23 / 40
三 皇子イザークについて
金か銀か 二
しおりを挟む
謁見の間に居並ぶ者たち全員が、息を呑んだ。重い空気が場に落ちて、ひとしきりのしじまを生み出す。
金の輝きは、天窓から射し込む陽光の雫を集めて形にしたように美しかった。絡まりあう複雑な蔦模様が、花、鳥、星……と、一つの冠の中に森羅万象を描き出している。
「見事な出来栄えだろう?」
フィリベルト帝の声は、惚れ込む響きをわずかに帯びていた。
「宮廷金細工師ハインツの、五十年の集大成というわけだな」
「しかし──」
フィリベルト帝の説明を受けて、皇弟ジルヴァンが苦々しげに続ける。
「先日、匿名の告発文が届いたのだ」
侍従が一枚の紙をアウローラに丁重に差し出した。
「この冠は、純金ではない。銀を混ぜた合金である、と」
ジルヴァンは、片手で額を押さえる。
「ハインツは三代にわたって皇家に仕えてきた名匠。そのような不正をするはずはないと思うのだが……」
ジルヴァンは、兄帝に尋ねる。
「陛下。私の冠を本当にこのレンゼル元王女に預けるとおっしゃるのですか」
「ジルヴァン。何か申したいことでもあるのか」
と、フィリベルト帝が有無を言わせぬ視線と言葉を送ると、ジルヴァンはすぐに黙った。おおかた、滅ぼした国の王女に醜聞を取り扱わせるのか、という抗議だろうが、アウローラにはどうしようもないことである。
「おまえの申したいことは分かっている。だからこそ、レンゼル王女であるアウローラ殿下に一任しようと思うのだ。──考えてもみなさい。帝国人が調査すれば、派閥争いの道具にされかねない。しかし、外部の人間であればこそ、公正な判断ができようというもの」
「陛下の深謀遠慮、私めの浅慮では及びもつかぬことでございました。失礼いたしました、アウローラ殿下」
あっさりとジルヴァンは引き下がったので、アウローラは意外に思った。実は、そこまで悪意のある人間ではないのかもしれない。
「よろしい。明日、この謁見の間で公開検証を行うとしよう。関係者を全員集めよ」
フィリベルト帝は玉座から立ち上がり、アウローラを蒼い瞳で見下ろした。
「私の前で、全ての真実を明らかにしてほしい。──お頼み申し上げる」
「微力を尽くします、皇帝陛下」
アウローラは頭を垂れた。
♢
アウローラは帝宮の客室で歓待を受けた。山鳩を丸々一羽のローストやら、近海で獲れた大海老やら、帝宮の菜園で育てられた新鮮な野菜やら、とある種の木の根元にしか生育しないという特別な茸やら。およそ下々の者では味わえないような珍味佳肴ばかりだった。
湯殿から上がり、アウローラはバルコニーからワインのグラスを片手に帝都コルンの街並みを一望してみた。満天の星を地上にそのまま鏡写しにしたような夜景だ。
燃えている──なぜか、そう感じた。空の星も、人の明かりも、同じように燃えている。星も人も、きっと似ている。
「どうだ、帝国が古今東西からせっせと寄せ集めた美酒の味は」
寝衣姿のヴァルフリードがいつの間にか、背後に立っていた。気配をまったく感じなかった。迂闊である。
「美味しいです。私のつたない語彙ではとても表現できませんわ。こよなしの寝酒、としか」
「なに、寝かせないこともできる」
「寝不足でうっかり硫黄泉をヴァル様の顔面にぶちまけるわけにはいいませんからね」
「それも、道理だな」
「ふん、何が、道理ですかー」
アウローラは、酔いの勢いあまって、あられもない胡乱な声をあげる。
「きみ、ずいぶんと酔っているな。まあ、おれも甘いワインを飲ませすぎた」
「え?」
「甘いワインをするすると勧めてくる男には、くれぐれも気をつけろよ?」
「はあ」
「きみは、詰めが甘い。レンゼル城から逃げ出そうとしたときも、そうだったろう」
ヴァルフリードは、問いを変えた。
「不安か」
「不安というよりは……」
アウローラは、故郷の父コンラートのことを思い出した。金と銀の見分け方は、父が教えてくれた。まさか、父の教えがこうして手助けをしてくれることになるとは思ってもみなかったのである。
「家族を思い出して。父は、財宝の真贋を見極めるすべを教えてくれました。王侯たるもの、貢物や戦利品を見抜けなければ国の恥ぞ、と」
「家族か。こう言っては詮無きことだが、おれには無縁かもしれないな。……あまり、励ます言葉も見つからなくて、申し訳ない」
「いえ、別に。むしろ、よかったです」
「何が」
アウローラは酔って鈍りかけた思考の中で、精いっぱいに言葉の引き出しを片端から開けた。しかし、出力された言葉は、ちっぽけなものだった。
「──ヴァル様の生まれた場所を知ることができて」
ずっと、知らなかった。知ろうとしてこなかった。ヴァルフリードの生きた日々。ヴァルフリードの家族。彼が、何を見て、感じてきたのか。
「ふふっ、そうかそうか」
機嫌をよくしたらしいヴァルフリードが、毛布を一枚アウローラの肩にかけてくれた。
「夜風は冷える。もう寝なさい」
夜風を孕んだその声は、子守歌のように眠気を誘う。
「へえ、やさしいんですねー」
「きみには」
そっぽを向いた彼の紅い髪を銀へと濡らす月。それを、アウローラはもう一度、見上げた。
「……きれい」
♢
そこは、紙とインクと革装丁の匂いに満ちていた。レンゼル王宮の書斎、幼いアウローラの前で、父である国王コンラートは同じデザインの指輪を二つ取り出してみせた。
「アウローラ、これを見てごらん」
「なんでしょう、父上」
「どちらが本当の金か、分かるかい?」
「えー」
どちらも金に輝いている指輪は、見た目には違いなど判別しようもない。
「見た目には分からないが、見分けるすべはあるのだよ」
「どうやって!」
コンラートは、水を張った容器を二つ持ってきた。
「金と銀は、同じ重さでも、大きさが違うのだ」
「大きさ?」
「そう。金は重い金属だ。銀は金より軽い。だから、同じ重さを用意してやれば……」
コンラートは、指輪を容器一つずつにそれぞれ入れる。
「……ほら! こうして、銀の方がより多くの水を押し出すだろう? よくよく見てみれば、銀の指輪の方が大きい」
「本当ね!」
「これは、大昔の科学者が発見した方法でな」
父王は微笑んで語る。
「とある王が、新しい冠を作らせたときのこと。職人は『純金で作りました』と言った。しかし、王は疑った……」
「それで?」
「科学者は考えた。冠を壊さずに金であると確かめる方法を。そして、その方法を思いついたのは……風呂に入っているときだった。『水に沈めれば体積が分かる!』……とね」
「すごいわ!」
「彼はこう喜んだとか──『我、発見せり!』」
アウローラがぱちぱちと小さく拍手していると、コンラートはさらに小瓶を取り出した。
「これは、北山から持ち帰った硫黄泉の水だ。硫黄には、銀と反応して黒ずませる効果がある。しかし、金とは反応しない。金が他の金属と比べて特別なのは、変化しにくいからだね」
「へえ……」
「ただし、こちらの方法は、品物をどうしても傷めてしまう。銀が少しでも混ざっていれば黒ずんでしまうからな。だから、最初に使う方法ではないよ」
コンラートは娘の頭に軽く手を置いた。
「アウローラ、覚えておきなさい。人は、きらきらとまばゆいものに惑わされるものだ。だが、本質だけは変わらない。人は嘘をつくこともあるが、科学は……」
アウローラは、そこで微睡から目覚めた。父の夢は、久しぶりだった。父コンラートは今、レンゼルで自治を任されている。アウローラがゲームで勝利した暁には、レンゼル返還どころか、父の人質待遇をやめさせられる。父が、母が、妹が、アウローラの助けを待っている。
──負けるわけには、いかなかった。
金の輝きは、天窓から射し込む陽光の雫を集めて形にしたように美しかった。絡まりあう複雑な蔦模様が、花、鳥、星……と、一つの冠の中に森羅万象を描き出している。
「見事な出来栄えだろう?」
フィリベルト帝の声は、惚れ込む響きをわずかに帯びていた。
「宮廷金細工師ハインツの、五十年の集大成というわけだな」
「しかし──」
フィリベルト帝の説明を受けて、皇弟ジルヴァンが苦々しげに続ける。
「先日、匿名の告発文が届いたのだ」
侍従が一枚の紙をアウローラに丁重に差し出した。
「この冠は、純金ではない。銀を混ぜた合金である、と」
ジルヴァンは、片手で額を押さえる。
「ハインツは三代にわたって皇家に仕えてきた名匠。そのような不正をするはずはないと思うのだが……」
ジルヴァンは、兄帝に尋ねる。
