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第1章 幼少期編
3 お邪魔虫
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奉公を始めて1週間、だんだんと仕事にも慣れてきた。
ミラ侍従長が言っていたように、この屋敷の雰囲気があまり良くないことも感じられる程度にはいろいろ見もした。
公爵は使用人に厳しく、ちょっとしたことですぐに強く周りを叱り飛ばす。
失態が酷いと解雇したり独房に閉じ込める事もあった。
みんないつ逆鱗に触れるかと恐れながら仕事をしている。
といって働かなければそれはそれで怒られる。
今日の朝一は、密かに楽しみにしていた公爵の守護獣を手入れする仕事だ。
昨日厩舎担当に手順を教えてもらって、その夜彼は故郷に逃げてしまった。
だから、いきなり一人でやるハメになっている。
仕方なしにブラシと桶を持って厩舎に向かった。
公爵の守護獣、アッシュタール号は馬型の獣だ。
青みがかった葦毛の毛並みに炎のように揺らめく翡翠色のたてがみ、普通の馬よりふた回り大きい体はムキムキで男のロマンを感じる。
ゲームでも他キャラの守護獣として同じタイプがいたが馬だけに圧倒的な馬力が売り。
「アッシュタール様、失礼しますね。」
そう声を掛けると馬はフシュッと鼻息を吐き出した。
拒否されている感じはしないので脇に脚立を立てて登ると、滑らかな葦毛のブラッシングに取り掛かる。
ブラッシングはゲームで採用されていた育成コマンドの1つだった。
ブラシを入れる場所や回数、長さなどで守護獣のパラメーター成長が変わり、どういう手順なら一番効果的か盛んにプレーヤーで情報交換がされていた。
えーっと、鉄板の撫でる順番は背中、脇腹、首、背中、脚だったかな?で、最初は軽め、中重め……
ゲームの通りブラシを入れるとアッシュタール号が気持ちよさそうに目を細める。
おお、ゲーム知識が通用した!のかな?
若干の高揚を覚えた。
「気持ちいいか?」
ブルンっと満足そうに鼻息を吹き出すアッシュタール号の首を笑いながら撫でる。
「お前見た目ゴツいけど可愛いとこあるな、」
「父上の守護獣に気安く触るな。」
話しかけていると背後から声がした。振り返ると、ユーリスが立っている。
ゆるくウェーブのかかった絹糸みたいな亜麻色の髪が朝の柔らかい光に当たってキラキラしていた。
白い肌に黒目がちな瞳は美少年どころか美少女でも通用しそう。
見惚れかけて慌てて下に降り頭を下げた。
「日課のお世話をしておりましたが、至らず申し訳ありません。」
「お前何歳だ?」
「12歳です。」
「子供だな。」
「はい。」
あんたの方が子供なんですけどね。
「僕と一番歳が近い。」
「はぁ。」
「かくれんぼって知ってるか?」
んん?脈絡がないけど、まあ10歳ってこんなもんか。
「知っておりますが。」
「お前がしたいなら遊んでやる。」
何だ。遊んで欲しいのか?
でも今はちょっとな。
「ありがたいお言葉ですが、まだ仕事がありますので……」
「……僕より獣が大事なのか?」
あー。うん。否定しない。
「そういう訳では……終わったら遊んで差し上げますので。」
「遊べなんて言ってない!もういい!」
そう顔を赤くして叫ぶと踵を返して屋敷に戻ってしまった。
やれやれ、今世でもお邪魔キャラか。
去っていく小さな背中を見ながら苦笑が漏れた。
ミラ侍従長が言っていたように、この屋敷の雰囲気があまり良くないことも感じられる程度にはいろいろ見もした。
公爵は使用人に厳しく、ちょっとしたことですぐに強く周りを叱り飛ばす。
失態が酷いと解雇したり独房に閉じ込める事もあった。
みんないつ逆鱗に触れるかと恐れながら仕事をしている。
といって働かなければそれはそれで怒られる。
今日の朝一は、密かに楽しみにしていた公爵の守護獣を手入れする仕事だ。
昨日厩舎担当に手順を教えてもらって、その夜彼は故郷に逃げてしまった。
だから、いきなり一人でやるハメになっている。
仕方なしにブラシと桶を持って厩舎に向かった。
公爵の守護獣、アッシュタール号は馬型の獣だ。
青みがかった葦毛の毛並みに炎のように揺らめく翡翠色のたてがみ、普通の馬よりふた回り大きい体はムキムキで男のロマンを感じる。
ゲームでも他キャラの守護獣として同じタイプがいたが馬だけに圧倒的な馬力が売り。
「アッシュタール様、失礼しますね。」
そう声を掛けると馬はフシュッと鼻息を吐き出した。
拒否されている感じはしないので脇に脚立を立てて登ると、滑らかな葦毛のブラッシングに取り掛かる。
ブラッシングはゲームで採用されていた育成コマンドの1つだった。
ブラシを入れる場所や回数、長さなどで守護獣のパラメーター成長が変わり、どういう手順なら一番効果的か盛んにプレーヤーで情報交換がされていた。
えーっと、鉄板の撫でる順番は背中、脇腹、首、背中、脚だったかな?で、最初は軽め、中重め……
ゲームの通りブラシを入れるとアッシュタール号が気持ちよさそうに目を細める。
おお、ゲーム知識が通用した!のかな?
若干の高揚を覚えた。
「気持ちいいか?」
ブルンっと満足そうに鼻息を吹き出すアッシュタール号の首を笑いながら撫でる。
「お前見た目ゴツいけど可愛いとこあるな、」
「父上の守護獣に気安く触るな。」
話しかけていると背後から声がした。振り返ると、ユーリスが立っている。
ゆるくウェーブのかかった絹糸みたいな亜麻色の髪が朝の柔らかい光に当たってキラキラしていた。
白い肌に黒目がちな瞳は美少年どころか美少女でも通用しそう。
見惚れかけて慌てて下に降り頭を下げた。
「日課のお世話をしておりましたが、至らず申し訳ありません。」
「お前何歳だ?」
「12歳です。」
「子供だな。」
「はい。」
あんたの方が子供なんですけどね。
「僕と一番歳が近い。」
「はぁ。」
「かくれんぼって知ってるか?」
んん?脈絡がないけど、まあ10歳ってこんなもんか。
「知っておりますが。」
「お前がしたいなら遊んでやる。」
何だ。遊んで欲しいのか?
でも今はちょっとな。
「ありがたいお言葉ですが、まだ仕事がありますので……」
「……僕より獣が大事なのか?」
あー。うん。否定しない。
「そういう訳では……終わったら遊んで差し上げますので。」
「遊べなんて言ってない!もういい!」
そう顔を赤くして叫ぶと踵を返して屋敷に戻ってしまった。
やれやれ、今世でもお邪魔キャラか。
去っていく小さな背中を見ながら苦笑が漏れた。
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