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29.告げる①
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「ではルーシー嬢にすべてを話したら連絡をしてくれ。こちら側で術に絡んでいる魔力のヒビを確認次第、解術を始めるつもりだ。術自体は君に掛かっているが、その影響は君に好意を持っていた者に出ている。一人や二人ではないから時間はそれなりに掛かると思ってほしい」
術は私に掛かっているからすぐに解けるのかと思っていた。だがそんな単純ではないらしい。術の影響を受けていた人全員に対して解術を行うのだろうか。
魔術の知識がない私にはピンとこない。
「そうだな、シシリアに掛けられた魔術を糸に例えよう。糸は君自体に絡みついていたけど、君の周りにいる人達もその糸に絡まっているようなものだ。近ければ近いほど、複雑に絡まってしまっている。そして遠いところにいた者は少しだけ。だから自然と糸が緩んでいる場合もあるかもしれない。
感覚で言えばこんな感じだ。分かるかい?」
素人の私のために噛み砕いて話してくれたので理解できた。
でも疑問が浮かんでくる。
「ええ、分かりました。では時間が経てばいつかは術が解けるということですか?最近のことですが、それほど親しくなかった同級生の数人の態度が言われてみれば変わったような気がして…。前に戻ったわけではないですが、あからさまに避けなくなったんです、挨拶をすれば返してくれるというくらいの些細な変化ですけど。これは術が解けてきたということですか?」
声が自然と弾んでしまう。解術する前に自然と解ける場合もあるなら、解術に掛かる時間もその分短くなるかもと期待してしまう。
「解けたのかどうかは実際に確認しないと判断出来ないが、術の影響には個人差がある、軽い場合なら解け掛かっている場合もあるだろう。なにしろなにもかも出鱈目だったから想定外のことが起こってもおかしくはない。
だがそれも含めて確認しながら解術を行うから時間が掛かるのは変わらない。
すまない、辛いだろうがそれまで辛抱してほしい」
ルカ様のせいではないのに、彼は申し訳無さそうに謝ってくれる。
残念だけれどもそれは仕方がないこと。
先に光が見えているのだから、待つことは苦にならない。
それより気になっているのは『術の掛かり具合の個人差』だった。
私に近い人ほど術の影響がより強く出ていると彼は言っていた。つまり好意を待ってくれている人ほど、私を拒絶しているということだ。
両親、妹、ガイア、そして親しい友人達の態度を思い返す。どれも酷いものだった、話も聞いてくれず憎しみを向けられ一方的に拒絶された。
影響を強く受けていたからなのね。
私のことを本当に思ってくれていたからこそ…。
よかっ…た、本当に…良かったわ。
思い出すのも辛いほどの冷たい視線。
でも今は、それが喜びに変わっていく。
それは彼らが本当に私のことを思っていてくれた証。
ルーシーに全てを話してから解術が終わるまで時間は掛かるだろう。
でもその間にも続くだろう冷たい視線はきっともう冷たいとは感じない。
術は私に掛かっているからすぐに解けるのかと思っていた。だがそんな単純ではないらしい。術の影響を受けていた人全員に対して解術を行うのだろうか。
魔術の知識がない私にはピンとこない。
「そうだな、シシリアに掛けられた魔術を糸に例えよう。糸は君自体に絡みついていたけど、君の周りにいる人達もその糸に絡まっているようなものだ。近ければ近いほど、複雑に絡まってしまっている。そして遠いところにいた者は少しだけ。だから自然と糸が緩んでいる場合もあるかもしれない。
感覚で言えばこんな感じだ。分かるかい?」
素人の私のために噛み砕いて話してくれたので理解できた。
でも疑問が浮かんでくる。
「ええ、分かりました。では時間が経てばいつかは術が解けるということですか?最近のことですが、それほど親しくなかった同級生の数人の態度が言われてみれば変わったような気がして…。前に戻ったわけではないですが、あからさまに避けなくなったんです、挨拶をすれば返してくれるというくらいの些細な変化ですけど。これは術が解けてきたということですか?」
声が自然と弾んでしまう。解術する前に自然と解ける場合もあるなら、解術に掛かる時間もその分短くなるかもと期待してしまう。
「解けたのかどうかは実際に確認しないと判断出来ないが、術の影響には個人差がある、軽い場合なら解け掛かっている場合もあるだろう。なにしろなにもかも出鱈目だったから想定外のことが起こってもおかしくはない。
だがそれも含めて確認しながら解術を行うから時間が掛かるのは変わらない。
すまない、辛いだろうがそれまで辛抱してほしい」
ルカ様のせいではないのに、彼は申し訳無さそうに謝ってくれる。
残念だけれどもそれは仕方がないこと。
先に光が見えているのだから、待つことは苦にならない。
それより気になっているのは『術の掛かり具合の個人差』だった。
私に近い人ほど術の影響がより強く出ていると彼は言っていた。つまり好意を待ってくれている人ほど、私を拒絶しているということだ。
両親、妹、ガイア、そして親しい友人達の態度を思い返す。どれも酷いものだった、話も聞いてくれず憎しみを向けられ一方的に拒絶された。
影響を強く受けていたからなのね。
私のことを本当に思ってくれていたからこそ…。
よかっ…た、本当に…良かったわ。
思い出すのも辛いほどの冷たい視線。
でも今は、それが喜びに変わっていく。
それは彼らが本当に私のことを思っていてくれた証。
ルーシーに全てを話してから解術が終わるまで時間は掛かるだろう。
でもその間にも続くだろう冷たい視線はきっともう冷たいとは感じない。
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