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帝の代替わり編
47 僕の秘密
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客間に着くと夕陽様は下座に座り翠が上座。これは力の差だそうで、竜としてはこの上下関係は大切だそう。ここは人とは違う部分だね。家に来たお客は、よほどのことがなければ相手が目下でも上座を勧めるから。
「遅くなって悪かったな。こちらに連絡が来るのが遅かったんだよ」
「そうそう。わたくしの部下は変化前ならなんとかなると思ったらしいのよね」
なんとかなりませんでしたけど。そう僕は思ったけど「お疲れ様でございました」とニコニコしていた。
「あの山どうなさるの?」
「俺の山じゃないから知らん。夕陽が畑の持ち主に対応してくれ」
「ええ~……めんどくさ」
わんわんがしばらくするとアイスコーヒーを持ってきた。僕らも合わせろとアイスコーヒー。そしてお菓子は栗まんじゅう……こんな時はせめてマドレーヌとか洋菓子にしてくれ。
「わんわん、ケーキは?」
「今買いに行ってます。シャトーマグノリアのでいいんですよね」
「うん!あそこの好き」
町に洋菓子店は当然ある。そしてこのシャトーマグノリアは町一番の高級店。ショートケーキ一個が五百円である。人の世界に換算すると一個二千円の贅沢品。まあいいやと夕陽様はストローの紙を取り優雅に半分飲み干している。
「ここんちの美味しいわよね」
「まあな。夏樹の村に行ったついでに買ってきてるから」
「ふーん。どこの?」
「えっとな……」
なんてコーヒー豆の話になった。なんでだよ。事件の話は?何で山が消えたの?と、気持ちは急くけど僕はニコニコとしていた。
「それはそうとなんで夏樹が対応してくれなかったのよ」
「うん?できないんだ」
「できないとは?は?」
二人の会話が僕の方に向いた。そしてこの部分はこの事件が始まってすぐから僕を苛む事実だ。
「申し訳ございません。私の力不足でございます」
「それは違うから」
「なにが違うよのぉ」
翠は何も言わなかった。無言でチューッとコーヒーを飲んでいる。その様子を見つめていた夕陽様はグリンと隣の僕の方に顔を向けた。僕はビクッとしてしまったけど、スッと頬に手をあてられて見つめてくる。
金色の美しい瞳。でも瞳孔が細くなったり膨らんだりを繰り返す。なに?と僕は怯えた。表情がなく、まるでスキャンしてるような夕陽様に動けなかった。しばらくすると瞳孔が普通サイズになった。
「ふん。まあいいわ」
「あの?」
夏樹はかわいがられてるわねえとにっこり。そして今度はふわりと僕を抱くと耳元で「攻撃の力は欲しくない?」と囁かれた。僕は、あのいたたまれなかった数日が頭を駆け巡った。
「欲しいです。この数日みんな気丈にしてましたが怖かったはずです。僕は何も出来ずにいました。シェルターがダメならみんなを守るしかできない。外に逃げることも叶わずで、それはとても辛かったです」
「そうね」
体が離れると頭を撫でてくれる夕陽様。僕の妻としての役目は翠の代理をすること。自分を含めみんなを守る「竜の妻」としての責務がある。そう翠に聞いていたけどなにもできなかった。物理的な攻撃力もなく、主代理として場を仕切ることも、何も分からなくて動けなかったんだ。僕は、僕は……
うなだれる僕の肩をポンと叩き、夕陽様は翠を睨んだ。夏樹が可哀想よって言ってくれた。翠はフンと鼻を鳴らしこれでいいと一言。
「危険なことはさせたくないんだよ」
「分かるけどね。でも夏樹の立場を思えばそうは言えないんじゃないの?」
翠は眉間に深いシワを刻み、黙って夕陽様を見返してため息。
「分かってるんだが嫌なんだよ」
「あなたらしいけどね。でもお役目が果たせない苦しい気持ちは考えないの?何も分からないは辛いものよ?」
