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ルークの初恋 3-23
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もし、ルークがジェイコブの手をここで取ったら、きっと彼が言う様な、毎日遊んで暮らせる贅沢な日々が待っているのだろう。
一体何人の者達が、ジェイコブの差し出す手の平を夢見て泣いているのだろう、この手を取らないなんて、ある意味馬鹿だ。
でも、どんなに考えてもルークにジェイコブの手を取るという選択肢は浮かばなかった。
ルークは無意識にシャルレのドレスのドレープを握りしめて、シャルレに発言をして良いか目で聞いた。
シャルレが無言でうなずく、ルークは大きなヘーゼルの瞳を青年に向けて言った。
「僕が必死で乗り越えて来た物を、勝手に夢だと決めつけないで下さい」
受諾でも拒否でも無いルークの言葉に、ジェイコブが戸惑いの表情を作った。
「僕の歩んで来た世界は、確かにあなた方殿上人からしたら、哀れで、惨めで、悲惨な事ばかりなのでしょう。でも僕は、それを時には自分で吐いた血反吐の上澄みを啜ってでも生き延びる様な気持ちを味わいながら、ボロボロになってでも乗り越えて来たんです。弟も、もう病気で死んでしまったけれど、戦って戦って立派に生き抜いたんだ。そんな僕の、僕たちの生きてきた軌跡を、弟の存在を、頑張りを、無かった事になんてしないで下さい」
青年は、ルークが言っている事を理解しているのかいないのか、キョトンとした表情のまま動かない。
「何より、僕はアイツラの犯した罪を無かった事になんか絶対にしない。僕の過去が夢だったら、ヤツラのした事も全て無かった事になってしまうじゃないですか。アイツが僕にした事を、アイツが弟にした事を、絶対に夢オチになんかしてやるものか!たとえ償わせる事が出来なくとも、絶対に許さない。絶対にだ。絶対に、一生、許さない」
そう言って、ルークはジェイコブ王子に一つ深々とお辞儀をした。
使用人のお辞儀だった。
それが、ルークのジェイコブ王子に対する答えだった。
一体何人の者達が、ジェイコブの差し出す手の平を夢見て泣いているのだろう、この手を取らないなんて、ある意味馬鹿だ。
でも、どんなに考えてもルークにジェイコブの手を取るという選択肢は浮かばなかった。
ルークは無意識にシャルレのドレスのドレープを握りしめて、シャルレに発言をして良いか目で聞いた。
シャルレが無言でうなずく、ルークは大きなヘーゼルの瞳を青年に向けて言った。
「僕が必死で乗り越えて来た物を、勝手に夢だと決めつけないで下さい」
受諾でも拒否でも無いルークの言葉に、ジェイコブが戸惑いの表情を作った。
「僕の歩んで来た世界は、確かにあなた方殿上人からしたら、哀れで、惨めで、悲惨な事ばかりなのでしょう。でも僕は、それを時には自分で吐いた血反吐の上澄みを啜ってでも生き延びる様な気持ちを味わいながら、ボロボロになってでも乗り越えて来たんです。弟も、もう病気で死んでしまったけれど、戦って戦って立派に生き抜いたんだ。そんな僕の、僕たちの生きてきた軌跡を、弟の存在を、頑張りを、無かった事になんてしないで下さい」
青年は、ルークが言っている事を理解しているのかいないのか、キョトンとした表情のまま動かない。
「何より、僕はアイツラの犯した罪を無かった事になんか絶対にしない。僕の過去が夢だったら、ヤツラのした事も全て無かった事になってしまうじゃないですか。アイツが僕にした事を、アイツが弟にした事を、絶対に夢オチになんかしてやるものか!たとえ償わせる事が出来なくとも、絶対に許さない。絶対にだ。絶対に、一生、許さない」
そう言って、ルークはジェイコブ王子に一つ深々とお辞儀をした。
使用人のお辞儀だった。
それが、ルークのジェイコブ王子に対する答えだった。
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