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51.祝福される結婚②
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家族との感動の別れも済ませ、今は結婚式に臨んでいる。初めての新郎よりも二度目の新婦のほうが明らかに緊張している以外は順調に式は進行していく。
お互いに誓いの言葉を交わし、指輪の交換も済ませた私達は正式に婚姻を結んだ。
参列者からの『おめでとう!』『お幸せにー』という祝いの言葉を浴びながら、彼と腕を組んで一緒に歩いていく。
家族は涙ぐみながら笑っている、友人達はひやかしの言葉を交えながら盛大に拍手を送ってくれている。
私と彼は一人一人としっかり目を合わせ、今日という日を迎えられた感謝を込めて丁寧に目礼をしながらゆっくりと歩いていく。
幸せを噛み締めながら…。
一際元気な声を響かせている集団がいた。
それは孤児院の子供達で今日ばかりはみな別人のように行儀良くしている。
正装姿の彼らは小さな紳士淑女になりきっている。
私と彼はかしこまった子供達の姿を見て『見違えたわね』と微笑みあった。
「ヒューイ様、マリア様、ご結婚おめでとうございます。今日という素晴らしい日を迎えられたこと心よりお祝い申し上げます!」
皆を代表してゲイルが祝いの言葉を贈ってくれる。一生懸命に練習したのだろう、丁寧な言葉使いも完璧だった。
「いつもの通りでいいから、ゲイル」
ヒューイがいつもの親しげな口調でそう言うと、ゲイルから力が抜けいつも通りに話し出した。
「えへへ…良かった、実は練習したのこれだけだったんだよね。おじさんもマリア先生もとってもいい顔してるね。すっごく幸せそうで俺もなんか心がポカポカしてきてる。
幸せって、他の人にも分けることが出来るんだね!」
無邪気にそう言うとゲイル。
何気ないその言葉に考えさせられる。
人は一人では生きていけない。
良くも悪くもお互いに影響しあって生きていく。
幸せは周りに幸せを呼び、不幸は周りから幸せを遠ざける。
誰かを幸せにしたければ自分も幸せになる必要がある。
それは至極当然のこと、だけど気づけない。
本当に…子供ってすごいな。
大人が一人で考えすぎて辿り着けない答えを何でもない事のように教えてくれる。
きっと子供のうちは誰もが持っているこの感性を大人になるにつれ常識や狡さを身につける代わりに失っていく。
それが大人になるとういことなんだろう。
「ありがとう。私もみんなの笑顔で幸せになっているわ」
「そうだな、君達のお陰で俺とマリアはここにいる。感謝しているよ」
私とヒューイが結ばれたのはこの子達がいたから。もしあの時出会わなかったら、もしこの子達から無垢な笑顔という幸せを分けて貰っていなかったら、今ここにいなかったかもしれない。
こうして幸せの輪が広がっていく。
子供達の祝福の声を背に歩き始めると多くの参列者の中にダイソン伯爵夫妻の姿を見つけた。
私とダイソン伯爵の離縁した過去を考えればこの結婚式に彼らを招待するのは控えるべきだっただろう。
しかしマイル侯爵家とダイソン伯爵家は親戚同士、これからも付き合いは続いていく。
ここで招待しない参列しないとうい選択をするよりは、良好な関係を見せておくほうがお互いに利がある。
貴族は派閥とか柵とか面倒なことがある。
感情を優先させ弱みを晒すより理性で動かなければならない。
これは貴族として必要な選択だった、お互いに。
微笑みながら自然にダイソン伯爵夫妻に近づいていく。
そして他の参列者と同じようにダイソン伯爵夫妻にも丁寧に目礼をした。
お互いに誓いの言葉を交わし、指輪の交換も済ませた私達は正式に婚姻を結んだ。
参列者からの『おめでとう!』『お幸せにー』という祝いの言葉を浴びながら、彼と腕を組んで一緒に歩いていく。
家族は涙ぐみながら笑っている、友人達はひやかしの言葉を交えながら盛大に拍手を送ってくれている。
私と彼は一人一人としっかり目を合わせ、今日という日を迎えられた感謝を込めて丁寧に目礼をしながらゆっくりと歩いていく。
幸せを噛み締めながら…。
一際元気な声を響かせている集団がいた。
それは孤児院の子供達で今日ばかりはみな別人のように行儀良くしている。
正装姿の彼らは小さな紳士淑女になりきっている。
私と彼はかしこまった子供達の姿を見て『見違えたわね』と微笑みあった。
「ヒューイ様、マリア様、ご結婚おめでとうございます。今日という素晴らしい日を迎えられたこと心よりお祝い申し上げます!」
皆を代表してゲイルが祝いの言葉を贈ってくれる。一生懸命に練習したのだろう、丁寧な言葉使いも完璧だった。
「いつもの通りでいいから、ゲイル」
ヒューイがいつもの親しげな口調でそう言うと、ゲイルから力が抜けいつも通りに話し出した。
「えへへ…良かった、実は練習したのこれだけだったんだよね。おじさんもマリア先生もとってもいい顔してるね。すっごく幸せそうで俺もなんか心がポカポカしてきてる。
幸せって、他の人にも分けることが出来るんだね!」
無邪気にそう言うとゲイル。
何気ないその言葉に考えさせられる。
人は一人では生きていけない。
良くも悪くもお互いに影響しあって生きていく。
幸せは周りに幸せを呼び、不幸は周りから幸せを遠ざける。
誰かを幸せにしたければ自分も幸せになる必要がある。
それは至極当然のこと、だけど気づけない。
本当に…子供ってすごいな。
大人が一人で考えすぎて辿り着けない答えを何でもない事のように教えてくれる。
きっと子供のうちは誰もが持っているこの感性を大人になるにつれ常識や狡さを身につける代わりに失っていく。
それが大人になるとういことなんだろう。
「ありがとう。私もみんなの笑顔で幸せになっているわ」
「そうだな、君達のお陰で俺とマリアはここにいる。感謝しているよ」
私とヒューイが結ばれたのはこの子達がいたから。もしあの時出会わなかったら、もしこの子達から無垢な笑顔という幸せを分けて貰っていなかったら、今ここにいなかったかもしれない。
こうして幸せの輪が広がっていく。
子供達の祝福の声を背に歩き始めると多くの参列者の中にダイソン伯爵夫妻の姿を見つけた。
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しかしマイル侯爵家とダイソン伯爵家は親戚同士、これからも付き合いは続いていく。
ここで招待しない参列しないとうい選択をするよりは、良好な関係を見せておくほうがお互いに利がある。
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これは貴族として必要な選択だった、お互いに。
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そして他の参列者と同じようにダイソン伯爵夫妻にも丁寧に目礼をした。
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