「考えてるけど……」
お待たせしましたとマオがケーキの箱を持って来た。ものすごく息切れしてね。この速さは力を使ったんだね。お疲れ様と僕が声をかけると、ニコッとマオは笑って下がった。
「わーいケーキだわ」
わんわんが取り分けてお皿に移し、夕陽様に差し出すとすぐに食べ始めた。疲れてるから美味しいとご満悦だ。マオの努力が実りました。
「翠」
「なんだよ」
美味しそうに頬張りながら夕陽様はジロリと翠を見つめる。
「今後もこんなことがないとは限らない。あなたの店が焼けるとか、水没するとか?」
「わかってるよ」
僕らの分もあって不機嫌そうにケーキを口に運ぶ翠。美味しいけど、憮然とした顔してるから美味しくなさそうに見える。
「あのな、俺じゃあ引き出せなかったんだよ。仕方ない部分もあるんだ」
「そっか。ならしていい?」
「……夏樹の承諾を取ったらな」
「はーい」
夕陽様はフォークを置いて僕の方を向く。そしてしっかりと僕を見つめる。
「夏樹の力は今限定的に発動しています。翠は特別な力があるから」
「あのそれは?」
話の流れからなんとなく察してはいたけど、翠ができない理由が分からない。中身は竜の力を行使できるんだから、調整は出来るでしょう?そう夕陽様に尋ねた。そしたら僕の顔の前で人差し指を横に振る。
「母君様の神使の力が邪魔するのよね」
「え?」
狐の神使は神に仕え民を守る。バチを当てるとか戦うとかはは神の仕事。神使はひたすら神や民を守る盾になるらしい。その守ることも、本当に耐え忍ぶ守り方だそうだ。つまり、その神使の「耐えて守る」力が竜としての力に制限(守りは異常に強くなるけど)をかけるそうだ。僕の知ってるイメージとは違うんだな。狐めっちゃ戦うかと思っていた。
「翠はその神使の力も受け継いだの。親の愛よね」
「へえ」
「だから兄君様たちより優しく思いやりがある代わりに精神的に弱いかな」
「弱くは……」
あら、気が付かないの?ときょとんとされた。確かに優しいけど、弱くはないと思うけどなあ。僕はそんな弱さを感じたことあったかな?と考えた。繊細な部分はあるけどね。考えていると夕陽様は、夏樹はダメねえと微笑む。
「あなたを迎える前にね。俺は人の世界では不倫の子みたいになるんだ。夏樹にバレたら嫌われるかな?ってわたくしに相談に来たのよ」
「ええ?」
「やめろ」
そう言えばと、前に町に置いていかれた記憶が頭に浮かんだ。そんなに気にしてたのか。人に相談するほど気にしてたなんてと僕は驚いた。
「翠はあなたに好かれたくて仕方なかったの。男だなんだは落とせる自信はあったみたいだけどね。夏樹はそんな部分が潔癖かもと不安がってね。人は気にするでしょう?」
気にする人もいるだろうけど僕はねえ。そんな良いお家の出身でもなく普通の家庭だもの。本人をどう感じるかだよねえ。
「気にしません。それはご両親の問題で、翠がどうにか出来ることではありませんし」
「だって。いい子ね夏樹は」
「当然だろ」
翠はむしゃむしゃとケーキを食べながらムッスリしている。
「言わなくても夏樹は理解してくれるんだよ」
「言わないから今回悲しんだんでしょうよ」
「まあ……」
翠はストローをスッと抜いてコーヒーを一気飲み。「夏樹、悪かった」と小さな声で一言。言い訳だがと完全に不貞腐れ気味。
翠は「こんな頻繁に屋敷を空けることが今までなかった。俺がここに引っ越してからずっとだ。その認識があって、力は僕自身を守れるだけあればいいと考えていた。帝の代替わりなど一生に一度あるかないかだ。だから」と黙り、おもむろに栗まんじゅうをひとつ取り、包みを開けて食べる。ケーキはすでに食べ終わっていた。早いね。
「ふーん。あなた分かってたはずよ。毎年のあいさつで帝たちが少しお年が進んでいるかもと噂になってたでしょう?私たちは近い身内だからお近くにも行くし」
「あー……俺人の顔あんま見ない」
「はあ?」
