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2-1 メイドとトラブル

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 チュンチュン・・・・

何処かで鳥の鳴いている声が聞こえてくる。う~ん・・・太陽が、眩しい・・。
え?太陽?
慌ててガバリと起き上がり、辺りを見渡した私は仰天してしまった。私の目の前にはカウチソファにだらしなく寝そべり、空になったワインの瓶を抱え込んで眠りについているミラージュの姿があったからだ。

「う~ん・・・もう飲めない・・・。」

ミラージュは幸せそうに寝言を言っている。ふふ・・・ミラージュったら・・・。
と、そこで私は我に返った。

「た、大変!夜が明けているわっ!」

何て事・・・たった1本のワインで酔って眠りについてしまったなんて・・でもそれにしてもおかしい。あのミラージュが分け合ったワインの瓶1本で酔いつぶれて眠ってしまうなんて考えにくい。ひょっとすると・・。
ソファから降りて、向かい側に眠るミラージュに駆け寄ると激しく身体を揺さぶった。

「ねえ、お願い、起きて!ミラージュッ!」

肩を掴んでゆさゆさ揺すぶると、ようやくミラージュは目を開けて私を見ると言った。

「あ・・・おはようございます・・レベッカ様・・・。」

ミラージュはムクリと起き上がって右手で目をごしごしと擦る。・・・妙に落ち着いているところを見ると・・・まだ完全に眠気が覚めていないのかもしれない。

「ねぇ、ミラージュ。そんなのんきな事を言っている場合じゃないわ。もう朝なのよ?私達・・・宴に呼ばれることも無く、たった1本のワインで今まで眠ってしまったのよ?」

「え・・・?」

そこでようやくミラージュは私たちが今置かれている立場を理解したのか、徐々に顔が青ざめていく。

「や・・・やってくれましたね・・・。あの爺やめ・・・。恐らく私たちを宴に出席させない為にワインの差し入れに来たのでしょう。強力な睡眠薬をしこんで・・・・。それでは私たちを部屋まで連れてきてくれたあの親切な紳士も騙していたというのでしょうか・・・?」

ミラージュはイライラと爪を噛みながら言う。

「そ、そんな・・折角親切な方に出会えたかと思ったのに・・・。」

思わず気落ちして肩を落とすとミラージュが私の傍に座り、手を取った。

「ご安心下さい、レベッカ様。私はどんな時であろうとも貴女様の味方です。たとえ世界中の誰もがレベッカ様の敵になろうとも・・・。」

「あ・ありがとう、ミラージュ。ちょっと大げさな表現かもしれないけれど、その気持ちだけでも十分嬉しいわ。」

世界中の敵って一体・・?
するとミラージュは続ける。

「当然ですっ!何故ならレベッカ様はあの偉大な・・・!」

コンコン

そこまでミラージュが言いかけた時、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「はい、どなたでしょう?」

ミラージュは立ち上がると、ドアに向かって声を掛けた。

「朝食をお持ちしたのですが・・・。」

ドアの外で女性の声がきこえる。

「お聞きになりましたか?レベッカ様。お食事を持ってきてくれたそうですよ?」

「ええ、是非頂きたいわ。何しろ私たちは夕方にワインを飲んで眠ってしまったせいで夕食を頂いていないのだもの。」

レベッカは私の言葉に頷くと、扉を開けた。

「失礼いたします。」

部屋の中に3人のメイド達が料理が乗った大きなカートを押して入ってきた。そしてテーブルの上に次々と湯気の立つ料理を並べていく。
サンドイッチ、スコーン、サラダにピッチャーに入ったオレンジジュースにミルク、ベーコンにスクランブルエッグ・・・。

ああ・・何て美味しそうなのかしら・・。私は空腹で鳴りそうなお腹を必死で耐えながら、全ての料理が並ぶのを待っていた。レベッカも相当お腹が空いていたのだろう。片時も料理から目を離さずにじ~っと見守っている。
やがて、料理を並べ終えたメイド達は頭を下げると、しずしずと部屋を出て行き・・そのうちの1人のメイドがソファの前に置かれた空になったワインの空き瓶を見て、クスリと意味ありげに笑うのを偶然見てしまった。

「ちょっと!そこのメイドッ!今・・笑いましたね?一体何がおかしいのですか?!」

ミラージュもそのことに気付いたのか、クスリと笑ったメイドの首寝っこを掴み、グイッと自分の方へ引き寄せると言った。

「さては・・・あなた方の差し金ですか?!あのワインを届けさせたのは・・?!あのワインの正体を知っていて、今笑ったのでしょう?!」

ミラージュはメイドの首根っこを掴んだまま、ガクガク揺さぶる。

「い、いえ!笑っていません・・・!お、お許しを・・・。」

メイドは顔を青ざめて必死になって言う。

「やめて!ミラージュ!貴女のその力で締め上げたら・・・!」

私は必死でミラージュを止めるとようやくメイドを離した。するとそれまで青ざめた顔で見ていたメイド達が駆け寄ると、床に倒れているメイドを引き起こし、逃げるように部屋を走り去って行った。

「全く・・・本当に噂通りの野蛮な国の人たちだわ・・。」

1人のメイドがぼそりと捨て台詞を残し、ドアはパタリと閉じられた―。
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