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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 1ー9

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余計な事を言って要らない炎に油を注いでも損をするのはルークだ。
ジェイコブ王子がクスクスと笑いながら言う
「可愛いだろう?ウチのジョアンは。今夜、僕達の褥に混ざれば特別にこの子を抱かせてあげるよ。どうだい?」
ルークの瞳が不機嫌に半開きになった。
心の中で『要らねぇ、何この王子うぜぇ』と思ったが、流石に口には出さなかった。
「この子はね、俺に見られながら他の男に犯されると特別善がって可愛くなるんだよ、君は、君はどうなのかな?大好きなシャルレ姫の前で他の男に抱かれたらどんな風に」
そう言って、ルークに手を伸ばして来た。
その瞬間、パシンと乾いた音がして、ジェイコブ王子の手が叩き落とされ引っ込んだ。
ジェイコブ王子の手を叩き落としたのは、シャルレ姫だった。
「姫」
ルークの呼びかけに、一瞬無表情のシャルレが視線だけよこす。何故か酷く優しい眼差しだった気がした。
ルークの願望かも知れないけれど。
「お戯れはそこまでに、貴方の可愛い子が本気で泣く事になりましてよ?」
「ん?」
シャルレに言われてジェイコブ王子が腕の中のジョアンを見ると、ジョアンが『カラスウリ(改)』に犯されながらジェイコブ王子の胸に顔をうずめていた。
ジェイコブ王子の顔が喜色に染まり、ウットリとほほ笑んだ。
「あぁ御免ね。そんなに嫌だったかい?私がルークを抱くのは」
「うぅ・・っぅくっ」
ジャイコブ王子が優しく抱きしめると、ジョアンは王子に縋りついて静かに泣いた。
シャルレが詰まらなそうな顔でソッポを向いて大きなため息を漏らした。
ルークもシャルレの横で密かにほっと息を吐いた。『オェ・・・』ジェイコブ王子のジョアンに対する支配的な態度は、ルークに思い出したくも無い昔の感覚を思い起こさせた。
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