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幼なじみと隣の席の女の子
あやぽん命
しおりを挟む雪乃の友達から間接的に、雪乃の気持ちを、俺の事をキモイって言っていた事を聞いてしまってから数日、俺は家でずっと泣いていた、泣き続けた。
学校にも行かずにずっと……。
高校入学は既に決まっている。雪乃に会いたい一心で、サボる事もなかった。
なので、卒業も問題ない。
でも……それが逆に俺の心を空虚にした。
空っぽだった。雪乃が俺の心からいなくなったら、俺の中が空っぽになった。
小学2年から好きだった……大好きだった。
俺の心の中の全てが、頭の中の全てが、雪乃一色だった。
その雪乃の気持ちを知ってしまった。俺は雪乃に利用されていた、だけだった。
思えば昔からそうだった。雪乃はそういう奴だって今さらながらに気付かされた。
あいつは……自分の目的の為には手段を選ばない……。
陸上や勉強、人付き合い、そのどれも自分がやり易い様に、やりたい様に環境を作る。そしてその一つが外面の良さだ。
あの笑顔に皆騙される。笑顔の向こう側は誰にも見せない。
子供の頃……俺にだけは見せていた。だから俺は雪乃の特別だってそう思ってきた。
でも……違った……。もう俺は雪乃の特別ではなくなったんだ……。
そう……気づかされてしまった。
「同じ高校……か……ううう……」
雪乃しかいない俺は他の高校を受けなかった。雪乃と同じ学校に通えるなら、浪人してもいいとさえ思っていた。
それでも忘れる事は出来ない。そもそも今でも直ぐ近く住んでいるのだから……。
「もう駄目だあ……生きていく希望が無いいぃ」
見返してやる、高校に入って可愛い彼女を作ってやるって、そう決心したけれど、そもそも今が、現在が耐えられない。
このまま入学まで、空っぽのまま、空虚のまま生活しなければならないのか?
そして、本当に高校で彼女を作る事が出来るのか?
俺は不安に駆られていた。
しかし、俺の心に一陣の風が吹く。
心の中のモヤモヤした気持ちを、雪乃という心の隅に蔓延る異物を晴らしてくれる風が……。
「え? か、可愛い……誰?」
何気に見ていたスマホの画面に、俺好みの女の子が映っていた。
一言で言えば可憐という言葉がしっくりくる少女だった。
インフルエンサー? モデル? 綾? あやぽん?
彼女が着た服は瞬く間に売れていくとか?
数百万のフォロワー数の【インスト】には、彼女のおしゃれな服を身に纏った写真が数多くアップされとんでもないアクセスを稼ぎだし、ご飯を食べただけなのに【チイッター】には、とんでもない数のいいねが付いていた。
でも、それよりも俺が気になったのは、彼女の表情だった。
ほのかに恥ずかしそうな彼女の表情に俺の心がかき乱される。
他のモデルと映っていても、彼女だけは恥ずかしそうに、照れくさそうに映っていた。
「か、可愛い……まじで可愛すぎる……」
俺はその笑顔に一瞬で魅了された。
ずっと雪乃だけだったから──だからずっと興味が無かった。他の女子には興味を持てなかった。
俺は雪乃以外で初めて興味を抱く女子を見つけた。勿論3次元の女子をだ……。
そこから俺はずっとスマホを見ていた。自信満々な顔で、どうだと言わんばかりにポーズしているモデル達の中で、あやぽんだけは異質だった。
彼女は常に控え目なのだ。
モデル数人で並んでいても、彼女だけは恥ずかしそうに、一歩下がって写っている。
ポーズもどことなく、おとなしめで、プロとしてはどうかと思うけど、でも俺の心にはそんな彼女の姿が、ズブズブと突き刺さる、
元来のオタク気質のせいなのか? 俺が彼女の虜に、雪乃を忘れ彼女に夢中になるには、そう時間が掛からなかった。
ぽっかりと空いた雪乃と言う穴に、すっぽりとあやぽんがはまってしまった。
俺の心の空洞をあやぽんが、しっかりと埋めてくれた。
そう……俺はあやぽんに助けられた。
そして俺は高校入学まで、いや、入学してからもずっとあやぽんを見続けた。
ネットで追いかけ、雑誌を買い、イベントへ赴いた。
俺の全てが雪乃からあやぽん変わった。
え? 雪乃を見返す? 何それ? 美味しいの? いや、そんな事よりも今は、時代はあやぽんでしょう?
あやぽん以上の女の子なんていないのだから……。
俺はもう、あやぽんさえいればいい。雪乃も、幼馴染みも、恋人も、友達さえもいらない……。
俺には……あやぽんだけで、彼女が見れるだけでいい……。
それだけで良かった。
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