真夜中の太陽 ルークの初恋

すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 １ー１３

浴場に入ると、既にシャルレは自分で頭を洗い始めていた。
いつもは先に体を洗って、一旦湯船に浸かって温まってから頭を洗っているのに、今日は余程汗をかいたらしい。
ルークはクスリと笑ってシャルレの元に急いだ。
「お背中失礼いたします」
先に自分を洗うと湯冷めしてしまうので、ルークはいつも最初にシャルレの体を洗わせてもらっていた。
手の届きにくい背中を洗い、腕や足もルークが洗う。前も洗わせて貰えるかはシャルレ姫のご機嫌しだいだ。
さり気なく体に傷が出来ていないかも確認した。
「やっぱり、手足に傷が出来ちゃってますよ。あんな高いヒールのブーツで大立ち回りしたんだから当然ですが。まぁ、でも、この位なら僕でも治せます」
紙で指先を切った乗馬の訓練で足を捻った等、日常で出来たシャルレの小傷を回復魔法で直すのはルークの特権だ。
いつもの様にルークが回復魔法を掛けようとすると、これまた珍しくシャルレが止めた。
「後でベッドでマッサージして欲しいの、その時で良いわ」
ルークは思わずポカンとした表情をしてしまった。
今はもう、すでに夜だ。
いくら昼夜を問わずスケジュールが組まれるのが政治に携わる者達の常つねとは言え、今夜褥の相手をしに行くのに、後でベッドでマッサージ？
この後、入浴を終え、各種お手入れをして又メイクして、髪も乾かさなくてはいけないのに、マッサージを受けている時間は無いハズだが。
帰って来てからは、催淫薬を抜く方が先でマッサージ所では無いはずだ。
と、いう事は、やはり仕事に行く前にマッサージしていくのだろう。
今夜、シャルレは戻って来ないのだろうか？