58 / 66
帝の代替わり編
54 恐怖の座敷
しおりを挟む
翌日の朝で帝の式典は全て終わり、宮中はいつものようにお仕事されている人が行き交っていた。出席した方たちは順次帰宅のため、玄関に向かいながら騒いでいた。
そして僕らは帝である雨月様に呼ばれ、騒ぐ人たちとは逆方向に歩いていた。そう、頼まれていた荒神を出入りできなくするためだ。問題はその力の発動の仕方を僕は知らない。行けば指示してもらえる信じていた。長い廊下を歩き、小さな部屋の襖が開けられると雨月様と時雨様、その側近の侍従しかいない。
「おはようございます。他の方は?」
「来ないよ。これで全員だ」
ものすごく不安になって僕は時雨様を見つめたまま。不安すぎてなぜ?と聞いてしまう始末。彼は当然だと言わんばかりに腕組みをする。
「本来帝と側近以外立ち入れない場所なんだ。だからだ」
「そ、そうですか」
部屋に入るのがためらわれ、僕は立ち尽くしてしまう。翠もどういうことだと時雨様を睨むし。その様子にいいから席に着け、これからのことを説明するからと促され渋々着席した。ここは昨日の和洋折衷の部屋だ。帝である雨月様が怖いことなんてないからと笑ってるけど、僕の不安はなくならない。
「うちの博士たちが言うには、ここの鏡に力を込めれば拡散できると言ってるんだ。だから地方巡りはなしだ」
「あ、それはよかったです」
そしてここからが本題だと雨月様。昨日は宝珠に力がなくて、どっかから力が来ると説明したな?と確認され僕らはうなずいた。
「それ嘘な。俺がその本体だ」
「は?」
夕陽様夫婦や時雨様の奥様には聞かせられないから多少改変して伝えた。宝玉に力がないのは本当だから。訳分かんないところから来てるのではなく「帝自体が宝珠」なんだそうだ。雨月様は本当にここの神様なんだねえ……へえ……などと感心してたら眉間にシワ。
「夏樹、その認識は間違いだ。天帝の力の媒体であることと、力を行使できるだけなの」
「なら同じじゃないですか?」
「そこが微妙に違う。宝珠がそもそも媒体であるかは不明なんだ。そして使える力も全部ではなく限定されている」
雨月様は前の帝からその力を受け継ぐため、特別な珠を受け取って食べたと言うか飲んだらしい。だから雨月様が宝珠。体の変化はないし、力はマニュアルをもらって使ってみたからそれは本当。でも世界の安定の力があるとは思えないそうだ。
そうかも知れないし違うかもしれない。歴代の帝が突然死とかなかったから分からないそうだ。そう言われているだけなんだと説明してくれた。ふーん。
「でもな。受け取るとその宝珠の記憶が俺にも流れ込む。この世界の初期から自分のことのように感じられるんだよ」
「すごいですね」
「あー……あんま楽しくないな。他の方はともかく、天帝の気持ちも少し伝わるから」
雨月様は、天帝は獣たちと楽しくこの世界を開拓していたのは感じる。でもそれ以外の何かも感じる。理解できない思惑のような感情で、気にならないと言えば嘘になる。だが、知らない方がいいと思ったそうだ。本能の深いところが「その感情を理解したら生きるのに支障が出る」かもと、ゾワッと背筋が寒くなったそう。
どす黒い感情のような、悪気のない子供の無邪気さのような感情に感じたそうだ。そして追及しないと決めた。当然歴代の帝も以下同文。
「とにかく来なさい」
説明してても楽しくないし面倒くさい。とっととやってお前らも遊びたいだろう?と雨月様はニヤリとする。もちろん面倒は早く終わらせるに限るけどさ。翠が不安そうに雨月様に尋ねる。
「兄君、夏樹はなにをさせられるのですか?」
「ん?行けば分かるよ」
「でも……」
「危険も何もないよ。心配性だなあ翠」
翠は納得はしてない様子だけど、みんなで目的地?に移動することになった。
いつもの長い廊下を歩き左に曲がる。こちらは知らない廊下だ。歩くにつれ人はいなくなり、僕らだけになる。なのにさらに歩く。廊下ははどんどん古くなり、改装されてない本当に古いエリアだ。壁の柱はあめ色を通り越して黒光りし、塗り壁はシミも多い。気になって僕は時々触れていた。
「長い年月の賜物だな。昔の廊下はろうそくや油の行灯だったんだ。その脂で燻されてな」
「へえ……」
兄君二人も江戸末期生まれで大昔を知らない。でも彼らの幼少期は、ろうそくや行灯が当たり前だったからこうなるのは当然だそうだ。僕はここまで来たら不安に思っても楽しくない。危険な好奇心が心に生まれていた。それに前に「翠の役に立ちたい」ってことが実現できるんだ。でも思ってたのとは違っているけど。
僕はこの先はどんなだろう、まだ見ぬ場所に「ワクワク」していたんだ。たった五十年で僕も立派な獣になったもんだと感慨深い。でもこの好奇心は死にも近くなるのはこの年月で実感済み。思慮深くいなくてはと思いながらも「不安と期待」が入り混じる。
「兄君、この先は」
「普段は俺と関係者以外は立ち入り禁止だ」
時雨様もここは初めてなんだ。楽しみだなとニコニコしている。翠は不安そうで顔色も少し悪く見える。壁の薄暗い裸電球の明かりだけだからかもしれないけど。僕は雨月様と同じ気持ちで申し訳ない。
暗がりの中、侍従の方が木の扉を押し開ける。その先も同じような廊下が続くけど少し下っている。スロープというのかな、そんな感じ。その先はさほど歩かずに到着。本気で古い襖が四枚並んでいた。春夏秋冬の野の景色が描かれた襖。黄ばんであちこち汚れも目立つ。襖に雨月様が手を掛け開けた。
「ここだ」
開いたけど誰も動けない。さすがにこの雰囲気は怖い。薄暗く少し湿った空気が外に流れてくる。手前は倉庫っぽい板の間だけど、どう見ても神社の祭壇みたいなのが雨月様の肩越しに見えるんだ。
「なにしてるんだ。入れよ」
雨月様が来いと手招きするけど躊躇する。明かりはついてるのにどこか暗い。禍々しい雰囲気を感じるんだ。
「でも……なんか嫌な感じがしますよ」
「ああ?」
僕が不安でみんなの顔を見ていると、時雨様は顔をしかめ鼻を鳴らした。そしてニヤッとして夏樹だけ入れ?と僕の背中を押す。なにすんの!
「お前の仕事だろ?俺たちはここにいるから。この襖の前にいるからさ。どこも行かないよ」
「ええ?」
中で雨月様が正解かもなあと、入り口で時雨様に押されて耐えている僕に来なさいと手招きする。ううっ……ここからできませんか?と言えば無理だろと。翠に目をやると俺もここでいいかな?と引いている。翠はここに入っちゃダメと体が拒否る。これは獣の危険信号で逆らうといいことはない。ごめんと手を合わせた。こんな時は隣にいろよと言えば、え?と一歩下がった。こんのぉーッ
「俺たちはここにいるから兄君とチャチャッとな」
「俺はたぶん役に立たない。兄君がいれば大丈夫だから」
「見捨てるの?翠」
「違うよ。ここにいるから」
「うぬぅ……」
仕方なく足を一歩座敷に踏み入れた。
いやあああっ背筋に電気が走る恐怖があるよ!これ怖いよ!お化け屋敷とかの怖さがあるよ、なんだよここ!僕はあまりの恐怖に喚いてしまった。ここ無理だよと下がろうとすると時雨様が背中を押してくる。やめれ!と怒鳴っていると黙れ!と雨月様に一喝された。
「す、すみません……」
恐怖に震えている入口の僕を見つめ、そういう反応になるよな。俺も初めての時になったんだ。前の帝に叱られたのは同じだと笑ってくれた。
「俺もここ嫌なんだよ。荒神の穢れが残ってる時はな。いくら浄化しても溜まるんだよこれが。来て欲しくない理由のひとつなんだ。ちゃんとした神は見て見ぬふりでさ」
「心から理解しました。これは嫌ですね」
「だろ?でも来い」
「はい……」
僕は深呼吸して胸を押さえた。バクバクしている心臓に落ち着けと念じ足を前に出……したくないけど一歩踏み出した。
「怖い……マジでなんなの。心の奥底から怖いしかないよぉ」
