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30.告げる②
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屋敷へと戻り、妹にすべてを伝えるために心の準備をする。
罵倒されるかもしれない。
泣かせてしまうかもしれない。
でも今回のことはどうてあっても聞かせなくてはならないのだ。術に絡んだ魔力にヒビを入れるために。
私の部屋に呼び出しても今の状態の妹は来てはくれないだろう。
なので私が妹の部屋に直接行こうと思った。もし入れてくれなければ強引に入ってしまえばいい。
本来ならそんなことはしない、でも今回だけは特別だ。
私が一方的に話す形になって『そんなの嘘だわ』と認めないかもしれない。
いいえ、きっと今の妹は認めはしない。
でも『感情の揺さぶりが魔力にヒビを入れる』のだとルカ様は言っていた。妹にそれを認めさせる必要はない。
つまりわたしがやるべきことは事実を伝えるだけ。会話が成立するかどうかは重要ではない。
さあ、前に進もう。
あるべき姿に戻すために。
顔を上げて鏡に映る自分を見る。
『大丈夫』だと思った、もう迷わない。
自分の部屋を出て真っ直ぐに妹の部屋へといく『トントン…』と扉を叩いたが返事はなかった。
私だから返事をしないのかと思ったが、部屋の中からは妹がいる気配はしなかった。
ふぅ…仕方がないわ、一旦戻りましょう。
早く妹に話してルカ様に連絡をしたいと思っていたけれども、いないのならしょうがない。
いつ戻ってくるから分からないので、自分の部屋に戻ろうとした。
するとその途中で微かに妹の声が聞こえてきた。
どうやら居間にいるようだ。
いつもなら素通りするところだけれども、今は一刻も早く妹に話したいと思っていた。
だからいつ部屋に戻るのか分かるのではないかと安易に閉まっている扉へと近づいてしまった。
妹以外に誰がそこにいるのか考えることなく…。
『早く解術を』と焦っていたわけではない。でも解術後の未来に私は浮かれていたのだと思う。
扉に近づくと中から聞こえてくる声から、妹だけでなく両親とガイアもいることに気がついた。
どうやらガイアが屋敷を訪れていたようだ。
いつもなら彼は婚約者である妹に会う為に毎週火曜に屋敷を訪れている。昨日がその火曜日で、彼はいつものように来ていたのは知っていた。
そして今日は水曜日。
彼はもう学園を卒業しているので忙しい身だ、それにお互いの屋敷はかなり離れているので2日連続の訪問は珍しいことだった。
なにか特別なことがあったのかしら?
気にはなったけれども、その理由を聞きにこの部屋の中に入るつもりはない。
彼らの態度の意味が分かっても、自ら進んで愛する人達に罵倒されるつもりはない。
彼が来ているのなら暫く妹が部屋に戻ることはないだろう。
もしかしたら今日は話す時間はないかもしれない。
そんなふうに思いながら自分の部屋に戻ろうとすると、いきなり甲高い声が聞こえてきた。
それははしゃいでいる母の声だった。
罵倒されるかもしれない。
泣かせてしまうかもしれない。
でも今回のことはどうてあっても聞かせなくてはならないのだ。術に絡んだ魔力にヒビを入れるために。
私の部屋に呼び出しても今の状態の妹は来てはくれないだろう。
なので私が妹の部屋に直接行こうと思った。もし入れてくれなければ強引に入ってしまえばいい。
本来ならそんなことはしない、でも今回だけは特別だ。
私が一方的に話す形になって『そんなの嘘だわ』と認めないかもしれない。
いいえ、きっと今の妹は認めはしない。
でも『感情の揺さぶりが魔力にヒビを入れる』のだとルカ様は言っていた。妹にそれを認めさせる必要はない。
つまりわたしがやるべきことは事実を伝えるだけ。会話が成立するかどうかは重要ではない。
さあ、前に進もう。
あるべき姿に戻すために。
顔を上げて鏡に映る自分を見る。
『大丈夫』だと思った、もう迷わない。
自分の部屋を出て真っ直ぐに妹の部屋へといく『トントン…』と扉を叩いたが返事はなかった。
私だから返事をしないのかと思ったが、部屋の中からは妹がいる気配はしなかった。
ふぅ…仕方がないわ、一旦戻りましょう。
早く妹に話してルカ様に連絡をしたいと思っていたけれども、いないのならしょうがない。
いつ戻ってくるから分からないので、自分の部屋に戻ろうとした。
するとその途中で微かに妹の声が聞こえてきた。
どうやら居間にいるようだ。
いつもなら素通りするところだけれども、今は一刻も早く妹に話したいと思っていた。
だからいつ部屋に戻るのか分かるのではないかと安易に閉まっている扉へと近づいてしまった。
妹以外に誰がそこにいるのか考えることなく…。
『早く解術を』と焦っていたわけではない。でも解術後の未来に私は浮かれていたのだと思う。
扉に近づくと中から聞こえてくる声から、妹だけでなく両親とガイアもいることに気がついた。
どうやらガイアが屋敷を訪れていたようだ。
いつもなら彼は婚約者である妹に会う為に毎週火曜に屋敷を訪れている。昨日がその火曜日で、彼はいつものように来ていたのは知っていた。
そして今日は水曜日。
彼はもう学園を卒業しているので忙しい身だ、それにお互いの屋敷はかなり離れているので2日連続の訪問は珍しいことだった。
なにか特別なことがあったのかしら?
気にはなったけれども、その理由を聞きにこの部屋の中に入るつもりはない。
彼らの態度の意味が分かっても、自ら進んで愛する人達に罵倒されるつもりはない。
彼が来ているのなら暫く妹が部屋に戻ることはないだろう。
もしかしたら今日は話す時間はないかもしれない。
そんなふうに思いながら自分の部屋に戻ろうとすると、いきなり甲高い声が聞こえてきた。
それははしゃいでいる母の声だった。
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