【R18BL】とある妖狐が執着心がヤバい弟に当主の座を奪われた上に監禁される話

ナイトウ

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アカオが妖狐一族の牛耳るグループ企業の持ち株会社に内定した頃、当主である父が急逝した。

妖狐はあやかしの一族だが、狐の肉体を持つ存在であるため病気や怪我もすれば寿命もある。
昔は人間より遥かに丈夫で長寿の個体もいたが、人との違いが大きすぎる個体は異形として人間社会に排除される運命だ。その結果今では人とほぼ変わらない寿命、肉体強度の個体ばかり。

むしろ実態が狐なために人と同じ科学的治療が出来ない分、現代の妖狐は人よりも病気や怪我で命を落とす危険性が高いくらいだった。

アカオとトキノの父も、急な卒中で倒れたが直ぐに変化が解けなかったので治療が遅れついに帰らぬ人になってしまった。

慌ただしい葬儀と物悲しい別れの時間が過ぎ去ると、一族はこれまでずっとそうしてきたように粛々と世代交代に向けて動き出す。

当主は就任中必ず後継者を指名する遺言を残す決まりになっていた。
それは、より相応しい者が現れたら何度書き直しても構わない。

遺言で指名された者は指名を受けるか受けないか返答する。
と言っても、返答は形骸化していて断る妖狐はほぼいない。

アカオだって断る選択肢は一切持ち合わせない。
大丈夫。俺は当主に十分相応しい。
次の当主は俺だ。
そう言い聞かせ天命を待つ。

親族が集まった広い座敷で、当主の名代となったアカオたちの母が静かに告げる。

「次の当主は、トキノ。」

その瞬間、アカオはガツンと頭を殴られた様な衝撃を受けた。

なぜ。自分は長男なのに。
こんなに頑張ってきたのに。

なぜ。なぜ。なぜ。

顔が挙げられない。
みんなどんな顔で自分を見てるのだろうか。
トキノにどこまでも敵わない、道化みたいな自分を。

グラグラした感情が沸き起こる中ふと、トキノが人間の女に恋をしてることを思い出し少し冷静になった。
未だに相手は分からないが、トキノがその女を相当好いていることはトキノの言動から明らかだった。

トキノだって、一族の掟は当然知ってる。
こいつは当主になりたがらないはずだ。
断るのではないか。

そうすれば当主は一族の合議で選び直す事になるが、自分が選ばれるのはほぼ確実だ。
瞬時に考えを巡らし、期待を込めてトキノの返事を待つ。

「引き受けます。」

しかしトキノがよく通る声でそう告げるのを聞いてアカオの頭は真っ白になった。
周りの歓喜のどよめきやケンケンコンコンという歓声も耳に入らない。

一度期待を持ってからの失望はアカオによく効いた。
自分の築き上げたものが足元からガラガラ崩れて真っ逆さまに落ちるような絶望がアカオを埋め尽くした。



そこからのアカオはまるで抜け殻だった。
もちろん内心だけだ。
表面上はいたって普通にしていた。
心と外面を切り分ける事にアカオは慣れ過ぎていたので。

親族たちは新しい当主をもてはやすのに夢中でアカオの事を気にかける者はいない。
それはアカオがずっと巧妙に弟を可愛がる好青年を演じ抜いてきた結果でもあった。
誰もがアカオだって当然トキノのことを喜んでいると信じて疑わなかったのだ。

まさか、あの穏やかで謙虚で思いやりのある兄狐が、当主になれなくて臍を曲げるなんて。

唯一、皮肉にもアカオの絶望の源であるトキノだけが僅かなアカオの異変を感じ取り仕切りに心配してくる。

だけどそれも、大丈夫だよとトキノの頭を撫でたり抱きついたり、雑なスキンシップで躱せた。


アカオの不運はトキノを弟に持った事だが、幸運は案外図太い事だった。

元々狐らしい狐であるアカオはいつまでも損な状況に甘んじている性分ではなかったのだ。

こうなっては、はぐれ狐になろう。
自分のものにならない妖狐の家に未練はなかった。
いつまでもトキノの横で燻ってるのは真っ平だし。
そう思い直し、アカオは密かに就職活動を再開した。

そうしてアカオが無事希望の条件で内定を獲得したころ、トキノも諸々の儀式を経て妖狐一族の当主に正式就任した。

この時点では、二人の兄弟狐は確かに別々の道を歩みだすはずだった。

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