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第10夜 メッセージカード
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オレはリー店長の言っていた中国魔法の蠱毒(こどく)についてもっと調べたいと思った……が、このコテージ内にはインターネットがない。
今時の宿屋はどんなに小さくてもインターネットサービスが設置されているのに……。
レストランや売店が敷地内にあるという話だけど、このコテージエリアに外部の情報を調べる場所はあるのだろうか?
「千夜さん、今日はどのような予定にされますか?」
精霊セラが今日のスケジュールを聞いてきた……と言ってもコテージエリアに移動範囲は制限されているし。
「キュー! マスター千夜、朝ごはん食べたいですキュ」
ルルの小さな身体からお腹の鳴る音が聞こえる。
「そういえばレストランがあるんだっけ? 行ってみるか?」
オレ達は情報収集も兼ねてコテージエリアの中心部にあるレストランに向かった。
外に出ると朝の爽やかな日差しが降り注ぐ……日本と違うのはかなりの高温という点だが、別荘地な事もあり木陰が多く、たくさんの樹木が日除けの役割を果たしてくれている。
コテージエリアは緑豊かで砂漠の近い境界国とは思えない景色である。 整備された小道を歩いていると時折自転車に乗って移動する人にすれ違う……コテージに宿泊している一般客のようだ。
あまりにも平和な風景で昨晩の殺人事件が嘘のようだ。
さらに歩くと海が見えるらしい……が海へと向かう人々とは別の道に入る。 徒歩15分ほどの場所に小洒落た緑色の屋根の建物が見えた。 あれがレストランのようだ。 レストランの前をロシアンブルー風の猫使い魔がウロウロしている……主人を探しているのだろうか?
「キュー! きのうの猫がいるキュ!」
きのうの猫……ルルが検査の時に引っ掻かれたという猫……あのロシアンブルーだったのか。 てっきりシャルロットの猫にやられたと思っていたが。
「にゃーん」
猫は何かを訴えているのか、オレの足元にすり寄ってきた。 甘えてくる仕草は可愛らしいがレストランの中に入りたいので相手にしてやれない。
「ごめんよ、オレ達レストランに入りたいんだ。どいてくれよ」
オレ達は猫をすり抜けてレストランに入った。 カランカランと音が鳴り、ウェイトレスがやってきた。
「いらっしゃいませ! 4名様と使い魔3匹ですね? 禁煙席と喫煙席がありますがどちらにされますか?」
4名? 3匹?
「ああ、ボクタバコは吸わないから禁煙席でいいよ」
聞き覚えのある声。
「ではご案内します」
「にゃーん」「にゃーん」
猫がハモっている気がする。
「やあ、おはよう千夜君」
オレが振り返ると、見覚えのある金髪碧眼の2人がにこやかな表情で立っていた。
「千夜さん、おはようございます。昨晩は冷えて大変でしたわ」
「ランディ? シャルロット! おはよう」
昨日はメガネだったランディだが、今日はコンタクトなのかメガネをかけていない……前髪も昨日は整髪料であげてデコ出ししていたのが今日は素髪なのかサラサラしている……そういえばまだ学生だというし、ずいぶん若い外見だったんだな。 本人には悪いが、線の細さも相まって余計女の人のように見えてしまう。
そしてシャルロットに似ている……身内だとひと目で分かる容姿だ。
一歩間違えると美人姉妹に見えてしまう2人だが、オレはその事には触れずに極力自然に会話することにした。
「ランディ、昨日とずいぶん雰囲気違うな」
「昨日は正式な場だったから、貴族らしくしろと言われて正装していたんだ。 普段はこの容姿だよ。メガネはかけたりかけなかったりするけど……他のヤツらも案外普段と昨日は雰囲気が違うヤツも多いんじゃないか? これだからパーティーはキライなんだ」
どういうわけだかランディ達と相席になったオレ達。ルルが引っ掻かれたという魔法猫はランディの猫のようだ。
窓際の景色のいい席に案内される。
朝食はモーニングセットをそれぞれ注文した。パン、オムライス、ソーセージ、ベーコン、スープ、サラダ、ジャム、ヨーグルト、オレンジジュース、コーヒー……シンプルで定番っぽいメニューだ。
コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐり、眠気覚ましにぴったりだ。
早速食事を始めると、ランディとシャルロットが、オレのことをじっと見ている気がして落ち着かない。
「えっと……オレ、なんか変?」
ランディ達は苦笑いして
「日本人は白米に納豆で毎朝食べるって聞いていたんだが、パンで大丈夫なのか?」
「私は揚げパンとおかゆだと聞いていましたわ」
イギリス人から見た日本人ってそんなイメージなのか……。
「納豆を毎朝食べる人もいるかもしれないけど、オレの家は毎朝パンだよ。父さんと二人暮らしだからね。手間は掛けないし、それに揚げパンとおかゆは中国のメニューだよ。最近の中国人はシリアルを朝食べる人も増えてるらしいよ」
これも国際交流だ。 取り敢えずランディ達の間違った日本の知識を訂正する。
「そうでしたの! いろいろ勘違いしていたんですのね」
「知らないってこわいよな」
シャルロットとランディがうんうん感心している……勉強になったとかなんだとか…。
「千夜さん、日本に戻ったら私、千夜さんに朝食作ります!」
セラがいきなり朝食作ります宣言をし始めた。ちょっとムッとするシャルロット……何故?
