お祭りの花嫁に強制参加させられたら本当に神様の嫁になってしまった

琴音

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帝の代替わり編

53 竜はどんな時でも竜なんだな

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 雨月様はこの世界の代表としての威厳に満ちていた。普段がなければ惚れ直してた。いや、初めから惚れてはいないけど、この感じで迫られれば「うん」と返事したかもしれない。それほどの何かを僕は感じていた。会場のみんなも同じなのか「ほう」なんて声もした。

 翠は翠で感無量で見つめていたし、時雨様たちも同じ。さすが兄君、普段もずっとこうならなどと小さい声が聞こえていた。

「我は皆の知るとおり……」

 あいさつが始まった。帝は透きとおるいい声で朗々と語る。身ぶり手ぶりもあり会場に一体感が生まれ、最後は盛大な歓声と拍手に包まれた。

「其方らの尽力を期待する!」

 そこで二人は下がり僕らはここで待機。今度は末席の方から外に出て、宴の会場に移動だ。同じくらいの広さの宴会場に全員分の御膳と座椅子と座布団。社員旅行の広間のような感じでものすごく広い。準備の方は優雅に動いてるように見えるけど、ものすごく早い動きでお酒のとっくりを配っていた。

 この宴の音頭を取るのは時雨様。右腕としてこれからお傍にいるんだ。その初めての席。

「堅苦しいことはいい。今後は新たな帝を助けてやってくれ。かんばーい!」
「かんぱーい!」

 うん時雨様だ。この人は裏表がなさすぎる。だが信頼もできるのが時雨様。雨月様より腹は白いと思われる。あくまでも比べてだけどね。

「お疲れ夏樹」
「翠もね」

 みんなが見渡せる身内席に案内されたんだけど、みんな近くにいるからいいかな。一人だったら心が死ぬ。それと、帝はこの席に顔を出さないらしい。彼らは私的エリアでお食事。そして僕らはいつもの感じで飲み食いしてたけど、次第に人が減っている気がする。

 奥の舞台ではめでたい演目の舞踊や音楽が続けられていた。舞台の前で「よっ!」とか掛け声をかけていて楽しそうだけど、集まってる人を抜いてもなんか変。

 いない人はどこいった?キョロキョロ見渡してもいない。百人程度は消えてる感じだなあ。まあ、時雨様が咎めないならいいのだろうけど。

「翠、人が減ってるような気がします」
「うん……深く考えるな。いつものことだ」
「いつものこと?」
「お前はかわいい。だがここでかわいさは発揮するな」
「なんで?」

 なんでじゃないだろうと渋い顔。ここに集まってるのはどんな獣?と翠に問われた。

「竜、もしくはその縁者です」
「よろしい。では竜の特性は?」
「力が強くこの世界を統べる人たちかな」
「他は?」
「他は……あ……黙ります」
「正解」

 隣の夕陽様がここに滅多に来ない人が多い。天帝がお見えの時と、新年のあいさつの時しか来ない人もいる。特に地方の方は中央に来ること自体が珍しいくらいだそう。伴侶はなおのことと説明してくれた。

「遠くで叫び声が聞こえるわね」
「ああ……」

 調理場と配膳の人以外逃げてるそうだ。竜が大量に来る時はこの御所のどこにいても危険。力でかなわないし、妾や側室の願望のない人にとって危険人物以外ないらしい。でしょうね。

「役人は男女ともに宿舎に帰宅してるはず。はずなのよ」
「それでも残ってる者もいるんだ」

 特に最奥の旅館部分の女中さんらが危ないらしい。あそこは帰れないからだそう。まあそうね。

「ここに残ってる連中は街に繰り出すか、そこ狙いだろ。ここに出仕してる者は、育ちがいいから妾にピッタリと思うらしいぞ」
「さすが竜ですね」
「褒められないわね」

 でも竜が増えすぎない理由でもあるから放置。「頭の悪い下半身に脳みそ」は死に絶えろが竜の家訓。知ってるけどさ。なんだかなあです。

「夏樹に言ってなかったけど、うちの一族(夕陽様のお母様が竜の流れ)の同世代が数人消えています。バカです」
「あうっ」

 夕陽様のところもか。こればかりは諭しても誰も聞きやしない。もしかしたら妻以外の子に帝になりうる子が?なんて希望を持ち側室を所望する。そういうことよと夕陽様。

「帝の身内(その世代の宗家の家柄)は信用が違うの。商売がやりやすいとかメリットもある。自分は帝や役人にはなりたくないけど、身内にはいて欲しい人が多いわね」
「なんか……」
「なんかよ」

 潮音様は夕陽様の隣でぼんやりしていた。ここは俺の席じゃないとかブツブツ言いながら、来たくなかったよと肩を落としている。

「夏樹、潮音は気にしなくていいわ」
「でも」
「わたくしが後で何とかしますから」
「はい」

 人が半分くらいになる頃お開きになった。僕らは来た時に使う旅亭に向かった。先代の帝がお年を重ね始めた頃に初めて来たかな。僕は先代たちのことを思い出していた。

 昨年のうららかな春の頃、麗様も辰巳様とご一緒に旅立たれた。旅立ちの少し前に近いお身内だけが呼ばれ、臨終に立ち会ったんだ。長生きされたから同世代のお身内はいなくて翠の兄弟とその伴侶、夕陽様のご兄弟くらいしか来なかった。ここが竜らしいところなんだけど、力がない(珠を次の人に渡すと帝の力はなくなる)人に興味ないんだよ。冷たいよね。

「お前はついに私の元には来なかったな」
「はい。辰巳様はとても魅力的なお方で、遊びに来てお話すると惹かれるものがありました」
「ならなぜ?」

 竜の天寿の全うは眠るように終わる。お布団に横になり「眠い」と仰るまでおしゃべりして過ごすんだ。枕元の僕の手を取り優しく微笑む辰巳様。

「翠様より魅力的ではなかったから。それに尽きます」
「ふふっそうか。あれに負けたか」
「はい」

 おじい様になっても美しかった辰巳様。隣の麗様も同じだった。二人ともいい年の取り方をされていて、穏やかに旅立って行ったんだ。そんなことを思い出しながら歩いていた。

「相変わらず遠いね」
「ここはそういうところだ」
「そんで従業員さんたち、猫さんがいない」
「逃げてるからな」

 途中で右に曲がりまた右に曲がる。そうするとズラッと客間がある。ここまで来るとさすがにうるさい。酔っぱらって騒いでる人の声もするし、街にいくぞぉーとか叫び声もする。

「明日も早くに朝のごあいさつがあった気がしますが」
「ああ、身近な人だけな。騒いでる人らは帰るだけの遠縁の人たちだ」
「ふーん」

 初めの天帝の子供のお家が「今も続いている」のが竜の一族。直系がいなくなって絶えたお家もある。ここで騒いでいるのはその生き残りの方たちだそうだ。地方でまったり生き、御所から距離を置いている。でも来たからには遊ぶ人たちだそう。

 僕らの部屋は以前と違い二階部分になる。それを踏まえ下は帝から遠い人たちのお部屋。二階に上がると人の気配はするけど静かだ。

「おお別のところみたい」
「竜もいろいろよ」
「そうですね」

 じゃあまた明日と夕陽様夫婦と別れた。時雨様夫婦は側近になるから近くに自宅がある。だから旅館には泊まらない。翠も来なさいと言われたけど遠慮したんだ。時雨様のところは幼いお子様がいて、賑やかで翠は居心地が悪いらしい。

「人の子はどうもね」
「子供嫌い?」
「違う。どうしていいかわからないんだ」
「ふーん。僕とは遊んでたんでしょ?」
「それは嫁にもらうつもりがあったからだ」
「ほーん」
「ここだ」

 今後ここに来る時は「翠専用の別荘」が用意されるからここに泊まるのは今回が最後。だから奥の一番いいお部屋を用意されていた。襖を開けると畳の前室があり、トイレとお風呂完備。横の襖を開けると二間続きの和室で奥はなぜかベッド。旅館ホテルみたいな作りだな。

「おかえりなさいませ」
「ただいま。わんわん」

 今回はわんわんが同行してくれている。装束を着せてもらうためにね。これだけの人数だからここの着付け担当の方では足りなくて、自分で連れてこいって案内だったんだ。先に翠が脱がしてもらい次に僕。

「大浴場に行きますか?」
「どうする夏樹」
「ここからかなり遠いよね」
「そうだな。片道五分かな」
「ここのでいいかな。疲れたから」

 先に入ります?と言われてはいと返事した。僕は軽く浴衣を羽織りお風呂場に。

「さすがに三点ユニットじゃないね」

 下の階はお風呂自体ないしトイレもない。みんな共同だ。でもここは各部屋にあるっぽい。わんわんは湯をためててくれていて広めのお風呂。床も壁も和風の岩っぽく作ってあって、小さな露天風呂ふうかな。奥に窓もあって開けると満天の月。

「春の初めは月は霞む。おぼろ月夜とはこのことだなあ」
「そうだな」
「ウオッなんでいる!」
「俺も入るから」

 扉のカギを閉めてなかったらしく、彼が入って来たのに気が付かなかった。

「入ろ?」
「う、うん」

 軽く体を流し浴槽に入る。ここ温泉だ。下と同じお湯を引いてるんだね、すごい。

「あー……気持ちいい」
「こっち来い」
「うん」

 翠を背中にゆらゆら窓の外にはおぼろ月。なんて贅沢なんだろう。僕は旅行が趣味ではなくてね。友達に誘われなければ行かなかったんだ。楽しいのは分かってたけど、一人旅は僕には向かなかった。一人が好きなくせに感動は共感をしたがる面倒くさいやつなんだ。

「うちも温泉引きたい」
「無理。出ない」
「言ってみただけ」
「そう」

 夏樹ってエッチい声がしましたが無視。首に吸い付くな、乳首を摘むな、股間は論外。

「翠!」
「触るくらいいいだろ」
「疲れてるから癒すの!」
「ケチ」
「ケチで結構」

 帝の代替わりは庶民には何も関係ないから街はいつも通り。天帝を祀る神社でお祭りがあるくらいかな。そのお祭りで住人に代替わりが認知される。帝含め竜の一族がこの世界の維持に不手際を起こさない限りみんな反応しないんだ。

「翠やめてよぉ」
「少しだけ相手してよ」
「出たらね」

 お前本当に風呂場では冷たいよなと、首を後ろに向けられた。僕を見つめる翠に、

「ここは寛ぐところでエッチしたくないの。五十年言い続けましたが?」
「聞いたよ」
「なら察して」

 風呂場では本当にかわいくないと頭を掴まれて口を塞がれた。

「翠!んっ……まっ…ん……あふ……や…あの……」
「夏樹はキス好きだよな。してればしたくなるだろ?」
「や、やめ……んふぅ……」
「ふふっエッチな顔になった」
「翠がぁ」
「うん」

 結局……

「やっああっ窓閉めて!声がまんでき…ああッ」
「みんな同じだから」
「それとうっ…これはッ出ちゃ前こすら……んーッ」

 僕はイッた足で窓を閉めた。ハァハァ……気持ちよかった。いやいや。

「翠!」
「怒った顔もかわいい」
「違う!」

 そのまま窓に手をついてろと言われると腰を掴まれた。すぐに押し込み激しい。前だけだと軽くしかいけなくて入れられれば……いい。気持ちよさに抵抗する気は失せた。

「ハァハァいい。夏樹」
「なんでこんなに気持ちいいんだろ……あ、そこもっと」
「俺だからだ」
「はいはい」

 すっきりとしたところで体を洗い外に出た。部屋に戻ると置き手紙がテーブルにあった。わんわんは「向かいの従者用の部屋にいます。用があれば呼んで下さい」の書き置き。ここにはお水も栗まんじゅうもあるし、小さな冷蔵庫にはお酒もジュースもあった。呼ぶ必要はないかな。着替えもきちんと置かれていた。

「翠がエッチだからわんわん下がっちゃったよ」
「構わんだろ」
「わんわんにも今日の話をしたかったのに」
「明日以降でもいいだろ」
「そうだけど」

 下着をつけようとすると要らないからと隣のベッドに押し倒された。

「翠?たまには一回でやめませんか?」
「無理」

 這って逃げようとしたら腰掴まれてズブリ。遠慮がねえなあ。

「翠あのねえ」
「足りないんだよ」
「普段は一回か二回でしょ?」
「だからもう一戦」

 絶対嘘だ。僕が風呂場ではきつく拒否る時は仕返しのように長くなるもの。

「体洗ったのに」
「また流せばいいだろ」

 僕はため息と共に動いて抜いた。そして向き合った。

「翠、抱くならちゃんと抱いて。無理やりは嫌だ」
「ごめん」

 翠は素直に布団を剥いで僕を寝かせる。自分も入り僕に跨る。

「ごめん。したいが先走ってしまうんだ。ここは安心できない養素も多くて、安心したくなるというか」
「それはいいんだけどね。大切にされたいんだ。繋がる時は特に。激しいのも嫌いじゃないけど丁寧なのが好き」
「うん」

 そこからは優しく抱いてくれた。僕の反応を見ながらゆっくりと触り舐めて触って。僕の興奮と共に少し噛んでもいる。その刺激に全身ゾクゾク。痛みが快感に繋がる。

「も……ムリ……ッ」
「そんなに締めるな。もげる」
「くっ……うっ……ふあっ……」

 おかしい。あの激しい快感が来てるんだ。ねちっこく愛撫されたせいかも。全身が敏感で……ううっ

「そんなにしてないのにまさか」
「や……あぁ……」

 覆いかぶさる翠はトロンとした顔をしていた。僕は激しい快感にガタガタと体が震える。気持ちよくてそれしか分かんない。なのにこんなに震えてかわいいなあ夏樹と激しくなった。追い打ちに意識が怪しい。疲れもあったのかな。結局意識飛んだまま寝ちゃたんだよね。しょうがないよね。





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