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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 3ー4

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「本当かい?灰色蜥蜴族は奴隷や妾になってる奴が多いから、お金持ちの家の子供なら、姿を見るだけならそう珍しい物でもないと思うけど」
「私のまわりには居ない」
少しぼんやりした様な表情で、子供はそう言った。
「俺はハーフだけどね」
ルークが笑顔で応えると、こどもは少し遠くを見た。
そよ風がふわりと吹いて、二人の髪と木の葉このはを揺らした。
子供を、月明かりが木漏れ日の様に木々の間を縫って降り注いで照らしていた。
それを見て、ルークはやっぱり『あぁ、随分綺麗な子だな』と思った。
しかし、
「所で君、さっき自分のお母さんを侮辱するなと怒ったけれど、娼婦を『下賤』の女と言ったね?、それは誰かを侮辱する事になならないのかい?」
ルークにも、聞き捨てならないことは有る。
子供の表情がヒビが入るんじゃないかと思う位ピシリと固まった。
不味いことを言ったと分かったらしい。
「『下賤の女』呼ばわりは聞き捨てならないな。この国では性を売り物にするのは合法だ。
 娼婦は職業として認められている。『下銭』だなんて侮辱して良い物じゃ無い。
 第一君だって将来大人になったらきっとお世話になるんだぜ?娼婦は金がないと会えないからな。客の大多数は貴族と豪商、そんな良い服を着ていて上等娼婦の子供じゃないって言うなら、君、豪商か貴族の子供だろう?
 その服を買う金が何処から来てると思うんだい?
 突き詰めれば俺達貧乏人が必死に働いて稼いだ金じゃないか、税金か日々の生活のための買い物さ」
子供相手に大人げないとは思いつつ、自分も非公式とはいえ、体を売っている身の上としてなのか、ルークはトツトツと子供に反論をし始めてしまった。
『あぁ、言い過ぎている』と自覚しつつ、ルークは自分の唇の動きを止められなかった。
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