「陛下。私の冠を本当にこのレンゼル元王女に預けるとおっしゃるのですか」
「ジルヴァン。何か申したいことでもあるのか」
と、フィリベルト帝が有無を言わせぬ視線と言葉を送ると、ジルヴァンはすぐに黙った。おおかた、滅ぼした国の王女に醜聞を取り扱わせるのか、という抗議だろうが、アウローラにはどうしようもないことである。
「おまえの申したいことは分かっている。だからこそ、レンゼル王女であるアウローラ殿下に一任しようと思うのだ。──考えてもみなさい。帝国人が調査すれば、派閥争いの道具にされかねない。しかし、外部の人間であればこそ、公正な判断ができようというもの」
「陛下の深謀遠慮、私めの浅慮では及びもつかぬことでございました。失礼いたしました、アウローラ殿下」
あっさりとジルヴァンは引き下がったので、アウローラは意外に思った。実は、そこまで悪意のある人間ではないのかもしれない。
「よろしい。明日、この謁見の間で公開検証を行うとしよう。関係者を全員集めよ」
フィリベルト帝は玉座から立ち上がり、アウローラを蒼い瞳で見下ろした。
「私の前で、全ての真実を明らかにしてほしい。──お頼み申し上げる」
「微力を尽くします、皇帝陛下」
アウローラは頭を垂れた。
♢
アウローラは帝宮の客室で歓待を受けた。山鳩を丸々一羽のローストやら、近海で獲れた大海老やら、帝宮の菜園で育てられた新鮮な野菜やら、とある種の木の根元にしか生育しないという特別な茸やら。およそ下々の者では味わえないような珍味佳肴ばかりだった。
湯殿から上がり、アウローラはバルコニーからワインのグラスを片手に帝都コルンの街並みを一望してみた。満天の星を地上にそのまま鏡写しにしたような夜景だ。
燃えている──なぜか、そう感じた。空の星も、人の明かりも、同じように燃えている。星も人も、きっと似ている。
「どうだ、帝国が古今東西からせっせと寄せ集めた美酒の味は」
寝衣姿のヴァルフリードがいつの間にか、背後に立っていた。気配をまったく感じなかった。迂闊である。
「美味しいです。私のつたない語彙ではとても表現できませんわ。こよなしの寝酒、としか」
「なに、寝かせないこともできる」
「寝不足でうっかり硫黄泉をヴァル様の顔面にぶちまけるわけにはいいませんからね」
「それも、道理だな」
「ふん、何が、道理ですかー」
アウローラは、酔いの勢いあまって、あられもない胡乱な声をあげる。
「きみ、ずいぶんと酔っているな。まあ、おれも甘いワインを飲ませすぎた」
「え?」
「甘いワインをするすると勧めてくる男には、くれぐれも気をつけろよ?」
「はあ」
「きみは、詰めが甘い。レンゼル城から逃げ出そうとしたときも、そうだったろう」
ヴァルフリードは、問いを変えた。
「不安か」
「不安というよりは……」
アウローラは、故郷の父コンラートのことを思い出した。金と銀の見分け方は、父が教えてくれた。まさか、父の教えがこうして手助けをしてくれることになるとは思ってもみなかったのである。
「家族を思い出して。父は、財宝の真贋を見極めるすべを教えてくれました。王侯たるもの、貢物や戦利品を見抜けなければ国の恥ぞ、と」
「家族か。こう言っては詮無きことだが、おれには無縁かもしれないな。……あまり、励ます言葉も見つからなくて、申し訳ない」
「いえ、別に。むしろ、よかったです」
「何が」
アウローラは酔って鈍りかけた思考の中で、精いっぱいに言葉の引き出しを片端から開けた。しかし、出力された言葉は、ちっぽけなものだった。
「──ヴァル様の生まれた場所を知ることができて」
ずっと、知らなかった。知ろうとしてこなかった。ヴァルフリードの生きた日々。ヴァルフリードの家族。彼が、何を見て、感じてきたのか。
「ふふっ、そうかそうか」
機嫌をよくしたらしいヴァルフリードが、毛布を一枚アウローラの肩にかけてくれた。
「夜風は冷える。もう寝なさい」
夜風を孕んだその声は、子守歌のように眠気を誘う。
「へえ、やさしいんですねー」
「きみには」
そっぽを向いた彼の紅い髪を銀へと濡らす月。それを、アウローラはもう一度、見上げた。
「……きれい」
♢
そこは、紙とインクと革装丁の匂いに満ちていた。レンゼル王宮の書斎、幼いアウローラの前で、父である国王コンラートは同じデザインの指輪を二つ取り出してみせた。
「アウローラ、これを見てごらん」
「なんでしょう、父上」
「どちらが本当の金か、分かるかい?」
「えー」
どちらも金に輝いている指輪は、見た目には違いなど判別しようもない。
「見た目には分からないが、見分けるすべはあるのだよ」
「どうやって!」
コンラートは、水を張った容器を二つ持ってきた。
「金と銀は、同じ重さでも、大きさが違うのだ」
「大きさ?」
「そう。金は重い金属だ。銀は金より軽い。だから、同じ重さを用意してやれば……」
コンラートは、指輪を容器一つずつにそれぞれ入れる。
「……ほら! こうして、銀の方がより多くの水を押し出すだろう? よくよく見てみれば、銀の指輪の方が大きい」
「本当ね!」
「これは、大昔の科学者が発見した方法でな」
父王は微笑んで語る。
「とある王が、新しい冠を作らせたときのこと。職人は『純金で作りました』と言った。しかし、王は疑った……」
「それで?」
「科学者は考えた。冠を壊さずに金であると確かめる方法を。そして、その方法を思いついたのは……風呂に入っているときだった。『水に沈めれば体積が分かる!』……とね」
「すごいわ!」
「彼はこう喜んだとか──『我、発見せり!』」
アウローラがぱちぱちと小さく拍手していると、コンラートはさらに小瓶を取り出した。
「これは、北山から持ち帰った硫黄泉の水だ。硫黄には、銀と反応して黒ずませる効果がある。しかし、金とは反応しない。金が他の金属と比べて特別なのは、変化しにくいからだね」
「へえ……」
「ただし、こちらの方法は、品物をどうしても傷めてしまう。銀が少しでも混ざっていれば黒ずんでしまうからな。だから、最初に使う方法ではないよ」
コンラートは娘の頭に軽く手を置いた。
「アウローラ、覚えておきなさい。人は、きらきらとまばゆいものに惑わされるものだ。だが、本質だけは変わらない。人は嘘をつくこともあるが、科学は……」
アウローラは、そこで微睡から目覚めた。父の夢は、久しぶりだった。父コンラートは今、レンゼルで自治を任されている。アウローラがゲームで勝利した暁には、レンゼル返還どころか、父の人質待遇をやめさせられる。父が、母が、妹が、アウローラの助けを待っている。
──負けるわけには、いかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした
柴田はつみ
恋愛
侯爵令嬢エラナは、父親の命令で突然、10歳年上の国王アレンと結婚することに。
幼馴染みだったものの、年の差と疎遠だった期間のせいですっかり他人行儀な二人の新婚生活は、どこかギクシャクしていました。エラナは国王の冷たい態度に心を閉ざし、離婚を決意します。
そんなある日、国王と聖女マリアが親密に話している姿を頻繁に目撃したエラナは、二人の関係を不審に思い始めます。
護衛騎士レオナルドの協力を得て真相を突き止めることにしますが、逆に国王からはレオナルドとの仲を疑われてしまい、事態は思わぬ方向に進んでいきます。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
最後にして最幸の転生を満喫していたらある日突然人質に出されました
織本紗綾(おりもとさや)
恋愛
─作者より─
定番かもしれませんが、裏切りとざまぁを書いてみようと思いました。妹のローズ、エランに第四皇子とリリーの周りはくせ者だらけ。幸せとは何か、傷つきながら答えを探していく物語。一話を1000字前後にして短時間で読みやすくを心掛けています。
─あらすじ─
美しいと有名なロレンス大公爵家の令嬢リリーに転生、豪華で何不自由ない暮らしに将来有望でイケメンな婚約者のランスがいて、通う学園では羨望の眼差しが。
前世で苦労した分、今世は幸せでもいいよね……ずっと夢に見てきた穏やかで幸せな人生がやっと手に入る。
そう思っていたのに──待っていたのは他国で人質として生きる日々だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる