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第九章

第63話『朝食会にて試験内容の発表』

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 昨日の大広間に辿り着いて、指定された席へと向かう。
 僕たちがパーティの中では最後で、みんなは既に集まっていた。

 料理も、テーブルクロスが敷かれた長机に並べ終わっている。
 あまりの豪勢っぷりに、座ってすぐによだれが溢れそうになってしまう。
 普段目の当たりにしている守結の家庭的な料理もさることながら、ホテルの料理は新鮮さがある。
 あれ、そういえば守結の姿は……。

 他のクラスのパーティについて考えていなかった。
 少し不審だけれど、辺りを見渡す……各机に視線を送るも、それらしき姿は見当たらない。
 どうやら守結は申請に間に合わなかったようだ。
 あれ、もしかして、二学年って僕たちのクラス以外はいないのかな……?

「じゃあみんな揃ったし、食べよっか」

 箸を持ってまだかまだかと待つ結月は、美咲の言葉を合図にがっつき始めた。隣に座る一樹も同じく。
 僕も右手に橋を装備して、目の前のご飯を口に運ぶ。
 豪勢といっても、冷静に考えるとそこまでではないのかもしれない。ほくほくのご飯に、サラダがまるでベッドようになっている上にはペッパーのかかった目玉焼き。魚のと野菜が入る汁物。さっぱりとしたオレンジジュース。
 極めつけは、ご飯のおかずとなる小皿に入った品々。ご飯と汁物はおかわり自由と言うのだから、きっと一樹は何杯かはおかわりするに違いない。

 僕も普段はおかわりしないけれど、今日だけはしてしまいそうだ。
 光崎さんがお腹一杯に食べても良いって言っていたから、尚更。

 彩夏なんかも「これ美味しい、これも美味しい」と箸を進めている。



 食べること数分、案の定一樹は三杯目のおかわりを取りに席を立っている。
 だけど、それとして同じく、例の台に光崎さんが登壇した。

「皆の皆ーおはよーう! 美味しい朝食を楽しんでいると思うのだが、話を聴いてほしい」

 談笑が湧きたつ会場から、一気に静寂へとかえった。

「さてさて、この場に居る全員が待ちに待った今回の試験について発表するよ。――ずばり、精神干渉に対する抵抗力だ!! とか、少し難しく言ってるけれど、つまりは幻惑スキルからの離脱までの時間を測定するよ」

 そう来たか。
 昨日部屋で3人で話した情報がここで生きることになるとは。

「そんでもって、追加で最重要事項を話しておくよ。本試験には制限時間が設けられ、その時間を越えてしまった場合、それは合否に関わってくる。言ってしまえば、ここを通過できなかったパーティは、最終試験へ進めずリタイアってことだね」

 静寂を貫き通していた会場が、一気にざわめき出す。

「じゃあここからは詳細を話していくよ。脱落者が出たパーティは、その時点で参加規程人数を満たせなくなる。なんてことになってしまえば、あまりにも厳しすぎるから、パーティメンバーの半数から不合格者が出た場合のみリタイアの対象となる」

 確かに、脱落者が出ただけで連帯責任というのはあまりに酷すぎる。
 あの詳細は妥当なのかもしれない。
 だけど……。

「そう、8人中4人がクリアできなかった場合、本日中に帰宅してもらうことになる、ということだ」

 ……試験内容の詳細によるけれど、酷なことには変わりない。

「じゃあじゃあ、ここからは内容の詳細について話していくよ。といっても、そんなに難しくないからね~。えっとね、数人ずつ入場してもらって個人を分ける敷居がある部屋に入る。そしてら、スキルを先生にかけてもらう。後は、制限時間三十分以内に目を覚まし、挙手するだけ。簡単でしょ?」

 聴けばシンプルではあるけれど、それをクリアするのは容易くない。

「今のを聞いて気づいた人も居ると思うけど、先生が使うスキルなんだよね。ボクたちが使うスキルとは全然違う。それに、対象者は参加生徒全員だよ」

 僕はそれが気になった。
 生徒が全員参加するのは当たり前だけれど、普段からスキルをしようするダークメイジはどうなんだろうか。
 知ったところでどうにもならないけれど、対策はできるのだろうか。
 もしも何かあるのならば……。

 そんな考察虚しく、光崎さんはサラっと言葉にしてしまった。

「ボクからみんなにヒントッ! 幻覚スキルは、簡単に言ってしまえば、対象者の記憶に干渉してくるものだ。モンスター相手には、モンスター同士が敵同士って認識にしてしまえるけれど、対人では違う。基本的には嫌な記憶を掘り出してきて、精神的に攻撃を仕掛ける。だから、場合によってはかけられた側が最終的に気絶して戦闘不能にもなってしまう。しかも、スキル使用者が熟練者であればその効果はかなりなものだ。だけど、対策もある。それは、精神的な強さ――つまり、心の強さ、だ」

 強靭な精神を持つ人間は、精神的な攻撃にも屈しない。ということか。

「信じるもの、信じる人。目指す憧れ、達成したい目標。そんな、信念のようなものがある人間っていうのは、今回の試験を必ず合格できると断言しようじゃないか。だから自分を信じてあげてほしい。――最後に、忠告だ。心に闇を抱えているもの、深い悲しみを抱えているもの、傷を負っているもの、目標がないもの、叶えたいことがないもの。そういう人は、今回の試験、要注意だ。――以上、後は担当の先生がみんなのところに行くからね~!」

 そう言い終えるやすぐに、段から飛び降りて自分の席へ駆け戻る光崎さん。

 そして、会場にも賑わいが戻り、話声も広がっていく。
 僕たちも同じく。

「まさか、だな」
「少し驚いたよ。早速活かせそうだね」
「うん……」

 一樹も桐吾も同じことを考えていたようだ。

「幻覚スキルって確か、デバフスキルだよね」

 近くに居る美咲からの質問。

「うん。正直、次の試験は今まで通りの未知の領域。簡単に合格できないと思う」
「だよね。でも、生徒会長はあんな敵に塩を送る様な真似をして良かったのかな」
「確かにね。ダークメイジは人気なクラスでもないから、自分たちだけの有利にできだろうに」
「あれじゃない。上級生、しかも自分も使えるスキルだから、攻略できるなら攻略してみろって意味もあるんじゃないかな」
「うげっ、強気すぎ。まあでも、あの生徒会長ならそう言ってるのが思い浮かぶってのもまた、ね」

 叶の指摘に、彩夏が乗る。

 でも、叶の言っていることは僕も理解できる。
 光崎さんの幻覚スキルを初めて肌で体験して、直接話したことがあるからこそ。

「だけど、今回の試験はかなり難しそうだよね。個人戦のようで、パーティ戦。誰かがって期待より、みんなで乗り越えないといけないんだもんね。それに――」

 美咲は途中で言葉を切った。
 それは、みんなの目線が移動し、西鳩先生が来たからだ。

「お食事、お話し中ごめんなさい。さきほど生徒会長から説明があった通り、この後のスケジュールを伝えに来ました。この後は、部屋に戻って着替え終えたら、再度ここへ集合、後は呼ばれるのを待って順次試験という感じです。ちなみに、上級生から先に試験が行られるので、皆さんには話し合う時間があります。是非、有効活用してみてください」

 みんな声を揃え「はい」と返事。

「といっても、試験開始まで二時間はありますので、ご飯も話し合いも焦らないで大丈夫ですので。では、以上です」

 西鳩先生は一礼後、門崎さんたちの方へ向かって行く。

「じゃあみんな、後で対策会議をしよう」

 残りのご飯を食べ終え、僕たちは部屋へ戻った。
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