若年最強の陰陽師はノリで婚約した女神様から服従を迫られている

星井ゆの花

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第1章

第16話 『様』を付けろ『ミシャグジ様』と呼べ!

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「んふー、とっても良い卵プリンだったわ! ご馳走様、じゃあさっくりと入会試験を終わらせて……」
「きゅいきゅいーん」

 殆どのプリンを平らげてご満悦のゴスロリJCと大蛇。おそらく、そんなにハードな入会試験にはならないだろう……と思いきや突然ストップがかかる。

【今回は、それでは困る。手を抜くな】

「えっこの声は、オレをここのギルドに誘ってきた男の人のイケメンボイス……」
「なにっ……スグルどのは、この声の主に導かれたということじゃな」
「にゃあ……なんだか迫力にある声ですにゃ。猫の本能でぶるっと震えがきますにゃ……」

 どこからともなく声が聞こえてきた。今回は、オレの頭の中だけではなくこの場に居合わせている他の面々にも聞こえているらしい。しかも、ミミちゃんは猫の本能的に震えている……?

「えっお兄ちゃん? どうして……。だって、家神スグルは若年最強の異界術師って言われていた人よ。そんなに、本気で試験をしなくたって……実力は多分充分……」
 初対面では、オレの実力を試すだのなんだのいっていたが、JCはすでに異界術師としての実績だけでオレの実力を認めていたようだ。

【じゃあ、どうしてそいつは死に戻っている? 何故、我々の一族のチカラが必要だと思う?】

 痛いところを突かれた気がする……そうだ、オレは異界術師でありながら甦った凛堂ルリ子の魂に手も足も出なかった。霊力を封じ込められたからとはいえ、緊急時の対応が甘かったのだろう。

「うっもしかして、お兄ちゃんが自ら出て入会試験をするの? まだ、家神スグルは神に転身したばかりなのよ?」
【お供え物はありがたくもらってもいいが、それとこれとは話を別に考えろ。でないと、お前もそのうち痛い目にあうぞ……】
「お兄ちゃん……うぅごめんなさい」
【別にお前が憎くて説教しているわけじゃない、ただ公私混同するなと注意しているのだ。妹よ……】

 まさかとは思うが、妹さんがお供え物に気を取られて手を抜いた試験を行おうとしたことをちょっぴり怒っている?

「スグルどのっ! 術式陣から、黒い影が……あれがもしかすると、ギルドマスターどのなのでは?」
 スイレンの指差す先には、確かに黒いモヤのような影が煙のように湧き出て来ている。

「来るのか……。殆どの人が会った事がないと噂のギルドマスターが……」

 ズシャァアアアアアッ!

 床から存在しないはずの大きな岩が発生し、ひび割れの部分から大蛇に乗った1人の若い男が現れた。

 白く長い髪、ぎらりとした赤い瞳、透き通るような青白い肌、そして艶やかな赤い唇。バランスのとれた高身長でスタイルもかなりのもの。
 女性が喜びそうなヴィジュアルの良いイケメンだが、それ以上に恐怖を感じさせる『何か』を彼は持っている。

「……やはり、ここのギルドマスターは例のあの神様であったか。出来れば、腕試しとはいえ、勝負を挑みたくないレベルのお人であるがこれも運命か……」
「スイレン、例のあの神様って……知っているのか……?」
「知っているも何も、境界領域で権威のある神として神域では知らないものはいない超有名人じゃ……。ただ、名前の呼び方に決まりがあってな。どうりで妹どのが通称名のJCで通していると思った」

 名前の呼び方に決まりがある神様……まてよ、どこかで聞いたことがある。
 偉大なその神の名は呼び捨てにすることは決して許されない。呼び捨てにすれば祟られる……だが、彼ほど境界線を守るチカラに長けた神はいないであろう。

 その名も……。

「おっと、家神一族の新人……神になりたてとはいえ、オレの名前を気軽に呼ぶのは危険だぜ」
 ある有名な神の名が思いつき、思わず口に出しそうになるが、ご本人から止められる。

「えっじゃあギルドマスター……オレはあなたの事をどうやって呼べば……」
「ふっ……そうだな……。じゃあ、口上がてら名乗らせてもらうぜ。よく聞いとけよ。オレの名前を呼ぶときは、『様』をつけろ……『ミシャグジ様』と呼べっ! ってな」

 キシャァアアアアアッ!
 大蛇や白蛇が呼応するように、鳴き叫ぶ。自らの一族の長に敬意を示しているようだ。

「ミシャグジ様……そうか、赤い口のシャック様。ジャクシ様とも呼ばれる境界の守り神。誰よりもチカラが強く、祟り神さえも退ける最強中の最強……あなたが、このギルドのマスター……!」
「みゃぁああ……まさか、あの有名な神様のギルドだったとは……。スイレン様は気づいてたんですかにゃ? やっぱり、ふるふるですにゃ」
「うむ、何と無くは……。祟り神に対抗が出来て、現世と異界との境界線を守れる神なんてそうそう数はおらんからのう」

「ふふっ今回は自分から私達の正体をバラしちゃったわね、お兄ちゃん。ちなみに、私の通称名JCも女子中学生の略じゃなくて『ジャクシ一族』の省略形よ」
 妹さんとしては、種族名を明かす気がなかったようだが今回は特別みたいだ。

「さて、おしゃべりはここまでだ。こっからはオレがお前たちの霊力を引き上げるためのテストをしてやる。うまく3人でバランスを取って、オレが投げる岩を投げ返すか砕いてみろ。それが出来れば例の落石事故を防ぐチカラを一時的に授けてやるよ……うぉらぁっ始めるぜっ」

 ドガァアアアアン!

