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帝の代替わり編
51 怖かったんだ僕は
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深夜前には宴はお開きになった。夕陽様は二階に侍女と向かい、僕らもお風呂入って寝ようとなった。体を流し湯船に浸かる頃。
「夕陽様は賑やかだよね」
「昔からだ。変わらんな」
「翠の本物の妹みたいだし」
「まあなあ。用もなく都の俺の屋敷にも来てたしな」
ここに来て一番お会いするのが夕陽様。会いに行くのは年に一度の新年のあいさつかな。あちらから頻繁に来るだけで、多い時は月に二回は来る。仕事のついでや用がなくても来る。初めの頃はあいさつだけで僕は下がってたけど、最近は一緒に過ごすことが増えているんだ。向かい合ってたんだけど、なんか翠がとろんとしている。
「なつき」
「ここはお風呂でーす。エッチい声で呼ばないで」
「俺相当我慢してたんだよ」
「僕はしてません」
「意地悪言うなよ」
せめて抱かせろよと、向かい側に座る僕をエッチぃ顔で誘う。色っぽく微笑むんだ僕が好きな笑顔で。分かっててやっているんだこの男はッ
「出たらね」
「抱っこくらいいいだろ」
「抱っこさせたら襲ってくるでしょ」
「ッ……」
耳がピルピルと動く、当たりだな。お風呂の時は尻尾は出さないから耳だけ。動物の耳は正直である。広めの浴槽で端と端なら足が当たらないくらい。僕らは睨み合う。
「なつき?」
「ダメです。ベッドでね」
「なら出る」
「はあ?今入ったばっかでしょ」
夏樹が意地悪になった、最近冷たい。都から帰ってきたばかりの俺を拒否るとは、なんという嫌がらせだとブツブツ。化け物退治もしたのに労いのプレゼントがあってもいいじゃないか。なのに拒否とかネチネチブツブツ。
「翠様、あなたは隠しごとが減る度にカッコつけなくなりますよね」
「ああ、つける必要を感じなくなるからな。ありのまま愛してもらえると夏樹が信じさせてくれるからだ」
「それはありがとう。それは信じていいです」
「ならさせて」
「出たらね。させねえとは言ってません」
あのシェルターではゆっくりお風呂に入れなくてね。汚れを落とすのみだった。食事はイオの用意がよくて困らなかったけどさ。それにずっと緊張してて疲れてんのよ。気持ちがね。だからゆっくり入りたいの。そう説明した。
「それは悪かったと思ってるよ。疲れてんだろ?肩揉んでやるよ」
「いりません」
「……疑うなよ」
「その股間では疑います」
「いやこれは狐の特性だ」
「嘘つけ」
最近夏樹は夕陽に似てきて嫌だと立ち上がる。似てないけどね。あそこまで口は立たないもの。
「出るぞ。朝にゆっくり入れ」
「え?」
見上げる翠は苛立ってる感じに見えた。そして股間は言わずもがな。
「翠はもう……ほんの少しの時間でしょうよ」
「お前にはな。俺には長く感じるんだよ」
仕方ないかと僕も立ち上がる。したくないはずないじゃないか。抱かれたくて仕方ないのは僕も同じ。でもゆっくりと抱かれたかっただけなんだ。激しく押し込まれるのではなく、丁寧に触れ合いたかった。離れてた分翠を楽しみたかっただけなんだ。ねえ翠、そんな気持ちが分かるかと聞いた。
「ごめん」
「恥ずかしいけど見て、僕もこんな話でこんななんだ。でもね」
ごめんねと抱いてくれる。僕のお腹に当たる彼のは熱く硬い。
「お前はなんてかわいいんだ」
「ありがと」
エッチに関しては文句を言うようになった僕。したくないんじゃなくて、場所を選んでくれと文句を言うようになったんだ。屋敷のあちこちでするのは構わない。使用人のみんなも慣れたもので見ないふりも上手いし、見かければ近づいてくる人がいなくなる。でもお風呂は寛ぐところと相場は決まってるんだ。僕の中ではね。
「すぐ行こう」
「え?」
僕をそのまま抱き上げて、濡れたまんま廊下に出ようとする。というか出ている。
「待って翠!浴衣着ないと!ふんどしも!ねえ!床も濡れてるよ!体拭かなきゃ!ねえ!」
揺れて落ちそうで首に腕を巻いて掴まった。小走りなんだよ。
「明日ミオに謝るから抱かせて」
「もう!」
部屋に着くとベッドに押し倒されて口を塞がれた。
「待てない……なつき、なつき」
「んんっあ……」
愛撫もそこそこに押し込まれる。んくうっ僕も我慢してたから気持ちいいっけどちがーうッ
「ビクビクだな」
「当たり前でしょ。あなたに触れたくて僕も我慢してたんだから。こうなるから言ったのに」
「ごめん無理だった。それと朝までな」
「持たないよ僕が」
「大丈夫だ」
色っぽく髪から滴る雫が翠をより美しく見せる。中のはいつもより硬い。我慢してたのがよく分かる。
「毎晩してるのをしない辛さが分かる?」
「翠はそうかもね」
「お前もだろ」
「僕は我慢できまーす」
「嘘つき。少し動いただけで俺を締め上げてるのに」
「そりゃ反応するでしょ」
「ぬるぬるだよ?」
「あのね翠。この会話恥ずかしいよ?」
脚を開かされ間に翠。きっと僕は欲しそうな顔をしているはずだ。少し動く股間をキュッと締めちゃってるし、あっとかうっとか喘いじゃってるし僕は顔を手で隠した。
「隠すなよ」
「恥ずかしくなったんだもん」
なら恥ずかしくないようにキスしよう。目を閉じてればいいと僕の手を掴んで来ると唇が重なる。
「気持ちいいだろ?」
「すぐっイキそっゆっくりッ」
「ヤダ。何度でもイケよ」
「ハァハァ……やだあ気持ちいいよぉ」
僕は翠に抱きついていた。口を離す気もなく貪り、翠の腰は止まらない。んーッビクンっと体がすると僕の股間からは……あああ……いい……ドクドクと体が連動してしまう。
「早いな」
「してなかったからだよッハァハァ……」
「まだ夜は長いぞ」
「うん、もっとして。たくさん触って欲しい」
「もちろん」
飽きるなんて言葉はどこにもなく、疲れを忘れお互い求めた。触れ合ってるうちに、あの時の不安や心細さの心のフタが外れ始めた。
「すい……怖かったんだ。何もできなくて怖かったんだ」
「ごめんな。もう心配ないから」
「翠、すい……すい……す…い…」
「うん……うん」
翠の不在は自分が思っていた以上に不安が大きかった。みんなを信用してなかったんじゃない。自分の能力を疑ったのでもない。ただ翠が隣にいないことに不安で不安で仕方なかったんだ。僕はみんなに怖がっていないよう振る舞い、迷惑にならないことを考えていた。化け物の熊が飢えて死ぬのを待っているしかできなかった。
「すいぃぃ……傍にいて。僕は、僕はね、弱すぎるんだ!僕はどうしちゃたんだ!」
僕は心の内が完全に決壊。気を張ってることがどれほど大変だったか。熊の恐怖より、みんなの迷惑にならないように振る舞うことの方が辛かったと叫んでいた。
「夏樹、夏樹!夏樹!!」
僕は翠に縋り付くように抱きついた。強く強く抱きついたんだ。自分が何もできず、守られるだけの存在だったことが許せなかった。
「何もできなかったんだ!みんなを守ることもできなかった!僕はッうわああっ」
安心したら胸の内が溢れ出して止まらない。自分の不甲斐なさが苦しかった。僕はこんなに弱くなかったはずなんだ。自立した大人だった。一人暮らしもして、自分の収入で生活してた。仕事も小さなプロジェクトならリーダーができるくらいだったのに。なのにこの結果はなんなんだ?叫ぶだけ叫び、翠はただ抱いててくれた。そして落ち着く頃、
「翠が悪いんだ。あなたが僕を弱くした。あなたを失うのも離れるのも嫌で、もうわかんない」
「構わんよ。そのままの夏樹でいい」
「僕はイヤだ」
困った子だなあとグチュリと音を立て抜いた。少し休もうと、僕を上から下ろして抱いてくれる。
「俺の妻はこうなるのが普通。おかしくない」
「でも」
「でももへったくれもない。狐のメスは授乳に専念して、オスはエサや子供の遊びを担当する。協力して子育てするんだ。俺は狐の姿をしているし、お前は母君の防御の力がより似たし血筋でもある。そのせいだから、本能だから」
「そうなの?」
「そうなの」
落ち着けって。狐のメスらしい感性になってるだけだ。でも夏樹は男だから気持ちがせめぎ合う。それだけなんだ。気持ちに逆らわなくていい。そういうものだから、俺に甘えていればいいと頭を撫でてくれる。
「何かあって戦う場面が来ても無理に参戦しなくていい。自分を守るだけでいい」
「でも役には立ちたい」
「ならできる範囲でいい」
翠は僕が来た時よりかわいくなっている。男らしさは元々少なめだったけど、無邪気さが目立ってきて俺の妻らしくなった。俺は嬉しいよって。
「それ、バカっぽくなったの間違いじゃ?」
「お前、その発言は……よくないよ」
「そうじゃない。世の女性は賢く強くてしたたかだよ。僕は尊敬してるもの。僕はそれ以下でしょ」
「そう?この世界の妻らしいけどなあ」
家事全般せずこうして翠にかわいがられ、ことが起きても子供のように守られるだけ。防御の力は使えるけど、あんな化け物になった獣に破られない保証もない。頑張るつもりはあったけどさ。
「時間稼ぎでもいいんだよ。俺が傍にいるから」
「いない時は?」
「マオとわんわんがいる。あいつらかなり強いから時間は稼げる。俺がいなくても何とかなったはずなんだ」
わんわんとマオは帝の護衛の家柄だ。近衛と言われる役職のお家らしい。それは聞いているけどさ。
「近衛の家系の人は頭がおかしいレベルの強さなんだよ。手加減しなくていいとなれば化け物に近いくらいになる。そういう人たちだ。元々父君の護衛でな。それで俺に付いてるの」
「知ってるけど、そんな姿見たことないし」
「見せたら化け物と違って正気だし、手こずるからイヤだ」
本能なのかな。この世界に来てより血の力が活性化したとか?僕男なのに?でも体は女体化というか、子を産める体にはなっている。そのせいかな。どうなんだろ。
「悩むなよ。夕陽と話すと楽しいだろ?そうなるんだよ」
「わんわんたちも楽しいよ?」
「黙りなさい」
翠は起き上がり僕の脚を開くとズブリと押し込む。ンッ……お腹が翠でいっぱいだ。ついお腹を見つめ擦った。
男同士でこうして繋がることを昔は信じられなかった。対象が違ったから想像することすら嫌だった。なのに熱い彼のモノは嬉しいし、彼が大好き。変化する僕は……悪くない。
「翠でいっぱいだ」
「そうだな」
「ずっとここにいればいいのに。そしたら寂しくないのにね」
するとグイッと乱暴に深く深く押し込む。なに?と見上げた。
「かわいいこと言うなよ」
「へ?」
もう朝まで何も言うな。黙って俺に抱かれてろと激しくなる。待ってあのなんで?
「お前は俺の妻。お前にどんな変化があろうと変わらず愛すると誓う。疑うなよ」
「は、はい……?」
よくわかんないけど翠の好きにさせていた。まあ気持ちいいから困りもしないし、欲しければ自分から腰を振ったし吸い付いたりもする。そしていつものように快感が全身に広がり、強い快感は去らずにガクガクと震えた。いつまでも続くこの快感、たまになるんだ。苦しいほどの快感。
「あ、ああ……す…い……ダメ……も…」
「ゆっくり休め」
そして僕の意識は途切れてしまったんだ。
「夕陽様は賑やかだよね」
「昔からだ。変わらんな」
「翠の本物の妹みたいだし」
「まあなあ。用もなく都の俺の屋敷にも来てたしな」
ここに来て一番お会いするのが夕陽様。会いに行くのは年に一度の新年のあいさつかな。あちらから頻繁に来るだけで、多い時は月に二回は来る。仕事のついでや用がなくても来る。初めの頃はあいさつだけで僕は下がってたけど、最近は一緒に過ごすことが増えているんだ。向かい合ってたんだけど、なんか翠がとろんとしている。
「なつき」
「ここはお風呂でーす。エッチい声で呼ばないで」
「俺相当我慢してたんだよ」
「僕はしてません」
「意地悪言うなよ」
せめて抱かせろよと、向かい側に座る僕をエッチぃ顔で誘う。色っぽく微笑むんだ僕が好きな笑顔で。分かっててやっているんだこの男はッ
「出たらね」
「抱っこくらいいいだろ」
「抱っこさせたら襲ってくるでしょ」
「ッ……」
耳がピルピルと動く、当たりだな。お風呂の時は尻尾は出さないから耳だけ。動物の耳は正直である。広めの浴槽で端と端なら足が当たらないくらい。僕らは睨み合う。
「なつき?」
「ダメです。ベッドでね」
「なら出る」
「はあ?今入ったばっかでしょ」
夏樹が意地悪になった、最近冷たい。都から帰ってきたばかりの俺を拒否るとは、なんという嫌がらせだとブツブツ。化け物退治もしたのに労いのプレゼントがあってもいいじゃないか。なのに拒否とかネチネチブツブツ。
「翠様、あなたは隠しごとが減る度にカッコつけなくなりますよね」
「ああ、つける必要を感じなくなるからな。ありのまま愛してもらえると夏樹が信じさせてくれるからだ」
「それはありがとう。それは信じていいです」
「ならさせて」
「出たらね。させねえとは言ってません」
あのシェルターではゆっくりお風呂に入れなくてね。汚れを落とすのみだった。食事はイオの用意がよくて困らなかったけどさ。それにずっと緊張してて疲れてんのよ。気持ちがね。だからゆっくり入りたいの。そう説明した。
「それは悪かったと思ってるよ。疲れてんだろ?肩揉んでやるよ」
「いりません」
「……疑うなよ」
「その股間では疑います」
「いやこれは狐の特性だ」
「嘘つけ」
最近夏樹は夕陽に似てきて嫌だと立ち上がる。似てないけどね。あそこまで口は立たないもの。
「出るぞ。朝にゆっくり入れ」
「え?」
見上げる翠は苛立ってる感じに見えた。そして股間は言わずもがな。
「翠はもう……ほんの少しの時間でしょうよ」
「お前にはな。俺には長く感じるんだよ」
仕方ないかと僕も立ち上がる。したくないはずないじゃないか。抱かれたくて仕方ないのは僕も同じ。でもゆっくりと抱かれたかっただけなんだ。激しく押し込まれるのではなく、丁寧に触れ合いたかった。離れてた分翠を楽しみたかっただけなんだ。ねえ翠、そんな気持ちが分かるかと聞いた。
「ごめん」
「恥ずかしいけど見て、僕もこんな話でこんななんだ。でもね」
ごめんねと抱いてくれる。僕のお腹に当たる彼のは熱く硬い。
「お前はなんてかわいいんだ」
「ありがと」
エッチに関しては文句を言うようになった僕。したくないんじゃなくて、場所を選んでくれと文句を言うようになったんだ。屋敷のあちこちでするのは構わない。使用人のみんなも慣れたもので見ないふりも上手いし、見かければ近づいてくる人がいなくなる。でもお風呂は寛ぐところと相場は決まってるんだ。僕の中ではね。
「すぐ行こう」
「え?」
僕をそのまま抱き上げて、濡れたまんま廊下に出ようとする。というか出ている。
「待って翠!浴衣着ないと!ふんどしも!ねえ!床も濡れてるよ!体拭かなきゃ!ねえ!」
揺れて落ちそうで首に腕を巻いて掴まった。小走りなんだよ。
「明日ミオに謝るから抱かせて」
「もう!」
部屋に着くとベッドに押し倒されて口を塞がれた。
「待てない……なつき、なつき」
「んんっあ……」
愛撫もそこそこに押し込まれる。んくうっ僕も我慢してたから気持ちいいっけどちがーうッ
「ビクビクだな」
「当たり前でしょ。あなたに触れたくて僕も我慢してたんだから。こうなるから言ったのに」
「ごめん無理だった。それと朝までな」
「持たないよ僕が」
「大丈夫だ」
色っぽく髪から滴る雫が翠をより美しく見せる。中のはいつもより硬い。我慢してたのがよく分かる。
「毎晩してるのをしない辛さが分かる?」
「翠はそうかもね」
「お前もだろ」
「僕は我慢できまーす」
「嘘つき。少し動いただけで俺を締め上げてるのに」
「そりゃ反応するでしょ」
「ぬるぬるだよ?」
「あのね翠。この会話恥ずかしいよ?」
脚を開かされ間に翠。きっと僕は欲しそうな顔をしているはずだ。少し動く股間をキュッと締めちゃってるし、あっとかうっとか喘いじゃってるし僕は顔を手で隠した。
「隠すなよ」
「恥ずかしくなったんだもん」
なら恥ずかしくないようにキスしよう。目を閉じてればいいと僕の手を掴んで来ると唇が重なる。
「気持ちいいだろ?」
「すぐっイキそっゆっくりッ」
「ヤダ。何度でもイケよ」
「ハァハァ……やだあ気持ちいいよぉ」
僕は翠に抱きついていた。口を離す気もなく貪り、翠の腰は止まらない。んーッビクンっと体がすると僕の股間からは……あああ……いい……ドクドクと体が連動してしまう。
「早いな」
「してなかったからだよッハァハァ……」
「まだ夜は長いぞ」
「うん、もっとして。たくさん触って欲しい」
「もちろん」
飽きるなんて言葉はどこにもなく、疲れを忘れお互い求めた。触れ合ってるうちに、あの時の不安や心細さの心のフタが外れ始めた。
「すい……怖かったんだ。何もできなくて怖かったんだ」
「ごめんな。もう心配ないから」
「翠、すい……すい……す…い…」
「うん……うん」
翠の不在は自分が思っていた以上に不安が大きかった。みんなを信用してなかったんじゃない。自分の能力を疑ったのでもない。ただ翠が隣にいないことに不安で不安で仕方なかったんだ。僕はみんなに怖がっていないよう振る舞い、迷惑にならないことを考えていた。化け物の熊が飢えて死ぬのを待っているしかできなかった。
「すいぃぃ……傍にいて。僕は、僕はね、弱すぎるんだ!僕はどうしちゃたんだ!」
僕は心の内が完全に決壊。気を張ってることがどれほど大変だったか。熊の恐怖より、みんなの迷惑にならないように振る舞うことの方が辛かったと叫んでいた。
「夏樹、夏樹!夏樹!!」
僕は翠に縋り付くように抱きついた。強く強く抱きついたんだ。自分が何もできず、守られるだけの存在だったことが許せなかった。
「何もできなかったんだ!みんなを守ることもできなかった!僕はッうわああっ」
安心したら胸の内が溢れ出して止まらない。自分の不甲斐なさが苦しかった。僕はこんなに弱くなかったはずなんだ。自立した大人だった。一人暮らしもして、自分の収入で生活してた。仕事も小さなプロジェクトならリーダーができるくらいだったのに。なのにこの結果はなんなんだ?叫ぶだけ叫び、翠はただ抱いててくれた。そして落ち着く頃、
「翠が悪いんだ。あなたが僕を弱くした。あなたを失うのも離れるのも嫌で、もうわかんない」
「構わんよ。そのままの夏樹でいい」
「僕はイヤだ」
困った子だなあとグチュリと音を立て抜いた。少し休もうと、僕を上から下ろして抱いてくれる。
「俺の妻はこうなるのが普通。おかしくない」
「でも」
「でももへったくれもない。狐のメスは授乳に専念して、オスはエサや子供の遊びを担当する。協力して子育てするんだ。俺は狐の姿をしているし、お前は母君の防御の力がより似たし血筋でもある。そのせいだから、本能だから」
「そうなの?」
「そうなの」
落ち着けって。狐のメスらしい感性になってるだけだ。でも夏樹は男だから気持ちがせめぎ合う。それだけなんだ。気持ちに逆らわなくていい。そういうものだから、俺に甘えていればいいと頭を撫でてくれる。
「何かあって戦う場面が来ても無理に参戦しなくていい。自分を守るだけでいい」
「でも役には立ちたい」
「ならできる範囲でいい」
翠は僕が来た時よりかわいくなっている。男らしさは元々少なめだったけど、無邪気さが目立ってきて俺の妻らしくなった。俺は嬉しいよって。
「それ、バカっぽくなったの間違いじゃ?」
「お前、その発言は……よくないよ」
「そうじゃない。世の女性は賢く強くてしたたかだよ。僕は尊敬してるもの。僕はそれ以下でしょ」
「そう?この世界の妻らしいけどなあ」
家事全般せずこうして翠にかわいがられ、ことが起きても子供のように守られるだけ。防御の力は使えるけど、あんな化け物になった獣に破られない保証もない。頑張るつもりはあったけどさ。
「時間稼ぎでもいいんだよ。俺が傍にいるから」
「いない時は?」
「マオとわんわんがいる。あいつらかなり強いから時間は稼げる。俺がいなくても何とかなったはずなんだ」
わんわんとマオは帝の護衛の家柄だ。近衛と言われる役職のお家らしい。それは聞いているけどさ。
「近衛の家系の人は頭がおかしいレベルの強さなんだよ。手加減しなくていいとなれば化け物に近いくらいになる。そういう人たちだ。元々父君の護衛でな。それで俺に付いてるの」
「知ってるけど、そんな姿見たことないし」
「見せたら化け物と違って正気だし、手こずるからイヤだ」
本能なのかな。この世界に来てより血の力が活性化したとか?僕男なのに?でも体は女体化というか、子を産める体にはなっている。そのせいかな。どうなんだろ。
「悩むなよ。夕陽と話すと楽しいだろ?そうなるんだよ」
「わんわんたちも楽しいよ?」
「黙りなさい」
翠は起き上がり僕の脚を開くとズブリと押し込む。ンッ……お腹が翠でいっぱいだ。ついお腹を見つめ擦った。
男同士でこうして繋がることを昔は信じられなかった。対象が違ったから想像することすら嫌だった。なのに熱い彼のモノは嬉しいし、彼が大好き。変化する僕は……悪くない。
「翠でいっぱいだ」
「そうだな」
「ずっとここにいればいいのに。そしたら寂しくないのにね」
するとグイッと乱暴に深く深く押し込む。なに?と見上げた。
「かわいいこと言うなよ」
「へ?」
もう朝まで何も言うな。黙って俺に抱かれてろと激しくなる。待ってあのなんで?
「お前は俺の妻。お前にどんな変化があろうと変わらず愛すると誓う。疑うなよ」
「は、はい……?」
よくわかんないけど翠の好きにさせていた。まあ気持ちいいから困りもしないし、欲しければ自分から腰を振ったし吸い付いたりもする。そしていつものように快感が全身に広がり、強い快感は去らずにガクガクと震えた。いつまでも続くこの快感、たまになるんだ。苦しいほどの快感。
「あ、ああ……す…い……ダメ……も…」
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