娘の様な義理の妹に俺が恋なんてするわけが無い。

新名天生

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キャンプ!キャンプ!

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 昼食を弁当で済ませた俺たち……。
 
「じゃあ夜にはちゃんとバーベキューやるから、後はフリーで!」
 そう言うと、ごそごそと寝袋を取り出しテントの中に入って行く。

「は?」
 まさかここまで引っ張って来てこいつ寝る気か? 

「朝から準備で眠くて、賢にいちゃんも一緒に寝る?」
 赤色の寝袋を降りつつ俺に向かってそう言い放つ……。

「……お休み」
 俺はそう言ってテントの入口を閉めた。
 さあどうするか……スマホの中に入ってる電子書籍でも読むか? 
 でもそれじゃここに来た意味ねえなあ……なんて思っていると……。

「お兄ちゃん……散歩付き合って?」
 俺の腕を掴みニッコリ笑う妹……。

「そうだな」
 せっかくここまで来て、テントで寝たり、スマホを見るんじゃ勿体ない。
 そう思い直し、妹と散策する事にした。

 ゴールデンウィーク初日、天気は快晴、気温は太陽の下にいると少し暑いと感じるくらい。
 川下から吹く風が心地よく感じる。
 キャンプ場から出て、鮭の様に川を登って行く。
 ゴロゴロとした石を転ばない様に歩いて行くので、そんなにペースは上がらない。
「きゃ!」
 俺が前を歩いていると、妹の小さな悲鳴が、慌てて振り向くと、動く石に足を取られ俺の方につんのめる。

 俺は素早く前に出て妹を抱き止めた。

「あ、ありがと……お兄ちゃん」
 俺に抱き止められ、胸の辺りで顔を上げ俺に微笑む妹……。

「危ないから……手を繋ぐか?」

「うん!」
 河原にあるのはゴロゴロとした丸い石だけど、転んだら怪我をするかも知れないと、俺は妹の手をしっかりと握る。

「へへへ……」
 楽しそうに笑う妹を見て俺も自然と笑顔になる。
 俺たちはそのまま川を登り、キャンプ場から少し離れた誰もいない岩場に到着した。

「ん……良い風」
 岩場に二人で腰かけて、ゆっくりと流れる川を眺める。
 妹は座ったまま、岩場に落ちている小石を川に投げ入れた。

「お魚いるのかなあ?」

「まあいるだろ?」

「そっか……お兄ちゃん釣りとかしないの?」

「うーーん、なんかめんどくさいなあ、手とか魚臭くなるって言うし」

「ふーーん」
 他愛も無い会話……所謂雑談……でも俺が自然に雑談出来るのは妹だけ……何かそれがとても心地よく感じる。

「そう言えばさ……雪と恵ちゃんて、仲良かったんだな?」

「え?」

「あ、いや、おばさんの家に行くといつも何かギスギスしてるからさ」
 小学生の時は結構仲良く遊んでいたのに、思春期になって突然ギスギスし始めた気がする。
 何があったかはいくら聞いても教えてくれなかった。

「……」
 妹は川を見つめ黙っている。

「雪と恵ちゃんには仲良くして貰いたいんだよね」
 俺がそう言うと、妹は川から俺に目線を移して少し強い口調で言った。

「……どうして?!」
 
「そりゃ二人は……俺にとって妹みたいなもんだし」

「……ふーーん」

「ふーーんって……」
 妹はそう言ってまた視線を川に戻し、今度は少し大きめの石を投げ入れる。
 最近妹の考えている事がわからない……赤ん坊の頃の方が、子供の頃の方が、わかっていた……ミルクなのか? オムツなのか? お腹が空いたから? 遊びたいから、妹の事は何でもわかった、何でも理解出来た。

 でも今は、最近は……雪が、妹の事が俺にはわからなくなっていた。
 何を考え、何を求めているのか俺には……わからなくなっていた。
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