若年最強の陰陽師はノリで婚約した女神様から服従を迫られている

星井ゆの花

文字の大きさ
13 / 55
第1章

第12話 新人神様への手紙

しおりを挟む
「スイレン……!」
「スグルどの……会いたかった……!」

 スイレンと再会し、永遠の服従を誓う口づけを交わす。どうやら、スイレンは他の家族と違って1巡目での記憶を失っていないようだ。

「ところで、スイレン……その鎖骨のあたりにあるホクロ……。もしかして」
 そのあとは、うまく言葉が続かなかった。死に戻りを行ってまで、オレはあの惨劇からようやく逃れた。

「うむ、スグルどのの想像通り……これはあの晩に受けた傷跡。実は、スグルどのも含めて家神一族もわたしも……本当の意味では凛堂ルリ子に殺されてはいない。これは、その名残……」
 スイレンが、鎖骨のあたりにある小さなホクロの部分にそっと手を添える。確か、怪我をする以前はその場所にホクロはなかったはず。
 そして、もしかすると肉体的には、あの日の晩の肉体がそのまま死に戻ったような言い方だ。

「えっ……? ほとんど瀕死の状態だったし、みんなやられてしまったんだと思ってたよ」
「1度でも、三途の川渡りをしてしまったら、同じ肉体から死に戻ることは難しい。だから、凛堂ルリ子は子孫であるルリどのの身体を乗っ取って復活した。そのように、私は考えている」
 真剣な眼差しで、あの晩の事件を検討するスイレンは思っていたよりも冷静で少しホッとする。

「でもさ、ちょっと違和感を感じる部分もあるんだ。例えば、この山のふもとにある自宅……あの晩までは確かにオレたち一族が暮らしていたはずなのに、今じゃ15年前から廃屋扱いだよ」
「それは、時間を巻き戻す際に、あの自宅の修復作業を行うことが出来なかったから……だと思う。なんせ、スグルどのは家神になったばかり……術師としては優秀でも神としてのチカラはまだ使いこなせていないはず」

「あっ……そういえば、オレ自身が家の神である家神になったんだっけ。でも、まるっきり変化を感じないや。どちらかっていうと、猫のミミちゃんが人間形態を維持できるようになったことの方がすごく感じたな。ミミちゃんって以前は、スイレンの霊力に頼った状態じゃないと人間になれなかっただろう?」
「確かにミミちゃんは、私の霊力を使えば1巡目でも人間化出来たけれど……普段はほとんど普通の猫だったような……。ふむ、もしかするとすでにスグルどののチカラが少しずつ働いているのかも」

 池の前でいつまでも立ち話も良くないと思い、そのまま家神荘の庭に移動。庭園スペースは、かなり昔に閉園となっていたはずだが、季節の花々に彩られておりまるで長年健在だったかのように錯覚してしまいそうだ。

 すでに、庭園に慣れているのか、住まいとしてる様子の小鳥のさえずりが聞こえる。
 庭園の花を眺めながら、ベンチに座って今後について考えを練る。


 * * *


「……なぁスイレン……。もう、今回の時間巻き戻しで、家神一族の滅亡の呪いはクリアしたんだよな?」
「……スグルどの、スグルどのはどう思われる? まだ、嫌な予感のようなものはあるか。場合によっては、然るべき対処をしないと……」

 質問を質問で返されてしまい、返答に困る。口調から察するに、いわゆる神様モードに入っているのだろう。
 確か以前にスイレンは、職業の理由で『のじゃロリ』口調になっているだけだと話していた。どちらかというと、神としての責務を果たしている間は、それっぽい言葉使いになっている気がする。
 神様歴が長いのはスイレンの方だし、婚約者といえども先輩の意見を聞いた方が良いだろう。

「嫌な予感は……あるよ。だって、ほら……今日まではまだ夏休みだけど明日から学校だろう? 万が一、まだ呪いが解けていなくて……もう1度事故ったら……」
「……また、ルリどのが事故に遭い先祖に身体を乗っ取られて……か。ふむ……まるで、凛堂ルリ子の復活を偶然を装って起こしているような……」

 しばらくの間、お互い沈黙を貫いた。いつになく真剣なスイレン、もしかしたら何か思い当たることがあるのかもしれない。

「スグルどの……落石事故の起きた山……持ち主は、だれじゃ?」
「……えっ。落石事故の山の持ち主って……ああ、この辺りは確か私有地が多いけど、家神一族の土地じゃないのは確かだよ。調べれば、分かるかもしれないけど……」
「あまり、考えたくなかったけれど、この呪いを仕掛けた犯人は……。その落石事故が起きた山の土地に住む……もしくは土地を占拠している【神】である可能性が高い。そもそも、落石が起こるような呪いが降りかかっているのなら、そこの土地の神が止めれば良いのじゃ。なのに、何もしなかった……或いは最悪、出来ないような状況に追い込まれたか……」

 犯人は呪いでも、自然現象でもなく……神?
 ずいぶんとスケールが大きい話だがスイレンも女神だし、一応オレも今日から家の神【家神】だ。神やら何やらが、派閥争いで敵に回ることだってあるだろう。

「よく考えてみたら、スイレンの加護が破られて一族が壊滅に追い込まれるなんて、相当なレベルの呪いだ……。レンゲ族と家神一族に怨みを持っている、あやかしがやったんだとばかり思っていたけど」
「怨み……ただの神ではなく、祟り神の一種やもしれない。と、なるとその山に眠る神は、すでに祟り神に吸収されてしまったか……」

「だけど、神様相手に戦うだなんて、一体どうやって対抗するんだ? あやかし相手に戦うなら分かるけど、いきなり神相手って……。術式で喚び出す式神たちだって、敵が神なんじゃ言うことを聞いてくれるかどうか……」
「対抗手段なら……ない事はない。神にはそれぞれ得意ジャンルがあるのじゃ。家内安全の神、縁結びの神、財運の神、山を守る神……。お互いの活動拠点を棲み分けながら、上手くやっていかなくては……。そして、それに背いた時には……上からの制裁が……」
 何やら、神様たちにも組織のような団体があるような言い方だ。

「上からの……神様にも何かしらの序列みたいなのが、あるってこと?」
「まぁ結構な縦社会、およびブラック企業な一面も……その派閥によっては」
「ちょ……ブラックって……一体。あれっでもさ、オレってまだそういう組織に加入してないぞ。一応、今日から神様なのに……」

 チリンチリーン! オレたちの会話を盗み聞きしていたかのごとく良いタイミングで、突如として何処からか軽快な鈴の音が鳴る。
 見上げると、青空から舞い降りたのは一羽のカラスだった。よく見ると、脚が三本ある……俗に言うヤタガラスという種族のカラスだろう。

 伝書鳩ならぬ伝書カラスのようだ。

「家神スグル様、神としてデビューされたそうですね! おめでとうございます。さっそくギルドよりお手紙が届いています! パンフレットを同封しておりますので、ご参考になさって下さい」
「えっ……はぁ、どうもありがとう」
「神々のギルドは、新人のご加入を心よりお待ち申しておりますのでっ! では、ご武運を……」

 当然のように、小型パンフレット入りの手紙を渡して、颯爽と飛び去る伝書ヤタガラス。なかなか、カラスなのに忙しそうだ……。
 来客の鈴の音に反応した猫耳御庭番メイドのミミが、慌てて何処からともなく現れた。『にゃーん、認め印を忘れているのにゃぁ』とカラスを呼び止めている。

「なあスイレン……この神々のギルドっていうのがもしかして……」
 手紙には、新人の神様に向けて激励のメッセージとギルド加入の案内が。
 ギルド……神が入っている組織の1つってギルドなのか?
「うむ……やはり、その方法しかないのか」

「えっと……スイレン……?」
「スグルどの、もしかしたら……この事件、解決できるやもしれん。さっそく行こう……異界のギルドへ!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...