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帝の代替わり編
61 気分の落ち込みと栗拾い
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帝の代替わり以降、心の奥底にしまっていた「何かに置いていかれるような」気持ちは日増しに強くなる。あれから四十年、本気で何も変わらない日常に、無常に過ぎゆく時に心が戸惑っていた。体も来た時のまま二十五、翠も三十前後の見た目のまんまなんだ。
僕はここ数年ほとんど村の神社には行かなくなった。僕の知っている人は誰もいなくて、村の景色は僕の知っている景色じゃなくなった。お正月やお祭りの時以外はね。見るのが辛いというか、自分だけ置いていかれた事実に胸が痛くなるんだ。
僕の生きる世界はここではない、お前の実家なんて跡形もないよと言われた気までする。確かに実家は空き家になって、別の方が買い取り建て替えられてるから本当にない。墓守は親戚がしてくれている。
「みんなが言ってたとおりだ。百年前後にメンタルにくるよって」
忘れるためにこの頃赤ちゃんを大量生産……もとい、子育てにてんやわんやになってた方が気が楽よって先輩方に言われたんだった。ここを過ぎれば落ち着くからってね。でも僕らには子どもがいない。翠がいらないって言い張るからだけどさ。彼は狐のままだし、逆にこのご時世、帝の兄弟が姿を変えないのはカッコいいとかモテ始めてもいる。
「お日様が気持ちいい」
いつものように縁側に寝転んで庭を眺めていた。怖いことに飽きないんだ。ぼんやりすることに慣れ、でも耳は音を聞いている。人も訓練すればそこそこの動物になれるんだなと実感していた。よく考えれば文明を築く前は人も野生のお猿さんの仲間。本能が目覚めれば同じになれる。
「あ、マオが庭を掃いている音がするし、農夫のみんなは畑に行くんだな。足音がたくさん聞こえる」
僕は陽だまりでうつらうつら。心地よい風に撫でられていた。すると、聞き覚えのある足音が畳を歩いている。
「昼寝か?」
翠の声だ。僕は長い間に彼の歩く足音の癖を覚えてね。わんわんもね。僕の後ろに座り横になると、抱き寄せてくれる。
「いい天気だな」
「うん」
僕がおかしいのには気がついてるっぽい雰囲気はあるけど何も言ってはこない。いつものように傍にいてくれる。
「栗食べたくない?」
「え?」
僕は目を開けて翠を見上げた。翠も僕を見つめる。
「俺栗好きなんだ」
「知ってる」
「栗ごはん食べたくない?おこわとか」
「あなたが食べたいんでしょうよ。拾いに行きたいんだね」
「うん」
今は朝の九時前くらいかな。一日は始まったばかりだ。
「今拾えば間に合うと思うんだ。夕飯に」
「はいはい。どこに行く?山栗?普通の栗?」
「俺の栗林に」
「はい。支度するから待ってて」
「うん」
僕は翠の腕から立ち上がった。あの滝の手前に翠の大きな畑があるんだ。ずいぶん前にその畑の一角に栗林を作ってさ。山栗は山栗で美味しいんだけど、栗ご飯は大きな栗の方が好きって翠がね。この時期に立派な実をつけるんだ。
イオは時々拾ってきて、渋皮煮をビンに入れて倉庫に並べててね。おやつやいろんな料理に使うんだ。前に鬼皮だけ剥くよと手伝ったら盛大にナイフで手を切ってさ。あまりの出血にイオが引いちゃってさ。手伝うことを拒否されている。
僕はキッチンの棚の上の小さなかごを取った。手持ちのついた少し大きめトートバッグくらいかな。これに栗を入れるんだ。イオはいないけどいいよね。それを持って部屋に戻る。
「かご用意したよ」
「なら行こう」
二人で玄関に向かい草履を履く。戸を開けて外に出ると栗か?とマオ。
「今拾えばイオが栗ご飯作ってくれるでしょ?」
「そうか。楽しみだな」
「うん」