「さっき通ろうとした神をメンテ中と嘘ついて追い返したんだよ。一瞬なのにこれなんだ」
「どんだけだよ」
「だろ?追い返すのに神に触れた侍従がいきなり苦しみだしてさあ。今病院というか陰陽寮にな。アハハッ」
「ヒッ」
神たちはこちらで穢れを落とし、精神を整えて帰るらしい。穏やかなこの世界で飲み食いして温泉に浸かり、落ち着いた頃地方を回る神もいる。当然街とかでも遊んでから。正気になると「支払い」もしてくれる、金銀財宝を置いていくらしい。「いらないから来るな」が正直なところだそう。そうだろうとも!もう毒だろこの穢れは。
「俺たち竜やその御子は影響は受けないが、他は病院送りになる……かな?アハハッ」
「アハハッじゃありません!死んでる人もいるんじゃないですか?」
「まあ……いなくはないかな?」
なんだその神たちは。こちらの世界的には「妖怪」とか「化け物」だろ、もうさあ。僕はゲンナリどころではなかった。怖さは一向になくならないし冷や汗は出続けている。
「だから「特別な御子」を待っていたんだ」
「待つ気持ちは分かりますけどね!」
僕は恐怖のあまり大声になってしまった。雨月様が言うには明治維新後から荒神が増えだしたそうだ。神仏分離令だなと僕の頭には浮かんだ。その後は山間部の人口減少が荒神を作る原因と推察はできる。
「神使や獣の神の暴挙はこちらが回収しているからいいんだが、人の神はそうもいかんからなあ」
「そうですね」
いいからこっち来いと雨月様と隣に並ぶ。目の前には神社のような祭壇と、よく地獄絵巻に出てくる「閻魔様の鏡」がデーンと真ん中に置いてある。縁が火焔土器みたいな炎の禍々しい感じの意匠。銅製なんだろう、青錆も浮いててね。
「これに?」
「そう。鏡の上に宝石っぽい赤い玉があるだろ?それに力を込めればいいと……思う」
「ふーん。どうやるのです?」
「分かんない」
「は?」
分かんないとはなんぞや。僕は雨月様を見上げていたが、彼も首をこてんと倒すのみ。……嫌だこれ。これは聞いていた雨月様の必殺技「行き当たりばったり」だ!
そして僕らは帝である雨月様に呼ばれ、騒ぐ人たちとは逆方向に歩いていた。そう、頼まれていた荒神を出入りできなくするためだ。問題はその力の発動の仕方を僕は知らない。行けば指示してもらえる信じていた。長い廊下を歩き、小さな部屋の襖が開けられると雨月様と時雨様、その側近の侍従しかいない。
「おはようございます。他の方は?」
「来ないよ。これで全員だ」
ものすごく不安になって僕は時雨様を見つめたまま。不安すぎてなぜ?と聞いてしまう始末。彼は当然だと言わんばかりに腕組みをする。
「本来帝と側近以外立ち入れない場所なんだ。だからだ」
「そ、そうですか」
部屋に入るのがためらわれ、僕は立ち尽くしてしまう。翠もどういうことだと時雨様を睨むし。その様子にいいから席に着け、これからのことを説明するからと促され渋々着席した。ここは昨日の和洋折衷の部屋だ。帝である雨月様が怖いことなんてないからと笑ってるけど、僕の不安はなくならない。
「うちの博士たちが言うには、ここの鏡に力を込めれば拡散できると言ってるんだ。だから地方巡りはなしだ」
「あ、それはよかったです」
そしてここからが本題だと雨月様。昨日は宝珠に力がなくて、どっかから力が来ると説明したな?と確認され僕らはうなずいた。
「それ嘘な。俺がその本体だ」
「は?」
夕陽様夫婦や時雨様の奥様には聞かせられないから多少改変して伝えた。宝玉に力がないのは本当だから。訳分かんないところから来てるのではなく「帝自体が宝珠」なんだそうだ。雨月様は本当にここの神様なんだねえ……へえ……などと感心してたら眉間にシワ。
「夏樹、その認識は間違いだ。天帝の力の媒体であることと、力を行使できるだけなの」
「なら同じじゃないですか?」
「そこが微妙に違う。宝珠がそもそも媒体であるかは不明なんだ。そして使える力も全部ではなく限定されている」
雨月様は前の帝からその力を受け継ぐため、特別な珠を受け取って食べたと言うか飲んだらしい。だから雨月様が宝珠。体の変化はないし、力はマニュアルをもらって使ってみたからそれは本当。でも世界の安定の力があるとは思えないそうだ。
そうかも知れないし違うかもしれない。歴代の帝が突然死とかなかったから分からないそうだ。そう言われているだけなんだと説明してくれた。ふーん。
「でもな。受け取るとその宝珠の記憶が俺にも流れ込む。この世界の初期から自分のことのように感じられるんだよ」
「すごいですね」
「あー……あんま楽しくないな。他の方はともかく、天帝の気持ちも少し伝わるから」
雨月様は、天帝は獣たちと楽しくこの世界を開拓していたのは感じる。でもそれ以外の何かも感じる。理解できない思惑のような感情で、気にならないと言えば嘘になる。だが、知らない方がいいと思ったそうだ。本能の深いところが「その感情を理解したら生きるのに支障が出る」かもと、ゾワッと背筋が寒くなったそう。
どす黒い感情のような、悪気のない子供の無邪気さのような感情に感じたそうだ。そして追及しないと決めた。当然歴代の帝も以下同文。
「とにかく来なさい」
説明してても楽しくないし面倒くさい。とっととやってお前らも遊びたいだろう?と雨月様はニヤリとする。もちろん面倒は早く終わらせるに限るけどさ。翠が不安そうに雨月様に尋ねる。
「兄君、夏樹はなにをさせられるのですか?」
「ん?行けば分かるよ」
「でも……」
「危険も何もないよ。心配性だなあ翠」
翠は納得はしてない様子だけど、みんなで目的地?に移動することになった。
いつもの長い廊下を歩き左に曲がる。こちらは知らない廊下だ。歩くにつれ人はいなくなり、僕らだけになる。なのにさらに歩く。廊下ははどんどん古くなり、改装されてない本当に古いエリアだ。壁の柱はあめ色を通り越して黒光りし、塗り壁はシミも多い。気になって僕は時々触れていた。
「長い年月の賜物だな。昔の廊下はろうそくや油の行灯だったんだ。その脂で燻されてな」
「へえ……」
兄君二人も江戸末期生まれで大昔を知らない。でも彼らの幼少期は、ろうそくや行灯が当たり前だったからこうなるのは当然だそうだ。僕はここまで来たら不安に思っても楽しくない。危険な好奇心が心に生まれていた。それに前に「翠の役に立ちたい」ってことが実現できるんだ。でも思ってたのとは違っているけど。
僕はこの先はどんなだろう、まだ見ぬ場所に「ワクワク」していたんだ。たった五十年で僕も立派な獣になったもんだと感慨深い。でもこの好奇心は死にも近くなるのはこの年月で実感済み。思慮深くいなくてはと思いながらも「不安と期待」が入り混じる。
「兄君、この先は」
「普段は俺と関係者以外は立ち入り禁止だ」
時雨様もここは初めてなんだ。楽しみだなとニコニコしている。翠は不安そうで顔色も少し悪く見える。壁の薄暗い裸電球の明かりだけだからかもしれないけど。僕は雨月様と同じ気持ちで申し訳ない。
暗がりの中、侍従の方が木の扉を押し開ける。その先も同じような廊下が続くけど少し下っている。スロープというのかな、そんな感じ。その先はさほど歩かずに到着。本気で古い襖が四枚並んでいた。春夏秋冬の野の景色が描かれた襖。黄ばんであちこち汚れも目立つ。襖に雨月様が手を掛け開けた。
「ここだ」
開いたけど誰も動けない。さすがにこの雰囲気は怖い。薄暗く少し湿った空気が外に流れてくる。手前は倉庫っぽい板の間だけど、どう見ても神社の祭壇みたいなのが雨月様の肩越しに見えるんだ。
「なにしてるんだ。入れよ」
雨月様が来いと手招きするけど躊躇する。明かりはついてるのにどこか暗い。禍々しい雰囲気を感じるんだ。
「でも……なんか嫌な感じがしますよ」
「ああ?」
僕が不安でみんなの顔を見ていると、時雨様は顔をしかめ鼻を鳴らした。そしてニヤッとして夏樹だけ入れ?と僕の背中を押す。なにすんの!
「お前の仕事だろ?俺たちはここにいるから。この襖の前にいるからさ。どこも行かないよ」
「ええ?」
中で雨月様が正解かもなあと、入り口で時雨様に押されて耐えている僕に来なさいと手招きする。ううっ……ここからできませんか?と言えば無理だろと。翠に目をやると俺もここでいいかな?と引いている。翠はここに入っちゃダメと体が拒否る。これは獣の危険信号で逆らうといいことはない。ごめんと手を合わせた。こんな時は隣にいろよと言えば、え?と一歩下がった。こんのぉーッ
「俺たちはここにいるから兄君とチャチャッとな」
「俺はたぶん役に立たない。兄君がいれば大丈夫だから」
「見捨てるの?翠」
「違うよ。ここにいるから」
「うぬぅ……」
仕方なく足を一歩座敷に踏み入れた。
いやあああっ背筋に電気が走る恐怖があるよ!これ怖いよ!お化け屋敷とかの怖さがあるよ、なんだよここ!僕はあまりの恐怖に喚いてしまった。ここ無理だよと下がろうとすると時雨様が背中を押してくる。やめれ!と怒鳴っていると黙れ!と雨月様に一喝された。
「す、すみません……」
恐怖に震えている入口の僕を見つめ、そういう反応になるよな。俺も初めての時になったんだ。前の帝に叱られたのは同じだと笑ってくれた。
「俺もここ嫌なんだよ。荒神の穢れが残ってる時はな。いくら浄化しても溜まるんだよこれが。来て欲しくない理由のひとつなんだ。ちゃんとした神は見て見ぬふりでさ」
「心から理解しました。これは嫌ですね」
「だろ?でも来い」
「はい……」
僕は深呼吸して胸を押さえた。バクバクしている心臓に落ち着けと念じ足を前に出……したくないけど一歩踏み出した。
「怖い……マジでなんなの。心の奥底から怖いしかないよぉ」
「さっき通ろうとした神をメンテ中と嘘ついて追い返したんだよ。一瞬なのにこれなんだ」
「どんだけだよ」
「だろ?追い返すのに神に触れた侍従がいきなり苦しみだしてさあ。今病院というか陰陽寮にな。アハハッ」
「ヒッ」
神たちはこちらで穢れを落とし、精神を整えて帰るらしい。穏やかなこの世界で飲み食いして温泉に浸かり、落ち着いた頃地方を回る神もいる。当然街とかでも遊んでから。正気になると「支払い」もしてくれる、金銀財宝を置いていくらしい。「いらないから来るな」が正直なところだそう。そうだろうとも!もう毒だろこの穢れは。
「俺たち竜やその御子は影響は受けないが、他は病院送りになる……かな?アハハッ」
「アハハッじゃありません!死んでる人もいるんじゃないですか?」
「まあ……いなくはないかな?」
なんだその神たちは。こちらの世界的には「妖怪」とか「化け物」だろ、もうさあ。僕はゲンナリどころではなかった。怖さは一向になくならないし冷や汗は出続けている。
「だから「特別な御子」を待っていたんだ」
「待つ気持ちは分かりますけどね!」
僕は恐怖のあまり大声になってしまった。雨月様が言うには明治維新後から荒神が増えだしたそうだ。神仏分離令だなと僕の頭には浮かんだ。その後は山間部の人口減少が荒神を作る原因と推察はできる。
「神使や獣の神の暴挙はこちらが回収しているからいいんだが、人の神はそうもいかんからなあ」
「そうですね」
いいからこっち来いと雨月様と隣に並ぶ。目の前には神社のような祭壇と、よく地獄絵巻に出てくる「閻魔様の鏡」がデーンと真ん中に置いてある。縁が火焔土器みたいな炎の禍々しい感じの意匠。銅製なんだろう、青錆も浮いててね。
「これに?」
「そう。鏡の上に宝石っぽい赤い玉があるだろ?それに力を込めればいいと……思う」
「ふーん。どうやるのです?」
「分かんない」
「は?」
分かんないとはなんぞや。僕は雨月様を見上げていたが、彼も首をこてんと倒すのみ。……嫌だこれ。これは聞いていた雨月様の必殺技「行き当たりばったり」だ!
19
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる