若年最強の陰陽師はノリで婚約した女神様から服従を迫られている

星井ゆの花

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第1章

第14話 入会予定ギルドの情報を収集せよ

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「この糸巻き……何だろう。それに、何処からともなく声が聞こえてこっちに来いって。オレ、誰かに呼ばれている?」
 さっきまでの、自分の意思を超えて響いてきた声に動揺が隠せない。頭を抑えながらも、息を整えて霊的な波動を整える。

「にゃにゃっ! 声が聞こえるって、もしかしてテレパシーか何かですかニャン?」
 ミミちゃんの指摘通り、これはテレパシーの一種なのだろうか? オレの意識の中に向けて、どこかにいる現実の声が境界線から響くような不思議な感覚だ。

「ふむ、これは……もしかすると、スグルどののことを先に知っている誰かが、直接ギルドに誘ってきたのか……」

 候補に上がっていたギルドの名簿を一旦受付嬢に返却し、足もとに転がってきた糸巻きを手に取る。サイズはやや大きめで、白い糸がグルグルと巻かれており白い蛇を彷彿とさせる。

「白い糸がたくさんですにゃ」
「糸巻き、白い糸……十中八九、白蛇様系なのだろうが……ふむ、ひとえに白蛇様と言ってもかなりの種類の白蛇様がおるし……」

 あの声の主……白蛇様系の神様である事は推測できるものの、肝心な名前が分からないとは……。いや、そもそも神域に来て初日の若造が、この神域ギルドの事情通なわけないし。オレが疑問に思う感情は新人的には普通なのだろう。


「スグルどの、その声から何かしらの特徴は掴めそうか? 例えば、年齢とか雰囲気的な霊力とか……」
「えっそうだなぁ。いわゆる、大人の男って感じで頼り甲斐のありそうな低音のイケボってヤツ? どちらかっていうと、頭が良さそうな落ち着いた雰囲気の……でもチョイ悪そうな……」
 オレが声の主の特徴をあげていくと、受付嬢の顔が青ざめていく。

「コン……まさか、あのギルドから直接、お声がかかるとは……。家神様ってすごいですぅ。しかも、おそらくギルドマスターから直接テレパシーで話しかけられたなんて。将来有望、トップレベルの神様になれること間違いなしですよっ」
「えっ? この糸巻きのギルドって、そんなに凄いところなの?」
 まさかのトップギルドの予感に、嬉しいと思いつつ。新人であるオレが所属しても平気なのか……という不安もある。

「はい、いわゆる境界線と呼ばれる異界と現世の境目の部分のケガレや祟りを払うことを専門にしています。ただ、入会試験が難しいので、見込みがある人しか門を叩かなくなっているのです」
「つまり、お声がかかったからって、きちんと入会出来るかは試験の結果次第ってことか……」
「ええ、初心者ランクのギルドなら試験なしで入会出来ますが、流石にこのくらいのランクのギルドに入るとなると、バトル試験が必須です。普通は、新人の神様にはそうそうお話が来ないギルドですが……」

 よく考えてみれば、縁結びや金運のように人生が上向きになるように活動しているならともかく。バトルがメインのギルドとなれば、入会時に試験は必須か。
 命がけの戦いに参加するのを前提とすると、実力派しか向こうだって採用出来ないだろう。万が一ってこともあるし……。

「にゃあ、スグル様は元々は若年最強の異界術師と呼ばれていたくらいですにゃっ。人間の頃から最強と謳われていたのだから、神様デビューしたからには、さらなる上を目指す運命なのかもしれませんにゃっ」

 ノリノリで、さらなる上を目指したがるミミちゃん。意外とアグレッシブな野心を抱いた猫である。
 だが、よく考えてみれば、ミミちゃんは白猫として暮らしていた頃からネズミ捕りや鳥を追いかけることを趣味としていた。清楚なイメージの白猫であるものの、いわゆる、おてんばな一面のある猫なのだろう。

「さらなる上って……。でもまぁ確かに、今回の事件を解決するには境界線が妨げられる呪いをなくすスキルを持っている神様に頼るのがいいだろうし」
「頼れそうなところが向こうから声をかけてきたか……うん、決まりじゃな。データを集めてから試験の対策を練りたいところだけれど」
 スイレンが、ちらりと受付嬢の様子を伺う。データ自体公開されていないのだから、ヒントをもらうことも難しい気がするが……。

「申し訳ありませんコンッ。このギルドに関しては、データの公開が禁止されています。上級ランクのギルドの一部は誰かからの紹介かギルドマスターからの直接スカウト以外、入会方法がありませんので……」
「ほう……では守秘義務に反しない程度のアドバイスはないかのう? この規約を読む限りは、試験の内容と直接関わらない程度のアドバイスは可能であるとされておるようじゃが……」
 意外と食い下がるスイレン、さすがは異界で権威があるとされているレンゲ族の女神様。

「えっと……そうですね……白蛇様系のギルドである事は確かなので。白蛇様への参拝時のように、何かの手土産を持参してお供えすると安心ですコン!」
「ほう……では、どのような手土産がオススメか? 白蛇様系の神様にも好みがいろいろあるじゃろう? 特に試験官を勤めるものの好みとか……」
 さらに食い下がるのか……いや、もしかしたらこの業界は、お供え物が重要なのかもしれない。神社仏閣への参拝時にご利益があるか決まるのは、お供え物が神様の好みに合うかでご利益の出方が違うそうだし……。

「ねぇ、オレからも頼むよ。違反にならない情報なら何でも良いからさ」
「にゃあ、お願いしますにゃ」

「うぅ……えっと……」
 これ以上の、情報収集は無理か……。だが、気がつくとスイレンの姿が見えない……。
 一体どこに……と思ったら、向かいの売店に立ち寄っているようだ。素早く何かを注文して手に半透明の白い袋を下げて戻ってきた。

「受付嬢どの……私の婚約者であるスグルどののこと、よろしくお願い申し上げます」

 スッ……と差し出されたその半透明の白い袋の中には、いなり寿司弁当のパックがどっさり。
 しかも、高級いなり寿司セットのようで、いなり寿司の中身は白米以外に五目ちらしやワサビごはんなど飽きのこないラインナップとなっている……らしい。

「こっコンッ! これは、憧れの超高級いなり寿司弁当……これを私に……良いんですかコン?」
「ふふっお近づきの印じゃ……。ところで、規約に違反しない程度に情報提供を……」

「コーンッ! 実はそのギルドは、ギルドマスターが表に出る事はほとんどなくて、妹さんが試験官を務めているのですコン! 妹さんは、ゴスロリファッションが大好きな人間でいうと女子中学生ほどの年齢で……手土産は今はやりの卵たっぷりプリンが大好物らしくって……」
 尻尾をパタパタとさせながら、規約に反しない限りの情報をどんどん提供する受付嬢。
「一生ついていくコンッスイレン様ぁ」
「うふふ、ほれこの黄金色のいなり寿司の他にも、自宅用キツネうどんのセットを買っているのじゃが……」
「こ、コーン! 感動ですぅ」

 優しく微笑むスイレンが『買収完了……』と、小さく呟いた気がしたが、聞こえないふりをした。

 受付嬢からもたらされた規約に違反しない程度の方法によると……。

その1、実はギルドマスターは常に不在に近い状態か、姿を見たものはほとんどない。
 その2、試験官を務めているのは妹さんで年齢は女子中学生くらいでゴスロリファッションが趣味。
 その3、妹さんの好物は卵プリンで、しかも異界で流行している卵たっぷりめのプリンが大好き……。

 何とも意外な情報だ……あのイケボのマスターが試験官ではなく妹さんがテストをするとは……。それなのに、試験突破が難解?

 深く考えても仕方がない。ゴスロリ少女への手土産を買ったら……いよいよ試験に挑むとするかっ!

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