クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

文字の大きさ
95 / 99

傷と絆

しおりを挟む

 今、僕の下に泉がいる。
 ベットに横たわり目を閉じる泉……僕はそれを上から見ていた。

 雲の上の人、天上人……カーストトップ……クラスの……いや、学園のアイドル。
 僕なんかに手の届く様人ではなかった……足元にさえ近寄る事も許されない神の様な存在の人だった。

 それが今……地上に降りて来る所か、さらに下……底辺所か最下層の僕のベットの上で横たわり、僕に組伏せられている。

 今僕は神を、女神をてに天使を、泉を征している……あはははは、笑っちゃう……クラスカーストのトップがカースト最下位に押し倒されているのだから。

 そう今なら……何でも出来る……この天使に何でも出来る……僕の妄想が汚い妄想が何でも実現出来る……。

 泉の肩に手をかけたまま、僕は泉に跨がった。そして……そのままゆっくりと身体を、顔を近付ける……。

 僕の身体が乗っても、顔が近付き吐息がかかっても、泉はピクリとも動かない、まるで眠っているかの様に目を閉じたままでいる。

 目を瞑る泉の顔がどんどん近付く……ベットに散らばる泉の髪の毛……キラキラと輝く黒い絹糸が辺りに美しく広がっている…………こんなにも近くで見た事はない泉の顔……。

 長い睫毛、整った鼻……ふっくらとした小さな下唇。

 改めて思う……天使の様な美しさ……だって。

 絶対に手に入らない物が、今、僕の目の前にある……すぐ目の前に……全てが、今まさに手に入る。

 僕は今から妄想を実現する………………いや、僕ってこんな妄想なんてしていたっけ?
 実現? 何を?
 あんなにも興奮していたのに、全てが手に入るって思っていたのに……そう考えた瞬間スッと現実に戻った。

 妄想……。

 僕の頭の中にはずっと泉がいた……中学からずっと3年以上の片思い……ずっとずっと泉の事を思い、妄想していた。
 手を繋ぐ、メイド服を着せる。
 デートもした……キスもした……もっとエッチな事だって……。

 でも……こんな……こんな事……想像もした事無かった……こんな泉を……傷付けるような事……傷付ける……そう……僕は今……泉を傷付けている。

 僕は今までずっと傷ついて生きてきた……ううん違う……傷ついていない振りをして生きてきた……。

 でも……カースト上位達からの蔑んだ目……クラスからいつも感じる誰こいつって視線……ずっとずっと傷付いていた。

 だからって、それを仕返ししてやろうなんて……思った事は無い……。

 そして泉は……泉は一度として……僕を蔑んだりはしなかった……そんな目で僕を見たりはしなかった……。

「ご……ごめんなさい……ご……ごめん……」
 そう考えたら、泉を傷付けているって考えたら、ボロボロとまた涙が落ち始める……泉の顔に僕の涙が降り落ちる……。
 泉の綺麗な顔に……僕の汚い涙が……ポタポタと落ちていく。

 駄目だ、こんな汚い物……泉の顔に……綺麗な顔に、僕の天使に……。

 顔に落ちる自分の涙を必死で拭き取る、トレーナーの袖で何度も……でも……どんどん落ちる涙……いくら拭いても止まらない……。

 そして……泉は……ゆっくりと目を開けた……。

 僕は恐ろしくなった……押し倒した僕はどんな目で見られるのか……憎しみ、怒り、脅威、泉は僕をどんな目で見るのか……って……そう考えただけで恐ろしくなった。
 もう僕は泉に……嫌われている……こんな事したら憎まれても仕方ない。

 泉に嫌われる……そんな恐ろしい……そんな悲しい事を、僕は今してしまっている。
 謝って済む問題じゃない……それはわかっている……。

「ごめん、ごめんなさい……」
 僕は謝った……泉にそう呟いた……こんな事で許して貰える筈はない……でもそう言わないと気が済まなかった。

 泉はどんな恐ろしい目で、どんな表情で僕を見るのか……もう泉に今までの様には見て貰えない……あの笑顔は二度と見れない……僕はそう思った。

 でも……涙ではっきりとは見えなかったが……泉の目は……笑っていた……いや、それどころか僕を慈しむ様な……そんな目だった。

 いつもの、いつも僕を見ている……目だった。



 

 



 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...