夕陽様は、いくら身内に興味なくとも見なさいよと翠を叱った。彼はそうだなと聞いていない。そして次の栗まんじゅうを開ける。どんだけ食べますかあなた。
「食べてないで聞きなさい。あなたは……」
「説教はいらない。自覚してるから」
「わざとならなお悪い!あなたはいつもでしょ!もう!」
夕陽様に燃料を注ぐ翠。彼女はメラメラと燃え上がり止まらない。あなたは他人に興味なさ過ぎるしとあーだこーだ。僕は仕方なく夕陽様の隣でめったに食べない美味しいケーキを食べ進める。ウマッ
「夕陽様そのへんで」
「わんわん!あなたが甘やかすから!」
冷たい飲み物の後は温かいお茶はいかがと、わんわんが気を利かせて用意して来たのを即座に睨み怒鳴る。わんわんは恐縮ながら、
「夏樹様のことは我らもつい最近まで知りませんでした。それで責める物言いも避難中にしてしまい、申し訳ないことをしました」
「え?それまで気がついてなかったの?」
「不徳のいたすところですが、最近聞いたのです」
翠が「そんな力はない」とわんわんたちに伝えてそのまま信じた。自分で確認することを怠ったのは我らの失態である。すみませんと謝る。夕陽様は呆れたようにため息。
「わたくしにじゃないでしょ」
わんわんはお茶の給仕の手を止めて、僕に手をついて申し訳ないと頭を下げた。その姿に僕はアワアワ。
「わんわん気にしてないから!顔を上げて!いいから謝罪なんていらないから!」
「ありがとう存じます。お言葉に甘えさせていだだきます」
そしてわんわんはまたお茶の支度をする。夕陽様はあなたの言葉が足りないのや、変な優しさでみんなが辛かった。あなたのせいよ!と顔に指さして叫ぶ。
「夕陽、人に指を向けるな」
「うるさいわよ。夏樹は力いるのよね?」
「はい」
なら来なさい、今解放してあげると手を取られた。縁側に出るから外の草履を履け、わんわんわたくしのもと指示し、すぐにわんわんは持って来た。僕は急なことでどうしていいか分からない。怖いことなのかなとか思い少しためらう。そしたらいいから来なさいと急かされて渋々庭に出ることにした。自分で欲しいとは言ったけど、不安だ。
「遅くなって悪かったな。こちらに連絡が来るのが遅かったんだよ」
「そうそう。わたくしの部下は変化前ならなんとかなると思ったらしいのよね」
なんとかなりませんでしたけど。そう僕は思ったけど「お疲れ様でございました」とニコニコしていた。
「あの山どうなさるの?」
「俺の山じゃないから知らん。夕陽が畑の持ち主に対応してくれ」
「ええ~……めんどくさ」
わんわんがしばらくするとアイスコーヒーを持ってきた。僕らも合わせろとアイスコーヒー。そしてお菓子は栗まんじゅう……こんな時はせめてマドレーヌとか洋菓子にしてくれ。
「わんわん、ケーキは?」
「今買いに行ってます。シャトーマグノリアのでいいんですよね」
「うん!あそこの好き」
町に洋菓子店は当然ある。そしてこのシャトーマグノリアは町一番の高級店。ショートケーキ一個が五百円である。人の世界に換算すると一個二千円の贅沢品。まあいいやと夕陽様はストローの紙を取り優雅に半分飲み干している。
「ここんちの美味しいわよね」
「まあな。夏樹の村に行ったついでに買ってきてるから」
「ふーん。どこの?」
「えっとな……」
なんてコーヒー豆の話になった。なんでだよ。事件の話は?何で山が消えたの?と、気持ちは急くけど僕はニコニコとしていた。
「それはそうとなんで夏樹が対応してくれなかったのよ」
「うん?できないんだ」
「できないとは?は?」
二人の会話が僕の方に向いた。そしてこの部分はこの事件が始まってすぐから僕を苛む事実だ。
「申し訳ございません。私の力不足でございます」
「それは違うから」
「なにが違うよのぉ」
翠は何も言わなかった。無言でチューッとコーヒーを飲んでいる。その様子を見つめていた夕陽様はグリンと隣の僕の方に顔を向けた。僕はビクッとしてしまったけど、スッと頬に手をあてられて見つめてくる。
金色の美しい瞳。でも瞳孔が細くなったり膨らんだりを繰り返す。なに?と僕は怯えた。表情がなく、まるでスキャンしてるような夕陽様に動けなかった。しばらくすると瞳孔が普通サイズになった。
「ふん。まあいいわ」
「あの?」
夏樹はかわいがられてるわねえとにっこり。そして今度はふわりと僕を抱くと耳元で「攻撃の力は欲しくない?」と囁かれた。僕は、あのいたたまれなかった数日が頭を駆け巡った。
「欲しいです。この数日みんな気丈にしてましたが怖かったはずです。僕は何も出来ずにいました。シェルターがダメならみんなを守るしかできない。外に逃げることも叶わずで、それはとても辛かったです」
「そうね」
体が離れると頭を撫でてくれる夕陽様。僕の妻としての役目は翠の代理をすること。自分を含めみんなを守る「竜の妻」としての責務がある。そう翠に聞いていたけどなにもできなかった。物理的な攻撃力もなく、主代理として場を仕切ることも、何も分からなくて動けなかったんだ。僕は、僕は……
うなだれる僕の肩をポンと叩き、夕陽様は翠を睨んだ。夏樹が可哀想よって言ってくれた。翠はフンと鼻を鳴らしこれでいいと一言。
「危険なことはさせたくないんだよ」
「分かるけどね。でも夏樹の立場を思えばそうは言えないんじゃないの?」
翠は眉間に深いシワを刻み、黙って夕陽様を見返してため息。
「分かってるんだが嫌なんだよ」
「あなたらしいけどね。でもお役目が果たせない苦しい気持ちは考えないの?何も分からないは辛いものよ?」
「考えてるけど……」
お待たせしましたとマオがケーキの箱を持って来た。ものすごく息切れしてね。この速さは力を使ったんだね。お疲れ様と僕が声をかけると、ニコッとマオは笑って下がった。
「わーいケーキだわ」
わんわんが取り分けてお皿に移し、夕陽様に差し出すとすぐに食べ始めた。疲れてるから美味しいとご満悦だ。マオの努力が実りました。
「翠」
「なんだよ」
美味しそうに頬張りながら夕陽様はジロリと翠を見つめる。
「今後もこんなことがないとは限らない。あなたの店が焼けるとか、水没するとか?」
「わかってるよ」
僕らの分もあって不機嫌そうにケーキを口に運ぶ翠。美味しいけど、憮然とした顔してるから美味しくなさそうに見える。
「あのな、俺じゃあ引き出せなかったんだよ。仕方ない部分もあるんだ」
「そっか。ならしていい?」
「……夏樹の承諾を取ったらな」
「はーい」
夕陽様はフォークを置いて僕の方を向く。そしてしっかりと僕を見つめる。
「夏樹の力は今限定的に発動しています。翠は特別な力があるから」
「あのそれは?」
話の流れからなんとなく察してはいたけど、翠ができない理由が分からない。中身は竜の力を行使できるんだから、調整は出来るでしょう?そう夕陽様に尋ねた。そしたら僕の顔の前で人差し指を横に振る。
「母君様の神使の力が邪魔するのよね」
「え?」
狐の神使は神に仕え民を守る。バチを当てるとか戦うとかはは神の仕事。神使はひたすら神や民を守る盾になるらしい。その守ることも、本当に耐え忍ぶ守り方だそうだ。つまり、その神使の「耐えて守る」力が竜としての力に制限(守りは異常に強くなるけど)をかけるそうだ。僕の知ってるイメージとは違うんだな。狐めっちゃ戦うかと思っていた。
「翠はその神使の力も受け継いだの。親の愛よね」
「へえ」
「だから兄君様たちより優しく思いやりがある代わりに精神的に弱いかな」
「弱くは……」
あら、気が付かないの?ときょとんとされた。確かに優しいけど、弱くはないと思うけどなあ。僕はそんな弱さを感じたことあったかな?と考えた。繊細な部分はあるけどね。考えていると夕陽様は、夏樹はダメねえと微笑む。
「あなたを迎える前にね。俺は人の世界では不倫の子みたいになるんだ。夏樹にバレたら嫌われるかな?ってわたくしに相談に来たのよ」
「ええ?」
「やめろ」
そう言えばと、前に町に置いていかれた記憶が頭に浮かんだ。そんなに気にしてたのか。人に相談するほど気にしてたなんてと僕は驚いた。
「翠はあなたに好かれたくて仕方なかったの。男だなんだは落とせる自信はあったみたいだけどね。夏樹はそんな部分が潔癖かもと不安がってね。人は気にするでしょう?」
気にする人もいるだろうけど僕はねえ。そんな良いお家の出身でもなく普通の家庭だもの。本人をどう感じるかだよねえ。
「気にしません。それはご両親の問題で、翠がどうにか出来ることではありませんし」
「だって。いい子ね夏樹は」
「当然だろ」
翠はむしゃむしゃとケーキを食べながらムッスリしている。
「言わなくても夏樹は理解してくれるんだよ」
「言わないから今回悲しんだんでしょうよ」
「まあ……」
翠はストローをスッと抜いてコーヒーを一気飲み。「夏樹、悪かった」と小さな声で一言。言い訳だがと完全に不貞腐れ気味。
翠は「こんな頻繁に屋敷を空けることが今までなかった。俺がここに引っ越してからずっとだ。その認識があって、力は僕自身を守れるだけあればいいと考えていた。帝の代替わりなど一生に一度あるかないかだ。だから」と黙り、おもむろに栗まんじゅうをひとつ取り、包みを開けて食べる。ケーキはすでに食べ終わっていた。早いね。
「ふーん。あなた分かってたはずよ。毎年のあいさつで帝たちが少しお年が進んでいるかもと噂になってたでしょう?私たちは近い身内だからお近くにも行くし」
「あー……俺人の顔あんま見ない」
「はあ?」
夕陽様は、いくら身内に興味なくとも見なさいよと翠を叱った。彼はそうだなと聞いていない。そして次の栗まんじゅうを開ける。どんだけ食べますかあなた。
「食べてないで聞きなさい。あなたは……」
「説教はいらない。自覚してるから」
「わざとならなお悪い!あなたはいつもでしょ!もう!」
夕陽様に燃料を注ぐ翠。彼女はメラメラと燃え上がり止まらない。あなたは他人に興味なさ過ぎるしとあーだこーだ。僕は仕方なく夕陽様の隣でめったに食べない美味しいケーキを食べ進める。ウマッ
「夕陽様そのへんで」
「わんわん!あなたが甘やかすから!」
冷たい飲み物の後は温かいお茶はいかがと、わんわんが気を利かせて用意して来たのを即座に睨み怒鳴る。わんわんは恐縮ながら、
「夏樹様のことは我らもつい最近まで知りませんでした。それで責める物言いも避難中にしてしまい、申し訳ないことをしました」
「え?それまで気がついてなかったの?」
「不徳のいたすところですが、最近聞いたのです」
翠が「そんな力はない」とわんわんたちに伝えてそのまま信じた。自分で確認することを怠ったのは我らの失態である。すみませんと謝る。夕陽様は呆れたようにため息。
「わたくしにじゃないでしょ」
わんわんはお茶の給仕の手を止めて、僕に手をついて申し訳ないと頭を下げた。その姿に僕はアワアワ。
「わんわん気にしてないから!顔を上げて!いいから謝罪なんていらないから!」
「ありがとう存じます。お言葉に甘えさせていだだきます」
そしてわんわんはまたお茶の支度をする。夕陽様はあなたの言葉が足りないのや、変な優しさでみんなが辛かった。あなたのせいよ!と顔に指さして叫ぶ。
「夕陽、人に指を向けるな」
「うるさいわよ。夏樹は力いるのよね?」
「はい」
なら来なさい、今解放してあげると手を取られた。縁側に出るから外の草履を履け、わんわんわたくしのもと指示し、すぐにわんわんは持って来た。僕は急なことでどうしていいか分からない。怖いことなのかなとか思い少しためらう。そしたらいいから来なさいと急かされて渋々庭に出ることにした。自分で欲しいとは言ったけど、不安だ。
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