18 / 40
二 皇女アガーテについて
消えたマシュマロ 四
しおりを挟む
「なんと……!?」
驚いたフィリベルト帝だけではなく、周囲の貴族たちも声をあげ始める。
「アウローラ王女殿下、正気ですか」
「あの錦鯉は、皇家がはるか東方よりお取り寄せなさったという逸品では?」
「金貨五十枚もしたものを、殺せ、とは」
アウローラは、そうです、と肯定してみせた。
「ええ、承知しておりますわ。……が、もし、錦鯉の胃の中にマシュマロの残骸があれば、マグダレーネ様の証言が全て正しかったことが証明されますわよね。それは、マグダレーネ様の本意に沿うものです」
そして、アウローラは、もう一度マグダレーネに向き直る。
「それだけではありませんわね。逆に胃の中に残骸がなければ、マグダレーネ様の証言が虚偽だったことにもなります」
マグダレーネは藤色のドレスの裾を強く握っていて、すっかり皺を作っていた。唇は固く結ばれ、顔色は言わずもがな、みるみると血の気が引いている。
「さて、いかがでしょう、マグダレーネ様」
「錦鯉の腹を裂きましょうか」
「それは……その……」
マグダレーネは口ごもる。
「もし、本当にマシュマロが池に落ちていたのなら」
アウローラは追い討ちをかけるように一歩近づいてみせた。
「鯉の胃の中から、少なくともマシュマロに含まれていたピスタチオの粒の形は残留しているはずです。あなたの証言を裏付ける決定的な証拠となりますが」
「で、でも」
「それとも──何も出てこないことをご存じなのですか」
マグダレーネの瞳が怯えに見開かれていった。
「お待ちください、そんな高価な鯉を殺すなんて、もったいないわ……」
アウローラはさらに一歩詰め寄った。
「真実を明らかにするためでしょう。人の名誉と鯉の命、一体どちらが大切でしょうか」
「…………」
うつむくマグダレーネに背を向けて、アウローラはフィリベルト帝をもう一度見た。
「皇帝陛下、ご決断を」
フィリベルト帝は苦渋の表情で池の方角を見た。あの美しい紅白の鯉。金貨五十枚の泳ぐ宝石を、娘のために殺すかどうか、懊悩している。……が、やがて、諦めがついたように深く溜め息をついた。
「よろしい。仕方あるまいて」
フィリベルト帝は重々しく手を挙げて、命令する。
「侍従、鯉を──」
「お待ちください!!」
マグダレーネはついに叫ぶ。聞く者たち全員の目を覚まさせるような、甲高い悲鳴だった。
「待ってください! お願いです! 鯉を殺さないで!」
そのとく、四阿に一陣の風が吹き抜けて、マグダレーネのドレスの裾を触れるようにはためかせては去っていった。
「マグダレーネ様……」
アウローラは彼女の名を呼んだ。半分嫌悪、半分呆れ、というのが、今の感情としては合っているところである。
ヴァルフリードもすっかり呆れたように溜め息をついた。
「初めから、自作自演だったのだな」
「……はい」
マグダレーネは、さながら糸の切れた人形めいて、がくりとその場にくずおれた。ドレスの裾が、地面へと枯れ落ちた花のように広がる。
「私が自分で池に飛び込んだのです。ですから、池には何も落ちていません」
「ではなぜ、『マシュマロが落ちた』と証言を?」
ヴァルフリードが尋ねると、マグダレーネはうなだれた。
「だって、アガーテ皇女殿下は、両方の菓子を持っていらっしゃるはず。でも、マシュマロと言えば、庭園にいらした証拠と合わせて、皇女殿下が真っ先に疑われると思ったから……」
ヴァルフリードが困ったようにアウローラの方を無言で見やった。アウローラも、肩をすくめてみせた。
「マグダレーネ嬢、なぜ、このようなことをした」
その沈黙を破ったのはフィリベルト帝だった。口調には、娘を傷つけられた怒りの色がどうしようもなく滲んでいる。
「私は、ただ、皇女殿下を皇位継承争いから脱落させたかっただけなのです」
そのあまりにも直截すぎる物言いに、アウローラは、「はあ?」と目を見張った。
「我が娘アガーテを?」
フィリベルト帝の質問に、マグダレーネはうつむきがちにうなずく。
「はい、私は誇りある大諸侯の娘として、生まれたときから、いつかは皇家に嫁ぐのだと教え込まれてまいりました。ヴァルフリード殿下の妃となれば、いずれは皇妃となる。しかしながら、アガーテ皇女殿下が皇位をお継ぎになれば、私の立場は危うくなります……」
「なるほどな、それで、アガーテに罪をなすりつけようと」
