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晩秋に嵐の洗礼
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秋になり米の収穫で村は忙しい。今年は晴天に恵まれてはざに掛かる稲はいつも通り乾き……と思っていたが嵐が立て続けに起きた。
「兄上……」
「ああマズいな。このまま長雨が続けば山が崩れる所が出る」
「既に西山の峠道の一部が崩れていると弥七が私の所に報告してきています」
「そうか……」
私の屋敷の仕事部屋で弦之助と現状を話し合うため来て貰った。
「米も品質が落ちます……囲いはしてるのですが……どうか」
「稲刈り辺りまで天候に恵まれていたから油断したな」
「はい。私もこのまま行けるかと思ってました……甘かったです」
とにかくだ。被害がどのくらい出るかは未知数だ。起きた時とれだけ動けるかだな。
「今は西山の峠だけだが東山は数年前にかなりの被害を出した。田んぼも半分埋まり復帰に一年掛かったがあの頃は年貢がなかったからどうにかなったのだ」
深いため息をして弦之助も、
「あれが今回起きて年貢に取られると再来年は……」
「ああ……今からでは間に合わぬ。助け合うしかなかろう……」
こうなっては平地も変わらぬ。百姓は再来年の今頃は苦しい生活が待っている。二人でどうにもならぬ天気の不機嫌に言葉が出ない。バンッと襖が開き、
「幸三郎様!東山の伝次郎の田んぼが!!」
「分かった。今行く」
「兄上私も!」
「いや。其方はここにいろ。まもなく他の報告も来るはずだ。そちらを頼む」
「はい。では待機しております。お気を付けて」
「うむ」
板垣のと箕と山笠を被り急ぎ東山に向かった。一人の男があぜに座り込んでいた。
「伝次郎!!怪我はないか?」
「幸三郎さま……ううっ……俺が何年も掛けてまともな稲が育つまでにしたのに……こんな……うわぁ!!」
かなりの量が崩れ伝次郎の一番大きい田んぼが半分は埋まっている。クソッここは前回の時も崩れず保った場所なのに!
「伝次郎、米を収穫した後だと良い方に考えよ。雨が止んだら皆で頑張ろうぞ」
膝を付き肩に手を置いた。
「幸三郎さまぁ……ああ……俺が甘かったんです。前回大丈夫だからとここの補強を後回しに……だから!!」
「泣くな。起きた事は戻らぬ」
私は立ち上がり、
「板垣、出来るだけ見回りに行く。ついて参れ」
「はい。ですが私一人で……」
「いや危険だ。私も共に行く」
「でも……」
「うるさいぞ!来い!」
もう頑固なんだからと言う顔をしたが、あぜ道を歩き出した。伝次郎には家に帰れと言い渡した。ここで泥をなんとかしそうな顔をしていたからな。
板垣と村近くの田んぼを見回っているとミシッブチッと山から木の根が引きちぎれる音がする。マズいな。
「板垣聞こえるか?」
「はい。明日にはここは通れなくなりそうですね」
「急ぐぞ!」
「はい」
ある程度崩れそうな場所を把握して更に奥の西山に向かっていると、
「兄上!!」
「弦之助か!どうだ他は」
「ここまでの間も根が引きちぎれる音を耳にしました。かなりの被害が予想出来ます。この先は……戻れなくなります!」
「そうか……至る所がか。誰か山に居るものはいないか?」
下を向いて、
「佐治の倅が西山に……他は皆下山しております」
「万造か……弟の源造も一緒ではあるまいな?」
「はい。源造は家におりました」
仕方あるまい。
「連れ戻す」
「は?兄上何を!」
「其方は戻れ。そして皆を家に留め置け。行け!盛山連れて行ってくれ」
「はい。弦之助様……」
情けない顔をして私を見つめていたが意を決して道を下って行った。
「済まぬ板垣。付き合わせてしまって」
「ふふっ私はいつでも貴方様に付き合いますよ。行きましょう」
「ああ。感謝する」
二人で大雨の中山道を上がる。時々根の引きちぎれる音を恐怖を感じながら歩くとはざの雨よけのゴザを直している万造を見つけた。
「いつまでやっている!!帰るぞ!!」
声に振り返った万造は、
「なぜ幸三郎様がここに?」
「寝ぼけたことを!!伝次郎の田んぼがやられ他も木の根が引きちぎれる音で山はかなり危ない。なのにお前だけ下山しておらぬと弦之助から報告を貰った」
「はあ……申し訳ねぇです。コレ終わっ……」
作業を止めぬ万造に苛ついてきた。
「馬鹿者!!命が有ってだろう!米はいいから私と帰るのだ!来い!!」
私の剣幕に怯えてこちらに急いで向かって来た。
「帰るぞ!!」
