戦国武将の子 村を作る

琴音

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正月の勤め

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起きてから軽く腹に入れ板垣と共に不動尊に向かった。少し進むと雪の穴に蝋燭の灯りがゆらゆらと灯りなんとも幻想的だ。

雪は昼の状況では止むかと思われたが結局昼のままチラチラと小雪が舞う状況は変わらずだったが風は穏やかで二年参りに来る者にはまぁまぁといった所か。

「幸三郎様、毎年ですが綺麗ですね」
「ああ……光之介と男衆の頑張りのお陰だな」
「ええ、私もお二人が全く手伝わぬとおっしゃった時はどうなるやらと思いましたが、いざ支度を始めると光之介は上手いこと皆を動かして……あの光之介がと目を疑いましたよ」

ほんになあ……ハキハキと喋り時には声を張り男衆に指示を出して自分でも参道の雪かきをして……我らより少し年下だが子供ではないからな。線の細い男だか逞しく見えた。

「提灯は要りませんな」
「ああ、風がないから蝋燭も消えずに雪に反射して足元もよく見える」

そうこうしている内に到着し階段を上がり社へ。光之介が頭を下げている。

「ご苦労様でございます。どうでしょうか?不手際はございましたか?」
「よう頑張ったな。不手際はない」

嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう存じます。父に見せられぬのが残念ではありますが幸三郎様が褒めて下さればもうそれでもようございます」

こちらへと社の中に案内されてこの時の定位置に座る場所を確認し不動明王像に参った。来年は良い年になる様精進するゆえお力をお貸し下さいと念入りに祈った。

「兄上!もういらしてたのですね!申し訳ございません遅うなりました」
「いや、私も先程来たばかりだ」

弦之助はいやあ天気はまぁまぁでしたが寒いですねと言いながらお参りをし、私の隣に座った。

「光之介頑張ったな!佐治と遜色ないぞ!」
「ふふっお褒めに預かりましてありがとう存じます。皆のお陰ですね、父と同じように動いてくれて……ありかたかったです」

弦之助は嬉しそうに、

「其方が一生懸命なのが伝わったのであろう?もっと自信を持てよ!」
「はい……」

照れくさそうな光之介を板垣、盛山も微笑ましく見ている。そろそろ子の刻かと言う頃に伝次郎がお参りに来た。

「ううぅ寒いですね。幸三郎様、弦之助様」
「ご苦労だな。まあまずはお参りを」
「へい」

不動明王の前に座り……長いな、ブツブツと念仏のように何か喋って深々と頭を下げた。顔を上げると振り返り、

「お二人には今年俺の見通しの甘さで泥だらけにしてしまって申し訳なかったです……」

手を付いて頭を下げた。何を……

「そんな事を気にしていたのか?当たり前の事をしたまでだ。気にする事ではない、なあ弦之助」
「そうだぞ?頭を下げるような事ではない」

我らを見つめて……目が赤い?

「うっ……ありがとうございます!」

また手を付いて頭を下げ小刻みに震えている。ったくこの男は。

「泣くな伝次郎!我らは何とも思っておらぬ。また春になったら気張ってくれ」

頭を下げたままはいとか細く震える声で。一番に来たかと思えばこんな……確かに伝次郎の田は他とは違い責任の大きい田ではあるがそこまで責任を感じなくてもいいのだがな。弦之助が頭を上げろと声を掛けて酒を振る舞った。

「ありがとう……グスッ」
「お前はもう……飲め!」

肩を叩きながら慰めて……グズグズ鼻をいわせながら酒を煽りふふっと微笑んだ。ほらツマミの漬物や佃煮とかも食べろと私も勧めどうにか泣き止み楽しく談笑していると続々と村の者がお参りに来出した。

光之介が案内しているのだろう、除夜の鐘が先程からゴ~ンゴ~ンと鳴り響き年末の夜を演出していた。

鐘を突き終わった者が新年の挨拶をしながらお参りをして酒を酌み交わす。昨年の思い出話をしながら。

幸先のいい始まりだったにも関わらず後半は嵐にやられ米も良い所は年貢に取られて新米も一度食べた切りで古米をチビチビとと何とも寂しいのうなどと話しているのを聞くと……胸が痛い。私の甘さが……

「皆済まなかったな、私の見通しの甘さで苦労を掛ける」

ここにいる十人くらいがビクッとして私を見た。え?

「な、何をおっしゃる!嵐は幸三郎様のせいではないですよ!あんなの予言できる方がおかしい!」

皆口々に否定してくる。そしてお二人に迷惑を掛けたとしきりに謝ってくる者ばかり……いや……あの……

「兄上?」
「あ、ああ……皆ありがとう。皆来年は厳しいかもしれぬ……ほぼ厳しい。節約して頑張ってくれ。もう豊作にでもならない限り……」

皆分かってますからと笑っている。有り難いな……不甲斐ない私を責めはしない。顔には出さぬが申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。

湿っぽい話しは止めようと誰が言い出したのかそれぞれ子の話しや旦那が役立たずだの嫁がおっかないとか……ふふっ他所の家の中が見えるような会話に変わった。

「いいな……」
「ええ、皆貧しいながらも楽しみを見つけ生活しております。兄上が心を砕いて頑張った結果ですよ」
「そうなのだろうか……自信はないな」
「そうなのですよ……もし違ったとしても私がそう思っていればそうなのです」
「何とも心強い言葉をありがとう」

弦之助の目を見て感謝を伝えた。何で照れるのだ?

「うふふっ兄上のその素直さが大好きですよ」
「ふん……そのニヤニヤは違う事を思っているのであろう?」
「そんな事はありません。まっすぐに突き進もうとする兄上だから私も着いて行こうと思えるのですよ」

微笑んでるのかニヤニヤしてるのか不明な表情だが良く受け取ろう。

この後も人が入れ代わり立ち代わりお参りに来て昼前になった。そろそろ一度帰るかと立ち上がると入口に先と時殿が。

「そろそろお帰りかとお参りに参りました」
「そうか」

子供も嫁たちも大体来れる者は来たようだな。外を見るとぼたん雪が風もない所を深々と降り積もっていた。いきなり風向きが変わったか?二人はこの雪だからと子は置いてきたと話していた。

この雪では幸太郎など幼い者は足元が悪すぎて連れ歩くのは確かに難儀だな。代わりの金次郎が来たから帰るかと皆で帰り一眠りした。

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