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魔女の過去4
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時が経つにつれ、人や周囲は変化していきます。
人間関係、生活、自分自身でさえも例外なく。
不老不死の魔女でも昔のままではいられません。
旅を終えた魔女は、旅の途中で立ち寄った国の王宮魔術師になりました。
飛鳥は故郷に戻り、親と暮らしながら画家の仕事をし、愛する人と結ばれ家庭を築きます。
二人が一緒にいる時間は、人生全体から見るとほんの少しの時間だったかもしれません。
しかし、生きていく上で決して欠くことが出来ない時間になりました。
それはまるで雪の様に積もり、融けることことのない思い出へと変わっていきます。
辛い時、悲しい時、あの楽しかった時間を思い出せば救われる。
魔女はそう、信じていました。
10年――
20年――
30年――
・
・
・
しんしんと冷える、ある冬の事でした。
飛鳥から一通の手紙が届きます。
中を見ると、飛鳥が病に伏し、危篤状態だという内容が書かれていました。
魔女は見て見ぬふりをしてきた現実が、すぐ側にまで近づいていることに身体を震わせます。
どうにかして、その震えを抑えると、諸々の執務を部下に任せ、王に暇の許可をもらい、急いで飛鳥の元へと向かいます。
飛鳥の家に着くと、待っていたのは飛鳥の家族。
顔馴染みである飛鳥の息子が駆け寄ってきました。
「玲さん! 母さんに会いに来てくださってありがとうございます!」
「飛鳥の容体は……?」
「今は峠を越えて、ベッドでゆっくりしています」
「そう、よかった……」
「母さんには、玲さんが来たら二人で話がしたいと言われているので……こちらでごゆっくりどうぞ」
魔女は飛鳥の部屋の前で立ち尽くします。
なんて声をかけようか、かけるべきか悩みます。
どうにかしてドアノブに手をかけますが、その手はとても重く、いつまでたっても回ってくれません。
会いたいけど会いたくない。
そんな気持ちが胸の内にぐるぐる回り続けます。
魔女は覚悟を決めるため一度目を閉じ、深呼吸をしました。
「よしっ……」
ガチャリと扉を開けると――
ベッドの上から静かに窓の外を眺める、飛鳥の姿がありました。
「飛鳥……」
「玲……? わぁ、玲じゃない。うふふ、久しぶりね」
昔と何一つ変わらない、素直な感情表現、花が咲いたような綺麗な笑顔。
魔女はまるであの日に戻ったかのような感覚に襲われます。
ただ一つ違うのは――
「びっくりしたかしら? こんなに皺くちゃなお婆ちゃんになって」
「別に………前に会った時よりは、少し老けたかもしれないけど、あなたはあなただもの。むしろその年になっても昔と変わらない感じに驚いたわ」
「ふふっ、玲は変わらないわね。綺麗な赤い髪に碧い瞳……それに、昔と変わらずそっけなくて意地っ張り」
「うるさいわね」
「でも、本当は人一倍寂しがり屋」
「…………」
「前回会いに来たのは三年前かしら? 本当、もっと会いに来てくれても良かったのに……」
「あなたの家族の邪魔になるでしょ? 息子も孫もいるんだから、私がその時間を奪ったら可哀そうだもの」
「はぁ、玲はいつもそう言うわよね。昔はちょくちょく来てくれたのに……私が年を取るとどんどん疎遠になっていくんだから」
「……忙しいのよ。今の王は世代交代してバカ王子の息子よ。教えることが多くて困るわ」
「ふふっ、そっか……あのお忍び王子の子供だものね。それはさぞ、活発な王子様でしょうね」
「私はお世話係でも側仕えじゃないっての」
「あら、お世話係はピッタリじゃない。玲は口では文句を言っても何だかんだ面倒見いいもの」
「なにそれ、私がいつそんなめんどくさいことした?」
「お忍び王子様の時がそうじゃない。あの時――」
それから二時間。
出会っていなかった時間の空白を埋める様に二人は話します。
この三年間何があったのか、楽しかったこと、嬉しかったこと、面白かったこと、悲しかったこと。
そして、昔一緒にいた時の話も、たくさん、たくさん二人は話しました。
「ふふふっ、久しぶりにこんなに話したわね。少し疲れちゃった」
「…………飛鳥、病の方は大丈夫なの?」
「玲が来てくれたおかげかしら? すっかり元気になったわ」
「飛鳥、無理は良くないわよ? 辛くなったらすぐにいいなさいよ」
「本当に大丈夫。今、すごく調子がいいのよ」
「そう、それならいいのだけれど…」
魔女は自身の目と魔術の両方で、飛鳥の体調を探ります。
飛鳥の顔色は本当に良く、体温、心拍数、その他全ての身体的機能が正常で、つい数日前まで生死の境をさまよっていたとは思えない程でした。
だからこそ、まるで、消える前の線香花火の様な、最後の輝きを保っている様な怖さがありました。
「きっと神様が、私にもう少しだけ時間をくれたのね……」
「…………」
「そんな悲しい顔しないで玲。私ももう、年を取ったお婆ちゃんなのよ? いつかは来ることだわ」
「わかってるわよ……それぐらい、とうの昔に覚悟してるわ……」
魔女は悲し気に、どうにもならない感情を拳に込めます。
飛鳥はその様子に少し苦笑いすると、魔女に語りかけます。
「ねえ、玲……私、あなたにお願いがあるの」
「……なに?」
「正直、この状態で言うのは気が引けるのだけど……その、あのね、無理だったらいいのよ?」
「歯切れが悪いわね。飛鳥らしくないんじゃない?」
「……それもそうね。でも、本当無理だったら無理って言ってね」
「いいから言いなさいよ。出来るだけ叶えてあげるから」
飛鳥は一拍置くと、しゃがれた声で――
「あなたの一年、私にくれない?」
「私の一年? どういうこと……?」
でも、あの時と同じように笑顔で、未来を夢見る少女の時の様に魔女を誘います。
「私、もう一度……あなたと旅をしたいの」
「――っ、なにそれ……」
「ごめんなさい……玲にだって自分の生活があるってわかってる……でも、それでも、あなたに言えずにはいられなかった……これが、最後のわがままだから……」
これが最後。
その言葉はとても重く、魔女の胸の奥に、深く突き刺さります。
時が経つにつれ、意識していた事。
いつかは、飛鳥も死んで自分の前からいなくなってしまう。
そのことを考える度、喉の奥は熱くなり、胸が締め付けられられるように痛み、自然と嗚咽が漏れてしまいます。
「おいていかないで」「私を一人にしないで」恥ずかしくて言えない言葉。
代わりにその想いを込める様に、魔女は感情を吐き出しました。
「……本当! 飛鳥はわがままばかり!」
「うん……」
「昔からそうよ! 私が静かに読書をしたい時も、話しかけてくるし!」
「うん……」
「一人でいたい時でもいつも側にくる!」
「そうね……」
「私がバカにされると、自分の事じゃないくせに、いつも勝手に怒るし!」
「ごめんなさい……」
「自分勝手よ……あなたが嫌われたら、どうするのよ……」
「私が許せなかったの……」
「いつも、いつもいつもいつも!! 飛鳥は私を振り回すんだから!!」
「そんな私でも……あなたは私のわがままをいつも聞いてくれた。嬉しかったわ」
「……私も……私も本当は、飛鳥に頼られて嬉しかった……逃げる私を追って、旅に誘いに来てくれて、嬉しかった……大好きなあなたと、一緒に旅が出来て……本当に、楽しかった……」
「私も、あなたと旅が出来てすごく楽しかったわ」
魔女は握りしめた拳を涙で濡らしながら、ぐちゃぐちゃに濡れた顔で飛鳥を見て、言います。
「そんなあなたの頼みを、断れるわけ……ないじゃないっ……!」
「ありがとう玲……やっぱり玲は、私の最高の親友ね」
それから一年、魔女と飛鳥は昔を振り返るように様々な土地や国を巡ります。
雪が降る寒い冬には家の中で共に読書をし。
色とりどりな花が咲く春には、暖かな日差しを浴びながら舞い散る桜を。
日差しが強い暑い夏には、風鈴と蝉の声を聞きながらおしゃべりを。
黄金色の稲穂が輝く秋には、金木犀の香りを楽しみ、真っ赤に染まった紅葉を見ました。
一年の旅を終えた後、飛鳥は家族の元へと帰っていきます。
そして――
その年の冬、飛鳥は、眠るように穏やかに息を引き取りました。
大切な人に囲まれ、満足した顔で、幸せそうに……。
時が経つにつれ、人や周囲は変化していきます。
人間関係、生活、自分自身でさえも例外なく。
不老不死の魔女でも昔のままではいられません。
旅を終えた魔女は、旅の途中で立ち寄った国の王宮魔術師になりました。
飛鳥は故郷に戻り、親と暮らしながら画家の仕事をし、愛する人と結ばれ家庭を築きます。
二人が一緒にいる時間は、人生全体から見るとほんの少しの時間だったかもしれません。
しかし、生きていく上で決して欠くことが出来ない時間になりました。
それはまるで雪の様に積もり、融けることことのない思い出へと変わっていきます。
辛い時、悲しい時、あの楽しかった時間を思い出せば救われる。
魔女はそう、信じていました。
10年――
20年――
30年――
・
・
・
しんしんと冷える、ある冬の事でした。
飛鳥から一通の手紙が届きます。
中を見ると、飛鳥が病に伏し、危篤状態だという内容が書かれていました。
魔女は見て見ぬふりをしてきた現実が、すぐ側にまで近づいていることに身体を震わせます。
どうにかして、その震えを抑えると、諸々の執務を部下に任せ、王に暇の許可をもらい、急いで飛鳥の元へと向かいます。
飛鳥の家に着くと、待っていたのは飛鳥の家族。
顔馴染みである飛鳥の息子が駆け寄ってきました。
「玲さん! 母さんに会いに来てくださってありがとうございます!」
「飛鳥の容体は……?」
「今は峠を越えて、ベッドでゆっくりしています」
「そう、よかった……」
「母さんには、玲さんが来たら二人で話がしたいと言われているので……こちらでごゆっくりどうぞ」
魔女は飛鳥の部屋の前で立ち尽くします。
なんて声をかけようか、かけるべきか悩みます。
どうにかしてドアノブに手をかけますが、その手はとても重く、いつまでたっても回ってくれません。
会いたいけど会いたくない。
そんな気持ちが胸の内にぐるぐる回り続けます。
魔女は覚悟を決めるため一度目を閉じ、深呼吸をしました。
「よしっ……」
ガチャリと扉を開けると――
ベッドの上から静かに窓の外を眺める、飛鳥の姿がありました。
「飛鳥……」
「玲……? わぁ、玲じゃない。うふふ、久しぶりね」
昔と何一つ変わらない、素直な感情表現、花が咲いたような綺麗な笑顔。
魔女はまるであの日に戻ったかのような感覚に襲われます。
ただ一つ違うのは――
「びっくりしたかしら? こんなに皺くちゃなお婆ちゃんになって」
「別に………前に会った時よりは、少し老けたかもしれないけど、あなたはあなただもの。むしろその年になっても昔と変わらない感じに驚いたわ」
「ふふっ、玲は変わらないわね。綺麗な赤い髪に碧い瞳……それに、昔と変わらずそっけなくて意地っ張り」
「うるさいわね」
「でも、本当は人一倍寂しがり屋」
「…………」
「前回会いに来たのは三年前かしら? 本当、もっと会いに来てくれても良かったのに……」
「あなたの家族の邪魔になるでしょ? 息子も孫もいるんだから、私がその時間を奪ったら可哀そうだもの」
「はぁ、玲はいつもそう言うわよね。昔はちょくちょく来てくれたのに……私が年を取るとどんどん疎遠になっていくんだから」
「……忙しいのよ。今の王は世代交代してバカ王子の息子よ。教えることが多くて困るわ」
「ふふっ、そっか……あのお忍び王子の子供だものね。それはさぞ、活発な王子様でしょうね」
「私はお世話係でも側仕えじゃないっての」
「あら、お世話係はピッタリじゃない。玲は口では文句を言っても何だかんだ面倒見いいもの」
「なにそれ、私がいつそんなめんどくさいことした?」
「お忍び王子様の時がそうじゃない。あの時――」
それから二時間。
出会っていなかった時間の空白を埋める様に二人は話します。
この三年間何があったのか、楽しかったこと、嬉しかったこと、面白かったこと、悲しかったこと。
そして、昔一緒にいた時の話も、たくさん、たくさん二人は話しました。
「ふふふっ、久しぶりにこんなに話したわね。少し疲れちゃった」
「…………飛鳥、病の方は大丈夫なの?」
「玲が来てくれたおかげかしら? すっかり元気になったわ」
「飛鳥、無理は良くないわよ? 辛くなったらすぐにいいなさいよ」
「本当に大丈夫。今、すごく調子がいいのよ」
「そう、それならいいのだけれど…」
魔女は自身の目と魔術の両方で、飛鳥の体調を探ります。
飛鳥の顔色は本当に良く、体温、心拍数、その他全ての身体的機能が正常で、つい数日前まで生死の境をさまよっていたとは思えない程でした。
だからこそ、まるで、消える前の線香花火の様な、最後の輝きを保っている様な怖さがありました。
「きっと神様が、私にもう少しだけ時間をくれたのね……」
「…………」
「そんな悲しい顔しないで玲。私ももう、年を取ったお婆ちゃんなのよ? いつかは来ることだわ」
「わかってるわよ……それぐらい、とうの昔に覚悟してるわ……」
魔女は悲し気に、どうにもならない感情を拳に込めます。
飛鳥はその様子に少し苦笑いすると、魔女に語りかけます。
「ねえ、玲……私、あなたにお願いがあるの」
「……なに?」
「正直、この状態で言うのは気が引けるのだけど……その、あのね、無理だったらいいのよ?」
「歯切れが悪いわね。飛鳥らしくないんじゃない?」
「……それもそうね。でも、本当無理だったら無理って言ってね」
「いいから言いなさいよ。出来るだけ叶えてあげるから」
飛鳥は一拍置くと、しゃがれた声で――
「あなたの一年、私にくれない?」
「私の一年? どういうこと……?」
でも、あの時と同じように笑顔で、未来を夢見る少女の時の様に魔女を誘います。
「私、もう一度……あなたと旅をしたいの」
「――っ、なにそれ……」
「ごめんなさい……玲にだって自分の生活があるってわかってる……でも、それでも、あなたに言えずにはいられなかった……これが、最後のわがままだから……」
これが最後。
その言葉はとても重く、魔女の胸の奥に、深く突き刺さります。
時が経つにつれ、意識していた事。
いつかは、飛鳥も死んで自分の前からいなくなってしまう。
そのことを考える度、喉の奥は熱くなり、胸が締め付けられられるように痛み、自然と嗚咽が漏れてしまいます。
「おいていかないで」「私を一人にしないで」恥ずかしくて言えない言葉。
代わりにその想いを込める様に、魔女は感情を吐き出しました。
「……本当! 飛鳥はわがままばかり!」
「うん……」
「昔からそうよ! 私が静かに読書をしたい時も、話しかけてくるし!」
「うん……」
「一人でいたい時でもいつも側にくる!」
「そうね……」
「私がバカにされると、自分の事じゃないくせに、いつも勝手に怒るし!」
「ごめんなさい……」
「自分勝手よ……あなたが嫌われたら、どうするのよ……」
「私が許せなかったの……」
「いつも、いつもいつもいつも!! 飛鳥は私を振り回すんだから!!」
「そんな私でも……あなたは私のわがままをいつも聞いてくれた。嬉しかったわ」
「……私も……私も本当は、飛鳥に頼られて嬉しかった……逃げる私を追って、旅に誘いに来てくれて、嬉しかった……大好きなあなたと、一緒に旅が出来て……本当に、楽しかった……」
「私も、あなたと旅が出来てすごく楽しかったわ」
魔女は握りしめた拳を涙で濡らしながら、ぐちゃぐちゃに濡れた顔で飛鳥を見て、言います。
「そんなあなたの頼みを、断れるわけ……ないじゃないっ……!」
「ありがとう玲……やっぱり玲は、私の最高の親友ね」
それから一年、魔女と飛鳥は昔を振り返るように様々な土地や国を巡ります。
雪が降る寒い冬には家の中で共に読書をし。
色とりどりな花が咲く春には、暖かな日差しを浴びながら舞い散る桜を。
日差しが強い暑い夏には、風鈴と蝉の声を聞きながらおしゃべりを。
黄金色の稲穂が輝く秋には、金木犀の香りを楽しみ、真っ赤に染まった紅葉を見ました。
一年の旅を終えた後、飛鳥は家族の元へと帰っていきます。
そして――
その年の冬、飛鳥は、眠るように穏やかに息を引き取りました。
大切な人に囲まれ、満足した顔で、幸せそうに……。
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