「はい……あの」
「私は人の命より優先する物はないと考えている。生きていればどんな困難にも立ち向かえる。辛くともな」
「申し訳ねぇです……」
「気持ちが分からぬ訳では無い……」
板垣が早くと先導して山道を下った。途中の道が崩れている所もあったがどうにか村まで戻ることが出来た。屋敷に着くと万造の妻おまつが、
「あんた!!」
大きく振りかぶり万造の頬を引っ叩いた。
「心配したんだよ!!幸三郎様にも迷惑を掛けて!間違って泥に埋まるような事があったらと思うと……うわああ!!」
万造にしがみついて泣き出した。万造も済まなかったと繰り返していた。はあ、怪我人が出なくてよかったと振り向いたら私もバチンと叩かれた。
「どれだけ私が……」
無表情で涙を零している咲が。
「済まぬ。だが……」
「分かっておりますお役目だと。ですが……怖かった帰って来ないのではと……」
「悪かったな」
人目を気にせず抱き寄せると咲は声を殺して泣いた。私が咲の泣き止むのを待つ間に万造たちは帰りウメが、
「幸三郎様、足洗って中へ。身体が冷えてしまったでしょう?温かいお風呂に入って下さいまし」
「ああ、ありがとう」
その声に真っ赤になり驚いたように離れて中に消えた。
「咲様本当に心配されてたんですよ?優しくしてあげて下さい」
私の足を洗いながらウメは話した。
「皆にも心配かけた。だが私は人がこんな事で死ぬのは許せない」
「ふふっその優しさが皆好きなんです。御自分も大事に……」
「分かっていたつもりだが……どうしてもな」
「はい!終わりました。まず座敷で休んで下さいまし。風呂の用意は出来ておりますから入る時に声がけをして下さい」
分かったと中に入り座敷に座った。少しすると襖が開き幸太郎が来て手を付いて頭を下げた。
「父上ご苦労様でした」
「ふふっうむ。おいで」
顔を上げたかと思うと駆け寄りあぐらの中に入った。
「父上がご無事でようございました。母上は心配してウロウロしてたんですよ?」
「そうか。咲には苦労を掛けるな」
待っていた時の話を幸太郎から聞いていると弦之助も来て、
「はあ……ご無事でしたか。よかった」
「ああ。他はどうだ?」
「村の奥の我が家からは遠くの崩れている音はしました。なのであちこちが……だと思われます」
いつ止むかは分からぬが、米より先に道をなんとかだな。
「これより雨が止むまで家で待機とふれを出してくれ。死者を出したくない」
「畏まりました」
「其方も疲れたであろう?帰って休め。話は明日でいい。ふれは板垣と相談してくれ」
はいと応えると踵を返し戻って行った。村の中にいれば怪我人も死者も出ない後は明日に。さて風呂でも入るかな。
「父は風呂に入るがお前も入るか?」
「はい!父上とだあ!ウメェ私も入いる~!」
楽しそうな幸太郎を連れて風呂場に向かった。
「兄上……」
「ああマズいな。このまま長雨が続けば山が崩れる所が出る」
「既に西山の峠道の一部が崩れていると弥七が私の所に報告してきています」
「そうか……」
私の屋敷の仕事部屋で弦之助と現状を話し合うため来て貰った。
「米も品質が落ちます……囲いはしてるのですが……どうか」
「稲刈り辺りまで天候に恵まれていたから油断したな」
「はい。私もこのまま行けるかと思ってました……甘かったです」
とにかくだ。被害がどのくらい出るかは未知数だ。起きた時とれだけ動けるかだな。
「今は西山の峠だけだが東山は数年前にかなりの被害を出した。田んぼも半分埋まり復帰に一年掛かったがあの頃は年貢がなかったからどうにかなったのだ」
深いため息をして弦之助も、
「あれが今回起きて年貢に取られると再来年は……」
「ああ……今からでは間に合わぬ。助け合うしかなかろう……」
こうなっては平地も変わらぬ。百姓は再来年の今頃は苦しい生活が待っている。二人でどうにもならぬ天気の不機嫌に言葉が出ない。バンッと襖が開き、
「幸三郎様!東山の伝次郎の田んぼが!!」
「分かった。今行く」
「兄上私も!」
「いや。其方はここにいろ。まもなく他の報告も来るはずだ。そちらを頼む」
「はい。では待機しております。お気を付けて」
「うむ」
板垣のと箕と山笠を被り急ぎ東山に向かった。一人の男があぜに座り込んでいた。
「伝次郎!!怪我はないか?」
「幸三郎さま……ううっ……俺が何年も掛けてまともな稲が育つまでにしたのに……こんな……うわぁ!!」
かなりの量が崩れ伝次郎の一番大きい田んぼが半分は埋まっている。クソッここは前回の時も崩れず保った場所なのに!
