15 / 62
幼なじみと隣の席の女の子
俺は綾波が好き……なんだ。
しおりを挟む女の子と二人で喫茶店に入る……。
人生初……いや喫茶店に入った事は何度かあるけど……。
そもそも自分が今まで一緒に行動出来た女子は雪乃だけ、その雪乃とは中学生の時から学校以外での交流は殆ど無い。
さすがに小学生の時に喫茶店に出入りはしないので、これが人生初の女子と喫茶店……。
「えっと、じゃあ見せ合おうか……」
「う、うん」
赤い顔の綾波は恥ずかしそうに鞄から書店の袋を取り出す。
俺も同じ様に照れながら袋を取り出す……。
なんか……見せ合おうかなんて言って照れながら出し合うって、文字にしたらいやらしいシチュエーションだよなぁ……まあ、自分の隠している趣味、内心を見せ合うって意味では裸を見せ合うのに似ているのかも知れない。
綾波は俺にそっと本を見せてくれる。
予想通りの作家の本だった。昭和の頃の大ベストセラー作家、当然今も尚健在している大作家様だ。
そして綾波が選んだのは、少し奇抜なタイトル、シリーズ物の刑事の話だった。
「でねでね、このシリーズに出てくる刑事の部下が、スッゴク面白くて……」
クラスでもそうなんだが……綾波は本の事に関しては、流暢に語る。照れる事なく、言葉を切る事なく。
綾波の好きが伝わってくる……そして楽しそうに語る綾波を見ると俺も幸せな気分になる。
そう……まるでtあやぽんを見ている様な……あやぽんの笑顔を見ている様な、そんな気持ちに、気分になった。
俺は綾波に負けずと現代のベストセラーラノベ作家の本を綾波に見せた。
映画化にもなった名作だ。
古い作品を好む綾波にも喜んで貰える様な、時代を感じさせない作品。
絵もオタクが好む物からはやや離れている、萌え絵ではない奴だ。
俺が語ると綾波は興味を持って聞いてくれた。
それが嬉しくてついつい語り過ぎてしまう。
それでも引かずに最後まで、嬉しそうに楽しそうに俺の話を聞いてくれた。
「あ、ヤバいこんな時間だ」
「え? あ、ほんと、ど、どうしよう」
「あ、ごめん何か用事あった?」
「あ、うん大丈夫」
綾波が時計を見てそう言う。しまったついつい調子に乗りすぎた。俺達は慌てる様に席を立ちレジに向かった。
「俺が出すよ」
「駄目」
「……じゃあ割り勘で」
レジの前でそう言って綾波からお金を貰う……あれ? 綾波の財布……。
綾波が出したピンクのブランド物の財布……俺でも知っている某有名ブランドの物、しかもこないだ、あやぽんが【インスト】に上げて以来売り切れが続出したとネットのニュースで流れていたのと同じ物だった。
「──良い財布つかってるね」
「え! あ、うん……貰ったの」
「そ、そうなんだ」
貰った? 貰ったって……誰から? 俺はさっきまでの天国にいる様なフワフワとした気分から一気に転落、地面を這いつくばっている様な気分に陥る。
十万は余裕で越える財布を貰ったって……まさか……。
いや、違う、お父さんとかだろう、入学祝とかかな? そうだ、そうに決まってる。綾波がそんな事するわけが無い。
俺は前から思っていた事、聞きたい事と一緒に、それを確認しようと思った。
そして喫茶店から出ると駅に向かって歩きながら勇気を出して綾波に聞いてみた。
「そう言えば、綾波はお父さんの本を読んでいるんだよねえ、お父さんはそれをなんて言ってるの?」
俺がそう聞くと、綾波は俺を一度見上げそして再び前を向いて言った。
「わかんない……」
「わかんない?」
「うん……死んじゃったから」
「え! あ、ごめん」
「ううん良いの……私が小さい頃だったから……」
「そうなんだ……」
「うん……お父さんの本を読むと、お父さんの事がわかる様な気がするの、あとね、多分続きが読みたいだろうなって、だから今日みたいに新作や新刊を買って読んだりもしてるの、お父さんの代わりに」
少し寂しげに、そして少し嬉しげにそう話す綾波……綾波が一心不乱に本を読む理由がわかってなんだか嬉しくなった。
そして益々俺は綾波の事が好きになった。
え? 俺は綾波の事が、好きに? 今、俺は確かにそう思った。心の中で確かにそう言っていた。
そうか……俺は綾波が……好きなんだ。
俺は気が付いた、俺は綾波が好きだって事に、今、確かに……気が付いた。
でも、だったらあの財布は一体……。
俺は気になって仕方が無かった。
好き人が変な事に巻き込まれていないか……凄く心配になる。
「あ、綾波……あの……」
「え?」
俺は急に立ち止まり綾波の手を握って同時に立ち止まらせた。聞こうって、綾波の事を、ちゃんと聞きたいって。
立ち止まり手を持って向かい合ったその時、目の前にいた集団から声が聞こえて来る。
「道の真ん中で邪魔なんですけど~~、イチャイチャすんなら、って……あれ? こいつ草刈の旦那じゃん」
「え? あ……涼……」
「……雪乃……」
目の前で大きなバックを持った雪乃のいる女子の集団がニヤニヤ笑いながらじっと俺達を見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。
その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに!
戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる