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16.誤算~ロザリン視点~
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なんで、なんでなの!
三年経っても身籠らなかったくせに。
ああ、まったく腹立たしい女だわ!
出産した後にアレクサンダー様と交流を持つ機会はまだなかったけれど、子供は私が育てているのでいつかはチャンスがやって来ると思っていた。
侯爵夫妻も次の子供を望んでいるので私の味方。
傍から見て滑稽なほど私と彼のお膳立てをしようと躍起になってる。
私はただ贅沢な生活を楽しみながらゆっくり待てばいいはずだったのに…。
何もかも順調だったのに、別邸からの知らせがすべてを壊した。
『エリザベス様がご懐妊でございます!』
『なんと本当か?!勘違いではないのだろうな?』
『勿論医師の診察を受け、間違いないと診断されておりました』
『二人目がこんなに早く出来るとは!なんとめでたい事だ!我が侯爵家の未来は明るいぞ、ワッハッハ』
侯爵夫妻の関心は完全に正妻のお腹の中にいる子供に移ってしまった。
私は子爵家出身で、正妻は伯爵家出身。欲深い侯爵夫妻が『跡継ぎの母』により高い身分を求めるのは分かっていた。
焦った私は侯爵に『アレクサンダー様を誘惑してみますので、本邸に呼んでくれませんか』とお願いをした。
「ロザリン、お前の為に今まで何度も息子に本邸に来るようにと連絡をしたが、一度だって来なかったな。それはどうしてだと思う?お前に魅力がないからだ。だからお前が産んだ我が子さえ厭うて顔さえ見に来ないんだろう。
これ以上私がお前の為に何かをするつもりはない。
ここに居たかったら大人しくその子の世話だけをちゃんとしているんだな」
「は、はい。分かりました」
手の平を返したような侯爵の態度。夫人も最近は孫の顔を見に来る回数が減っていた。
ギリッ、私の立場が危うくなっているわ。
これで正妻が私の子より魔力の強い男児を出産したらどうなるのか。考えるだけでもゾッとする。
私は完全にお払い箱になるだろう。そのうえこの子もいらないと言われ押し付けられるかもしれない。
私だっていらないのに!
追い出されたうえにお荷物になる子供までいたら、また惨めったらしい生活に逆戻りだ。
いいえ、そんなの絶対に嫌よ!
またあの生活に死んでも戻りたくない。
あの女さえいなければ…。
せめて妊娠しなかったら良かったのにっ!
そうよ、子供さえ生まれなければ…。
あっはっは‥うっふふっ。っふ、あっはっはー。
私しかいない部屋に抑えきれない笑い声が響き渡る。
妊娠した女性がみんな無事に出産する訳ではないわ。不幸な事故に遭ったりして子供が流れてしまう人もたくさんいるし、不自然な事ではない。特に初めての妊娠では自分の不注意で足を滑らせることもあるわよね…。
やるべきことが決まったなら行動あるのみだ。
その為にはアレクサンダー様と正妻の予定を正しく把握しなければいけない。
私はいざという時にお金で動いてくれる侍女を見つけていたので、その侍女に別邸の使用人からさり気なく二人の予定を聞きだすことをお願いした。
『お二人の予定ですか…。別邸にも知り合いはいますので可能ですが…そのような事はちょっと…』
チラチラと私を見ていやらしくお金を催促してくる。黙ったまま侍女の前にお金を差し出すと、素早く受け取り懐に仕舞う。
『よろしくお願いね。勿論他言は無用よ、分かっているわね』
『承知いたしております』
侍女は足取り軽く部屋から出ていく。
これで後戻りは出来ないし、するつもりもない。この贅沢な生活を守る為なら何でもできるわ。
未来の侯爵夫人の座は絶対に諦めない。
三年経っても身籠らなかったくせに。
ああ、まったく腹立たしい女だわ!
出産した後にアレクサンダー様と交流を持つ機会はまだなかったけれど、子供は私が育てているのでいつかはチャンスがやって来ると思っていた。
侯爵夫妻も次の子供を望んでいるので私の味方。
傍から見て滑稽なほど私と彼のお膳立てをしようと躍起になってる。
私はただ贅沢な生活を楽しみながらゆっくり待てばいいはずだったのに…。
何もかも順調だったのに、別邸からの知らせがすべてを壊した。
『エリザベス様がご懐妊でございます!』
『なんと本当か?!勘違いではないのだろうな?』
『勿論医師の診察を受け、間違いないと診断されておりました』
『二人目がこんなに早く出来るとは!なんとめでたい事だ!我が侯爵家の未来は明るいぞ、ワッハッハ』
侯爵夫妻の関心は完全に正妻のお腹の中にいる子供に移ってしまった。
私は子爵家出身で、正妻は伯爵家出身。欲深い侯爵夫妻が『跡継ぎの母』により高い身分を求めるのは分かっていた。
焦った私は侯爵に『アレクサンダー様を誘惑してみますので、本邸に呼んでくれませんか』とお願いをした。
「ロザリン、お前の為に今まで何度も息子に本邸に来るようにと連絡をしたが、一度だって来なかったな。それはどうしてだと思う?お前に魅力がないからだ。だからお前が産んだ我が子さえ厭うて顔さえ見に来ないんだろう。
これ以上私がお前の為に何かをするつもりはない。
ここに居たかったら大人しくその子の世話だけをちゃんとしているんだな」
「は、はい。分かりました」
手の平を返したような侯爵の態度。夫人も最近は孫の顔を見に来る回数が減っていた。
ギリッ、私の立場が危うくなっているわ。
これで正妻が私の子より魔力の強い男児を出産したらどうなるのか。考えるだけでもゾッとする。
私は完全にお払い箱になるだろう。そのうえこの子もいらないと言われ押し付けられるかもしれない。
私だっていらないのに!
追い出されたうえにお荷物になる子供までいたら、また惨めったらしい生活に逆戻りだ。
いいえ、そんなの絶対に嫌よ!
またあの生活に死んでも戻りたくない。
あの女さえいなければ…。
せめて妊娠しなかったら良かったのにっ!
そうよ、子供さえ生まれなければ…。
あっはっは‥うっふふっ。っふ、あっはっはー。
私しかいない部屋に抑えきれない笑い声が響き渡る。
妊娠した女性がみんな無事に出産する訳ではないわ。不幸な事故に遭ったりして子供が流れてしまう人もたくさんいるし、不自然な事ではない。特に初めての妊娠では自分の不注意で足を滑らせることもあるわよね…。
やるべきことが決まったなら行動あるのみだ。
その為にはアレクサンダー様と正妻の予定を正しく把握しなければいけない。
私はいざという時にお金で動いてくれる侍女を見つけていたので、その侍女に別邸の使用人からさり気なく二人の予定を聞きだすことをお願いした。
『お二人の予定ですか…。別邸にも知り合いはいますので可能ですが…そのような事はちょっと…』
チラチラと私を見ていやらしくお金を催促してくる。黙ったまま侍女の前にお金を差し出すと、素早く受け取り懐に仕舞う。
『よろしくお願いね。勿論他言は無用よ、分かっているわね』
『承知いたしております』
侍女は足取り軽く部屋から出ていく。
これで後戻りは出来ないし、するつもりもない。この贅沢な生活を守る為なら何でもできるわ。
未来の侯爵夫人の座は絶対に諦めない。
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