「伝次郎、米を収穫した後だと良い方に考えよ。雨が止んだら皆で頑張ろうぞ」
膝を付き肩に手を置いた。
「幸三郎さまぁ……ああ……俺が甘かったんです。前回大丈夫だからとここの補強を後回しに……だから!!」
「泣くな。起きた事は戻らぬ」
私は立ち上がり、
「板垣、出来るだけ見回りに行く。ついて参れ」
「はい。ですが私一人で……」
「いや危険だ。私も共に行く」
「でも……」
「うるさいぞ!来い!」
もう頑固なんだからと言う顔をしたが、あぜ道を歩き出した。伝次郎には家に帰れと言い渡した。ここで泥をなんとかしそうな顔をしていたからな。
板垣と村近くの田んぼを見回っているとミシッブチッと山から木の根が引きちぎれる音がする。マズいな。
「板垣聞こえるか?」
「はい。明日にはここは通れなくなりそうですね」
「急ぐぞ!」
「はい」
ある程度崩れそうな場所を把握して更に奥の西山に向かっていると、
「兄上!!」
「弦之助か!どうだ他は」
「ここまでの間も根が引きちぎれる音を耳にしました。かなりの被害が予想出来ます。この先は……戻れなくなります!」
「そうか……至る所がか。誰か山に居るものはいないか?」
下を向いて、
「佐治の倅が西山に……他は皆下山しております」
「万造か……弟の源造も一緒ではあるまいな?」
「はい。源造は家におりました」
仕方あるまい。
「連れ戻す」
「は?兄上何を!」
「其方は戻れ。そして皆を家に留め置け。行け!盛山連れて行ってくれ」
「はい。弦之助様……」
情けない顔をして私を見つめていたが意を決して道を下って行った。
「済まぬ板垣。付き合わせてしまって」
「ふふっ私はいつでも貴方様に付き合いますよ。行きましょう」
「ああ。感謝する」
二人で大雨の中山道を上がる。時々根の引きちぎれる音を恐怖を感じながら歩くとはざの雨よけのゴザを直している万造を見つけた。
「いつまでやっている!!帰るぞ!!」
声に振り返った万造は、
「なぜ幸三郎様がここに?」
「寝ぼけたことを!!伝次郎の田んぼがやられ他も木の根が引きちぎれる音で山はかなり危ない。なのにお前だけ下山しておらぬと弦之助から報告を貰った」
「はあ……申し訳ねぇです。コレ終わっ……」
作業を止めぬ万造に苛ついてきた。
「馬鹿者!!命が有ってだろう!米はいいから私と帰るのだ!来い!!」
私の剣幕に怯えてこちらに急いで向かって来た。
「帰るぞ!!」
「はい……あの」
「私は人の命より優先する物はないと考えている。生きていればどんな困難にも立ち向かえる。辛くともな」
「申し訳ねぇです……」
「気持ちが分からぬ訳では無い……」
板垣が早くと先導して山道を下った。途中の道が崩れている所もあったがどうにか村まで戻ることが出来た。屋敷に着くと万造の妻おまつが、
「あんた!!」
大きく振りかぶり万造の頬を引っ叩いた。
「心配したんだよ!!幸三郎様にも迷惑を掛けて!間違って泥に埋まるような事があったらと思うと……うわああ!!」
万造にしがみついて泣き出した。万造も済まなかったと繰り返していた。はあ、怪我人が出なくてよかったと振り向いたら私もバチンと叩かれた。
「どれだけ私が……」
無表情で涙を零している咲が。
「済まぬ。だが……」
「分かっておりますお役目だと。ですが……怖かった帰って来ないのではと……」
「悪かったな」
人目を気にせず抱き寄せると咲は声を殺して泣いた。私が咲の泣き止むのを待つ間に万造たちは帰りウメが、
「幸三郎様、足洗って中へ。身体が冷えてしまったでしょう?温かいお風呂に入って下さいまし」
「ああ、ありがとう」
その声に真っ赤になり驚いたように離れて中に消えた。
「咲様本当に心配されてたんですよ?優しくしてあげて下さい」
私の足を洗いながらウメは話した。
「皆にも心配かけた。だが私は人がこんな事で死ぬのは許せない」
「ふふっその優しさが皆好きなんです。御自分も大事に……」
「分かっていたつもりだが……どうしてもな」
「はい!終わりました。まず座敷で休んで下さいまし。風呂の用意は出来ておりますから入る時に声がけをして下さい」
分かったと中に入り座敷に座った。少しすると襖が開き幸太郎が来て手を付いて頭を下げた。
「父上ご苦労様でした」
「ふふっうむ。おいで」
顔を上げたかと思うと駆け寄りあぐらの中に入った。
「父上がご無事でようございました。母上は心配してウロウロしてたんですよ?」
「そうか。咲には苦労を掛けるな」
待っていた時の話を幸太郎から聞いていると弦之助も来て、
「はあ……ご無事でしたか。よかった」
「ああ。他はどうだ?」
「村の奥の我が家からは遠くの崩れている音はしました。なのであちこちが……だと思われます」
いつ止むかは分からぬが、米より先に道をなんとかだな。
「これより雨が止むまで家で待機とふれを出してくれ。死者を出したくない」
「畏まりました」
「其方も疲れたであろう?帰って休め。話は明日でいい。ふれは板垣と相談してくれ」
はいと応えると踵を返し戻って行った。村の中にいれば怪我人も死者も出ない後は明日に。さて風呂でも入るかな。
「父は風呂に入るがお前も入るか?」
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