一番になれなかった身代わり王女が見つけた幸せ

矢野りと

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おまけの話

【おまけの話】可愛いかくれんぼ①〜ゾルド視点〜

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「ん?いち、に、……さん。なんで三頭目がいるんだ?」

首を捻りながら、念の為にもう一度数え直してみるがやはり三頭いた。

俺がそばに近づくと子供達を羽で包み込むように抱いているフロルが『グルゥ、、』と小さく唸る。これは寝ている子供達を起こすなと文句を言っているのだ。


フロルは三週間ほど前に子供を二頭産んだばかりで、今は子育ての真っ最中だ。
飛狼竜は一度に一頭から三頭ほど出産する。子供がまだ母乳だけから栄養を摂取している間は基本雌だけが子育てをして、父親である雄が子育てに加わるのは子供達が翔び始める頃からだ。

それまでは雄は不用意に近づくことはしない。なぜなら邪魔だとばかりに邪険にされてしまうのが分かっているからだ。

だからフロルの相棒である俺――ゾルドも必要以上に近づいたりはせず、厩舎の掃除とか餌やりとかも子育ての邪魔をしないように気を使っている。
これは出産後に雌が母性本能から凶暴になるからとかではなく、安心した環境で子育させてやりたいからだ。


フロルの羽で子供達の姿は小さなひよこ毛しか見えないが、どれも真っ赤だ。


厩舎に入る前に、扉の前には王族についている護衛騎士が立っていて、俺を見るなり苦笑いしながら挨拶してきたのを思い出す。

つまりは三頭目は飛狼竜ではなく、彼らが護衛している子供――ユウサ・ローゼンだ。

ユウサはタイキとカナニーア様の第一子で御年四歳となる。
幼い頃から両親と一緒に厩舎に出入りしているので、飛狼竜のことも恐れたりはしない。
それどころかフロルが産んだ子供達が自分と同じ髪色だったので弟分として可愛がっている。

『すっごくかわいいね!ぼくの弟にしてあげるから、第二王子と第三王子だよ』
『グルゥゥ?』
『ぼくがこの子達を守るから安心してね、フロル』
『グルル♪』

ユウサの子供らしい宣言を、母親であるフロルは快く受け入れた。
だからこそ今日も無条件で自分の懐にユウサの侵入を受け入れているのだ。


ちなみに弟分と言っているが、これは今のところユウサの願望でしかない。飛狼竜の雌雄が判別出来るのは生後一年以上経過してからとなる。

一緒に遊べる弟が欲しいと常日頃から言っていたから、もうユウサの中では弟決定みたいだが……。
しかし、もし仮に雌だったとしても可愛がる気持ちが変化することはないだろう。
なぜなら宣言通りに毎日会いに来て、ポヤポヤのひよこ毛を梳いてあげ可愛がっているからだ。

こういうところは母親であるカナニーア様にそっくりで血は争えないなと思う。


フロルの子供達の大きさはちょうどユウサと同じくらいで、まだ歯も生えてはいない。一緒にいても危険はないと判断したからフロルもユウサの好きなようにさせているのだ。


かと言ってこのままにもしておけない。
護衛騎士が待機しているからタイキ達に連絡はいっているはずだが、俺としてもなんでこんなことになっているのかフロルの相棒として把握しておく必要がある。


俺は柵越しに、髪の毛の一部しか見えていない頭に向かって声を掛けてみることにする。


「ユウサ様」
「だれ?」

羽で俺の姿が見えないのだろう。ユウサは起きていたようで、はっきりとした口調で聞いてくる。
フロルもユウサが自分から声を上げたから、俺とのやり取りを見守っていて唸ったりはしてこない。

「ユウサ様、なんでここにいるんですか?」
「ぼく、今日からフロルの子供になるの」
「……」

確かにフロルの子供達とユウサの髪はそっくり同じだが、だからといって飛狼竜の子供には当然ながらなれない。


「ユウサ様は飛狼竜になりたいんですか?」
「……ちがうもん」

返事はあったがなぜか元気がない。幼い頃のタイキと同じでいつも元気な子なのに、こんなのは初めてだった。

「それならどうしてそんなことを言うのですか?ご両親が悲しみますよ」
「悲しまないよ。……だってぼく、いらない子だもん」
「えっ……」

ユウサの言葉に反応したのは、俺だけではなかった。母性本能からだろうか、フロルは尻尾を器用に使って、ユウサの頭を慰めるように優しく撫でる。


 

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