丁度いい折り合いを見つけるのも料理人としての腕の見せ所だろう。
「んであるるん、今日は一体何が出てくる感じなの!? わたしも楽しみで待ちきれない!」
テトラの方もフィーレと一緒になって目を輝かせている。
「あー、まあなんというか……一品目はあんまり期待しない方がいいかも……?」
謎の気後れを感じてきたアルルはそう言うと、刺し身の乗せられた器の蓋を開けた。
「これは……何かの切り身ですか?」
この場にいる全員、その謎物体に対し興味津々と言ったところ。
「そ、魚の切り身。先に言っとくけど無理して食べなくてもいいからね? 確かあんた、魚はあんまり好きじゃなかったでしょ?」
しかしその言葉は、好奇心が蓋をしているフィーレの耳には届いていないようだった。
そうして各々刺し身をつまみ、口の中へと運んでいく。
「ふむ、酒のつまみとしてならば嫌な後味も残らない。我は好きだな」
グラス片手に次々と刺身を口に放り込んでいくジゼ。
酒が進む進むといった様子。
「……お、おいしいです、お姉さま」
そしてフィーレはと言うと、真っ青な顔を浮かべながら嘘丸出しの感想を述べている。
「ちょ、だから言ったでしょ!? 止めときなさいってば!」
アルルの出した食事はなんでも口に入れてしまうのがフィーレの悪い癖である。
「わたしもあんまり好きじゃない……てか兄貴はよくそんな食べられるな!」
テトラに関してもあまり口に合わなかったらしい。
口内に広がった臭みをプリコの果実水で喉の奥へ一気に押し流す。
「未知の領域へと突き進むその御心、流石はお嬢様で御座います」
そしてバグロスはジゼと一緒になってグラス片手に刺身をつまんでいる。
やはり酒のつまみとしての評判が良いようだ。
「未知の領域とやらに引っ張った本人が言うのもあれだけど、絶対にあたしの浄化処理無しで食べちゃダメだからね? 下手したら死ぬから」
アルルは過去に寄生虫に蝕まれた患者を数人治療した経験があるが、その誰もが地獄のように悶え苦しんでいたのを覚えている。
生食の好奇心に負けてしまう者は後を絶たないのだろう。
「火を通さぬまま川魚を口にして死した同胞がいたな。あれは不幸な事故だった」
その記憶があってなお食べる手を止めないのは相当気に入ってしまったが故か、それともアルルに対する絶対的な信頼を持っているが故か。
「ジゼもうっかりなんて事ないようにね? そういえばロシェはもともと野生だったし、どっちかと言えば生魚のが好きなんかな?」
元気よく鳴いたロシェであったが、それがどっちでもいいを意味するのか、こっちの方がいいを意味するのかは本人を除き誰も知る由はない。
そうしてメインの食事と共に刺し身の半分ぐらいが消費された頃、調理場の方からキュリオが大きな鍋を抱えリビングにやってきた。
「各自この器に掬って下さいやせ。お代わりは自由で御座いやす」
「お姉さま、こちらには何が入ってるんですか?」
先程の刺し身に出鼻をくじかれたフィーレは次の一品に希望を託した模様。
「味噌をお湯に溶かしてそれに合う具を入れたみたいな? ……口で説明するのは難しいからまずは食べてみて。こっちにも魚は入ってるけど多分フィーレの口にも合うと思うから」
アルルは今度こそ自信満々と言った様子でキュリオから鍋を受け取った。
「つまり苦手がひっくり返るぐらい美味しいということですね!」
失われかけていた目の光は見る見るうちに取り戻され、最早先程よりも強く輝いている。
「兄貴ばっかり美味しい思いしてずるいから今度こそ!」
テトラの方も味噌汁のお披露目を今か今かと待ちわびている。
「こっちは満場一致で好評になるかもね」
宴もたけなわと言ったところで、味噌汁がなみなみと貯められている巨大な寸胴鍋の蓋が開かれた。
「ひさびさのお姉さまの手作りお料理と聞いて飛んできました!」
多忙なアルルに対して自ら手料理をねだる事はしないフィーレ。
その分楽しみも倍増しているのだろう、目を眩いばかりに輝かせている。
「結局研究ばっかで料理したのかも怪しい感じになっちゃったけどね」
果たして期待に添えられているのかと、伸し掛かるプレッシャーも倍増と言ったところか。
「皆の士気の上がりようも段違いであるが故、ヒトの世の食文化はどんどん取り入れていくべきだな」
質素でこそあるものの、バランスがよく適度な満腹感も得られる。
現在の迷いの森拠点ではそのような食事が求められているのだ。
「丸焼きドーン、みたいなのもたまにはいいと思うけど毎回だと流石にちょっとね……」
(ていうかよく考えると刺し身ってある意味それより……管理とかの手間は比にならないんだけど)
良い素材はありのままの味を活かすべきか、それとも凝った調理過程を経るべきか賛否両論が分かれる所ではある。
丁度いい折り合いを見つけるのも料理人としての腕の見せ所だろう。
「んであるるん、今日は一体何が出てくる感じなの!? わたしも楽しみで待ちきれない!」
テトラの方もフィーレと一緒になって目を輝かせている。
「あー、まあなんというか……一品目はあんまり期待しない方がいいかも……?」
謎の気後れを感じてきたアルルはそう言うと、刺し身の乗せられた器の蓋を開けた。
「これは……何かの切り身ですか?」
この場にいる全員、その謎物体に対し興味津々と言ったところ。
「そ、魚の切り身。先に言っとくけど無理して食べなくてもいいからね? 確かあんた、魚はあんまり好きじゃなかったでしょ?」
しかしその言葉は、好奇心が蓋をしているフィーレの耳には届いていないようだった。
そうして各々刺し身をつまみ、口の中へと運んでいく。
「ふむ、酒のつまみとしてならば嫌な後味も残らない。我は好きだな」
グラス片手に次々と刺身を口に放り込んでいくジゼ。
酒が進む進むといった様子。
「……お、おいしいです、お姉さま」
そしてフィーレはと言うと、真っ青な顔を浮かべながら嘘丸出しの感想を述べている。
「ちょ、だから言ったでしょ!? 止めときなさいってば!」
アルルの出した食事はなんでも口に入れてしまうのがフィーレの悪い癖である。
「わたしもあんまり好きじゃない……てか兄貴はよくそんな食べられるな!」
テトラに関してもあまり口に合わなかったらしい。
口内に広がった臭みをプリコの果実水で喉の奥へ一気に押し流す。
「未知の領域へと突き進むその御心、流石はお嬢様で御座います」
そしてバグロスはジゼと一緒になってグラス片手に刺身をつまんでいる。
やはり酒のつまみとしての評判が良いようだ。
「未知の領域とやらに引っ張った本人が言うのもあれだけど、絶対にあたしの浄化処理無しで食べちゃダメだからね? 下手したら死ぬから」
アルルは過去に寄生虫に蝕まれた患者を数人治療した経験があるが、その誰もが地獄のように悶え苦しんでいたのを覚えている。
生食の好奇心に負けてしまう者は後を絶たないのだろう。
「火を通さぬまま川魚を口にして死した同胞がいたな。あれは不幸な事故だった」
その記憶があってなお食べる手を止めないのは相当気に入ってしまったが故か、それともアルルに対する絶対的な信頼を持っているが故か。
「ジゼもうっかりなんて事ないようにね? そういえばロシェはもともと野生だったし、どっちかと言えば生魚のが好きなんかな?」
元気よく鳴いたロシェであったが、それがどっちでもいいを意味するのか、こっちの方がいいを意味するのかは本人を除き誰も知る由はない。
そうしてメインの食事と共に刺し身の半分ぐらいが消費された頃、調理場の方からキュリオが大きな鍋を抱えリビングにやってきた。
「各自この器に掬って下さいやせ。お代わりは自由で御座いやす」
「お姉さま、こちらには何が入ってるんですか?」
先程の刺し身に出鼻をくじかれたフィーレは次の一品に希望を託した模様。
「味噌をお湯に溶かしてそれに合う具を入れたみたいな? ……口で説明するのは難しいからまずは食べてみて。こっちにも魚は入ってるけど多分フィーレの口にも合うと思うから」
アルルは今度こそ自信満々と言った様子でキュリオから鍋を受け取った。
「つまり苦手がひっくり返るぐらい美味しいということですね!」
失われかけていた目の光は見る見るうちに取り戻され、最早先程よりも強く輝いている。
「兄貴ばっかり美味しい思いしてずるいから今度こそ!」
テトラの方も味噌汁のお披露目を今か今かと待ちわびている。
「こっちは満場一致で好評になるかもね」
宴もたけなわと言ったところで、味噌汁がなみなみと貯められている巨大な寸胴鍋の蓋が開かれた。
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