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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 3ー2

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日ごとに細くなっていく手足、軽くなっていく体重、いつ途絶えてもおかしくない位微かな吐息、日に日に強くなる死臭。
ルークの弟は、もう薬を打っても三日もすれば砂糖水を飲むのがやっとの状態になってしまう位容態が悪化していた。
弟の容体が急激に悪化してからのその二年間、ルークが、朝、目を覚まして最初にやる事は弟の呼吸を確かめる事だった。
目の前の子は、せっかくこんなに元気なのに、何かあったら勿体ないとそう思った。
声をかけたのは、ほんの気まぐれだった。
「君、こんな所で何してるの?」
一拍の後、
「うわあああああぁぁぁ!」
木の枝に寝転んだまま、優しく声を掛けたのに、・・・・動く死体でも見つけたかの如く驚かれた。

振り向いて来た子供は、天使みたいに綺麗な男の子だった。
柔らかにカーブを描く優しい栗色の髪、きめの整った真っ白な肌、長い手足、勝ち気そうだけれど、澄んだ瞳のくりくりとした優しそうな目、ぽってりとした淡く色づいた唇。
何もかもが眩しく思え、見上げてきたその子の姿は、月明かりに照らされているのに、まるでそこだけ太陽に照らされているのかと思う程眩しく見えた。
ルークがぽかんと見惚れていると、叫び声を上げたその子供は我に返って、泣いている姿を見られた羞恥心からか、顔を真っ赤にしてルークを睨みつけて来た。
「お前何者だ?!無礼であるぞ!」
小さな王子様は開口一番そう言った。
言葉遣いは悪かった。
ルークはちょっとコケた。
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