お祭りの花嫁に強制参加させられたら本当に神様の嫁になってしまった

琴音

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帝の代替わり編

51 この世界の成り立ち(帝の証言)

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 帝の仕事はこの世界を守ること。天帝である竜のお心そのままを維持することが使命である。それが大前提だと雨月様。

「ここからは他言無用だ」
「はい」

 みんな姿勢を正し座り直す。顔は緊張で強張り、僕は特にだ。本来ここにいていい種類の獣じゃない気持ちが湧き上がる。向かいの潮音様は魂が風前の灯ってお顔。

「天帝の宝珠に関してだ」

 みんな固唾を飲んだ。これに関しては帝しか知らない時事ばかりで何も知らないに等しい。自分たちに力を与え、人の姿を維持するお力のある宝珠としか知らない。

「あれなあ。ないんだよ」
「へ?」
「は?」

 みんな変な声を出した。この屋敷群のどこかに安置されてて、帝が祈っていると聞いてましたが?皆同じことを思ったのか驚いた顔のまま動けない。

「宝珠は確かにある、飾りとしてな。何の力もないんだ。きれいな大きいガラス玉のようなもので、実際は水晶みたいだけどな」

 じゃあこの力はどこから?維持しているこの世界の力はなんだと、時雨様がやっとのことで口を開いた。

「それなあ。前の帝に聞いたんだよ。そしたらさ」
「そしたら?」
「俺たちに、視覚的に分かりやすくするため、宝珠の飾りを用意させたんだそうだ。形があった方がやりやすかろうってな」

 まあそうかもねと夕陽様。何も分からんだろ?だから、雨月様はこの世界の正確な成り立ちを聞かせてやると話し始めた。

「まず初めに、天帝は元々あったであろう動物だけの世界を見つける」

 そこでみんなビクッとした。「そうか、この変な空間は元々あったのか」と時雨様。雨月様はそうらしいとうなずく。あの当時こんな不思議空間があちこちにあった。今人が住む地球と少しズレた世界。行き来は出来るけど別の世界で、四次元なのか別の星と繋がってるのかすら不明だそう。

「そして天帝は人に化けてここに来た。次に天帝は動物を獣にし、人らしくなるためにレクチャーをした。自分がこの世界の神としてというか、帝の役割をしてこの世界を制定し始めたらしい」

 なんてこと、自分で手を入れてたんだ。自然発生的になったのかと思ってたよ。みんな前のめりで雨月様を見つめていた。

「そして小さな村を作ることにした。天帝はどこかから建築の道具を集めてきてやり方を教えた。そして一緒に汗を流し村が完成。それがこの場所だ」
「おお……」

 この宮中の建物群がその当時の村のサイズらしい。この時点では獣はこの辺の生き物のみで、周りは日本にいる普通の動物しかいなかったらしい。

「獣たちが自給自足ができる頃、天帝はいなくなった。人の世界に出入りできる鏡を数枚置いてな」
「あれ天帝のプレゼントなの?」
「そうらしい。今ではここの博士が増産しててな。天帝が作り方を教えてくれたらしいよ。ここまで世界が大きくなると不便だろ?ってな」
「へえ……」

 地方の東西南北、そしてここの鏡は天帝の頃からのものだそう。これが宝珠なんじゃないの?と、僕はつい口を挟んでしまった。

「夏樹の推察は当たり。普段遣いされてるけどあれこそ形あるプレゼント。天帝が俺たちにくれたものはな」
「へえ……」

 それを使い人の世界を真似て人らしくなれ。そのうちいいことがあるからって言い残したらしい。みんな黙って聞いていた。

「いいこと、それが人の神だ。俺たちが人の世界に出入りしても何も言わないのはそのせいなんだよ」
「人の神に頼んでいたのか?」
「そうらしい。仲良くしてあげてってな」

 天帝がいなくなるまでの間、マムシの女の子を妻にして子を量産。そしていなくなる日、ひとりの子を帝の後継に指名して、後を頼むと消えたそうだ。

「それが初代帝だ。マムシと竜の子だな」
「二人から生まれた子供たちがこの世界を統治し、獣の子どもは自然と増えた。そして野生の動物は森に移動(追いやられた)し、我らの先祖は繁栄した」

 竜の血は強く、その時の子供たちが我らの祖。マムシの奥様は、天帝がいなくなると程なくして亡くなったらしい。天帝が力を使い、無理やり産ませていた疑いありだなあと雨月様。俺たちは一度にひとりのみ。なのに毎年産ませてたらしいと伝わってるんだそう。なんか嫌だなそのやり方。何か目的があって作った世界だろうけど、それはちょっといただけない。マムシの奥様が不憫だもの。

「でも奥様が天帝を恨んでいたなんて話はないそうだ。みんなも知ってるように気持ち悪いほどの男前だろ?ちゃんと話していた辰巳様は「かわいらしい方」って言ってたし。まあ、惚れた弱みだろうな」
「釈然としないけどそうなんでしょうね」

 朧様がそう答えたけど、女性陣の顔は苛ついていた。当然だよね。僕もいい気持ちはしない。

「先祖たちはゆっくりと人の文化を取り入れ、我らは増えていった。この世界が安定すると我らの力も安定し、人の神がやってくるようになった。そして我らに生活の知恵を与えてくれたらしい。天帝の代わりだな」

 その代償として神使を差し出せって契約がある。我らに拒否権はなし。いらねって言われたら返される。自分から辞退して帰ってくることも可能だが、説得は自分次第。我らの母君は頑張ったんだろうなあと雨月様。

「だから宝珠はない。力は天帝が天帝の世界から送り込んでいる。以上だ」

 誰も口を開かなかった。みんな考え込んでいて、僕もこの事実を繰り返し考えた。天帝の目的は分からないが実験場疑惑が大きい。それか人の神と結託してしがらみのない部下の育成……かも。いや、神の考えることは人には分からない。もっと壮大な計画があるのかも。

「この話を聞いたからと言って今の現状が変わるものでもない。天帝のご意思をこの世界に作る。これは変わらない、俺たちの存在意義を疑うことになるからな」
「まあな。兄君頑張れ」

 雨月様は軽くため息をもらし、お前ら助けろよって。

「宴が多くて大変なんだ。神様たちはもてなせってうるせえの。芸能人を呼べ、夜の部屋に呼べとかな」
「ああ……遊びに来てるんだな」
「半分はそうだろうな」

 雨月様と時雨様の会話にみんな目を伏せた。「何しに来てるんだか」と夕陽様。雨月様は、まともな神は神使を見つけてすぐ帰るけど、おかしなと言うか、荒神とか祟り神に近い神様は遊んで帰っているらしい。

「この神様たちはマジで怖い。一言「死」と言われるとその人がその場で死ぬ神様もいるんだよ」
「ヒッ」

 なんだそれとみんな絶句。人の神は化け物か?と場が凍った。雨月様はその場の雰囲気を無視し、

「一言主神とかいう神様かな。今人の世界で祀られてる一言主様は言葉は言霊といい、吐き出す言葉には霊力がある。だから発する言葉を大切にしましょうって神様だ。だが亜種の忘れられた神がいる」
「えー……嫌だわその神様」
「俺もだが、大昔に人々に忘れられた神らしくて、そんで荒ぶっててなあ」

 人の神は、忘れられたり放棄されたりすると祟り神になるっぽいと雨月様。そいつらがここを観光地化してるそうだ。ヤダそれ。

「契約があり来るなとは言えないんだ。拒否権がないのが痛い」
「入り口塞げばいいのでは?」
「できるならとっくの昔に前の帝がやってるよ。天帝も放置だそうだ」
「相談は?」
「したけどかわいそうな神様なんだ。あれらも昔はこの地の力になってくれた者たち。優しくしてやれってしか言われないらしい」

 内緒だけど、このまま人に放置され続けばそのうち消える。でも人間と獣では力の根源も違うし、死後神になるため悠久の刻がある。消えると言ってもいつかは分からない。だから我慢しなさいってことらしい。前の化け物に変化した熊と同じじゃねえか。待つばっかりだ。先手を取れないのかと雨月様に翠は聞いている。

「ないな。あちらの神様を殺すとかできない、人から神に転生した不老不死だからだ。人間の信仰の力が彼らの力のすべて、完全に使い切るまで世界に存在する」
「そうかもだけど、この人間の神様との付き合いは不均衡過ぎないか?」

 時雨様が苛つき混じりに食い下がる。雨月様は仕方ないんだと諦めたようにため息をつく。

「動物は獣になろうが動物なんだとさ。人より穏やかに生きてるし戦なんてしたことない。金に執着もしないし足るを知る。嫌いな言葉だけど俺たちは畜生なんだとよ。俺たちはどこまでいってもな」

 僕はこの言葉を許せなかった。畜生とはなんだ。ここの人は自分の利益のために命を掛けるけど、それは一対一がほとんどだ。強盗とか確かに増えてきたけど、人の世界に比べればないに等しい。どの口が言ってんるんだか。

 人の世界は「性的、金銭、出世欲」上げたらきりがないくらいの欲で動き、最終的には国の指導者が大量殺戮を「正義」として戦う。市民は置き去りでね。

 てめぇの胸に手を当ててからここの人をバカにしやがれ。神様たちが人だった頃も戦があったじゃないか。あなた方が主導して起こしてたんはずだ。僕もその子孫だけどこの言い方は違う。

「放棄されたならここの人みたいに自分の世界に帰ればいいんだ。無理やり神社に残って寂しいって荒神になってさ。気持ちは分からんでもないけど、ここの人に迷惑かけるのは違うんだ。ふざけんなッ」
「あ、あの……夏樹?心の内が漏れてますよ」
「え?」

 夕陽様の声に顔を上げると、全員が僕を見つめていた。呆気に取られた顔をみんなしていた。僕はカーッと恥ずかしさのあまり顔が熱くなり下を向いた。

「も、申し訳ございません。少し苛つきまして、あの……失礼いたしました」

 蚊の鳴くような声で謝罪して小さくなった。知らないうちに口にしちゃってたよ。横の翠が僕の背中をポンと叩く。

「人であるお前の言葉は嬉しいものだな。なあ?」
「ええ。謝らなくていいわよ。わたくしたちも同じことを思ってましたから」
「夏樹、悪いんだがこっちに来てくれ」
「はい?」

 なんで?と見つめてると雨月様が手招きする。仕方なく席を立ちお傍に跪き頭を下げた。

「それいらない。立ちなさい」
「はい」

 立ち上がると雨月様と目が合い、ニコリとすると胸に手がズボッ またか!ここんちの人は断りもなくいきなりだ!

「なにするんですか!」
「いいから静かにしなさい」

 なにかゴソゴソと胸をこねくり回してると、僕がぽわっと薄っすら光りだした。はあ?

「やはりお前だったか」
「なにがです?」
「うん?荒神をこちらに入れない力を持つものがこの世界にいる。見つけろって辰巳様が言ってたのさ」

 なんだそれ。聞いてませんが?と見つめると。

「今夕陽が開放しきれてない力を開放してんの。翠には許可取ってるから」
「翠?」

 振り返るとごめん俺知ってたんだ、だってさ。後ろで済まなさそうにしている。またかと僕は睨んだ。

「翠は隠しごとが多すぎます!」
「それは違うぞ。これは母君が翠にくれた力だ。だが翠には使えなかった。あれは竜だからその力が邪魔する。人の神の力は人でなくては使えないんだよ。俺も解放はできるけど使用は無理なんだ」

 これでいいと雨月様は手を抜く。相変わらず不快な作業だよこれ。僕は完全にムカついていた。だってみんな知ってて教えてくれなかったってことでしょ?酷いよ。雨月様はそれは違うと言う。

「翠がお前を大切に思ってて、自分の傍で笑ってて欲しかったからだ。俺が側室に来いと言ってたのも、キスした時あれ?と感じたからだ」
「え?」
「母君の力を感じ、その中に異質な力も感じたからだ」

 なにそれ全然分からん。僕は雨月様を呆然と見つめていた……何が何だか分かんないよ。





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