「気を付けてな。夏樹様は山でよく転ぶから」
「最近は転んでません!」
俺がいるから大丈夫とマオに笑いかけ、行ってくると翠。気を付けてなとマオが手を振ってくれ僕も振り返した。
「少し空気が冷たくなってきたね」
「秋が本格的になったな」
外門を出て山道を登る。木の葉は色づき始め、早い種類は真っ赤になったり全部散っている。葉が少なくなり日差しは地面まで届いていた。
「僕は春と秋が好き。食べ物が美味しいからと、過ごしやすいから」
「それは俺も同じだよ」
山道のあちこちにアケビが青紫色に色づき、口を開けている。僕らは時々採って食べた。優しい甘さだ。そして山ぶどう、酸っぱいけどこれも秋の味覚。足元には食べられるキノコが生えていた。このキノコは峠道など道沿いにたくさん自生する「しめじ」の仲間だ。
「翠、きのこがたくさんです」
「採った跡があるからイオかもよ。あんまり採っても食いきれないだろ?」
「そうだね。なら夕陽様にお裾分けは?」
「しなくていい。甘やかすと本気でここを食糧庫にするから」
「アハハッ」
夕陽様は今は山も持ってないし、野菜も米も作ってはいない。うちからかっぱらうことに目覚めてね。少しやってたのを全部やめたんだ。そしてあぶれた農夫の皆さんはうちに就職。屋敷の端っこに「社宅」を建てた。
始まりは農夫さん達を引き連れて夕陽様が来たことから。理由を簡単に説明(恫喝とも言う)をすると、僕らを無理やり引き連れてこれから向かう畑に向かった。そして夕陽様は小さい畑の斜面を見つめ、
「うちの分も作るなら……えいっ」
ドフンッと山の斜面を爆破して平らにした。まるで重機で削ったように美しい仕上がりだった。生えていた木々や土はどっか飛んでいったけど。
「おまっなにして!」
「ほらあ、畑にピッタリのサイズになったでしょ?後ヨロシクお兄様ぁ。うふん」
「よろしくじゃねえ!」
翠はそのまま去ろうとする夕陽様を捕まえて抗議したけど、威嚇されて怯んだ隙に逃がしてしまう。夕陽様は竜になって飛んで逃げたんだ。うなだれた翠は憮然としながらも整地をすることにした。畑にしたり田んぼにしたりね。なんだかんだ受け入れて、夕陽様には弱いんだ。
それに夕陽様のところは県庁のような役所で役人は多い。その人らに褒美として野菜や米を配ってるらしいんだ。翠の野菜は美味しくて評判がよく、役人は視察ついでに翠の店に来てくれる。たまにここに買いに来る人もいるんだ。奥様が欲しいとか何とかでね。
「翠は夕陽様に甘いもんね」
「甘いんじゃない。俺の言うことを何一つ聞かないから諦めているだけ」
わんわんたちは「末っ子気質」のせいだろうと言っていた。兄君たちと歳が離れてて、敵わなかった癖だろって。僕は兄弟いないからこの部分は大変でも羨ましいかな。
「あっ翠!あそこにすっぱつだ」
足元の草の中に緑の実がたくさんついてる草発見!僕が摘んでいると、
「俺それ嫌い。キウイに似てる味だけど、それより酸っぱいし種多いから」
「そう?これ僕んちの田んぼのはざ場の脇に生えててさ。あ、おじいちゃんのね。秋によく食べたんだよ。疲れた時とかいいんだ」
「ふーん。でも俺は嫌い」
緑の小さな粒の草の実なんだけど、甘酸っぱくて美味しいんだ。本当の名前は知らなくて、この名称は方言で正式な名前を調べたことないんだ。僕は手のひら分摘んでちまちま食べた。ウッ……これ硬かったか、酸っぱいッ僕が顔をしかめたら、
「そうなるからよけい嫌」
「美味しいのに」
秋はあちこちに食べ物が実っている。鳥が落とした種が芽吹いたのか、柿の木とかもあってさ。秋のグミと呼ばれる赤い実もなってるしマタタビも。それは猫のマオが片っ端から回収して、猫さん同士で食べてる。獣になっても猫だから好きなんだってさ。
「着いたぞ」
畑にはたくさんの人たちがせっせと働いている。田んぼが終わり、今は秋の根菜類の収穫と冬の苗の植え付けとかあるからまたまだ忙しいんだ。
「みんなお疲れ様!」
「おはようございます。夏樹様たちは栗ですか?」
「そう!今年はどうかな?」
「少し小さいけどいいものですよ。昨晩風が強かったから結構落ちてますし、木から落とさなくてもそのかごくらいならあると思います」
「ありがとう!」
これどうぞと近くの人が竹のトングを二つくれた。そろそろ来るだろうからと用意してたそうだ。なんと準備のいい。
「毎年ですからね。翠様の栗好きはみんな知ってますから」
「アハハッ」
「悪くないだろ」
僕らはトングを受け取り畑の奥の栗林に入った。農夫さんの言うとおりたくさん落ちていた。
「さあ拾いますよ翠」
「ああ」
落ちているイガを見つけると足で少し踏んで中をトングで取り出す。
「ツヤツヤだね」
「いい出来だが、本当に去年より少し実が小さいな」
実が大きくならなくて、平らなままのが挟まってるイガが目立っていた。前に農夫の方が、今年は実が育つ時期に天候が悪かったと言っていたのを僕は思い出していた。
「翠が忙しくて畑に来なかったからかな?」
「そうかも。来年は気をつけるよ」
翠は自然を司る神様だ。雨を降らせたり止ませたり、土地の活性も得意。今年はその時期に御所の仕事でよく出かけててね。鏡のおかげで夜には帰ってくるけど、連日な時があったんだ。僕には分からない何かで忙しくてね。
「でも一個一個はそれなりに大きいよ」
「まあな。いいご飯ができそうだ」
楽しむように僕らは拾った。時間制限がある農場のイベントではないからゆっくりね。下草を踏めばコオロギが跳ねる。よく見ればバッタもたくさんいるしイナゴも。ここは翠の力で豊かな森なんだ。
「どのくらいになった?」
「かごに半分くらいかな」
「少し休むか」
「うん」
散歩も兼ねてるから急がない。近くにある大きな石にふたりで座り他愛もない話をして、さっき採ってきた実を食べた。こんな日もいいよねと翠に笑いかけると真顔。
「どうしたの?」
「うん」
彼の神妙な顔は珍しい。いつもなら笑い返してくれるのに。僕は不思議に思って見つめていた。
僕はここ数年ほとんど村の神社には行かなくなった。僕の知っている人は誰もいなくて、村の景色は僕の知っている景色じゃなくなった。お正月やお祭りの時以外はね。見るのが辛いというか、自分だけ置いていかれた事実に胸が痛くなるんだ。
僕の生きる世界はここではない、お前の実家なんて跡形もないよと言われた気までする。確かに実家は空き家になって、別の方が買い取り建て替えられてるから本当にない。墓守は親戚がしてくれている。
「みんなが言ってたとおりだ。百年前後にメンタルにくるよって」
忘れるためにこの頃赤ちゃんを大量生産……もとい、子育てにてんやわんやになってた方が気が楽よって先輩方に言われたんだった。ここを過ぎれば落ち着くからってね。でも僕らには子どもがいない。翠がいらないって言い張るからだけどさ。彼は狐のままだし、逆にこのご時世、帝の兄弟が姿を変えないのはカッコいいとかモテ始めてもいる。
「お日様が気持ちいい」
いつものように縁側に寝転んで庭を眺めていた。怖いことに飽きないんだ。ぼんやりすることに慣れ、でも耳は音を聞いている。人も訓練すればそこそこの動物になれるんだなと実感していた。よく考えれば文明を築く前は人も野生のお猿さんの仲間。本能が目覚めれば同じになれる。
「あ、マオが庭を掃いている音がするし、農夫のみんなは畑に行くんだな。足音がたくさん聞こえる」
僕は陽だまりでうつらうつら。心地よい風に撫でられていた。すると、聞き覚えのある足音が畳を歩いている。
「昼寝か?」
翠の声だ。僕は長い間に彼の歩く足音の癖を覚えてね。わんわんもね。僕の後ろに座り横になると、抱き寄せてくれる。
「いい天気だな」
「うん」
僕がおかしいのには気がついてるっぽい雰囲気はあるけど何も言ってはこない。いつものように傍にいてくれる。
「栗食べたくない?」
「え?」
僕は目を開けて翠を見上げた。翠も僕を見つめる。
「俺栗好きなんだ」
「知ってる」
「栗ごはん食べたくない?おこわとか」
「あなたが食べたいんでしょうよ。拾いに行きたいんだね」
「うん」
今は朝の九時前くらいかな。一日は始まったばかりだ。
「今拾えば間に合うと思うんだ。夕飯に」
「はいはい。どこに行く?山栗?普通の栗?」
「俺の栗林に」
「はい。支度するから待ってて」
「うん」
僕は翠の腕から立ち上がった。あの滝の手前に翠の大きな畑があるんだ。ずいぶん前にその畑の一角に栗林を作ってさ。山栗は山栗で美味しいんだけど、栗ご飯は大きな栗の方が好きって翠がね。この時期に立派な実をつけるんだ。
イオは時々拾ってきて、渋皮煮をビンに入れて倉庫に並べててね。おやつやいろんな料理に使うんだ。前に鬼皮だけ剥くよと手伝ったら盛大にナイフで手を切ってさ。あまりの出血にイオが引いちゃってさ。手伝うことを拒否されている。
僕はキッチンの棚の上の小さなかごを取った。手持ちのついた少し大きめトートバッグくらいかな。これに栗を入れるんだ。イオはいないけどいいよね。それを持って部屋に戻る。
「かご用意したよ」
「なら行こう」
二人で玄関に向かい草履を履く。戸を開けて外に出ると栗か?とマオ。
「今拾えばイオが栗ご飯作ってくれるでしょ?」
「そうか。楽しみだな」
「うん」
「気を付けてな。夏樹様は山でよく転ぶから」
「最近は転んでません!」
俺がいるから大丈夫とマオに笑いかけ、行ってくると翠。気を付けてなとマオが手を振ってくれ僕も振り返した。
「少し空気が冷たくなってきたね」
「秋が本格的になったな」
外門を出て山道を登る。木の葉は色づき始め、早い種類は真っ赤になったり全部散っている。葉が少なくなり日差しは地面まで届いていた。
「僕は春と秋が好き。食べ物が美味しいからと、過ごしやすいから」
「それは俺も同じだよ」
山道のあちこちにアケビが青紫色に色づき、口を開けている。僕らは時々採って食べた。優しい甘さだ。そして山ぶどう、酸っぱいけどこれも秋の味覚。足元には食べられるキノコが生えていた。このキノコは峠道など道沿いにたくさん自生する「しめじ」の仲間だ。
「翠、きのこがたくさんです」
「採った跡があるからイオかもよ。あんまり採っても食いきれないだろ?」
「そうだね。なら夕陽様にお裾分けは?」
「しなくていい。甘やかすと本気でここを食糧庫にするから」
「アハハッ」
夕陽様は今は山も持ってないし、野菜も米も作ってはいない。うちからかっぱらうことに目覚めてね。少しやってたのを全部やめたんだ。そしてあぶれた農夫の皆さんはうちに就職。屋敷の端っこに「社宅」を建てた。
始まりは農夫さん達を引き連れて夕陽様が来たことから。理由を簡単に説明(恫喝とも言う)をすると、僕らを無理やり引き連れてこれから向かう畑に向かった。そして夕陽様は小さい畑の斜面を見つめ、
「うちの分も作るなら……えいっ」
ドフンッと山の斜面を爆破して平らにした。まるで重機で削ったように美しい仕上がりだった。生えていた木々や土はどっか飛んでいったけど。
「おまっなにして!」
「ほらあ、畑にピッタリのサイズになったでしょ?後ヨロシクお兄様ぁ。うふん」
「よろしくじゃねえ!」
翠はそのまま去ろうとする夕陽様を捕まえて抗議したけど、威嚇されて怯んだ隙に逃がしてしまう。夕陽様は竜になって飛んで逃げたんだ。うなだれた翠は憮然としながらも整地をすることにした。畑にしたり田んぼにしたりね。なんだかんだ受け入れて、夕陽様には弱いんだ。
それに夕陽様のところは県庁のような役所で役人は多い。その人らに褒美として野菜や米を配ってるらしいんだ。翠の野菜は美味しくて評判がよく、役人は視察ついでに翠の店に来てくれる。たまにここに買いに来る人もいるんだ。奥様が欲しいとか何とかでね。
「翠は夕陽様に甘いもんね」
「甘いんじゃない。俺の言うことを何一つ聞かないから諦めているだけ」
わんわんたちは「末っ子気質」のせいだろうと言っていた。兄君たちと歳が離れてて、敵わなかった癖だろって。僕は兄弟いないからこの部分は大変でも羨ましいかな。
「あっ翠!あそこにすっぱつだ」
足元の草の中に緑の実がたくさんついてる草発見!僕が摘んでいると、
「俺それ嫌い。キウイに似てる味だけど、それより酸っぱいし種多いから」
「そう?これ僕んちの田んぼのはざ場の脇に生えててさ。あ、おじいちゃんのね。秋によく食べたんだよ。疲れた時とかいいんだ」
「ふーん。でも俺は嫌い」
緑の小さな粒の草の実なんだけど、甘酸っぱくて美味しいんだ。本当の名前は知らなくて、この名称は方言で正式な名前を調べたことないんだ。僕は手のひら分摘んでちまちま食べた。ウッ……これ硬かったか、酸っぱいッ僕が顔をしかめたら、
「そうなるからよけい嫌」
「美味しいのに」
秋はあちこちに食べ物が実っている。鳥が落とした種が芽吹いたのか、柿の木とかもあってさ。秋のグミと呼ばれる赤い実もなってるしマタタビも。それは猫のマオが片っ端から回収して、猫さん同士で食べてる。獣になっても猫だから好きなんだってさ。
「着いたぞ」
畑にはたくさんの人たちがせっせと働いている。田んぼが終わり、今は秋の根菜類の収穫と冬の苗の植え付けとかあるからまたまだ忙しいんだ。
「みんなお疲れ様!」
「おはようございます。夏樹様たちは栗ですか?」
「そう!今年はどうかな?」
「少し小さいけどいいものですよ。昨晩風が強かったから結構落ちてますし、木から落とさなくてもそのかごくらいならあると思います」
「ありがとう!」
これどうぞと近くの人が竹のトングを二つくれた。そろそろ来るだろうからと用意してたそうだ。なんと準備のいい。
「毎年ですからね。翠様の栗好きはみんな知ってますから」
「アハハッ」
「悪くないだろ」
僕らはトングを受け取り畑の奥の栗林に入った。農夫さんの言うとおりたくさん落ちていた。
「さあ拾いますよ翠」
「ああ」
落ちているイガを見つけると足で少し踏んで中をトングで取り出す。
「ツヤツヤだね」
「いい出来だが、本当に去年より少し実が小さいな」
実が大きくならなくて、平らなままのが挟まってるイガが目立っていた。前に農夫の方が、今年は実が育つ時期に天候が悪かったと言っていたのを僕は思い出していた。
「翠が忙しくて畑に来なかったからかな?」
「そうかも。来年は気をつけるよ」
翠は自然を司る神様だ。雨を降らせたり止ませたり、土地の活性も得意。今年はその時期に御所の仕事でよく出かけててね。鏡のおかげで夜には帰ってくるけど、連日な時があったんだ。僕には分からない何かで忙しくてね。
「でも一個一個はそれなりに大きいよ」
「まあな。いいご飯ができそうだ」
楽しむように僕らは拾った。時間制限がある農場のイベントではないからゆっくりね。下草を踏めばコオロギが跳ねる。よく見ればバッタもたくさんいるしイナゴも。ここは翠の力で豊かな森なんだ。
「どのくらいになった?」
「かごに半分くらいかな」
「少し休むか」
「うん」
散歩も兼ねてるから急がない。近くにある大きな石にふたりで座り他愛もない話をして、さっき採ってきた実を食べた。こんな日もいいよねと翠に笑いかけると真顔。
「どうしたの?」
「うん」
彼の神妙な顔は珍しい。いつもなら笑い返してくれるのに。僕は不思議に思って見つめていた。
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