クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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ほ、本物が!!

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 結論から言うと……泉はお嬢様じゃなかった……間違いなくお嬢様じゃないよ泉は…………

 ただのお嬢様じゃなくて……泉は…………とんでもないお嬢様だった。

 空港から30分程で泉のおばあちゃんの家の門を通過した。大きな西洋風の門を確かに通過した。そしてそこから車で走る事5分……まだ家には着かない……ってどういう事?

 ちなみに運転している女性は泉のお婆ちゃんの秘書らしい、綺麗な顔立ちなんだけど、金色の髪、鋭い目付き、秘書と言うよりはボディーガード、女性SPの様なイメージ、ハーフで名前はフレンディと言うらしいが、泉が軽く喋っただけで僕はそのオーラから話しかける事は出来なかった。

 それにしても……僕は……本当に泉の事を何も知らない……
 
 でもまあ、これは泉の過去というよりは、義母さんの過去って事になるんだろうけど……

 父さんと結婚する前の話、要するに今向かっている所は、前の旦那さんの実家って事だよね?
 泉の実のお父さん……本当のお父さんは一体……

 て言うか、父さんは知ってるのかなぁ、多分知らないよなぁ……

「お兄様、到着しましたよ」

「え? おおおおおおおおおお?」
 僕が考え事をしている間に車が家の屋根つきエントランスに入って行く……っていうかエントランスって……ホテルかよ!


 白い洋風な建物、いや、これ……家じゃないよね? 何かホテルって言うか、もうどこかの国の大使館って言ってもいいくらい凄い家。

 僕と泉が乗って来た黒塗りの高級車は、玄関と言うにはあまりも大きい扉の前でゆっくりと止まった。

 先ほど素早く乗り降りしていたフレンディさん、今度は運転席から動かない、
 あれ? っと思ったその時、目の前の大きな扉が開いた。

「!!!」
 その光景に僕は興奮した。そりゃもうとんでもなく興奮した。

 だって、だって、中から出てきたのは……メイド様……クラシカルロングの実用性を追及したシンプルなメイド服を着たメイド様が三人待っていたかの様なタイミングで家から出て来た。その3人が着ているメイド服は凛ちゃんが着ていた物に近いんだけど、やはりあれはコスプレというか、見せる事を重視して作っている。でも家から出てきたメイド様は、間違いなく本物と言って良いだろう。僕くらいになると、メイド服の着こなしでそういうことは全部わかってしまうんだよね。

 三人の内一人は車の後ろ多分荷物を降ろしに行く。そしてもう一人が車の扉を開けた。その三人中で一人、胸元にリボンの付いた二人とは微妙に違うメイド服を着ている、恐らくメイド長なのだろう彼女が車の後部座席に座っている僕と泉に一礼をした後声をかけてきた。

「お疲れ様でした。お嬢様おかえりなさいませ、真さま、ようこそいらっしゃいました」


「ふ、ふ、ふおおおおおおおおおお!」
 そのセリフに、本物のセリフに僕は絶叫した。

「は?」
 笑顔で挨拶をしてきたメイド長様が、僕の絶叫を聞き困惑した表情に変わる。

「お、お兄様!!」

「は! す、すみません!!」
 我を忘れて興奮している僕に泉が大きな声で嗜める。

「……い、いいえ……お荷物は後ろにある物だけでよろしいですか?」

「あ、はい! だけです!」
 本物だあああ、凄い、本物のメイド様だああああ。
 泉に嗜められても、怒られても、それでも本物のメイド様を前に僕はやはり興奮してしまう。

「──そ、そうですか……」

「は、はい! い、いててててて」

「?」
 不思議そうに僕を見るメイド長様……痛い、痛いよ泉……いつまで経っても降りなかったからか? 泉に脇腹をつねられ僕は慌てて車を降りた。

「……お婆様は書斎?」
 車から降りると泉は僕を追い抜いてエントランスから家の扉に向かって歩いていく。泉から一歩下がり付いていくメイド長さん、流石です!

「いいえ……今日は寝室におられます」

「そ、起きてはいるの?」

「はい、お嬢様と真さまを今か今かと朝からお待ちしております」


「わかりました、まずお婆様にご挨拶をします」

「畏まりました」
 二人がそう言いながら家に入る…………僕も泉を追いかけて家に入った。


 …………な、なんじゃこりゃ!
 
 中に入ると一層その家の大きさが半端ないって事がわかる。高い天井、玄関は吹き抜け、その先の廊下も広く普通の家じゃないってのが一目でわかった。そして豪華絢爛って言うほどではないが、テレビでしか見た事のない大きな陶器の置物、豪華なシャンデリア、フカフカの絨毯、どれを取っても見るからに高そうで…………

「お兄様? どうされました?」
 玄関で立ち止まる僕に泉が気付き声をかけてくる。

「──いや、あの……えっと……どこで靴を脱げば?」
 広すぎる玄関、どこで靴を脱いでいいかわからない僕は、その場で立ち尽くしてしまう。

「靴のままで大丈夫ですよ、お兄様」

「えええええ……」
 笑顔でそう言いながら靴のまま赤い絨毯を歩いて行く泉……マジか……こんなフカフカで綺麗な絨毯を土足って……

「お兄様、まずはお婆様をご紹介します」

「あ、は、はい……」
 
 そう言われ僕はすごすごと泉の後を付いていく。
 泉のお婆ちゃん……この家の主らしいけど、一体どんな人なんだろうか?

 怖くなければいいなぁ……
 僕は不安一杯で前を歩く泉とメイド長様の後ろ姿をじっと見つめていた。





 ああ、しかしあのメイド様の後ろ姿…………なんて神々しいんだろう…………やっぱりいいなぁメイド様……


 
 
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