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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 1ー10

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ジェイコブ王子にああは啖呵を切ったものの、ルークにも体を売っていた経験がある。思い出すのはボコボコに殴られながら犯される事もあった日々。
髪を鷲掴みにされる感覚。
不潔なヤリ部屋のスエた匂い、酒に酔って呂律が回らなくなった口で下卑た笑い声をあげる男達。
拳で頭を殴られた時に聞こえる鈍い音と痛み。
靴底が頬を踏みつける感触。
『嫌ならそう言えばいつでも止めてやるぜ?』そう言って目の前で札束を振られた。
弟を守る為には、金が必要だった。
子供のルークに『嫌』と言う選択肢なんて無かった。
ルークの脳裏に先ほどのジェイコブ王子の言葉が蘇った。
『加虐性愛者って知っているかい?』。加虐性愛者?よく知っているさ。
貧民街で性を売ってなるべく高い金を稼ごうと思ったら、避けて通れない道だ。
ルークは娼館にこそ務めて居なかったが、ルークの父親はルークに体を売らせていた。
男と女の違いに一つ、女は様々な思考の人間と仲良くなれるが、男はほぼ同類としか仲良くならないと言うのが有る。
父親が連れて来る客がまともなワケなかった。
来た客の6割は加虐性愛者と言われる奴等だった。
娼館なら、目に余る客は出入り禁止になる。娼館勤めていた方が未だマシだという位の酷い客も少なくなかった。
その六割の可逆性愛者達の中に、多く、ある異常者がいた。
その客達は加虐性愛者とは又違った種類の人間に思えた。
奴等は決まって尊厳を好んで踏みにじって来た。時に物理的に、時にはルークの父親さえも操作して。
あれは、プレイじゃなく純粋な虐待だった。
無自覚に他人を虐待して股間を興奮させる異常者達。
貧富や学歴に関係なく、どの階級にも必ず存在する存在。
それは不気味に善良で、わかり辛く、でも、気がついてしまえば簡単に見つけられる存在。
狂気に満ちているとしか思えないのに、時に神の使いのようにも見える。
人心を掌握する事に執着する奴等。
ルークには、ジェイコブ王子のジョアンに対する態度は、そつらによく似ている様に思えた。
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