 間髪入れずに、大蛇たちの攻撃とともに大岩がオレたちに向かって多数落ちてくる。

「くっ出でよ、式神防魔の陣! 術式、滅裂術!」
「補助術、発動!」
「猫耳忍法、引っ掻きの術!」

 キュィイイインッ! ガード役の式神を札で呼び出し大岩を砕くために滅裂術を発動させる。スイレンの補助とミミちゃんのサポート攻撃でなんとか粉砕。
 がらがらがらがら……。術が効いたのか、音を立てて大岩が崩れ去る……が、数分で大岩は元の状態に戻ってしまう。

「元に戻ったっ? せっかく破壊したのに……おっと、それに大蛇の攻撃まで」
「スグルどの、つまり何度大岩を砕いても繰り返し蘇る……。これが、境界にかけられた呪いの法則なのでは? 大岩を操る根本の術がどこにかけられているのか見抜かなくては!」
 スイレンからの鋭い指摘に、思わずハッとする。オレは、術師でありながら物理的な大岩の方に気を取られていて呪いを解除する方に気がいってなかった。
「みゃあ、もう一撃きますのにゃっ」

 ドガァアアアアン!
 仕方なく、もう一撃も術で防ぎながら粉砕し……と一向に片付かない。

「はぁはぁ……。確かにこれじゃ埒があかないな……それで3人で協力して解決しろっていってたのか」

「まぁそういう事! 家神スグル君、キミは人間時代からいわゆるトップ術師として突っ走ってきたから俗に言う連携攻撃に不慣れなわけ」
 大蛇の上から見下ろすマスターミシャグジ様は余裕の表情で、一体どうやって術を操っているのかさえ悟らせない。

「そ、そういえば……ずっと単独任務が多かったっけ……」
「多分、キミの実力についていける人間はそうそういなかっただろうしさ。だが、今は違う……同じ神として適材適所、チームワークで戦わなくちゃいけない。さぁもう一撃……次は仲間を信用して呪いの解除に専念しなっ」

 ドガァアアアアン!
 まさかのもう一撃に思わず同じ術で防ぎたくなるのをグッと堪えて呪い解除の透視に専念する。
 目の前には大岩が今にもオレ自身を叩き潰そうと襲いかかってくるが……。
「レンゲ流、滅裂術!」
「にゃあ、忍法切り裂き手裏剣!」
 ガシャァアアアン!
 スイレンとミミちゃんの攻撃で、大岩を砕き……その瞬間、一瞬だが岩のかけらの中に黒いお札のようなものがちらりと感じ取られた。あれが呪いの根本か……。
「見えたっ! 封魔術、対式! 我の祈りに応えて呪いの因果を解除せよっ」

 ぐぉおおおおん! ぷしゅぅうううっ。

 大岩は結局呪いが作り出したものだったのか、ごく普通の床に戻っていた。
「やったのか……」
「いや、惜しい……もう少しっ」

 グアシャーン! 左右の壁の奥に小さく埋め込まれた小石に発動型の術がかけられていたようだ。素早くスイレンが補助術で防御壁を作り事なきを得る。
「くっ! 対魔、破壊式……呪いを解除せよっ!」

 からん……コロコロコロ……。

 大岩にかけられていたお札は見えたものの、左右の壁に埋め込まれた呪いは小さすぎて察知が遅れた。しかし、これが呪いなのか?

「お兄ちゃん、もう充分なんじゃない? さすが攻撃術だけは、得意なだけあってお見事だったわよ。あなたに必要なチカラは、ほんの小さな呪いを察知する洞察スキル札みたいね」
 パチパチと拍手をしながら、一応は試験官の役割に戻るゴスロリJC。

「洞察スキル札……小さなものを見落としているってことかな?」
「まぁそう言うことになるな。人間っていうのは、ほんの小さな恨みから大きな呪いを作り出すことがある。だから、気がつかない小さな花でも呪いの根が深くなる前に引っこ抜いておくんだよ……その呪いが花を咲かせる前にな。ほれ、お前さんに必要な札だ……持っていけっ!」

 気がつかない小さな花……まるでリンドウのようだ。

「ありがとうございます……ミジャグジ様。えっと、もしかして入会試験は……」
「ああ、一応は合格だ。お前に足りないのは、疑う心だろうな。洞察スキルを徹底的に磨くことだ。課題は山ほどあるから、神としてやれるように鍛えてやるよ」

「ほ、本当ですかっ!」
「おめでとう、スグルどの」
「にゃあ、私は1巡目の記憶は曖昧ですが……これで事故も防げそうですにゃ」

 受け取った境界を守る洞察の札には、赤い糸と糸巻きのマーク。そして、優しく手を差しだすゴスロリJC。

「ようこそ、私たちの絶対境界ギルドへ!」

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