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ルークの初恋 3-15

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「・・・・あのこ?」
青年が片方の眉毛をピクリと一回跳ね上げて、ルークの言葉を聞き返した。
「子供の頃、一回だけ、僕と同じ年位の女の子が歌っているのを、魔道鏡で見た事が有るんです。真っ青なドレスを着て、滅茶苦茶歌が上手くて、すっごく可愛くて、でも彼女を見たのはその一回きりで、どんなに探しても見つからなかったんですよ」
「・・・・こころ中りが有るんだが・・・年齢的に合わないな、アレが放送された時、君は恐らく生まれたてか前かの時だと思うのだが・・・しかしアレが放映されたのはあの一回だっただけだし・・・」
「・・・あの、騎士様が僕を何歳と見ているのか分かりませんが、僕、年上ですよ?」
「・・・・ぇ?・・・」
先ほどの熟女趣味の店主と同様、青年もルークの事を子供だと思っていたのだろう、朝起きたら出勤の時間だった時みたいな顔をして一瞬固まった。
直ぐに取り繕う様にして口に手をあてて斜め下を向くが、ボソリと不穏な事を呟いた。
「・・・成程灰色蜥蜴は合法稚児」
この青年、かなり危険人物かもしれないと思い、ルークが後ずさると青年は慌てて訂正した。
「いや、言ったのは私じゃないよ!それで、その女の子が何なのだね?」
「・・・初恋だったんです。今、どうしてるかとか分からないかなって・・・・」
そう言ったとたん、青年は一瞬真顔になったかと思うと、にんまりと笑った。
「へぇ・・・初恋」
酷く含みの有る笑顔だった。
「教えても良いけど、私のお願いも聞いて欲しいな」

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