「はい……。皇女殿下が犯罪者だということにして、皇位継承から外させたかった、ということです」
「そんな!」
と、アガーテが息を呑んだ気配があった。
そこで、アウローラは呟いた。
「はあ、なんて、莫迦なこと」
「すみません、アガーテ殿下。すみません、皇帝陛下。すみません、アウローラ殿下」
マグダレーネはそのまま、地面に額をすりつけて、ひたすらに謝り続けている。その様子を見苦しそうに睥睨していたフィリベルト帝が、アウローラの一歩前に出た。
「マグダレーネ」
その声は、庭園の陽気を一瞬で凍らせてしまうように冷ややかだった。
「おまえは、無実の者を犯人に仕立て上げようとした。これは、皇家への不敬にもあたる明らかな重罪であると……分かるな」
──極刑。
その場にいる誰もが頭に浮かべた言葉だろう。今回の件は、場合によっては死罪を意味する、ということは誰もが心得ていた。
「皇帝陛下……」
マグダレーネは、恐怖で震える身体を、時間をかけて起こした。
「しかし」
フィリベルト帝は、困り果てたようにアウローラを見た。
「処分は、アウローラ王女殿下に一任しよう。結局のところ、我が娘アガーテが一番の被害者であるのだが……アウローラ殿下が真実を明らかにしてくれたからな」
アウローラはほんの少し吃驚したものの、マグダレーネの前に立った。
「マグダレーネ様、お顔を上げてください」
「は、はい」
「あなたは、アガーテ皇女殿下を陥れようとしました。……ええ、もちろん、皇位継承争いは熾烈なものでしょう。私ごときが王者の資質たるものを論じるのも浅慮の至りではございますが、あえて、お尋ねいたしましょうかね。さて──王者に真に問われるべきは、血統や身分でしょうか」
アウローラは、ことさら血統の証たる皇帝フィリベルトの前で王者たるものの資格をマグダレーネに説いているのだ。これこそ不敬だろう。
「私は、そうは思いません。どう生きるかの方が、圧倒的に重要だと思うのです」
「アウローラ王女殿下……」
「今回のあなたの行いは、『誇りある大諸侯の行い』でしょうか」
再び、マグダレーネは地面に額を擦りながら、平身低頭に首を横に振った。
「いえ、いえ……!」
「皇帝陛下のご厚情に免じて、今日のことは、不問とさせていただきます」
アウローラはにっこりと笑む。
「でも、二度と同じ真似をなさらないでくださいませね?」
「は、はい! ありがとうございます、本当に、ありがとうございます……!」
一連の断罪劇を見守っていたフィリベルト帝が、安堵の息を吐く。
「アウローラ王女殿下、あなたの才智と機転で娘を救っていただき、誠に感謝する」
「いえ、陛下。それもそうですが、あの立派な鯉、無事でよかったですわね」
「ああ、その通りだ。まったく、肝を冷やした。なにせ、金貨五十枚だからな」
「私の生活費の十倍……」
アウローラが真顔で呟くと、いつの間にやら隣にいた侍女エリカがくすくすと笑っている。やがて、アガーテが駆け寄ってきた。
「アウローラ殿下、ありがとうございます!」
「いえいえ、アガーテ殿下が濡れ衣を着せられるのを黙って見てはいられませんでしたから」
「あの、お友達になっていただけませんか!」
「えっ」
「あの。その。私……お恥ずかしながら、引きこもってばかりで。お友達と呼べる対等な方が、今までいなかったのですわ」
「では、ぜひ」
アガーテが差し出した手を、アウローラは握り返した。
──呆れるほどに長い一日だった。
こうして、アガーテ主催の「花鳥宮園遊会事件」は一応の平穏無事な終幕を迎えたのである……。
驚いたフィリベルト帝だけではなく、周囲の貴族たちも声をあげ始める。
「アウローラ王女殿下、正気ですか」
「あの錦鯉は、皇家がはるか東方よりお取り寄せなさったという逸品では?」
「金貨五十枚もしたものを、殺せ、とは」
アウローラは、そうです、と肯定してみせた。
「ええ、承知しておりますわ。……が、もし、錦鯉の胃の中にマシュマロの残骸があれば、マグダレーネ様の証言が全て正しかったことが証明されますわよね。それは、マグダレーネ様の本意に沿うものです」
そして、アウローラは、もう一度マグダレーネに向き直る。
「それだけではありませんわね。逆に胃の中に残骸がなければ、マグダレーネ様の証言が虚偽だったことにもなります」
マグダレーネは藤色のドレスの裾を強く握っていて、すっかり皺を作っていた。唇は固く結ばれ、顔色は言わずもがな、みるみると血の気が引いている。
「さて、いかがでしょう、マグダレーネ様」
「錦鯉の腹を裂きましょうか」
「それは……その……」
マグダレーネは口ごもる。
「もし、本当にマシュマロが池に落ちていたのなら」
アウローラは追い討ちをかけるように一歩近づいてみせた。
「鯉の胃の中から、少なくともマシュマロに含まれていたピスタチオの粒の形は残留しているはずです。あなたの証言を裏付ける決定的な証拠となりますが」
「で、でも」
「それとも──何も出てこないことをご存じなのですか」
マグダレーネの瞳が怯えに見開かれていった。
「お待ちください、そんな高価な鯉を殺すなんて、もったいないわ……」
アウローラはさらに一歩詰め寄った。
「真実を明らかにするためでしょう。人の名誉と鯉の命、一体どちらが大切でしょうか」
「…………」
うつむくマグダレーネに背を向けて、アウローラはフィリベルト帝をもう一度見た。
「皇帝陛下、ご決断を」
フィリベルト帝は苦渋の表情で池の方角を見た。あの美しい紅白の鯉。金貨五十枚の泳ぐ宝石を、娘のために殺すかどうか、懊悩している。……が、やがて、諦めがついたように深く溜め息をついた。
「よろしい。仕方あるまいて」
フィリベルト帝は重々しく手を挙げて、命令する。
「侍従、鯉を──」
「お待ちください!!」
マグダレーネはついに叫ぶ。聞く者たち全員の目を覚まさせるような、甲高い悲鳴だった。
「待ってください! お願いです! 鯉を殺さないで!」
そのとく、四阿に一陣の風が吹き抜けて、マグダレーネのドレスの裾を触れるようにはためかせては去っていった。
「マグダレーネ様……」
アウローラは彼女の名を呼んだ。半分嫌悪、半分呆れ、というのが、今の感情としては合っているところである。
ヴァルフリードもすっかり呆れたように溜め息をついた。
「初めから、自作自演だったのだな」
「……はい」
マグダレーネは、さながら糸の切れた人形めいて、がくりとその場にくずおれた。ドレスの裾が、地面へと枯れ落ちた花のように広がる。
「私が自分で池に飛び込んだのです。ですから、池には何も落ちていません」
「ではなぜ、『マシュマロが落ちた』と証言を?」
ヴァルフリードが尋ねると、マグダレーネはうなだれた。
「だって、アガーテ皇女殿下は、両方の菓子を持っていらっしゃるはず。でも、マシュマロと言えば、庭園にいらした証拠と合わせて、皇女殿下が真っ先に疑われると思ったから……」
ヴァルフリードが困ったようにアウローラの方を無言で見やった。アウローラも、肩をすくめてみせた。
「マグダレーネ嬢、なぜ、このようなことをした」
その沈黙を破ったのはフィリベルト帝だった。口調には、娘を傷つけられた怒りの色がどうしようもなく滲んでいる。
「私は、ただ、皇女殿下を皇位継承争いから脱落させたかっただけなのです」
そのあまりにも直截すぎる物言いに、アウローラは、「はあ?」と目を見張った。
「我が娘アガーテを?」
フィリベルト帝の質問に、マグダレーネはうつむきがちにうなずく。
「はい、私は誇りある大諸侯の娘として、生まれたときから、いつかは皇家に嫁ぐのだと教え込まれてまいりました。ヴァルフリード殿下の妃となれば、いずれは皇妃となる。しかしながら、アガーテ皇女殿下が皇位をお継ぎになれば、私の立場は危うくなります……」
「なるほどな、それで、アガーテに罪をなすりつけようと」
「はい……。皇女殿下が犯罪者だということにして、皇位継承から外させたかった、ということです」
「そんな!」
と、アガーテが息を呑んだ気配があった。
そこで、アウローラは呟いた。
「はあ、なんて、莫迦なこと」
「すみません、アガーテ殿下。すみません、皇帝陛下。すみません、アウローラ殿下」
マグダレーネはそのまま、地面に額をすりつけて、ひたすらに謝り続けている。その様子を見苦しそうに睥睨していたフィリベルト帝が、アウローラの一歩前に出た。
「マグダレーネ」
その声は、庭園の陽気を一瞬で凍らせてしまうように冷ややかだった。
「おまえは、無実の者を犯人に仕立て上げようとした。これは、皇家への不敬にもあたる明らかな重罪であると……分かるな」
──極刑。
その場にいる誰もが頭に浮かべた言葉だろう。今回の件は、場合によっては死罪を意味する、ということは誰もが心得ていた。
「皇帝陛下……」
マグダレーネは、恐怖で震える身体を、時間をかけて起こした。
「しかし」
フィリベルト帝は、困り果てたようにアウローラを見た。
「処分は、アウローラ王女殿下に一任しよう。結局のところ、我が娘アガーテが一番の被害者であるのだが……アウローラ殿下が真実を明らかにしてくれたからな」
アウローラはほんの少し吃驚したものの、マグダレーネの前に立った。
「マグダレーネ様、お顔を上げてください」
「は、はい」
「あなたは、アガーテ皇女殿下を陥れようとしました。……ええ、もちろん、皇位継承争いは熾烈なものでしょう。私ごときが王者の資質たるものを論じるのも浅慮の至りではございますが、あえて、お尋ねいたしましょうかね。さて──王者に真に問われるべきは、血統や身分でしょうか」
アウローラは、ことさら血統の証たる皇帝フィリベルトの前で王者たるものの資格をマグダレーネに説いているのだ。これこそ不敬だろう。
「私は、そうは思いません。どう生きるかの方が、圧倒的に重要だと思うのです」
「アウローラ王女殿下……」
「今回のあなたの行いは、『誇りある大諸侯の行い』でしょうか」
再び、マグダレーネは地面に額を擦りながら、平身低頭に首を横に振った。
「いえ、いえ……!」
「皇帝陛下のご厚情に免じて、今日のことは、不問とさせていただきます」
アウローラはにっこりと笑む。
「でも、二度と同じ真似をなさらないでくださいませね?」
「は、はい! ありがとうございます、本当に、ありがとうございます……!」
一連の断罪劇を見守っていたフィリベルト帝が、安堵の息を吐く。
「アウローラ王女殿下、あなたの才智と機転で娘を救っていただき、誠に感謝する」
「いえ、陛下。それもそうですが、あの立派な鯉、無事でよかったですわね」
「ああ、その通りだ。まったく、肝を冷やした。なにせ、金貨五十枚だからな」
「私の生活費の十倍……」
アウローラが真顔で呟くと、いつの間にやら隣にいた侍女エリカがくすくすと笑っている。やがて、アガーテが駆け寄ってきた。
「アウローラ殿下、ありがとうございます!」
「いえいえ、アガーテ殿下が濡れ衣を着せられるのを黙って見てはいられませんでしたから」
「あの、お友達になっていただけませんか!」
「えっ」
「あの。その。私……お恥ずかしながら、引きこもってばかりで。お友達と呼べる対等な方が、今までいなかったのですわ」
「では、ぜひ」
アガーテが差し出した手を、アウローラは握り返した。
──呆れるほどに長い一日だった。
こうして、アガーテ主催の「花鳥宮園遊会事件」は一応の平穏無事な終幕を迎えたのである……。
0
あなたにおすすめの小説
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした
柴田はつみ
恋愛
侯爵令嬢エラナは、父親の命令で突然、10歳年上の国王アレンと結婚することに。
幼馴染みだったものの、年の差と疎遠だった期間のせいですっかり他人行儀な二人の新婚生活は、どこかギクシャクしていました。エラナは国王の冷たい態度に心を閉ざし、離婚を決意します。
そんなある日、国王と聖女マリアが親密に話している姿を頻繁に目撃したエラナは、二人の関係を不審に思い始めます。
護衛騎士レオナルドの協力を得て真相を突き止めることにしますが、逆に国王からはレオナルドとの仲を疑われてしまい、事態は思わぬ方向に進んでいきます。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
最後にして最幸の転生を満喫していたらある日突然人質に出されました
織本紗綾(おりもとさや)
恋愛
─作者より─
定番かもしれませんが、裏切りとざまぁを書いてみようと思いました。妹のローズ、エランに第四皇子とリリーの周りはくせ者だらけ。幸せとは何か、傷つきながら答えを探していく物語。一話を1000字前後にして短時間で読みやすくを心掛けています。
─あらすじ─
美しいと有名なロレンス大公爵家の令嬢リリーに転生、豪華で何不自由ない暮らしに将来有望でイケメンな婚約者のランスがいて、通う学園では羨望の眼差しが。
前世で苦労した分、今世は幸せでもいいよね……ずっと夢に見てきた穏やかで幸せな人生がやっと手に入る。
そう思っていたのに──待っていたのは他国で人質として生きる日々だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる