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第一章
第2話『転校初日・上』
「守結姉今日のお弁当のおかず何入れてくれたのー!?」
「それは秘密でーす。お昼までのお楽しみってことで、色んな妄想してお腹空かせてくださーいっ」
「私も気になりますが、守結姉それでは罰ゲームですよ!」
横で会話に花が咲いてる最中、僕はいつもの風景にほくそ笑み、兄貴はツッコミを入れては微笑している。
月日は一年が十二ヵ月ある中の、五月の一週目。
辺りにはこれから同じ学び舎に通うことになる、自分達同様の制服に身を包んだ少年少女。
藍色を主色とし、紫色の線が上衿・衿刻み・下衿に線が入っている。
ワイシャツは薄桃色で、組み合わせて花紫色や黒のカーディガン、濃藍色のベストを着ている。
散りゆく桜たちと相まって、浮き目立ちしないデザインとなっている。
目の前に広がるは一本道、キャッチボールが間で出来そうなほど幅広く、絨毯の様に敷き詰められた赤煉瓦道。
これは学園の敷地内に足を踏み込んだことを意味し、もうすぐ校門に辿り着く。
両脇には桜並木、風に揺られてひらりひらりと舞い散る花びら。
木々をちらりと見てみると、まちまちに残る花弁からは枝部分が剥き出しになり、数週間前まで満開の桜木だったという面影が薄っすらと残っている。
――ふと、視界に違和感を捉え、視線を桜並木から進行方向へと移すと、そこには1人の男性。
開かれた校門の壁側に体重を預けて寄りかかっている。片手には一枚の用紙、もう片手はポケットに突っ込んでいる。
その男性は、上下黒いスーツで身を固め、服の上からでも分かるくらい痩せ型で一般成人男性より高身長に見える。
視界の端にその人を捉えたまま、足を止めることなく校門を跨ごうとしたときだった。
「あー、キミたち、ちょっと待ってもらってもいいかな」
「――なんのようですか」
唐突にかけられた言葉に足を止め、警戒の色を見せながら口を開いたのは守結姉だった。
その行動を見て一同の足が止め、返事はすぐに返ってきた。
「ああ、ごめんごめん。警戒しないでほしい、僕は怪しい者じゃないんだ」
「怪しい人はみんなそう言いますけどね」
「まずは、話を聞いてほしい。キミたちが、楠城兄妹で合ってるよね? 逸真君、守結君、志信君、楓君に椿君」
「はい、合ってます」
この問いに答えるは兄貴。
一歩前に出て、僕たち兄妹を背に隠すように立ち位置を変えた。
兄貴と守結姉の脳内には、目の前の男性が完全に『不審者』、という像が思い浮かび上がっていたに違いない。
その男性は、こちらの顔と用紙を交互に照らし合わせ、確認を終えるやそのまま会話を続けた。
「あ、ごめんごめん。唐突にこんな質問されたら、誰だって警戒するよね……申し訳ない。順番が逆だったね。えーっと、まずは軽い自己紹介をさせてもらってもいいかな。僕はここ、カザルミリア学園に勤務している教師で、海原泰斗です」
と言いながら軽い感じで首を垂れている。
不潔とまではいかないけど、ヨレヨレで清潔感とは程遠いような黒髪。不精髭の痕すらなく剃っているのであろうその肌は荒れてもなく、細丸眼鏡から覗く瞳にも生気が宿っている。
言葉を交わし対面している今も、煙草や珈琲の匂い一つすらしない。その点は正直かなり好印象だ。ただ、その着崩したワイシャツと緩められたネクタイを除いては。
「そうだったんですね。これは失礼しました」
兄貴の対応を見てから、僕たちはまばらなタイミングで「よろしくお願いします」と挨拶を返し、頭を下げ会釈をした。
冷徹なのかそれとも喜怒哀楽の表現が下手なのか、気分の抑揚を感じられないその喋り方で海原先生は、
「そうそう僕は、これからは志信君の担任になるんで、よろしくね。ここで立ち話しててもなんだし、細かいことは校内で説明するから移動しようか」
その言葉に従い僕たちは校内へと足を進めた。
「それは秘密でーす。お昼までのお楽しみってことで、色んな妄想してお腹空かせてくださーいっ」
「私も気になりますが、守結姉それでは罰ゲームですよ!」
横で会話に花が咲いてる最中、僕はいつもの風景にほくそ笑み、兄貴はツッコミを入れては微笑している。
月日は一年が十二ヵ月ある中の、五月の一週目。
辺りにはこれから同じ学び舎に通うことになる、自分達同様の制服に身を包んだ少年少女。
藍色を主色とし、紫色の線が上衿・衿刻み・下衿に線が入っている。
ワイシャツは薄桃色で、組み合わせて花紫色や黒のカーディガン、濃藍色のベストを着ている。
散りゆく桜たちと相まって、浮き目立ちしないデザインとなっている。
目の前に広がるは一本道、キャッチボールが間で出来そうなほど幅広く、絨毯の様に敷き詰められた赤煉瓦道。
これは学園の敷地内に足を踏み込んだことを意味し、もうすぐ校門に辿り着く。
両脇には桜並木、風に揺られてひらりひらりと舞い散る花びら。
木々をちらりと見てみると、まちまちに残る花弁からは枝部分が剥き出しになり、数週間前まで満開の桜木だったという面影が薄っすらと残っている。
――ふと、視界に違和感を捉え、視線を桜並木から進行方向へと移すと、そこには1人の男性。
開かれた校門の壁側に体重を預けて寄りかかっている。片手には一枚の用紙、もう片手はポケットに突っ込んでいる。
その男性は、上下黒いスーツで身を固め、服の上からでも分かるくらい痩せ型で一般成人男性より高身長に見える。
視界の端にその人を捉えたまま、足を止めることなく校門を跨ごうとしたときだった。
「あー、キミたち、ちょっと待ってもらってもいいかな」
「――なんのようですか」
唐突にかけられた言葉に足を止め、警戒の色を見せながら口を開いたのは守結姉だった。
その行動を見て一同の足が止め、返事はすぐに返ってきた。
「ああ、ごめんごめん。警戒しないでほしい、僕は怪しい者じゃないんだ」
「怪しい人はみんなそう言いますけどね」
「まずは、話を聞いてほしい。キミたちが、楠城兄妹で合ってるよね? 逸真君、守結君、志信君、楓君に椿君」
「はい、合ってます」
この問いに答えるは兄貴。
一歩前に出て、僕たち兄妹を背に隠すように立ち位置を変えた。
兄貴と守結姉の脳内には、目の前の男性が完全に『不審者』、という像が思い浮かび上がっていたに違いない。
その男性は、こちらの顔と用紙を交互に照らし合わせ、確認を終えるやそのまま会話を続けた。
「あ、ごめんごめん。唐突にこんな質問されたら、誰だって警戒するよね……申し訳ない。順番が逆だったね。えーっと、まずは軽い自己紹介をさせてもらってもいいかな。僕はここ、カザルミリア学園に勤務している教師で、海原泰斗です」
と言いながら軽い感じで首を垂れている。
不潔とまではいかないけど、ヨレヨレで清潔感とは程遠いような黒髪。不精髭の痕すらなく剃っているのであろうその肌は荒れてもなく、細丸眼鏡から覗く瞳にも生気が宿っている。
言葉を交わし対面している今も、煙草や珈琲の匂い一つすらしない。その点は正直かなり好印象だ。ただ、その着崩したワイシャツと緩められたネクタイを除いては。
「そうだったんですね。これは失礼しました」
兄貴の対応を見てから、僕たちはまばらなタイミングで「よろしくお願いします」と挨拶を返し、頭を下げ会釈をした。
冷徹なのかそれとも喜怒哀楽の表現が下手なのか、気分の抑揚を感じられないその喋り方で海原先生は、
「そうそう僕は、これからは志信君の担任になるんで、よろしくね。ここで立ち話しててもなんだし、細かいことは校内で説明するから移動しようか」
その言葉に従い僕たちは校内へと足を進めた。
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