千夜の一夜な境界ランプ

星井ゆの花

文字の大きさ
11 / 52

第11夜 意外な犯人

しおりを挟む

『犯人を見つけたのでA3番コテージにいらしてください。 ユミル』

オレと精霊セラ、他の境界ランプの持ち主であるランディ、シャルロットらとコテージエリア内のレストランで朝食を取っているとメッセージカードが届けられた。

食事を済ませ、指定されたA3番コテージに行くことになったが……。

「どうなんだろう? 本当にユミル少年は犯人を特定できたのかな? オレの師匠のリー店長は蠱毒(こどく)なんじゃないかって言ってたけど」
オレの疑問にランディは肩をくすませて……
「さあね、でもあの少年はネット魔導師とかいう現代魔導師だし情報収集は一番早いのかもしれないね。 蠱毒(こどく)使いが犯人って線ならボクも昨晩考えたよ。 けど、証拠がないんじゃ犯人を立件しようがない……ユミル少年の情報に期待……かな」
すると
「にゃあん」
と、ランディの肩に乗っているロシアンブルーの魔法猫が相槌をうっているように鳴いた。

オレ達がA3番コテージに向かう途中で、他の境界ランプの持ち主達に出会った。彼らもユミル少年に呼ばれたようだ。

「あら、あなた達もユミル君に招かれたの? 犯人、捕まるといいわね」
言語学を専攻している大学院生のダリアさんだ。 今日はパーティーの時と異なり髪の毛を後ろにひとつで結び、化粧もそんなに濃い感じではない。 グレーのワンピースに黒のカーディガンを羽織り服装もシンプルだ。美人だがいかにもインテリ風で頭の良さそうなオーラを漂わせている。 ランディの言う通りみんなパーティーの時と印象が違うのかも。

「あ~みんなあの少年に呼ばれたのか?  おお、弁護士のたまご君?  何か昨日と雰囲気違うね。実はキミ若かったんだ! そうしてると、線も細くて女子大生みたいだな」
ハハハと豪快にわらいながら、前髪をさげてメガネを外しているランディの事を指差してからかうギタリストのデュアルさん。 だがデュアルさんも今日はスッピンなのか、昨日に比べて男らしい風貌である。 男の人もメイクで変わるんだな……。

「あなた……人のこと言えないわよ、昨日とまるで違うもの。 メイク法をご教授願いたいわ」

「オレ達みたいな職種はビジュアルも芸術のウチなのさ。 ステージを全体で表現しているワケ! 簡単にメイク法を教えられないんだよ」

なんだかんだ言って、ダリアさんとデュアルさんは気が合うようだ。 メイク仲間なのだろうか?
コテージの玄関前で皆顔を見合わせ誰がチャイムを鳴らすのか……といった雰囲気になった時に無言で前に出たのは学者の卵ダリアさんだった。

ダリアさんがユミル少年のコテージのチャイムを鳴らす。
インターホンから『鍵は開いているから入ってください』との声、鍵開けっぱなしなのか……。大胆だな。

部屋に入るとリビングには既に数人、人が集まっていた。 双子美少女踊り子姉妹や悪役風魔法使いアブラカタブルさんの姿もある。 

「これで全員揃ったね!  国王様は仕事で来れないんだって。 残念……ボクの使い魔が集めた情報によると、9番目のランプの持ち主はランプの権利を放棄して国に帰ろうとしたんだって。 そしたら他の2人と揉めて3人は喧嘩別れしてこの人だけが殺された。 とりあえず、画面を見て」

ユミル少年はネット魔導師というだけあってパソコン、スマホ、タブレットなどひととおりはいつも持ち歩いているようだ。このコテージに無線LANを持ち込んでネット環境を整えている。

「これって昨夜の事件の映像? キミ緊急時によく思いついたね。 あのね私が思うには……」
「お姉ちゃん……やめてよ、今大事な話の最中だよ」
双子姉妹の片方がユミル少年に何かを言いかけたが
「双子のお姉さん達黙っててね! 話は後で聞くから!」
と最年少のユミル少年が仕切り始め、彼が用意した動画を大型モニターで見ることになった。

動画はパーティーの平和な時間から停電の瞬間まで暗闇にも対応してくっきりと映っている。
「こんな映像……いつの間に撮っていたんですの?」
シャルロットが驚きの声をあげる。
今流れている動画は紛れもなく昨日の黒魔術殺人の映像だ。

「この映像、昨日スマホでボクが撮影したものなんだ! もちろん暗闇に対応したモードでね。  証拠隠滅で犯人にされたらたまらないからさ。 映像を拡大するよ」
ユミル少年が画面を拡大する。

天井に張り付けられた遺体、滴り落ちる血、血文字のごとく魔法陣が描かれていくが……
「ボクが思うにはこの血で作られた魔法陣はフェイクで、ボク達の注意を床の魔法陣に引き寄せるためのもの。 犯人は……これだよ!」

クリックを繰り返し拡大された場所には小さい羽の生えた虫の姿があった。
「この羽の生えた虫、蠱毒(こどく)がこの人の体内に入って息の根を止めたんだと思う。 だから犯人は蠱毒(こどく)使いだよ。 大方、一緒に退席したランプ使いのウチの1人だろうね」

途中まではリー店長の予想と同じだ。でも蠱毒(こどく)
使いが退席した2人だと断言出来るだろうか?
そんな単純な問題だろうか? 何か違和感がある……。

するとランディが蠱毒(こどく)について説明し始めた。
「蠱毒(こどく)は中国のある地域に伝わる黒魔術で容器の中に多くの虫を入れ戦わせ生き残った虫を呪いに使う。 普通は蠱毒を食べ物や飲み物に入れて毒として使って殺すけど、術師が蠱毒を直接ターゲットに向かわせて体内に潜り込ませて喰い殺す方法もある。 これは後者のパターンだね。 ユミル君……よく証拠映像を撮ったよ」

確かに、でもこの映像……どこかおかしい。 何処だ?

「ユミル君、この映像もう一度最初から再生してくれないか?」
「? いいけど」
蠱毒は、意外なところから出てきた気がする。 いや、意外ではない。 オレの予想が当たっているなら1番納得のいく場所から出てきているはずだ。

虫の動きをたどる。
虫は何処から出てきている?
オレの予想が正しければ……それは……。

やっぱり!

「ユミル君、この9番目のランプの持ち主を殺したのは人間ではない。この人を殺したのは9番目のランプそのものだ。ランプは手放そうとした人間を呪い殺すんだ。 蠱毒はランプの中から出てきたものだ」

みんなそれぞれ自分の手にしている境界ランプを見る。
「そう言えば……」とそれぞれ過去の出来事を振り返っているようだ。

オレはランプの持ち主が不可解な死を遂げるという秘密の裏側を見た気がした。
リー店長も何度か言っていたっけ。
次々と持ち主が亡くなるランプ……けれどその死は必ずと言っていい程このランプの所有を持ち主が拒否した時に起こるものだった。
『キミ、こういうの好きでしょ?』と言ってオレにランプを手渡した店長はオレが考古学者かぶれで絶対にこのランプを手離さないという確信があって譲ってきたはずだ。

だから今までのランプの所有者を殺すことが出来たのもこの答え以外あり得ないハズだ。

「このランプたちは所有を拒否して手放そうとした人間を次々と殺していくんだ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...