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第2章 二周目
第16話 ロッジで明かす雨降りのクエスト
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「では、雷雲の渓流採取クエスト。チーム『ヒルデと図書委員会』、助っ人は勇者ジークさんで。確かに受理いたしました。お気をつけて」
フィヨルドの身体を早く治すために、そして呪いから解放するために、わたくしは図書委員会のメンバー、助っ人にジークを招いて難関採取クエストに向かう。まずは、学園のワープゲートを潜り、雷雲の渓流管理の館へ。
ギルドからの紹介状をゲート管理間の事務員に手渡して、迷子になった時のためにメンバーリストを制作してもらう。こう言うところは、日常の登山みたいな雰囲気。
「このゲート管理館が、クエストの合流地点になります。万が一、日が暮れる前の帰還が厳しい場合や悪天候に見舞われた場合には、ベースキャンプスポットを魔法で作るか、ロッジで休むように」
「分かりました!」
管理の館を出ると、壮大な山々と滝が溢れる渓流。秩序として広がる東の地域の空気に、緊張感が走る。
「ついに、来てしまいましたわ。無事に薬草が見つかると良いのだけど」
上空では巨大怪鳥が声を上げながら羽ばたき、目の前の河原ではミニドラゴンがパタパタと駆けていく。
「ギュイッギュイイイッ」
「キシャァアアアッキュイキュイ」
「ひっ! なんだ、ただの鳴き声みたいですわね」
装備品の杖をギュッと握り、自分自身を鼓舞するが、クエスト慣れしていないせいか、身震いしてしまう。緊張しているのがバレているのか、ジークがわたくしにひとこと。
「いいか、ヒルデ。キミは魔力数値こそは優れているけど、冒険者としての経験不足は気になるところだ。モンスターを発見したら、戦闘せずに僕の後ろに隠れるように。目標はあくまでも採取だから、戦う必要はないよ」
「うぅ。分かっていますわ」
まるで、子供をあやすような口調でわたくしの頭をそっと撫でる。図書委員会の仲間が見ている前で、ちょっとだけ恥ずかしい。
すると、一緒に付き添ってくれる図書委員会のメンバーであるルーナも、似たようなアドバイスをしてくれる。
「確かに、ヒルデ嬢はそれほど戦闘に慣れていない。しかし、魔力を使って特定のアイテムを探索する能力には長けている。ここは、採取とボディーガードに役割分担して、クエストを成功させよう」
「賛成です……では私達は、こっちで採取と見張りをしますから。ヒルデさんとジークさんは、向こうの反応が強いポイントをお願いします」
冒険者レベルの最も高いジークは初級ランクのわたくしと、中級ランクのルーナ、マリカ、リゼットの図書委員会3人組の二手に分かれて採取開始。
「せんぱーい、無理しちゃダメですよ。雨が降ったら、それぞれコテージかテントでで休憩ですからね」
「ええ、気をつけますわっ」
河川を渡り、岩を越えて、普段はしないようなアウトドアに四苦八苦のわたくし。見たことのないような虫に驚いたり、野生の鹿の影にびっくりしたりと、ドギマギしながらの採取作業。
「きゃっ。なんだ、鹿さんですのね。えぇと……あらっ? 何となく、この黄色い花が例の薬草かしら」
「うん。多分、そうだろうね。念のため、似た系統の花を幾らかもらっていこう」
二手に分かれてから一時間ほど探索魔法で反応を調べて、ようやくそれらしき花を発見。綺麗な淡い黄色の花は、雌しべと雄しべが鮮やかな青色で、図鑑の薬草にそっくりだった。
万が一、毒草だと危険なため手袋をして採取を行う。一瞬……大きな影がわたくしの後ろに立った気がする。突然、視界が暗くなり何かの音が聞こえた気がするが。
ザシュッ!
「ぎゃおおおおおんっ!」
わたくしが振り向くより早く、ジークが素早く剣で魔物を追い払い、驚いた魔物はすぐさま逃げ帰った。
「えっ……今のは一体? ジークが倒したんですの」
「うん。倒したと言うより、追い払っただけだよ。無駄にモンスターを殺して、余計な敵を増やすとよくないしね。熊モンスターが、食糧を探していたようだ。長居すると危険だし、そろそろ合流地点に戻ろう」
* * *
随分と渓流の奥まで来てしまったため、合流地点まで再び一時間以上歩かなくてはいけない。ジークは、こんなに大変なクエストを、しょっちゅう行っているのだろうか。
(わたくしのせいで、あのSランク回復魔法使いのプラムと訣別してしまったこと。後悔、していないのかしら?)
「んっ? ヒルデには、ちょっときつい道のりだったか。その先にコテージがあるみたいだから少し、休んで行こう。あれ……参ったな、雨か」
モヤモヤとした気持ちを抱えてしまい、無言で草むらを歩いているとジークが休憩を提案してきた。ちょうど雨が降るタイミングと合ってしまい、下手すると今日はこのまま泊まりになりそう。どうしよう?
ポツポツ、ポツポツ、ザー!
最初はポツポツ振りだった雨は、あっという間に激しい雨の変化していった。山の天気は変わりやすいと言うけれど、まさかこんなに激しいとは。
「ロッジはすぐそこだ、急いでっ」
わたくしがはぐれないように、ジークが手を強く握って引っ張ってくれる。結局、雨に降られてビシャビシャの服では、クエスト続行は難しく。
「すみません、管理者の方は……いないのか。仕方がない、今日はここで泊まることになるけど……いいよね」
水も滴るいい男とはよく言ったもので、雨に濡れた髪を拭うジークはとてもカッコ良くて。思わず、見惚れてしまうほど。
(はっ……そういえば。ジークとロッジで、2人っきり。どうしよう……緊張してしまう。いえいえ、フィヨルドを助けるためのクエストだもの。これくらい乗り切らなくてはっ!)
天候の悪戯から、わたくしとジークは、管理者のいないフリーのロッジで一晩明かすことになってしまったのです。
フィヨルドの身体を早く治すために、そして呪いから解放するために、わたくしは図書委員会のメンバー、助っ人にジークを招いて難関採取クエストに向かう。まずは、学園のワープゲートを潜り、雷雲の渓流管理の館へ。
ギルドからの紹介状をゲート管理間の事務員に手渡して、迷子になった時のためにメンバーリストを制作してもらう。こう言うところは、日常の登山みたいな雰囲気。
「このゲート管理館が、クエストの合流地点になります。万が一、日が暮れる前の帰還が厳しい場合や悪天候に見舞われた場合には、ベースキャンプスポットを魔法で作るか、ロッジで休むように」
「分かりました!」
管理の館を出ると、壮大な山々と滝が溢れる渓流。秩序として広がる東の地域の空気に、緊張感が走る。
「ついに、来てしまいましたわ。無事に薬草が見つかると良いのだけど」
上空では巨大怪鳥が声を上げながら羽ばたき、目の前の河原ではミニドラゴンがパタパタと駆けていく。
「ギュイッギュイイイッ」
「キシャァアアアッキュイキュイ」
「ひっ! なんだ、ただの鳴き声みたいですわね」
装備品の杖をギュッと握り、自分自身を鼓舞するが、クエスト慣れしていないせいか、身震いしてしまう。緊張しているのがバレているのか、ジークがわたくしにひとこと。
「いいか、ヒルデ。キミは魔力数値こそは優れているけど、冒険者としての経験不足は気になるところだ。モンスターを発見したら、戦闘せずに僕の後ろに隠れるように。目標はあくまでも採取だから、戦う必要はないよ」
「うぅ。分かっていますわ」
まるで、子供をあやすような口調でわたくしの頭をそっと撫でる。図書委員会の仲間が見ている前で、ちょっとだけ恥ずかしい。
すると、一緒に付き添ってくれる図書委員会のメンバーであるルーナも、似たようなアドバイスをしてくれる。
「確かに、ヒルデ嬢はそれほど戦闘に慣れていない。しかし、魔力を使って特定のアイテムを探索する能力には長けている。ここは、採取とボディーガードに役割分担して、クエストを成功させよう」
「賛成です……では私達は、こっちで採取と見張りをしますから。ヒルデさんとジークさんは、向こうの反応が強いポイントをお願いします」
冒険者レベルの最も高いジークは初級ランクのわたくしと、中級ランクのルーナ、マリカ、リゼットの図書委員会3人組の二手に分かれて採取開始。
「せんぱーい、無理しちゃダメですよ。雨が降ったら、それぞれコテージかテントでで休憩ですからね」
「ええ、気をつけますわっ」
河川を渡り、岩を越えて、普段はしないようなアウトドアに四苦八苦のわたくし。見たことのないような虫に驚いたり、野生の鹿の影にびっくりしたりと、ドギマギしながらの採取作業。
「きゃっ。なんだ、鹿さんですのね。えぇと……あらっ? 何となく、この黄色い花が例の薬草かしら」
「うん。多分、そうだろうね。念のため、似た系統の花を幾らかもらっていこう」
二手に分かれてから一時間ほど探索魔法で反応を調べて、ようやくそれらしき花を発見。綺麗な淡い黄色の花は、雌しべと雄しべが鮮やかな青色で、図鑑の薬草にそっくりだった。
万が一、毒草だと危険なため手袋をして採取を行う。一瞬……大きな影がわたくしの後ろに立った気がする。突然、視界が暗くなり何かの音が聞こえた気がするが。
ザシュッ!
「ぎゃおおおおおんっ!」
わたくしが振り向くより早く、ジークが素早く剣で魔物を追い払い、驚いた魔物はすぐさま逃げ帰った。
「えっ……今のは一体? ジークが倒したんですの」
「うん。倒したと言うより、追い払っただけだよ。無駄にモンスターを殺して、余計な敵を増やすとよくないしね。熊モンスターが、食糧を探していたようだ。長居すると危険だし、そろそろ合流地点に戻ろう」
* * *
随分と渓流の奥まで来てしまったため、合流地点まで再び一時間以上歩かなくてはいけない。ジークは、こんなに大変なクエストを、しょっちゅう行っているのだろうか。
(わたくしのせいで、あのSランク回復魔法使いのプラムと訣別してしまったこと。後悔、していないのかしら?)
「んっ? ヒルデには、ちょっときつい道のりだったか。その先にコテージがあるみたいだから少し、休んで行こう。あれ……参ったな、雨か」
モヤモヤとした気持ちを抱えてしまい、無言で草むらを歩いているとジークが休憩を提案してきた。ちょうど雨が降るタイミングと合ってしまい、下手すると今日はこのまま泊まりになりそう。どうしよう?
ポツポツ、ポツポツ、ザー!
最初はポツポツ振りだった雨は、あっという間に激しい雨の変化していった。山の天気は変わりやすいと言うけれど、まさかこんなに激しいとは。
「ロッジはすぐそこだ、急いでっ」
わたくしがはぐれないように、ジークが手を強く握って引っ張ってくれる。結局、雨に降られてビシャビシャの服では、クエスト続行は難しく。
「すみません、管理者の方は……いないのか。仕方がない、今日はここで泊まることになるけど……いいよね」
水も滴るいい男とはよく言ったもので、雨に濡れた髪を拭うジークはとてもカッコ良くて。思わず、見惚れてしまうほど。
(はっ……そういえば。ジークとロッジで、2人っきり。どうしよう……緊張してしまう。いえいえ、フィヨルドを助けるためのクエストだもの。これくらい乗り切らなくてはっ!)
天候の悪戯から、わたくしとジークは、管理者のいないフリーのロッジで一晩明かすことになってしまったのです。
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