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第11夜 意外な犯人
しおりを挟む『犯人を見つけたのでA3番コテージにいらしてください。 ユミル』
オレと精霊セラ、他の境界ランプの持ち主であるランディ、シャルロットらとコテージエリア内のレストランで朝食を取っているとメッセージカードが届けられた。
食事を済ませ、指定されたA3番コテージに行くことになったが……。
「どうなんだろう? 本当にユミル少年は犯人を特定できたのかな? オレの師匠のリー店長は蠱毒(こどく)なんじゃないかって言ってたけど」
オレの疑問にランディは肩をくすませて……
「さあね、でもあの少年はネット魔導師とかいう現代魔導師だし情報収集は一番早いのかもしれないね。 蠱毒(こどく)使いが犯人って線ならボクも昨晩考えたよ。 けど、証拠がないんじゃ犯人を立件しようがない……ユミル少年の情報に期待……かな」
すると
「にゃあん」
と、ランディの肩に乗っているロシアンブルーの魔法猫が相槌をうっているように鳴いた。
オレ達がA3番コテージに向かう途中で、他の境界ランプの持ち主達に出会った。彼らもユミル少年に呼ばれたようだ。
「あら、あなた達もユミル君に招かれたの? 犯人、捕まるといいわね」
言語学を専攻している大学院生のダリアさんだ。 今日はパーティーの時と異なり髪の毛を後ろにひとつで結び、化粧もそんなに濃い感じではない。 グレーのワンピースに黒のカーディガンを羽織り服装もシンプルだ。美人だがいかにもインテリ風で頭の良さそうなオーラを漂わせている。 ランディの言う通りみんなパーティーの時と印象が違うのかも。
「あ~みんなあの少年に呼ばれたのか? おお、弁護士のたまご君? 何か昨日と雰囲気違うね。実はキミ若かったんだ! そうしてると、線も細くて女子大生みたいだな」
ハハハと豪快にわらいながら、前髪をさげてメガネを外しているランディの事を指差してからかうギタリストのデュアルさん。 だがデュアルさんも今日はスッピンなのか、昨日に比べて男らしい風貌である。 男の人もメイクで変わるんだな……。
「あなた……人のこと言えないわよ、昨日とまるで違うもの。 メイク法をご教授願いたいわ」
「オレ達みたいな職種はビジュアルも芸術のウチなのさ。 ステージを全体で表現しているワケ! 簡単にメイク法を教えられないんだよ」
なんだかんだ言って、ダリアさんとデュアルさんは気が合うようだ。 メイク仲間なのだろうか?
コテージの玄関前で皆顔を見合わせ誰がチャイムを鳴らすのか……といった雰囲気になった時に無言で前に出たのは学者の卵ダリアさんだった。
ダリアさんがユミル少年のコテージのチャイムを鳴らす。
インターホンから『鍵は開いているから入ってください』との声、鍵開けっぱなしなのか……。大胆だな。
部屋に入るとリビングには既に数人、人が集まっていた。 双子美少女踊り子姉妹や悪役風魔法使いアブラカタブルさんの姿もある。
「これで全員揃ったね! 国王様は仕事で来れないんだって。 残念……ボクの使い魔が集めた情報によると、9番目のランプの持ち主はランプの権利を放棄して国に帰ろうとしたんだって。 そしたら他の2人と揉めて3人は喧嘩別れしてこの人だけが殺された。 とりあえず、画面を見て」
ユミル少年はネット魔導師というだけあってパソコン、スマホ、タブレットなどひととおりはいつも持ち歩いているようだ。このコテージに無線LANを持ち込んでネット環境を整えている。
「これって昨夜の事件の映像? キミ緊急時によく思いついたね。 あのね私が思うには……」
「お姉ちゃん……やめてよ、今大事な話の最中だよ」
双子姉妹の片方がユミル少年に何かを言いかけたが
「双子のお姉さん達黙っててね! 話は後で聞くから!」
と最年少のユミル少年が仕切り始め、彼が用意した動画を大型モニターで見ることになった。
動画はパーティーの平和な時間から停電の瞬間まで暗闇にも対応してくっきりと映っている。
「こんな映像……いつの間に撮っていたんですの?」
シャルロットが驚きの声をあげる。
今流れている動画は紛れもなく昨日の黒魔術殺人の映像だ。
「この映像、昨日スマホでボクが撮影したものなんだ! もちろん暗闇に対応したモードでね。 証拠隠滅で犯人にされたらたまらないからさ。 映像を拡大するよ」
ユミル少年が画面を拡大する。
天井に張り付けられた遺体、滴り落ちる血、血文字のごとく魔法陣が描かれていくが……
「ボクが思うにはこの血で作られた魔法陣はフェイクで、ボク達の注意を床の魔法陣に引き寄せるためのもの。 犯人は……これだよ!」
クリックを繰り返し拡大された場所には小さい羽の生えた虫の姿があった。
「この羽の生えた虫、蠱毒(こどく)がこの人の体内に入って息の根を止めたんだと思う。 だから犯人は蠱毒(こどく)使いだよ。 大方、一緒に退席したランプ使いのウチの1人だろうね」
途中まではリー店長の予想と同じだ。でも蠱毒(こどく)
使いが退席した2人だと断言出来るだろうか?
そんな単純な問題だろうか? 何か違和感がある……。
するとランディが蠱毒(こどく)について説明し始めた。
「蠱毒(こどく)は中国のある地域に伝わる黒魔術で容器の中に多くの虫を入れ戦わせ生き残った虫を呪いに使う。 普通は蠱毒を食べ物や飲み物に入れて毒として使って殺すけど、術師が蠱毒を直接ターゲットに向かわせて体内に潜り込ませて喰い殺す方法もある。 これは後者のパターンだね。 ユミル君……よく証拠映像を撮ったよ」
確かに、でもこの映像……どこかおかしい。 何処だ?
「ユミル君、この映像もう一度最初から再生してくれないか?」
「? いいけど」
蠱毒は、意外なところから出てきた気がする。 いや、意外ではない。 オレの予想が当たっているなら1番納得のいく場所から出てきているはずだ。
虫の動きをたどる。
虫は何処から出てきている?
オレの予想が正しければ……それは……。
やっぱり!
「ユミル君、この9番目のランプの持ち主を殺したのは人間ではない。この人を殺したのは9番目のランプそのものだ。ランプは手放そうとした人間を呪い殺すんだ。 蠱毒はランプの中から出てきたものだ」
みんなそれぞれ自分の手にしている境界ランプを見る。
「そう言えば……」とそれぞれ過去の出来事を振り返っているようだ。
オレはランプの持ち主が不可解な死を遂げるという秘密の裏側を見た気がした。
リー店長も何度か言っていたっけ。
次々と持ち主が亡くなるランプ……けれどその死は必ずと言っていい程このランプの所有を持ち主が拒否した時に起こるものだった。
『キミ、こういうの好きでしょ?』と言ってオレにランプを手渡した店長はオレが考古学者かぶれで絶対にこのランプを手離さないという確信があって譲ってきたはずだ。
だから今までのランプの所有者を殺すことが出来たのもこの答え以外あり得ないハズだ。
「このランプたちは所有を拒否して手放そうとした人間を次々と殺していくんだ」
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