【短編/R18】同居人が俺を愛しすぎててヤバい

ナイトウ

文字の大きさ
6 / 20

6, タツマ視点

しおりを挟む


どうしよう。あほな俺にはもう反論が思いつかない。
そこまでイオリが望むなら叶えてやりたいとも思うが、問題は俺の理性だ。今でさえ土日や連休で一緒にいる時間が長い時は湧き上がる情欲との戦いなのである。
怪しまれないようにどうにか個室ビデオ屋や風呂場で抜いて事なきを得ているが、毎日家にいる事になったらそれもし辛くなるだろう。

絶対無理だ。絶対襲う。
そしたらイオリはどうなる。
傷ついて本当に死んでしまうかもしれない。

そもそも、こいつは俺が自分を好きな事に気付いているはずだ。もう諦めたんだと思っての提案なんだろうが、無防備すぎないか。
今後のためにちょっとその辺りを本人に自覚させといた方がいいタイミングなのかもしれない。

「提案は嬉しいけど、受けるのは正直なところ無理だと思う。前に、恋人が欲しいって話した時あっただろ?イオリとは今まで通り暮らしていきたいけど俺の気持ちはあの時と変わってない。ただ抑えてるだけなんだ。」

さりげなくまだお前が好きなんだよと匂わせてみた。
みるみるイオリの陶磁器みたいな額が青ざめて行く。

「いや、いやだ……」

「ごめん。でもそうだから。今まで通り暮らせるならイオリには迷惑掛けないから安心して。」

「だめだよ。約束なんだから仕事辞めて僕とずっと一緒にいて。僕以外の人に会わないで!」

イオリが更に必死になって縋ってくる。

「いや、だから無理だって今の話で分かるだろ?」

こいつは何を聞いているんだ?とちょっと腹が立つ。人の気も知らないで、と憎らしくもなってきた。可愛さ余って、というやつだろうか。

「無理でもダメ!タツマは僕だけ見て!」

本当にしつこい。なんだって今日に限って……。

「お前ばっか見てたら襲っちまうだろうが。イオリのちんこ俺のケツで咥えていいわけ?」

俺はついに言った。それでイオリが引いて、俺が笑って冗談だよって誤魔化せばいい。少しはお灸になるだろう。

「え、いいよ?タツマこそいいの?」

イオリがあっけらかんと言ったので、俺は絶句した。








はっ、思考が停止していた。

落ち着け。こんなの売り言葉に買い言葉に決まってる。その気もない相手とそんなことして傷つくのはイオリだ。

「イオリ、今のは言い過ぎた。お前も勢いでものを言うなよ。そういうのが嫌で一人で頑張ってきたんだろ?」

「だって、それは相手がタツマじゃないからだよ。タツマならいいよ。ね、約束したでしょ仕事辞めてくれるって。溜まったら僕で処理していいんだから恋人も要らないよね。」

イオリの勢いがどんどん増していく。恋人になる気は無いけど性欲の相手はするって、それがイオリを好きな俺にとってどれくらい辛いことか思いもしないんだろう。

「イオリ、俺は本当にお前と一緒にいて迷惑だなんて思ってない。だから、責任感で養うとか楽させるとか言わなくていいんだ。ましてやイオリを性欲処理の相手なんて、絶対考えらんないよ。」

「……ご、ごめんなさい。僕、僕……」

イオリの目にみるみる涙が溜まっていく。

「嫌わないで……」

しくしく泣きだすイオリ。少し冷静になっただろうか。

「嫌うわけないだろ。俺のためにそこまでしてくれるって話なんだから。でも、イオリが本当にしたい事をしてくれるのが俺は一番嬉しいよ。」

「……うん。わがまま言って、本当にごめん。」

儚げに謝るイオリの頭をそっと撫でた。

「大丈夫だって。何か飲むか?ココアとか。」

「うん。」

「じゃ、作ってやるよ。」

「……あっ、僕自分で作る!今ココアパウダーしか無いんた。タツマじゃ作れないだろ?」

雰囲気を変えようとわざと明るく言うイオリに安心して、馬鹿にするなと軽く小突きながら任せた。

何事もなかったかのようにイオリが作ったメチャクチャ美味しいココアを二人で飲みながらサブスクの映画を見る。
そうしてると、気が抜けたからか睡魔が襲ってきた。

「眠い?」

イオリに聞かれる。

「んー。」

「じゃ、寝室行こっか。」

「わりー。」

イオリにもたれるように立ち上がって部屋に誘導してもらう。
最近は夕飯の後にすぐ眠くなる事が何度かあってイオリも慣れっこだ。
昔はこんな風に寝落ちしちゃう事なかったんだけど、働き出して気付かない疲れが溜まってるのかな。

ベッドにどさりと降ろされる感覚を最後に、俺は眠りに落ちた。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

重すぎる愛には重すぎる愛で返すのが道理でしょ?

チョコレートが食べたい
BL
常日頃から愛が重すぎる同居人兼恋人の深見千歳。そんな彼を普段は鬱陶しいと感じている主人公綾瀬叶の創作BLです。 初投稿でどきどきなのですが、良ければ楽しんでくださると嬉しいです。反響次第ですが、作者の好きを詰め込んだキャラクターなのでシリーズものにするか検討します。出来れば深見視点も出してみたいです。 ※pixivの方が先行投稿です

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...