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幼なじみと隣の席の女の子
プロローグ
しおりを挟む小学生の時からずっと好きだった。
気が狂いそうな位に彼女の事が好きだった。
幼馴染みの草刈雪乃彼女と知り合ったのは小学2年の夏休みだった。
誰もいない公園で、一人遊んでいる彼女に僕は声をかけた。
「一人なの?」
今思えばナンパとも取れる声のかけ方だったが、転校してきたばかりの僕は友達を作るチャンスだと勇気を出してそう言った。
「うん……引っ越してきたばかりだから……」
「え! そうなの! 僕も引っ越して来たばかりだよ!」
「そうなの!?」
「うん! 僕はくさかべ、日下部 涼」
「私は草刈、草刈雪乃」
偶然にも彼女は僕と同じ転校生だった。しかも3軒隣に住む同じ年の女の子だった。
友達のいない僕達は直ぐに意気投合した。
そして、お互いの家に遊びに行く仲になった。
出会った頃から小さくて可愛らしい雪乃、僕は出会ったその時からずっと雪乃が好きだった。
そして僕達は、そのまま同じ中学に入学する。
でも、中学生になった時、二人の差は歴然としていた。
僕はどこに出しても恥ずかしく無い位の、立派なオタクになり、彼女は陸上で県内3位の実力の持ち主になっていた。
さらに雪乃は、陸上で鍛え上げられた、その類い稀なるスタイルと、可愛いから──美しい、に変貌を遂げた美貌、さらには誰にでも屈託のない笑顔で話すコミュ力で、学内トップクラスの人気者になっていた。
僕と雪乃にはそんな格差があったが、そんな事には捕らわれず、雪乃は昔と、出会った頃と変わらず、僕に話しかけてくれる。
ただ中学になってから雪乃は部活で忙しく、休みの日や、お互いの家で遊ぶ事はなくなった。
それでも学校内では、違うクラスなのに、ちょくちょく休み時間にやって来ては、僕に話しかけてくれる。
僕はそんな雪乃に小学生の時とは違う特別な感情を思いを持ち始めていた。
そして中学2年になり、周囲は皆、思春期に突入する。
誰が誰と付き合ってるとか、誰が好きだとか……言い始める様になった。
相変わらずの仲が良かった僕と雪乃は、周囲から付き合ってるの? と言われる様になる。
「え? どうかなぁ?」
周りからそう聞かれた雪乃はそう言って誤魔化すも、チラチラと僕を見る。
勿論付き合ってはいない……でも僕は今までの雪乃の態度と言動から、ひょっとしたら僕の事をって……その時から思い始めていた。
僕達は相思相愛なのではないか? と、そう思っていた。
でも……その時の僕と雪乃の間には、かなりの学力の差があり、しかも雪乃は陸上での名門、学力でも県内トップの高校の推薦もほぼ決まっていた。
僕は雪乃と同じ高校に行く為に、ラノベを読むのを一旦止めろくにやった事の無い努力を、勉強をし始めた。これ以上差をつけられてはと、雪乃との格差を埋める為に頑張り続けた。
そして合格したら、雪乃と同じ高校に合格出来たら、彼女に告白するんだ……って死亡フラグの様に自分に言い続けた。
僕はその為に頑張った。頑張り続けた……。
「やった……やったああああああ!」
そして……その努力の甲斐あって僕の元に合格通知が来た。春から雪乃と同じ高校に通える!
そう思った僕は、いてもたってもいられず雪乃の家に向かった。
告白する為に、雪乃に「今までずっと好きでした……」と伝える為に。
7年溜めてきた自分の思いを吐き出す為に。
「きゃ!」
家を出て雪乃の家の玄関前で、一人の女子にぶつかった。
僕よりも高い身長、すらりと伸びた手足の女子、その女子の丁度胸の辺りに僕の顔がぶつかってしまった。
「あ、すみません」
僕は、慌ててそう言ってその女子の顔を見ると、どこかで見た事のある人物。
そして、どうもこの女子は、雪乃の家から出てきたらしい。
僕は頭の中にある【雪乃リスト】を開いた。
雪乃に関するあらゆる情報はそこに全て保存している。
僕は集中して、頭の中のその部分から検索をかける。
ヒット!
彼女は確か去年卒業した雪乃の陸上部での先輩だ。
卒業しても雪乃と接点があったんだ? と僕はそう思い、お辞儀をしようとした瞬間……。
「げ! 日下部だ、うえぇ……」
「え?」
「うっわ……こいつがそうなんだ、キモ……」
そう言って、怪訝な顔をしつつ、足早に僕の前から去って行った。
さっき迄の勢いはどこへ? 僕はその場で、雪乃の家の前で呆然と佇んでしまう……。
え? え? どういう……事?
僕と彼女に接点は全くない……、僕がオタクって事も知らない筈だ。
そもそも……僕はオタである事を隠している。
僕がオタ趣味だって事を知っている……のは、雪乃だけ……。
「つまり……雪乃が彼女に話したって事?」
それ以外に考えられない……。
そして彼女がそう言ったという事は、つまりは……。
『雪乃は僕の事を……そう思っている』となる。今の女子が言ったような感情を持っているという事になる。
でも……なんで……あんなに仲良かったのに……。
僕は考えた……雪乃の事を、ずっと一緒にいたのだから、ずっと見て来たのだから。
そして僕はある一つの結論に達した。
雪乃は──僕を利用していたんだ……という事に……気が付いた。
以前雪乃はこう言っていた。
「告白されると面倒なんだよねえ、断ると角が立つでしょ?」
「え? さ、されたんだ?」
「うん、でも今は陸上に専念したいんだよねえ、推薦取りたいし」
「へーーそっか……」
中1の時に雪乃はそう言っていた。
その時僕は滅茶苦茶動揺したが、雪乃のそのセリフに安堵した。
そしてそれから雪乃は学校で、僕に会う頻度を上げた。
陸上の成績が良かった時等、わざわざ報告にやって来て、僕の手を握って喜んでいたりもした。
僕はそれで益々雪乃を好きになっていった。
そして、雪乃も僕の事を……って……ずっとそう思っていた。
でも、これでわかった……判明した。
雪乃は僕を利用していたんだという事に……。
思えば昔から外面のいい子だった。
親から言われた事をハイハイとなんでも聞いていた。
そして、その後必ず僕に言った。
「涼ちゃん一緒にやろ?!」
可愛らしい笑顔でいつも僕に言っていた。
僕はそれを楽しんでいた、雪乃が好きだったから……。
でも、今思えば……雪乃はそれでおばさんから、お小遣いを貰っていた。
体よく僕に仕事を押し付け、サボっていた事も何度もあった。
「──くっそお……畜生……」
そう考えたら……涙が溢れ出す。雪乃はずっと僕を利用していただけだったんだ……。
さっき迄大好きだった雪乃のが自分の命よりも大事だった雪乃の事が一瞬で憎くなった。
ガラガラと崩れていく……雪乃との思い出が、雪乃への思いがガラガラと崩れ去って行く。
僕は雪乃の家を見上げた。
雪乃の部屋は勿論知っている。
雪乃の部屋の窓、日に焼けて少し色褪せたピンクのカーテンから光が漏れている。
間違いなく雪乃は部屋にいる。つまりさっき迄あの先輩と一緒にいたんだ……。
そう思いながら、雪乃の部屋の窓を見つめた。
いつも雪乃の家を通る度に立ち止まり、今何してるんだろうな? と、想像しながら見つめていたあの窓。
今は雪乃もあの窓も憎くて仕方がない……。
「畜生…畜生畜生畜生! 見てろよ、高校で……雪乃……お前を後悔させてやる! そしてお前より滅茶苦茶可愛い女の子と付き合ってイチャイチャを見せつけてやる!」
俺は雪乃の部屋に向かって、そう宣言をした。
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