2人の間にピリピリとした空気が流れる。
「……はは、シャルロットお前も料理できるようにしないとな……まだ若いしお前もこれからだよ。なあ千夜君? 」
ランディがご機嫌ナナメのシャルロットをなだめている。 何故オレに話を振るんだ?
「……別に私……千夜さんのことなんて……」
心なしかシャルロットの頬が赤い。
?
「ランディ? シャルロットどうしたんだ?」
オレは隣の席のランディに小声で聞いてみる。
「それが、ウチの一族のお偉いさんが初代境界ランプの持ち主がウチの一族に婿に来てくれたら……て昨日のことで言い始めたらしくてね……シャルロットはキミのこと意識してるんだよ……まあ、まだ子供だから大目に見てくれよ」
シャルロットもそういう事を意識する年頃になった証拠だと、ランディはくすくす笑ってあまり深く考えていないようだった。
まだ子供って言ってもオレとシャルロットって2歳しか年変わらないんだけどな。
そうこうしていると、ウェイトレスがオレ達のテーブルにメッセージカードを届けに来た。
「みなさんにメッセージが届いております」
『犯人を見つけたのでA3番コテージにいらしてください。 ユミル』
犯人を見つけたって……オレ達は顔を見合わせた。
どうやらこれからユミル少年のコテージに向かうことになりそうだ。
今時の宿屋はどんなに小さくてもインターネットサービスが設置されているのに……。
レストランや売店が敷地内にあるという話だけど、このコテージエリアに外部の情報を調べる場所はあるのだろうか?
「千夜さん、今日はどのような予定にされますか?」
精霊セラが今日のスケジュールを聞いてきた……と言ってもコテージエリアに移動範囲は制限されているし。
「キュー! マスター千夜、朝ごはん食べたいですキュ」
ルルの小さな身体からお腹の鳴る音が聞こえる。
「そういえばレストランがあるんだっけ? 行ってみるか?」
オレ達は情報収集も兼ねてコテージエリアの中心部にあるレストランに向かった。
外に出ると朝の爽やかな日差しが降り注ぐ……日本と違うのはかなりの高温という点だが、別荘地な事もあり木陰が多く、たくさんの樹木が日除けの役割を果たしてくれている。
コテージエリアは緑豊かで砂漠の近い境界国とは思えない景色である。 整備された小道を歩いていると時折自転車に乗って移動する人にすれ違う……コテージに宿泊している一般客のようだ。
あまりにも平和な風景で昨晩の殺人事件が嘘のようだ。
さらに歩くと海が見えるらしい……が海へと向かう人々とは別の道に入る。 徒歩15分ほどの場所に小洒落た緑色の屋根の建物が見えた。 あれがレストランのようだ。 レストランの前をロシアンブルー風の猫使い魔がウロウロしている……主人を探しているのだろうか?
「キュー! きのうの猫がいるキュ!」
きのうの猫……ルルが検査の時に引っ掻かれたという猫……あのロシアンブルーだったのか。 てっきりシャルロットの猫にやられたと思っていたが。
「にゃーん」
猫は何かを訴えているのか、オレの足元にすり寄ってきた。 甘えてくる仕草は可愛らしいがレストランの中に入りたいので相手にしてやれない。
「ごめんよ、オレ達レストランに入りたいんだ。どいてくれよ」
オレ達は猫をすり抜けてレストランに入った。 カランカランと音が鳴り、ウェイトレスがやってきた。
「いらっしゃいませ! 4名様と使い魔3匹ですね? 禁煙席と喫煙席がありますがどちらにされますか?」
4名? 3匹?
「ああ、ボクタバコは吸わないから禁煙席でいいよ」
聞き覚えのある声。
「ではご案内します」
「にゃーん」「にゃーん」
猫がハモっている気がする。
「やあ、おはよう千夜君」
オレが振り返ると、見覚えのある金髪碧眼の2人がにこやかな表情で立っていた。
「千夜さん、おはようございます。昨晩は冷えて大変でしたわ」
「ランディ? シャルロット! おはよう」
昨日はメガネだったランディだが、今日はコンタクトなのかメガネをかけていない……前髪も昨日は整髪料であげてデコ出ししていたのが今日は素髪なのかサラサラしている……そういえばまだ学生だというし、ずいぶん若い外見だったんだな。 本人には悪いが、線の細さも相まって余計女の人のように見えてしまう。
そしてシャルロットに似ている……身内だとひと目で分かる容姿だ。
一歩間違えると美人姉妹に見えてしまう2人だが、オレはその事には触れずに極力自然に会話することにした。
「ランディ、昨日とずいぶん雰囲気違うな」
「昨日は正式な場だったから、貴族らしくしろと言われて正装していたんだ。 普段はこの容姿だよ。メガネはかけたりかけなかったりするけど……他のヤツらも案外普段と昨日は雰囲気が違うヤツも多いんじゃないか? これだからパーティーはキライなんだ」
どういうわけだかランディ達と相席になったオレ達。ルルが引っ掻かれたという魔法猫はランディの猫のようだ。
窓際の景色のいい席に案内される。
朝食はモーニングセットをそれぞれ注文した。パン、オムライス、ソーセージ、ベーコン、スープ、サラダ、ジャム、ヨーグルト、オレンジジュース、コーヒー……シンプルで定番っぽいメニューだ。
コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐり、眠気覚ましにぴったりだ。
早速食事を始めると、ランディとシャルロットが、オレのことをじっと見ている気がして落ち着かない。
「えっと……オレ、なんか変?」
ランディ達は苦笑いして
「日本人は白米に納豆で毎朝食べるって聞いていたんだが、パンで大丈夫なのか?」
「私は揚げパンとおかゆだと聞いていましたわ」
イギリス人から見た日本人ってそんなイメージなのか……。
「納豆を毎朝食べる人もいるかもしれないけど、オレの家は毎朝パンだよ。父さんと二人暮らしだからね。手間は掛けないし、それに揚げパンとおかゆは中国のメニューだよ。最近の中国人はシリアルを朝食べる人も増えてるらしいよ」
これも国際交流だ。 取り敢えずランディ達の間違った日本の知識を訂正する。
「そうでしたの! いろいろ勘違いしていたんですのね」
「知らないってこわいよな」
シャルロットとランディがうんうん感心している……勉強になったとかなんだとか…。
「千夜さん、日本に戻ったら私、千夜さんに朝食作ります!」
セラがいきなり朝食作ります宣言をし始めた。ちょっとムッとするシャルロット……何故?
2人の間にピリピリとした空気が流れる。
「……はは、シャルロットお前も料理できるようにしないとな……まだ若いしお前もこれからだよ。なあ千夜君? 」
ランディがご機嫌ナナメのシャルロットをなだめている。 何故オレに話を振るんだ?
「……別に私……千夜さんのことなんて……」
心なしかシャルロットの頬が赤い。
?
「ランディ? シャルロットどうしたんだ?」
オレは隣の席のランディに小声で聞いてみる。
「それが、ウチの一族のお偉いさんが初代境界ランプの持ち主がウチの一族に婿に来てくれたら……て昨日のことで言い始めたらしくてね……シャルロットはキミのこと意識してるんだよ……まあ、まだ子供だから大目に見てくれよ」
シャルロットもそういう事を意識する年頃になった証拠だと、ランディはくすくす笑ってあまり深く考えていないようだった。
まだ子供って言ってもオレとシャルロットって2歳しか年変わらないんだけどな。
そうこうしていると、ウェイトレスがオレ達のテーブルにメッセージカードを届けに来た。
「みなさんにメッセージが届いております」
『犯人を見つけたのでA3番コテージにいらしてください。 ユミル』
犯人を見つけたって……オレ達は顔を見合わせた。
どうやらこれからユミル少年のコテージに向かうことになりそうだ。
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