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咲の出産 私の狼狽
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「うう…くっ…ハァハァ」
隣から苦しむ声が…心の臓に悪い。
「幸三郎様邪魔です!産まれたらお呼びしますから居間に居てくださいませ!」
「あ?ああ…済まない…」
はは…男はこんな時になんの役にも立たないな…居間に行くと、
「幸三郎様!」
「ほら座って!あんたお茶を!」
「ああ…今やるよ…どれ?」
「お前さん役立たず!もう…」
村人が集まっていた。みんな咲の出産を楽しみにしてくれていたようだ。
「はいお茶。飲むと落ち着きますよ?んふふっ」
「すまぬ。おりん…」
「どういたしまして!」
バンッと背中を叩かれた。え?
「父親がそんな顔でどうするんですか!もう!幸太郎ちゃんが心配顔ですよ?」
幸太郎を見ると不安そうな…
「おいで…幸太郎」
「はい!」
嬉しそうに私の胡座の中に収まり今飲んでいたお茶を飲み始めた。
「あらあら…新しいの入れますね!」
「済まないな…」
皆が気を使って色々話しかけてくるのだが理解出来ない。意識が咲の方に行ってしまって。最悪子は良い…咲がいなくなるのは困るのだ。不安で胸が苦しくなって来た。
「皆忙しい中ありがとう…」
「嫌ですよ!一日くらい取り返せます!産まれたら野良に行きますから」
そうだと皆が楽しそうに笑う。玄之助だけではなく私も村人に好かれてたんだな。ありがたい。皆の様子に落ち着き始めた頃襖がすぱーんと勢い良く開き、
「男の子です!幸三郎様おめでとうございます!」
ウメが叫んだ。
うわ~っとその場は歓声に包まれて…は!咲は!
「ウメ!咲は大丈夫なのか!」
「大丈夫ですよ。お子も咲様も落ち着いて…」
片膝立てた所で両肩を押されて座り直した。はあ…よかった。ああ…幸太郎が畳に落ちた…
「済まぬ…痛かったな…よしよし」
「ちちうえがぁ!うわ~ん!」
立ち上がり抱っこして揺すりながら頭を撫でて謝った。
「グスッ…母上は…」
「ああ…大丈夫だ。弟だそうだぞ?よかったな兄になったのだ。威張れるように立派な兄にならねばな」
「はい!父上!んふふっズズッ」
では幸三郎様!我らは畑に行きます!おめでとうと皆に祝福された。本当に咲が無事で…子もよかった。名前は幸之介だ。女なら咲が考えると決めていた。
はあ…気が抜けた…肩の力が抜けだらんと……
「あら…みんな居なくなったんですね…ほら幸三郎様」
産まれたばかりの真っ赤な赤子が…ふにふにと…なんと可愛らしいのだ。幸太郎の時も思ったが子供は本当に…かわいい。
「幸太郎…幸之介だ。優しくしてあげるんだぞ?」
「こうのすけ…?こうのすけ!兄上だぞ!」
大声に驚いたのか泣き出した。
「あ…ごめんなさい…」
「気にしないで下さいませ。赤子は泣くのが仕事ですから!ふふ」
「ウメ、咲に会えるか?」
「はい。交代して母上に会いましょうね。幸太郎様はウメとここに居てくださいませ」
「なんで?」
「なんでも!」
私は急ぎ咲の元へ。襖を開けて疲れた顔をして微笑む咲に、
「咲!」
「あ……あなた…男の子ですって。名前は幸之介?」
「ああそうだ…お前が無事で…」
枕元に座り手を取り胸に当て強く握った。不安が消えていくようだ。
「ふふっあなた…そんなに握ったら痛いですよ」
「あっ済まぬ」
手を離し頬を撫でて微笑んだ。咲が無事でよかった。ふふっそっと頬を撫でたまま唇に触れた。
「あなた!恥ずかしいです…皆いるのに…」
「関係ない…」
もう一度しっかりと唇に触れた。咲は照れて真っ赤になっているが俺は愛しいからしてるのだから気にしない。
「ふふっ仕事に戻る。皆宜しく頼む」
「はい!大切な咲様はお任せください!」
野良着に着替えて畑に出た。ふふっよかった私は幸せ者だ。鍬を振り上げながら身体の中から喜びが湧く。ふと、
「兄上?なぜ畑に?咲様は…」
「ああ…先程産まれた。咲も無事だ」
はあ…と膝をつき座り込み、
「よかった…咲様に何かあったらと不安で…兄上がおかしくなると不安しかなくて…もう生きた心地がしませんでした」
はは…そんなにか。
「ありがとう心配してくれて。無事だからお前も子の顔見たら仕事しろ」
「はい!では失礼」
私の屋敷に向かって行った。
夕げは宴の様相で飲んで歌って…玄之助と時殿も来てくれて賑やかに夜は更けた。
産後の寝床の襖を開けると咲は寝ていた。枕元に座り、
「咲…ありがとう。ご苦労だったな」
頬を撫でて唇に……
「はあ…あなた…ふふっ」
「起こしたか…」
「起きますよ…口に違和感があるんですもの…」
「ふふっそうか…改めてご苦労だった。ありがとう…」
「いいえ…貴方の子が産めて幸せですよ」
唇を合わせて…愛しくて……嬉しくて。
「はあ…済まない疲れてるのに」
頬を撫でるとその手に咲は手を重ねた。
「んふふっ貴方の愛を感じますから…嬉しい」
「ゆっくり休んでくれ」
「はい…」
咲の座敷を出て元々の寝床で幸太郎と二人で眠る。後は二組の婚儀だな…めでたい事が続く。なんとか今年は豊作になってくれ。心の疲れからか幸太郎の暖かさに眠気が強く瞼を閉じると意識は彼方に。
隣から苦しむ声が…心の臓に悪い。
「幸三郎様邪魔です!産まれたらお呼びしますから居間に居てくださいませ!」
「あ?ああ…済まない…」
はは…男はこんな時になんの役にも立たないな…居間に行くと、
「幸三郎様!」
「ほら座って!あんたお茶を!」
「ああ…今やるよ…どれ?」
「お前さん役立たず!もう…」
村人が集まっていた。みんな咲の出産を楽しみにしてくれていたようだ。
「はいお茶。飲むと落ち着きますよ?んふふっ」
「すまぬ。おりん…」
「どういたしまして!」
バンッと背中を叩かれた。え?
「父親がそんな顔でどうするんですか!もう!幸太郎ちゃんが心配顔ですよ?」
幸太郎を見ると不安そうな…
「おいで…幸太郎」
「はい!」
嬉しそうに私の胡座の中に収まり今飲んでいたお茶を飲み始めた。
「あらあら…新しいの入れますね!」
「済まないな…」
皆が気を使って色々話しかけてくるのだが理解出来ない。意識が咲の方に行ってしまって。最悪子は良い…咲がいなくなるのは困るのだ。不安で胸が苦しくなって来た。
「皆忙しい中ありがとう…」
「嫌ですよ!一日くらい取り返せます!産まれたら野良に行きますから」
そうだと皆が楽しそうに笑う。玄之助だけではなく私も村人に好かれてたんだな。ありがたい。皆の様子に落ち着き始めた頃襖がすぱーんと勢い良く開き、
「男の子です!幸三郎様おめでとうございます!」
ウメが叫んだ。
うわ~っとその場は歓声に包まれて…は!咲は!
「ウメ!咲は大丈夫なのか!」
「大丈夫ですよ。お子も咲様も落ち着いて…」
片膝立てた所で両肩を押されて座り直した。はあ…よかった。ああ…幸太郎が畳に落ちた…
「済まぬ…痛かったな…よしよし」
「ちちうえがぁ!うわ~ん!」
立ち上がり抱っこして揺すりながら頭を撫でて謝った。
「グスッ…母上は…」
「ああ…大丈夫だ。弟だそうだぞ?よかったな兄になったのだ。威張れるように立派な兄にならねばな」
「はい!父上!んふふっズズッ」
では幸三郎様!我らは畑に行きます!おめでとうと皆に祝福された。本当に咲が無事で…子もよかった。名前は幸之介だ。女なら咲が考えると決めていた。
はあ…気が抜けた…肩の力が抜けだらんと……
「あら…みんな居なくなったんですね…ほら幸三郎様」
産まれたばかりの真っ赤な赤子が…ふにふにと…なんと可愛らしいのだ。幸太郎の時も思ったが子供は本当に…かわいい。
「幸太郎…幸之介だ。優しくしてあげるんだぞ?」
「こうのすけ…?こうのすけ!兄上だぞ!」
大声に驚いたのか泣き出した。
「あ…ごめんなさい…」
「気にしないで下さいませ。赤子は泣くのが仕事ですから!ふふ」
「ウメ、咲に会えるか?」
「はい。交代して母上に会いましょうね。幸太郎様はウメとここに居てくださいませ」
「なんで?」
「なんでも!」
私は急ぎ咲の元へ。襖を開けて疲れた顔をして微笑む咲に、
「咲!」
「あ……あなた…男の子ですって。名前は幸之介?」
「ああそうだ…お前が無事で…」
枕元に座り手を取り胸に当て強く握った。不安が消えていくようだ。
「ふふっあなた…そんなに握ったら痛いですよ」
「あっ済まぬ」
手を離し頬を撫でて微笑んだ。咲が無事でよかった。ふふっそっと頬を撫でたまま唇に触れた。
「あなた!恥ずかしいです…皆いるのに…」
「関係ない…」
もう一度しっかりと唇に触れた。咲は照れて真っ赤になっているが俺は愛しいからしてるのだから気にしない。
「ふふっ仕事に戻る。皆宜しく頼む」
「はい!大切な咲様はお任せください!」
野良着に着替えて畑に出た。ふふっよかった私は幸せ者だ。鍬を振り上げながら身体の中から喜びが湧く。ふと、
「兄上?なぜ畑に?咲様は…」
「ああ…先程産まれた。咲も無事だ」
はあ…と膝をつき座り込み、
「よかった…咲様に何かあったらと不安で…兄上がおかしくなると不安しかなくて…もう生きた心地がしませんでした」
はは…そんなにか。
「ありがとう心配してくれて。無事だからお前も子の顔見たら仕事しろ」
「はい!では失礼」
私の屋敷に向かって行った。
夕げは宴の様相で飲んで歌って…玄之助と時殿も来てくれて賑やかに夜は更けた。
産後の寝床の襖を開けると咲は寝ていた。枕元に座り、
「咲…ありがとう。ご苦労だったな」
頬を撫でて唇に……
「はあ…あなた…ふふっ」
「起こしたか…」
「起きますよ…口に違和感があるんですもの…」
「ふふっそうか…改めてご苦労だった。ありがとう…」
「いいえ…貴方の子が産めて幸せですよ」
唇を合わせて…愛しくて……嬉しくて。
「はあ…済まない疲れてるのに」
頬を撫でるとその手に咲は手を重ねた。
「んふふっ貴方の愛を感じますから…嬉しい」
「ゆっくり休んでくれ」
「はい…」
咲の座敷を出て元々の寝床で幸太郎と二人で眠る。後は二組の婚儀だな…めでたい事が続く。なんとか今年は豊作になってくれ。心の疲れからか幸太郎の暖かさに眠気が強く瞼を閉じると意識は彼方に。
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