若年最強の陰陽師はノリで婚約した女神様から服従を迫られている

星井ゆの花

文字の大きさ
14 / 55
第1章

第13話 神々のギルドへようこそ!

しおりを挟む

『拝啓、家神スグル様。この度は、神様デビューおめでとうございます! つきましては、ご加入可能となっているギルドのパンフレットと申し込み用紙を同封致します。詳しくは、異界神域の総合案内館まで!』

 ずいぶん砕けた雰囲気の文面だが、伝書ヤタガラスがパタパタ飛んで運んでくれた、れっきとした神々を仕切るギルド連盟からの案内状だ。
 手紙の用紙も小洒落た花の模様入りの和紙を使用しており、それなりにお金がかかってそうである。

「スイレン、もしかしてこのギルドってヤツに加入すれば、相手が神様でも戦えるようになるってこと?」
「うむ、例え相手が祟り神と言えどもその土地にとって重要な神であれば、退治などもっての他となる。だが、上の組織……つまり【神々のギルド】から、勅命のクエストとして討伐任務をこなす分には、なんら問題ない」
「結構、そういう形式が重要な業界なんだ、神様って……」
「うむ。まずは、今日中にどこかしらのギルドに加入して、凛堂ルリ子の復活とそれを目論む祟り神の暗躍を食い止めなくては……」

 スイレンと無事再会を果たしたオレは、息をつく暇もなく異界へ向かうことになった。さっそく、『神々のギルド』への登録手続きを済ませるため、ひいては滅亡の呪いを成就しようとする【何か】と戦う足がかりを作るためである。

「みゃあ、異界へとお出かけですかにゃ? 先ほどの伝書ヤタガラスさんからお話は伺いましたにゃ。微力ながら、このミミもおふたりのおチカラになるためご一緒しますのにゃ!」
「えっ? ミミちゃんも異界のギルドへ一緒に行ってくれるの?」
「おお、ミミちゃん。心強い、猫耳御庭番メイドは、猫神の中でも隠密行動が得意な職業でな。スグルどののサポートメンバーとしてギルドへ登録すれば、自由に偵察活動が出来るようになるぞ」

 そういえば、7代前の家神家にも猫耳御庭番がボディガードとして活躍していた。敵の素性もまだ分からない状態で、戦うわけだし小回りが利く御庭番の存在は貴重だろう。
「へぇ、ミミちゃんって結構、ハイスペックな神様だったんだ。じゃあ、よろしく頼むよ」
「にゃあっ、頑張りますにゃ」

 異界へと転移するメンバーは家の神である家神になりたてのオレ、婚約者である睡蓮の女神スイレン、そして我が家神一族お抱えの猫耳御庭番メイドのミミちゃんだ。

「バトル時の役割分担を考えると、オレが異界術攻撃と補助。スイレンが攻撃術と回復術。ミミちゃんが忍術と直接攻撃……なかなかバランスの取れたメンバー構成かも」
「そうじゃな、それにギルドに所属すれば他の神々からお守りやお札を授かって一時的に協力をしてもらう事も出来る。異界術師としてあやかしとだけ戦っていた時に比べると、臨機応変な攻撃方法が選べるようになるぞ」

 家神荘の再奥の部屋から、異界へワープする儀式台へと進む。転移希望先を記したお札を貼ってワープするのだが、ギルドの案内状には『神域(しんいき)』と記されていた。

「えっと……いつもだったら、人間が異界に入るための『通常門』を開くところだけど。今回から、いわゆる『神域門』にワープ出来るのか? オレ、最近まで人間だったのに……大丈夫かな」
 まだ、自分自身が神となっている実感が湧かないオレとしては、転移先が神々の所属区域であることに若干の緊張を覚える。

「自身を持って、スグルどの。もう、スグルどのは今日から立派な家の神……『家神』じゃ。それに、何より私の大切な夫なんだから……」
「おっ……と、えっとスイレン……」

 スイレンが優しく励ますようにオレの手をそっと握る。繋いだ手からは、体温が伝わってきて温かい。じかにスイレンの生きている証拠が伝わるようで、思わず胸がドキドキする。以前は、スイレンと手を繋いでも睡蓮鉢に手を入れたような冷たさがあった。
 きっと、当時はオレが人間でスイレンが女神様だから、種族間の見えない霊的な壁のようなものがあったのだろう。

 けれど、今はオレも神の端くれだ……。まだ神としてデビューしたてだが、スイレンと本当の意味で【対等】の存在としてやっていけるはず。
 お互いの気持ちを確かめるように、キュッと手を絡めあう。そうだ……オレは神として、スイレンと共に生きるんだ。

 オレの神として生きる決意を察知したように、ガランゴロンと大きな鈴の音が鳴り響き異界への到着を知らせる。

『家神荘よりお越しの神様、3名。神域門への入場を許可致します!」


 * * *


 初めて足を踏み入れる神域は、道行く人ならぬ道行く神様で大にぎわい。ちょうど、お祭り時期の神社仏閣の門前通りのように露店が立ち並び食事や買い物を楽しむ神様の姿も。

「はぁ……それにしても神様だらけだ。ミミちゃんみたいな猫神様だけじゃなく、キツネ耳のお稲荷様や白蛇様も……。オレ、本当に、神域に来ちゃったんだなぁ」
「ふふっスグルどのも、今日からはその『神様』の1人なのじゃがな。ではさっそく神域のギルド連盟本部へ申込書を提出しに行こう。この手続きさえ済ませれば取り敢えずは、クエスト受理が出来るようになるぞ」
「ああ、感心している場合じゃなかった。早く手続きをしないと……」

 キョロキョロと辺りを見渡すが、なんせ道も四方八方に分かれており神様も多く、なかなかギルド本部の館が見つからない。
 すると、ミミちゃんが猫耳忍法でギルド本部の場所を探り始めた。

「猫耳忍法、ナビゲートの術! みゃあ、あっちがギルドの本部みたいですにゃっ!」
 これが、猫耳御庭番メイドの偵察スキルか。まるでカーナビかルート案内アプリのごとく、的確にルートを弾き出すミミちゃん。ナビゲートの術のおかげで、無事に本部へ到着。

 本部は、明治時代初期の文明開化を彷彿とさせる巨大な西洋風のお屋敷。そして、敷地の奥には小高い丘があり、五重の塔がそびえ立っている。おそらく、あの五重塔がこのギルドの霊力の基礎なのだろう。

 神社仏閣へ参拝する時と同じように、門の前で頭を下げ一礼をしてから、敷地内へ。神の霊力が強い空間なのかピリッとしたオーラが肌で感じ取られる。屋敷のドアは来客者が多いためか、最初から解放されており新人神様向けの案内ボードも準備されていた。

【新人神様はこちらへ……本日来訪予定者……家神スグル様】

「あれっなんかすでに、案内ボードにオレの名前が書いてあるぞ。今日、来るってなんで分かったんだろう。神域に入った時点で情報がキャッチされているのかな?」
「ふふっおそらく、ここには見通しの神様がおる様子。歓迎されていて良かったな、スグルどの」
「えっ? ああ、うん。そういうことなのかも。よし、受付はあっちだな……」

 キツネ耳巫女の受付嬢のカウンターには、新人受付窓口のボードが。おそらく、あのカウンターで申し込み手続きを済ませるのだろう。

「すいません……今日から神様デビューしたものなんですが……。申し込み書の受付はここでいいんですよね?」
「コンっ家神スグル様ですね。お待ちしておりました。パートナーの方やサポートメンバーの方もご一緒に椅子へ……」
 まるで、不動産かスマホの契約かといった雰囲気で、書類をどんどん書かされてみるみる手続きが進む。

「家神傑(いえがみすぐる)様の申し込み書、確認。メンバーリーダー家神スグル様、パートナー女神スイレン様、サポートメンバーミミ様、全員登録。確かに申し込みを受理しました。今日は仮登録になりますので、仮のメンバーズカードの発行となります……コンッ。正式所属となるギルドが決定次第、所属ギルドの公式メンバーズカードを発行致しますので……」
「あっはい、ありがとうございます。ところで、所属ギルドって基本的には自分で選ぶんですか?」

 随分とたくさんのギルドがこの神域に点在しているようだが、今日中にすべてを回ることは難しいだろう。明日に備えて、出来れば仮所属先を早めに決めたいところだ。

「ええ、ですが神様の能力や目的に合わせた特性によって大まかな派閥は決まっています。金運や財運のご利益系の神様なら金運財運系ギルド、縁結びの神様なら縁結び系ギルドと言った風に……。例えば、私のようなキツネ族ですと、いくつかあるお稲荷様系のギルドの1つに所属しながら受付の仕事をする……といった活動方法ですコン」

 キツネの神様であるお稲荷様は、生まれつき種族がはっきりしているので所属先を決めやすそうなイメージだ。それでも、キツネ系の神様の派閥間から選択しなくてはいけないらしい。神様の世界は奥が深いのだと実感する。

「はぁ……凄い。リストを見るだけでも100以上派閥があるな。まるで、神社仏閣に参拝するときにどんなご利益があるかで参拝先が決まるみたいな……」
「そういう捉え方でも、構わないと思いますコン。家神様の場合は、家の神として繁栄をもたらすためのご利益も期待できますし、一族の災い除けを行うことも可能です」

「ふむ、スグルどの。ここは、明日の対策で災い除けを専門とするギルドを紹介してもらうのはどうじゃ?」
 一緒にギルドのリストを閲覧していたスイレンが、いくつかある災い除けの神様が所属するギルドをピックアップし始めた。
「ああ、それじゃあここの候補から絞って……」


【家神スグル……こっちに来い】


 まるで、頭に直接働きかけるような低い声が響き渡る。男の声ではあるが、オレの遠いご先祖様である天の声とも違う。

「……えっ誰か、なんか言ったか?」
「いや……スグルどの。もしや誰かに、呼ばれて……」


【祟り神と遣り合いたいんだろう? 他のギルドじゃ無理だぜ……こっちに来いよ……家神スグル】


 ふと、足下を見るとコロコロと糸巻きが何処かへと案内するかのごとく、転がってきた。

 頭の中に呼びかけてくる謎の声……そして糸が導く先にあるものとは?
 それは、オレの運命を変えるギルドからのメッセージなのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...