53 / 99
僕の立ち位置
しおりを挟む空気が読めない……
ボッチ歴十年以上、今まで愛真以外に友達の居なかった僕が虐められたりしなかったのは多分この力があったからだろう。
空気を読む力、クラスの人間関係やカーストを見分ける力があったからだ。
『君子危うきには近寄らず』
これさえ守っていれば虐めに合う事はない。余計な事をしない、言わない、目立たないの三原則を守り、空気になれれば、誰にも気付かれなければ平穏無事に学校生活を送れる。
僕は今までずっとそうやってボッチでありながらも何事も無く学校生活を乗り越えてきた。透明人間になりきっていた。
本当マジで透明人間過ぎて小学生の時、僕がまだ居るのに着替えをしようとした女子が居たくらい透明になっていた。
まあ……日頃は透明人間でも良いんだけど、そうも行かない時がある。代表的なのは修学旅行だ。休むと言う選択肢もあるんだけど、それだとかえって目立つんだ、あいつ当日休んだよとか……そもそも出発前にグループを組まなきゃいけなくその組んだグループに当日迷惑がかかる。なのでその選択肢はやってはいけない。
じゃあどうするか? まずグループを組む時に先生が「○○さんを誰か入れて上げて~~」なんて言われる展開は最悪だ。それだけは避けなければならない。
じゃあどうするか? まあ僕くらいのボッチレベルになるとグループを組む時なんて何も問題は無いんだけどね。
そんな時はどうすれば良いか? 同じ境遇の人にそのテクニックを教えて上げよう。あ、でも僕はボッチの天才だから参考になるかはわからないけどね。
まずは日頃からクラスの状況を逐一観察しておくこと、いざというときの為にね。そしていざって時その状況を利用するんだ。
誰かとグループを組む時に一番簡単な方法は単純だ。人数が足りないグループに入り込むだけ、それもあまり仲の良くないグループに潜り込む事だ。クラスカーストとグループのトップを把握しておけばこいつ誰だっけ、まあいいか人数足りないし変な奴に入られるよりかはって思って貰える。
まあ僕が一番変な奴なんだけど……何せ目立たないから…………うう段々辛くなってきた、この話まだしなきゃ駄目? え? 聞きたい? そうか……じゃあもうちょっと頑張る……
えっとどこまで話したっけ……ああ、修学旅行ね、そうそこで、その入れて貰ったグループではいつもの通りクラスの中と同様に空気になる事を心掛けるんだ。更にその時注意しなければいけないのは目立たないからと、空気だからと勝手な行動をしない事。そして自由行動で行きたい場所とかは言わない、とにかく邪魔にならない様に一緒に行動をすること。これでほぼ問題なく切り抜けられる。
僕はこの方法で年数回の行事を切り抜けてきた。
年数回はまだいい、問題は日頃良くあるパターン、例えば体育の授業とかで二人組を作る時、まあそれもボッチの天才の僕にかかれば何も問題ない。
そこでも日頃の観察力が役に立つ。
良くあるパターンではいつも組んでいる人が決まっているボッチ気味の人にあらかじめ目をつけておいて、相方が休んだ時にそれとなく組んでもらう。
こいつ誰だっけ、まあ良いかって感じで組んでくれる。ここで注意しなければいけないのは、相手より上手くなってはいけない、かといって下手すぎても駄目、目立たず迷惑掛けず何事も無く終わらせるのが大事。
他にも色々あるけど僕の心が持たないのでこの辺にしておこう。
いつか奇跡的にこの物語が書籍化やコミカライズ等になった時に僕がボッチ相談コーナーとかやってみるから…………って……あれ? 僕は何を言ってるんだ?
と、とにかく嫌われない様にするのが大事だ。嫌われたら最後……ボッチは誰にも助けて貰えないから。
だから……今この状況に僕は大変困惑している…………
「はいお兄様、今日のお昼です」
「ちょっと泉さん、学校では私が真君を介助する約束でしょ?」
「そうですが、食事に介助は必要無いのでは? そもそもお兄様のお弁当を作るのは家での私の仕事ですから」
「仕事……へーー仕事なんだ」
「そうですが?」
「義務とか仕事とか……なんか仕方なくやってる様な言い回しだよね?」
「仕方なくなんて思っていません、私は妹として」
「妹は母親でも家政婦でもないと思うんだけど、そもそも」
「ちょ、ちょっと二人とも……あの……皆見てる……」
「あ……」
「あ……」
僕の前で言い争う二人に困惑している周囲……いや、一番困惑しているのは……僕なんだけど。
泉は僕にお弁当を渡し一緒に食べ始める。最近毎日では無くなったが、泉と一緒に食べる事はちょくちょくある。周りも兄妹だし、まああるよねって感じで生暖か目で見てくれていた。なので泉は良いんだけど、凛ちゃんも持ってきたお弁当を広げ僕と一緒に食べ始めた今、流石に周りは困惑している。そんな変な空気になっていた。
クラスカーストトップの泉と、クラス委員長が今まで石ころよりも目立たなかった僕と一緒にお昼を食べ始めるとかなんなんだって思うよね? うん、僕も今まさにそう思っている。
「お兄様美味しいですか?」
「あ、うん美味しいよ、ありがとう」
「へーー泉さんて料理出来るんだ、意外」
「意外って、何ですか?」
「あ、ごめん、ほら泉さんてお嬢様だと思っていたから、うちの学校ってそういう人多いでしょ? 泉さんがいつも一緒に居る人達も結構良い家の人達ばかりだし。そういう家の娘達って料理とかしないんじゃないのかなって、大抵お手伝いさんとかがやってて出来ない人多いんじゃないのかなって思ってさ~~」
「ああ、そういう意味ですか、そんな事無いですよ料理は花嫁修行の一つですし、ご趣味で料理教室等にいかれている人も多いですし」
「じゃあ泉さんも?」
「私? まあ…………私そんな家柄では……ないですから」
「へーーーそうなんだ」
凛ちゃんはあまり興味なさそうにそう返事をすると僕の方を向いてにこやかに笑うとまたお弁当に箸を付けた。
でも僕は今の泉の言葉で今まで考えて無かった事が不思議なくらいな疑問が生じた。
泉って……一体どういう人なんだ? いや、性格とか人柄はある程度知ってるよ、ただ泉の過去は? 小学校は? 住んでいた場所は? そもそも本当にお嬢様? さっき言ってた家柄は? 泉の母さん……僕のお義母さんは、なんで父さんと結婚したんだ?
そして……友達はお嬢様が多いし、泉の立ち振舞いもその中で遜色ないんだけど、そう言われてみれば家事万能のお嬢様って変な気もする。
……泉って……本当にお嬢様なんだろうか?
タイトル詐欺? 僕の心にわけのわからない警告音が鳴り響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる