Re:二周目の公爵令嬢〜王子様と勇者様、どちらが運命の相手ですの?〜

星井ゆの花(星里有乃)

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第2章 二周目

第05話 因果の未来予想図

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 真冬の知恵の輪大会は、進学優遇措置を得るために予想よりも多くの子供達で賑わっていました。特に中学受験を控えた高学年の生徒からすると、魔力判定を兼ねているこの大会での成績が将来を決めると言って良いのでしょう。

 会場は広いコロシアムを解放し、各部門のコーナーに分かれて行われます。数人ずつのグループごとに競技を行うが、得点の出し方はブロックに左右されない。知恵の輪を解くスピードと、その『輪』に溜まった魔力数値の総合点が最も高い者が優勝です。

「はぁあっビックリ! 進学がかかっているだけあって、随分と参加者が多いのね」
「うん。でも、だいたいの参加者は最初の数値判定でランクが確定しちゃうから、三回戦目くらいで人数はかなり減るよ」

 いつもふわふわした印象のフィヨルドの目に、しっかりとした光が宿っていて思わずドキリとする。

(フィヨルド、今日は特に真剣なのね。わたくしも頑張るけど、彼は上位の成績を納めないと留学しづらくなっちゃうし)

『大会参加者は、それぞれ学年に合ったブロックに分かれてください。高学年の部では午前十時から予選、午後十三時から本戦です』

「あっ。大会参加者へのアナウンスですわ。わたくしの参加する低学年の部は、あれっ……高学年の本戦終了後に行うんですの?」
「低学年の部は、それほど難しい知恵の輪もないし、スペシャルイベント扱いなんだよ。取り敢えずは、オレの戦いを見て参考にしてよ」
「分かりました! わたくし、フィヨルドのこと応援しますわねっ」


 * * *


 順調に決勝まで登り詰めたフィヨルドは、魔法力の高い者にしか解くことが出来ない知恵の輪に挑む。

「賢者の知識よ、われの声に答えたまえっ」

 午後の決勝の部、コロシアムの中心でハイランク魔力の持ち主と認定された数人が、知恵の輪を前に呪文を唱える。フィヨルドの手から魔法の光が溢れ、難解な何重構造の知恵の輪をみごとに解いてしまったのです。

『お見事! 優勝は、フィヨルド・リヒテンベルク君ですっ』

 わぁっという歓声と共に、フィヨルドの優勝が決まる。一周目の世界線ではジークが覆面天才少年として、優勝したはずのこの大会。

(お見事でしたわフィヨルド。けど、これで本当にこれまでのルートとは、将来が変わってしまった気がしますわ)

 嬉しい反面、これからどんどん別のルートに進むのだと思うと、わたくしの中に一抹の不安が込み上げてきました。

「優勝、おめでとうございます。フィヨルド」
「ありがとうヒルデ。さあ、もうすぐ君の番だよ」
「うっっ! そういえば」

 さっきまですっかり忘れていましたが、わたくしは今回観戦者ではなく参加者として来場していたのです。

 緊張しながら低学年の部のステージに上がると、ミニタイプの『ゴルディアスの結び目』が全員に配られました。

「えっと、これは……? 参加賞ですわよね、この知恵の輪」

 まさか、大会が終了する前に目的のゴルディアスの結び目を手にするとは思いもよらず。係委員の方に、ちょっとだけこの知恵の輪の意図を聞くことにしました。

「低学年の部は、全員位配られる参加賞を使って順位を競います。結果が出たら、その知恵の輪は持ち帰っていいですよ。伝説の結び目と違って、一番簡単なタイプだから安心してください」

 にこやかに説明して、時計を気にしながら立ち去っていく係委員のお姉さん。どうやら、もうすぐ低学年の部開始のようです。

(うう……気軽なつもりで。リラックスして……)

『では、みなさん。呪文詠唱……スタートッ!』

 開始の合図と共に、1ヶ月前からずっと練習していた呪文を唱え……。ゴルディアスの結び目を模した知恵の輪にそっと魔力を込めると。

 ふわっと宙に、浮かんだゴルディアスの結び目から、あのタイムリープ時と同じ黒い渦が見え始めて。

 わたくしは神の力により、因果の原因となる未来図を透視させられてしまうのです。
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